ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」   作:ていとくン

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☆9:キサラギキョウコ様、依怙地様、しん7様、アレクサエル様

高評価を下さった皆様、ありがとうございます!最近数値が落ちているので、こうして高評価を入れて下さる方々が大きな励みになっております。



ストーリーについてですが、『純黒の悪夢』については文庫本を入手出来ておらず、劇場版のDVDを視聴したのみです。その為細かい描写も含め劇場版基準になる点、ご了承ください。



虫の知らせ

 

 

 

 

 

 

「追え!!絶対に逃がすな!!」

 

 

 

警察庁の一角。そこを猛然と走る一人の女性。ウィッグを被り目にカラーコンタクトを入れて変装をしたキュラソーであった。

 

"組織"が来るかもしれない。あの"アルマニャック"を派遣してくるかもしれない。

そんな懸念から、公安部は極めて厳重な警戒を施していた。普段の警察庁を知るものが近くを通れば、あまりの物々しさに誰もが目を奪われる程に。

 

しかし、攻め手と受け手という関係において、先手を打てるのは常に攻め手側だ。まして今回は"いつ"、"誰が"、攻めて来るかも分からない。

加えてキュラソーは潜入という分野においても一線級の実力者だ。紙一枚程の、死角。そこを的確に縫って、彼女は侵入を果たし、サーバールームにいた警護を瞬く間に制圧してNOCリストを手中に収めてしまった。

 

だが公安も決して無能ではない。僅かな違和感から侵入を察知した風見捜査官が部下を引き連れてサーバールームへと突入、キュラソーと戦闘に入った。

風見や部下は制圧こそされたものの、騒ぎを聞きつけた公安の捜査官が駆けつける。

こうなれば後は速度の問題だ。キュラソーが警察庁から逃げ出すのが早いか、公安が網を張り終えるのが早いか。

 

そして舞台は今に至る。キュラソーは全力で逃亡し、すぐ後ろから多くの捜査官が追い縋る。どちらの顔にも余裕はなく、必死さが見て取れた。

現状、キュラソーが一歩先んじている。このままであれば彼女は逃げ切り、リストは"組織"の手に渡ってしまうだろう。

 

 

 

「!」

「逃がすか!」

 

 

 

()()()()()()()()、だが。

 

先回りしていた降谷が、曲がり角から強襲をかける。死角からの不意打ちすら完璧に避けたキュラソーだが、足は止まる。

互いに大きな舌打ち一つ。キュラソーと降谷が向き合う。

 

(アルマニャックはいないのか?黒髪短髪の女性……誰だ!?)

(()()()()()()()()が、肌の色や顔立ち……こいつは、バーボンか?)

 

両者共に相手が誰だか確信を抱けないまま、戦端は開かれた。降谷は、追撃戦を。キュラソーは、撤退戦を。

 

高速のジャブがキュラソーを襲う。全てを紙一重で避けきった彼女が逆に上段蹴りを放つ。それをスウェーバックで避けた降谷が、懐へ入ろうとする。

腰を落として突っ込んでくる降谷に、キュラソーは上げた足からそのまま踵落としを放つ。彼がサイドステップで避けた頃には体勢を立て直した彼女が腰だめの正拳を放っていた。咄嗟に左手で受け止めた彼の顔が、苦痛で歪む。

そのままキュラソーが追撃に入る。逃げの一手を打つと思い込んでいた降谷の顔に、驚きが浮かぶ。

 

(ここに留まって、彼女にメリットなどない!何を企んでいる?)

(相手は手練れ!逃げるには、まだ一手足りない!)

 

今度はキュラソーがジャブを放つ。風切り音が響く程の速さによる連撃は、降谷に迎撃を強いる。

全てを捌いていた降谷だったが、ジャブに挟まれるように飛んできた前蹴りは避けきれず、頬を掠めた。その勢いで、ウィッグが後方に吹き飛んでいく。

キュラソーの目が見開かれた。そのまま連蹴りを放ち、受け止めた降谷の腕を更に蹴りつけた勢いで後方へ跳んだ。

 

 

 

「金髪に褐色の肌……お前、やはりバーボンか!」

 

 

 

自分の素性を見破られたことに舌打ちをする降谷。だが、彼女の声を聞いて気づく。自分は、この声を聞いたことがあると。

 

 

 

「その声、聞き覚えがありますよ。……そう、"彼"の討伐戦。貴女も、あの時の彼女も随分強かった……ねぇ、キュラソー?」

 

