ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」 作:ていとくン
☆9:モスカータ様、ねこnekoすき様、Popo助様、John Doe 23様、一時停止違反様、ざわざわザワザワ様、物差し様
高評価を下さった皆様、ありがとうございます!モチベ上がりまくりです!
今回は久々に感想をたくさん頂きまして。こちらも本ッ当に嬉しい限りです。ありがとうございます!
ぼちぼち純黒の悪夢編も折り返しです。もう少し書く予定だったのですが、キリが良くなっちゃったので今回はちと短め。
それと、キュラソーの生い立ちにちょびっとオリ要素を入れました。原作の流れに影響はございませんが、ご了承願います。
「久しぶりね、ベルモット」
頭を押さえて藻搔いていたキュラソーが、近づいてきた公安の人間をあっさりと制圧する。ゴンドラ内部でのそんな一部始終を監視していたベルモットの端末が、不意に震える。
もしや、と思い通話を繋いでみたところ、相手はキュラソーだった。
「えぇ久しぶりねキュラソー。やはり記憶は戻っているようね」
「えぇ。それより迎えはいつ来るのかしら。外は
キュラソーの眼下に広がる景色。彼女が今いる観覧車の頂上近辺は、ライトアップされた東都水族館一帯を見渡せる絶景ポイントだ。
だがその一角、駐車場が大火事になっていた。何台もの車がひっくり返って炎上しており、時折爆発して火柱が上がっている。車の残骸から察するに、燃えているのは覆面パトカーだろう。組織は公安相手に随分派手な立ち回りをしたらしい。
燃え盛る炎を眺めながら問いかけると、ベルモットの濃いため息が聞こえてきた。
「アルマニャックよ。私は直接見た訳じゃないけれど、あの子ったら相当派手に暴れているみたいね」
「あぁ、成る程。ならあの惨状にも納得ね。こちらから見る限り、
彼なら、この程度訳もなくやってのけるだろう。戦闘能力では組織において他の追随を許さない傑物だ。戦闘にはそれなりに自信がある自分ですら、その影を踏めているかどうかさえ怪しい。
そう考え納得した自分とは対照的に、再度の濃いため息。ベルモットは随分頭を悩ませているようだ。
かつて一度は自分を殺そうとしてきた女が頭痛に悩んでいると思うと、何だか気分が良かった。
「それで?私はどうやって帰還すればいいのかしら?まさか、あの駐車場から無事な車を探して勝手に帰れと?」
「流石にそんなこと言うつもりはないわ。それに心配は無用よ?直にジンが迎えに行くから」
「ジンが……そう、分かったわ」
「ところで貴女、いつ記憶が戻ったの?ラムに、貴女のスマホから連絡があったと聞いたけど……もしもそれが、貴女の送ったメールじゃないとしたら……」
(
覚えがないキュラソーは内心頭をひねったが、程なくして心当たりが浮かび上がる。
メガネをかけた黒髪の少年と、その側にいた明るい茶色の髪をした少女。今思えば、あの2人は子供達の中でも頭の出来が違うように思えた。
何を書いたのかは知らないが、あの子達と行動を共にしているような人間であれば、そう悪いことは送っていないだろう。
「あのメール?勿論送り主は私。何か問題でも?」
「……いえ、それなら問題ないわ」
ベルモットはひとまず納得したらしい。そのことに、何故か安心している自分がいることに気づく。
自らの内心の変化に驚いている間に、どうやら時間が来たらしい。ゴンドラはいよいよ頂上へと近づき、ベルモットからも合図が届く。
「そろそろ時間よシンデレラ。その場でかぼちゃの馬車を待ってなさい」
「分かったわ。魔法が切れる前に私を連れ出してちょうだいね」
フッ、と笑い通信が切れる。席についたちょうどそのタイミングで事が起こった。バッ、バッ、と区画事に照明が途絶え、東都水族館は闇に包まれた。……尤も、駐車場は今も煌々と燃えているが。
観覧車も例外ではなく、照明もサーチライトも消えて、ゴンドラ内は僅かな月明かりが照らすのみとなる。