 

 

自分の失態に気づいたキュラソーもまた舌打ちを溢す。

その時、降谷の背後から足音が聞こえた。駆け足でやってきた足音の主は、降谷のすぐ横で銃を構える。

 

 

 

「降谷さん、横に避けて!」

「風見!」

「そこの女!動くな!お前はもう終わりだ!!」

 

 

 

キュラソーはしばし無言で両者を眺めた後、ニヤリと笑って背後へ駆け出した。

彼女の狙いを過たず理解した二人は慌てて制止しようとするも、一歩届かない。

 

 

 

「待て!!」

 

 

 

ガシャァァァァン!!

 

 

 

窓ガラスを割って飛び降りたキュラソーは、木の中に突っ込んだ。そこから横に跳び、ポールを伝って瞬く間に地上へ到達する。

そのまま路上に飛び出て適当な車を止め、運転手を放り出すと、追い縋った守衛を振り切って走り去った。

 

 

 

「クソっ!!」

「すみません、降谷さん……」

「いや、アレは制圧出来なかった僕の失態だ。お前はここに残って指揮を取れ」

「降谷さんは?」

「当然、追う!」

 

 

 

そう言い残して駐車場へ駆ける。道すがら、赤井へ電話をかけることも忘れない。

 

 

 

『降谷君か、どうした』 

「聞かずとも分かっているだろう!今警察庁から逃げ出した車を追え!僕もすぐ追いつく!」

『フッ、了解した』

「逃がすなよ!」

『勿論だとも』

 

 

 

話しているうちに自分の車へ辿り着いた。飛び込むように乗り、アクセルをフルスロットルで踏む。

 

 

 

()がいなかったのは不幸中の幸いだが……万一にでも逃がしてしまえば公安の面子は丸潰れだ!」

 

 

 

赤井が追ってはいるが、任せきりという訳には行かない。

所詮彼は外様である。此度の一件は疑いようもなく公安の失態である以上、自らの失態は自らで償うべきだ。

 

道中の車を次々に追い越して高速へ入る。しばらく走らせていると、遥か前方に赤のマスタングが見えた。

前のシボレーがアルマニャックに破壊された為に最近買い換えたらしい、赤井の愛車だ。

 

 

 

「相変わらず派手な車に乗っているな!目立ちたがりのお前らしいぞ赤井!」

「着いて早々酷い言いようじゃないか。君の代わりに彼女を追いかけていたというのに」

「それはどうも!僕が追いついたからもう帰ってくれて結構だぞ!」

「俺の扱いが雑すぎやしないか?」

 

 

 

軽口を叩きつつも、前を走る車を追い詰めることは忘れない。二人がかりで挟み込み、ぶつけ、どうにか止めようとする。

しかしキュラソーの運転技術も大したもので、たくみにすり抜け、他の車をひっくり返して障害物にするなど、中々追撃を許してくれない。

 

そうこうしているうちに、キュラソーがトレーラーに体当たりをしてひっくり返した。間に挟まれた自動車が高く跳ね上げられ、落下してくる。

 

 

 

「随分な空模様だな」

「どれだけ周りを巻き込む気なんだ!……ん?クソっ、あいつ正気か!?」

「ほう、敵ながらやるな」

「言ってる場合か!逃げられるぞ!」

 

 

 

横転して尚スピードを殺しきれず脱線したトレーラーの荷台をカタパルト代わりに、自らを下の車線へと発射させたキュラソーは、飛んできた車を避けている降谷と赤井を置き去りに、そのまま速度を上げて走り去った。

 

 

 

「クソっ、逃がすか!」

「ん?おい待て降谷君、彼女が向かった先だが……」

「待ってられるか!僕は先に行く!」

 

 

 

制止を振り切り、唸りを上げて遠ざかる白のRX-7を見送る赤井。思わずため息が溢れる。

 

 

 

「……まぁ、挟み打ちにすると思えばいいか」

 

 

 

彼は車を横付けにしてその場で待機していた。愛銃であるライフルの調子を確認している。

そうしていると、再び前方から車がやってきた。キュラソーが乗る車だ。

彼女が選んだルートは渋滞を起こしていた。それを遠目から察した赤井は、彼女が戻ってくると踏んで待ち構えていたのだ。

ライフルを構え、彼女の頭に照準を合わせる。一撃で終わらせるつもりだ。

降谷は彼女から情報を探るべく生かして捕らえたがっていたようだが、最早その猶予はない。

 