暗闇に包まれたゴンドラの中、キュラソーはポケットから取り出したキーホルダーを眺めつつ、誰に言うでもなく呟く。
「このまま座っていれば組織に戻れる、か」
それでいい。それでいい筈だった。自分はNOCリストを抱えて組織へと舞い戻り、今後もまたラムの右腕として働き続ける毎日。
多忙で、過酷で。でもスリリングで、やりがいのある日々。他愛もない会話が出来る仲間もちらほらいて、時折そういった面々との交流を休憩代わりに楽しむ。
それが自分にとっての日常で、それが最上な筈だった。
だが、脳裏によぎるのは、ほんの半日前までのひと時。自分がキュラソーではなかった、あの数時間。
(楽しかった……そうね、楽しかったわ)
齢一桁の子供達と共に遊園地を駆け回った、あの時間。ぬるま湯のように平穏だった、ほんの数時間。
それはキュラソーという人物に多大なる影響を与えていた。
物心ついた時から裏社会に身を置いていた彼女にとって、裏表のない善意など鼻で嗤う程度のものでしかなかった。
そんなものは実在しない。実在したところで意味がない。価値がない。悪意ある誰かの餌にされるだけ。善意を捨て、情を捨て、己を磨き己を隠す。それが、生きる術だった。
情の深い人間としてはアルマニャックが組織では有名だが、彼でさえ、その情や善意を無条件に傾ける相手はごく少数の身内に限られる。誰しもに投げかけるものでは、断じてない。
では、何故彼らは、少年探偵団を名乗る彼らは自分を助けようとしたのか。自分と交流を持とうと思ったのか。
(困っている人がいたら、助けるのは当たり前……か)
それがまかり通る世界に生を受けたことを、それを貫ける世界で育つことが出来たことを、少しだけ羨ましく思う。
たらればの話に意味はない。それでも、思ってしまったのだ。自分もこんな世界に生まれられたらと。彼らのように真っ直ぐ生きることが出来たのかと。
(そう、眩しかったのよ)
歩美ちゃん。最初に自分に声をかけてくれた子。"スタイルがいい"、"綺麗だ"と褒めてくれた、明るい女の子。
光彦くん。賢く、しっかりしていた子。"スポーツ選手みたい"などと面映い言葉をかけてくれた、優しい男の子。
元太くん。ちょっぴりおっちょこちょいな子。こんな自分を"恩人"などと呼んでくれた、元気な男の子。
あの子達の笑顔が。日々を懸命に楽しむ、真っ直ぐな姿が。自分に投げかけられる、柔らかい言葉が。初めてもらった、打算のない優しさが。
闇で生まれ育った自分には、全てがあまりに眩く、そして、嬉しかった。
キュラソーは考える。このままゴンドラに残り、組織に帰るか。全てを擲ち、第二の生を歩むか。
普通なら、前者一択だ。自分は組織の機密をあまりに深く知り過ぎた。組織は自分の逃亡を、決して許しはしないだろう。苛烈なまでに追い立てて来るはずだ。
それだけではない。NOCリストを盗んだことで、世界中の警察や諜報機関が己の身柄を狙うだろう。表からも裏からも追いかけられ続ける人生。一体何処の誰が、そんな道を選ぶというのか。
それに、仮に逃げ切れたとして、あの子達と同じような人生など送れない。
自分は犯罪結社の幹部だ。今までに数え切れない程の不幸を生み出し、多くを奪い、多くを殺してきた。眩い彼らと違い、既にこの身は血に染まっている。
そんな自分が、どの面下げて光の世界を歩もうというのか。
そこまで考えた時。ふと、とある言葉を思い出した。
("表も裏も、善も悪も拘らず自分にしか縛られない。それが本物の悪党"…………貴方はかつてそう言っていたわよね、アルマニャック)
どうせこの身は無頼の徒。他人がどうこう世間がどうこう、そんなものを気にする必要はない。許されるかどうかなど、己が決めれば良い。善悪さえ拘る必要はない。
己を縛るは己のみ。やりたいことをやればいい。それを地で行く彼の姿に、それを通せる彼の力に、微かな憧れを抱いたことを思い出した。
そうだ。最初から答えなど決まっていたのだ。
難しいから諦める?相応しくないから切り捨てる?許されないから?資格がないから?恥ずかしいから?