(NOCリストが奪われた以上、その奪還が最優先。彼女を仕留めるのが、一番確実だ)

 

赤井が放つ殺意を感じたのだろう。スコープの中で、キュラソーが凶悪な笑みを浮かべ、更にアクセルを踏んで加速する。赤井ごと押し通るつもり(面白い、轢き殺してやるよ!)なのがひと目で分かった。

赤井は慌てることなく照準を微調整する。

いざ撃とうとしたその時、キュラソーが体勢を大きく横に倒した。ハンドルを持つ手をそのままに、頭を車体に隠した形だ。

無論彼女は前が見えなくなる。しかし赤井がいるのは真正面。問題ないと判断したのだろう。速度を限界まで上げて突っ込んできた。

 

赤井は思わず眉根を寄せる。ヘッドショットが叶わなくなり、一撃で終わらせることが不可能になったばかりか、自分の命さえ危うい。

やむなく、タイヤを撃ち抜いた。パンクを起こし大きくスリップした車は赤井のすぐ横を走り、背後で倒れていたトレーラーに激突。諸共落下し、大爆発を起こした。

 

彼女の姿は、見えない。今の爆発に巻き込まれてくれていればいいが、楽観視は出来ないだろう。

 

爆炎を難しい顔で眺めていると、降谷のレクサスが到着した。車を駆け下り、立ち上る炎を目の当たりにして驚愕している。

と思ったら、やおら赤井に詰め寄ってきた。

 

 

 

「これは、お前がやったのか?」

「彼女がトレーラーに突っ込んだんだ。俺じゃない」

「お前がタイヤでも狙撃したんだろう?なんで無力化して捕らえなかった!?」

「無茶を言うな。時速200キロ近い速度で突っ込んでくる車の運転手を、どうやって捕らえるというんだ。おまけに横倒れの体勢で運転していたからヘッドショットも出来なかった。生きていただけ良くやったと言ってもらいたいのだが」

「お前の生き死にがどうした!()()()()()()()犯人確保の方が何百倍も大事に決まっているだろう!」

「君は本当に酷いな」

 

 

 

尚もむかっ腹を立てている降谷を宥めていると、遠方からサイレンの音が聞こえた。これまでの惨状を見た誰かが通報をしたのだろう。

この場に留まり、駆けつけた警察に見つかってもロクなことにならない。二人はすぐさま退却を決めた。

 

 

 

「チッ……仕方ない、一旦引くぞ」

「異論はない。ここは引いて、体勢を立て直してから捜索と追跡を行うべきだろう」

「そんなこと分かっている!いちいち僕に指図をするな!」

「そろそろ怒るぞ?」

 

 

 

車に乗り込み、二人はその場を後にした。

帰還の最中、降谷の脳内を占めるのは当然ながら先程までの事件。キュラソーの身柄を如何にして確保するかだ。

 

(彼女を逃したのは痛恨の失態だが、まだどうにかなる。"組織"より早く、彼女を捕えてNOCリストを奪還しなければ……!)

 

ここからは時間との勝負だ。風間にメールで付近一帯の捜索を指示する。

 

(万一"組織"が先んじてキュラソーを確保することがあれば、諜報戦で著しい遅れを取るばかりではない。責任問題として、日本の国際的地位は失墜してしまう)

 

そんな未来は、断じて認めない。

降谷は、強くハンドルを握りしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察庁にほど近い、とあるホテルの一室。

そこで、アルマニャックは携帯を握りしめていた。

キュラソーが車を奪い、逃走するところは遠方から双眼鏡でしっかり目撃していた。その直後、2台の車が追撃するところも。

追いかけようかと思ったが、自分には彼女ほどのドライビングテクニックはない。遅れを取るばかりか、足を引っ張る訳にもいかず、やむなく彼女からの連絡を待ち続けていた。

しかし、一向に携帯は鳴らない。

 

 

 

「…………遅い」

「落ち着けよアル。お前が焦ってもどうにもならねぇだろうが」

 

 

 

共に待機していたピンガに窘められるも、彼の表情は浮かないままだ。

彼女は優秀な戦闘員であり、優秀な諜報員だ。それを分かった上で、今日一日嫌な予感が一向に拭えない。

先程のやり取りも、既に4度目だ。ピンガは辟易とした表情を隠しもしない。

 