それらは全て本心ではない。全てが欺瞞だ。全てがペテンだ。己を堰き止めるちゃちな嘘だ。
己を騙すのは、もうやめよう。
暴力の化身に憧れを抱いたあの日から。
そして何より、あの子達が放つ眩い光に魂を灼かれたあの瞬間から、自分が歩みたい道など、たった一つしかなかったのだから。
もう一度、手元のキーホルダーを見つめる。小さな、白いイルカのキーホルダー。
あの子達が自分にくれたプレゼント。初めて、誰かからもらった贈り物。大切な、大切な思い出。
"好きな色を塗っていい"、そう言って渡されたそのキーホルダーを、眩しそうに見つめた後、今度は懐にしまい込んだ。
じんわりと、温かな気持ちが胸に広がっていく。あの子達が、自分に力をくれているような気がした。
(いける。この記憶がある限り、私は闘える)
知らず、口元に笑みがこぼれる。それはいつもの凶悪な哄笑ではなく。邪気のない、それでいて硬い決意を浮かべた、覚悟の笑みであった。
「そう、私は悪党。私はキュラソー。どんな色にでもなれるキュラソー。私の人生は私のもの。私の色は私が決める。私が歩む道は……私が決める!」
ゴンドラを抜け出し、観覧車を飛び降りるキュラソー。彼女が、向かう先は。
観覧車にたどり着き、眼鏡のサーチ機能でゴンドラを覗いた灰原は、思わず内心悪態をこぼす。
(やっぱり……!分かってはいたけど、覚悟はしていたけど!でもよりにもよって、なんであんなところにいるのよ!)
心配するこちらの気も知らず、無邪気に観覧車から見える景色を楽しんでいる子供達を、後で必ず叱り飛ばしてやると決意しつつ、入口に差し掛かった時だった。
バン、という音と共に、照明が消えた。観覧車のライトアップも、噴水を照らすサーチライトも消え、辺りは闇に包まれる。
大規模な停電が起こったのだろう。当然、電気で動いている観覧車も止まる。……中に入っていた人間は、取り残されることになる。
(このタイミングでこれ程の規模の事件……間違いなく組織の仕業!早く、早くあの子達を助けなきゃ!)
灰原の顔に浮かぶ焦りが強くなる。一刻も早く、子供達をこの場から連れて帰らなければならない。
幸いというべきか、駐車場の火災に加え停電による混乱も相まって、従業員達は来場者の統制が取れていない。目を盗み、裏側に潜り込むことは容易だった。
子供達が取り残されている場所は把握している。あとはそこに辿り着くのみ。
立体迷路のような裏側を進み、ようやく彼らが取り残されているゴンドラを目視出来るところにまで到達した。
ゴンドラに近づくべく、階段の手すりに上った、ちょうどその時だった。
スタッ、という足音が頭上から聞こえた。思わずそちらを向くと、そこにいたのは。
(キュラソー……!?)
風にたなびく美しい銀髪。記憶を喪ったキュラソーだった。
だが、様子がおかしい。記憶喪失にしては、その目にしっかりとした意志が宿っているような。
そこまで考えていると、ふと視線が合った。キュラソーが僅かに目を見開き、そしてこちらに向かって飛び降りてきた。
焦った灰原は、自分が手すりの上にいることを忘れて咄嗟に後ずさってしまう。
踏むべき地面がないことに気づいた時にはもう遅かった。足を踏み外し、背中から下へ落下していく。
「いやぁあああああ!!」
パシッ
そのまま落下しそうになった、ギリギリのタイミングでキュラソーが間に合った。手すりに着地し、灰原の手を掴む。
灰原は一瞬目を見開くも、すぐにその目を鋭くした。
「何?私を彼らの元に連れ戻すつもり!?」
「彼らって?組織のこと?…………もしかして貴女、組織を裏切ったシェリー?言われてみれば、面影があるわね」
自分が知るシェリーよりだいぶ姿形が変わっているが、確かに顔立ちや髪型にその面影がある。理屈が全く分からないが、どうやこの子は本当にシェリーらしい。
まさか、ここでアルマニャックの逆鱗を引くとは。
特大の不確定要素に、思わず一瞬目を細めたキュラソーだが、どの道自分がやることもやりたいことも変わらない。
あの子達の友人を傷つけるつもりなど、自分には毛頭ありはしないのだから。
「さぁ、逃げるわよ。ここにいては危ないわ」
「逃げるって……?どういうつもり!?悪い冗談ならやめてくれる!?」
キュラソーの記憶が戻っていたことに、灰原の顔つきが一層険しくなったが、想定外の言葉に思わず声を荒げてしまった。
組織が自分を逃がすなどあり得ない。あれだけ手間暇かけてまで、多くの幹部を招集してまでアルマニャック諸共自分を捕らえようとしたのだ。
ましてキュラソーは、あの時アルマニャックと最前線で拳を交えていた。そんな彼女が、記憶を取り戻して尚自分の味方になるなど、灰原には信じられなかった。
だが、キュラソーの口から出てきた名前に、思わず口を噤むことになる。
「
「!!…………でも、どうして私を助けるの?私の存在を見逃すなんて、組織が許す筈が……」
灰原の言葉に、知らず苦笑が漏れる。彼女の懸念は当然だ。自分はコードネーム持ちの幹部。加えて、組織ナンバー2であるラムの右腕だ。
そんな自分が、裏切り者の逃亡を見逃すなど、到底考えられないだろう。
まして、その右腕が、組織を抜けようとしていることなど。
何せメリットが欠片もない。このまま戻るだけで、自分はNOCリストという大きな手土産を持ち帰れるのだ。加えてシェリーの身柄まで押さえたともあれば、その功績は計り知れない。
逆に逃げれば組織に追われる。それも、シェリーなどよりよほど苛烈に。
そこまでして逃げる意味がない。比較的真っ当な思考回路をしている彼女には、きっと逆立ちしたって読めやしないだろう。
別にそれでも構わない。そもそも彼女から信頼を得る必要などない。どうせ二度と会うことはないのだから。
だからこれは、
「私は、どんな色にでもなれるキュラソー。前の自分より、今の自分の方が気分がいい。あの子達と行動を共にしていた、何も知らないお姉さんだった時の自分の方が気分がいい。
そう言って、灰原を片手でぐいと引き上げる。そのまま抱きかかえ、地面にしっかりと着地させた。
軽く一瞥し、怪我がないことを確認すると、キュラソーは先を急かす。既にこの観覧車を中心に、多くの幹部が動いている。逃げるのなら、一刻の猶予もない。
「さぁ行くよ、シェリーちゃん。もたもたしていると手遅れになるわ」
「待って!」
待っている余裕などない。そう切り捨てようとしたキュラソーだが、灰原の次の言葉に一瞬思考が止まる。
「まだ子供達が!ゴンドラに取り残されているの!早く助け出さないと!!」
「なっ…………!!」
先程まで記憶を失っていたキュラソーは、当然ながら今回組織が立てた一連の計画について、何も知らない。
知らないが、自信を持って断言出来ることがある。
この観覧車は、今回の作戦における
アルマニャックが駐車場でやらかした件など、前哨戦に過ぎない。きっとこの観覧車こそが、本当の戦場になるのだと、何の根拠もなくキュラソーはそう確信していた。
一刻を争うこの状況下だが、そんな場所に子供達を置いたままにしておける訳が無い。
助けに行く。迷いなくそう決め、ゴンドラへ向かおうとした、その時だった。
「あん?キュラソー?なんでお前さんこんなところにおんねん。ゴンドラにいるって聞いてたんだけど?」
ぬるり、と影から現れたのは、
その姿に、その空気に、キュラソーは思わず息を呑んだ。体中全ての神経が、眼の前の男に集中する。
全身の毛が逆立つその感覚すら、遥かに遠い。
余りにも濃密な血の香り。全身から漂う
アルマニャックが、やってきた。
というわけで、ほとんどキュラソー単独回。
映画だと、キュラソーが裏切る理由はちゃんと分かるのですが、彼女の感情がどう動いたかの描写はほぼなかったというか明言化されてなかったので、色々と考えて書いてみました。
評価などで、心情表現が丁寧に描写されているなどという褒め言葉を頂いたことがあったので、そんな言葉を賜った以上、此方も書かねば……無作法というもの……と、そんな感じです。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。よろしければ、感想・評価・お気に入り登録の程よろしくお願いいたします。
特に感想と高評価は凄く嬉しいです。本当に励みになります。高評価頂くたびにニッコリなりますし、感想通知来るたびにテンション上がりすぎて動悸がヤバいです。
どうか、よろしくお願い致します。