 

 

「だぁ〜もう辛気臭ぇな!そんなに気になるなら着いていけば良かったろうがよ!」

「キュラソーは、1人の方がやりやすいと言ってた。俺も、彼女がそう言うならって、あの場は引いたんだ」

「んなら今更ぐだぐだしてんじゃねぇ。お前が信じると決めたんなら、最後まで貫きやがれ。俺の前でみっともねぇツラ晒してんじゃねぇぞ」

「……んなこと分かってる」

「分かってねぇツラだよそれは」

 

 

 

ふと、携帯が震えた。弾かれるように通話ボタンを押す。

 

 

 

「キュラソーか!?今どんな状況だ!?」

『……すみませんね。生憎私はキュラソーではありません』

「……ラムの姐さんか。どうした」

 

 

 

露骨にテンションを下げるアルマニャック。キュラソーからの電話ではなかったから、だけではない。この状況でラムから電話がかかってくる、その事実に嫌な予感が強まったからでもある。

ちなみに、アルマニャックはラムを呼ぶ際、気分によって"旦那"や"姐さん"などと呼び方を変える。性別一つ取っても、他者に情報を漏らさない為という、彼なりのささやかな気遣いであった。

 

 

 

『残念ながら悪い知らせです。……キュラソーとの連絡が途絶えました。彼女から最後にメールが送られてきたのですが、その内容は明らかに途中で送信されたもの』

「以降、彼女から追加の連絡が絶えた、と」

『えぇ。そして先程入った情報ですが、彼女が逃走経路に選んだ高速道路で、大規模な爆発事故が発生したと』

「……もしかして、死んだのか」

『いえ、そこまではまだ何とも。捜索は他の者にやらせます。貴方には、引き続き公安の監視を続けて頂きたい』

「…………分かった」

『キュラソーが生きていた場合、公安に何かしらの動きがある筈です。その際は私に連絡を』

「了解」

『結構。では、ピンガに代わってもらえますか?』

 

 

 

ピンガに携帯を渡す。二言三言返事をした後、切れた携帯を返したピンガは椅子から立ち上がる。

 

 

 

「どこ行くんだ?」

「公安を探れとの命令だ。連中のサーバーに侵入するには、ここじゃ機材が足りねぇ。支部に戻る」

「分かった。俺はここで待機してるから、何かあれば連絡してくれ」

「おう」

 

 

 

部屋を出る間際。おぉそうだ、と今思い出したかのようにわざとらしく呟いたピンガが振り向いた。

その顔には強い嘲笑が浮かんでいた。彼が、あざ笑う相手は。

 

 

 

「ラムからの伝言だ。……もし、キュラソーの身柄が公安の手に落ちていた場合は、()()()()()()()()()()とのことだ。アルマニャックには派手に動いてもらうかもしれない、だとさ」

「………………了解」

「公安もすぐに思い知るだろうよ。自分達が誰をキレさせちまったのかをな」

 

 

 

肩を震わせて上機嫌に笑うピンガは、今度こそ部屋を立ち去った。

一人残されたアルマニャックは窓際に陣取り、双眼鏡を構える。

 

 

 

「……ここからは長丁場だな」

 

 

 

嫌な予感は、依然消えない。だが今抱えている予感は、キュラソーの安否とはまた別の話だ。

 

公安、正式には警察庁公安部だが、これは日本の諜報機関と言っていい組織だ。当然、日本人が構成員である。

()()()、と聞いてアルマニャックが知っている人間は4名。うち2名はキールと、赤井秀一。

 

今回の一件に公安が絡んでいる、と聞いて以来、アルマニャックの脳髄の片端に常に居座っている人物が、もう二人いる。

 

一人は、スコッチ。()()()()()

 

(直接的な証拠は一切ない。状況証拠にしても、根拠の薄いものが2、3あるだけ。疑うにはあまりに弱い)

 

キュラソーは無事帰還し、身内にNOCはいない。これが今回の落とし所としては、一番望ましい結末だ。

だが、世界が常に残酷であることを知っているアルマニャックは、一応覚悟を決めていた。

キュラソーが持ち帰るNOCリストの内容によっては、3()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「杞憂なら、いいんだがな……」

 

 

 

零れ落ちた言葉は、苦り切っていた。

 

 

 





物語があんまし進まない……すみませんね。次回はいよいよご対面()なので、今度こそお話が動くと思います。




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