ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」 作:ていとくン
ババーン!
「そういえば兄貴、最近うちに入った新入りのこと、ご存知ですかい?何でも加入してすぐさまコードネームを貰ったとか……」
深夜、高速道路を走る1台の車。黒のポルシェ356Aを運転しているウォッカが、助手席に座るジンに話しかける。
ジンの愛車であるこの車のハンドルを預かる際、ウォッカは兄貴と慕うジンを退屈させないよう、ちょっとした話を振ることがある。
任務の最中は殺伐とした話題となることも多いが、今は一仕事終えた帰り道。車内の空気も幾分か弛緩したものになっており、ウォッカが振った話題も雑談に近いものだった。
話を振られたジンはあぁ、と応える。
「その話なら俺の耳にも入ってる。コードネームはアルマニャック。外で殺し屋稼業をやってたところをラム直々に勧誘されたらしい」
「ラムが動いたんですかい!?」
「あぁ。ラムが手引きした奴なら鼠ってこともあるまい。多少は使い物になるだろうよ」
ラムは組織のナンバー2。その素性は"あの方"の正体に並ぶトップシークレットとして扱われる。そのラムが、たかが一個人の勧誘程度に動くなど、ないとは言わないが尋常ではない。それだけでも、アルマニャックという人物が並ではないことが伺える。
しかし、ジンという人物もまた並ではない。あらゆる任務を達成する優秀さと、裏切り者を決して見逃さず、決して許さず確実に始末する鋭い嗅覚と苛烈さにより、"あの方"から直々に指令を受けるほどの信頼を得ている男からすれば、新入りという情報を得た際に考慮すべきは"鼠"か否か、即ち裏切り者かどうかということをおいて他になく。
裏を返せば、そこさえ問題ないのであればどうでもいい。元より他者への関心が極めて薄いジンにとって、新入りの情報は食指が動く程のものではなかった。
「……ヘヘッ、新入りの話を聞いてまず気にすることが鼠かどうかとは、流石ですぜ兄貴」
「疑わしきは罰する、当然のことだ。……ん?」
ふと、ジンの携帯が振動する。メールが来たらしい。文面を確認したジンはフッと笑い、携帯をしまいつつウォッカの方を見やる。
「噂をすれば、というやつだ。ラムから指令があった。次の任務、アルマニャックと協力して当たれとのことだ」
「おっ、じゃあ早速ツラを拝めそうですね。で、どんな任務だったんで?」
「殲滅戦だ。組織に歯向かった間抜けを、お供が詰めている拠点ごと攻め滅ぼせとのことだ」
「おぉ!となると、久々に大掛かりな作戦じゃないですか兄貴。兵隊はどれだけ連れて行くんで?」
組織には多くの構成員が存在している。階級を問わず、基本的には1人から数人で任務に当たることが多いが、時折大掛かりな作戦をこなす際、複数の幹部に多数の構成員を指揮させて任務に当たらせることがある。黒ずくめの兵隊が徒党を組んで動く様は圧巻だ。
ただその頻度はとても低い。古参の幹部でも経験者は少ないが、ウォッカは幹部になりたての頃に参加する機会に恵まれたことがある。
その時の光景を思い出し、ニヤリと笑うウォッカの問いかけに、ジンも凶悪な笑みで返す。
「
「えっ!?でも、拠点を落とすんすよね?」
「あぁ。だがラム曰く、『
「そりゃまた……」
戦争において、数はそのまま力となる。1人の精兵が数多の雑兵を圧倒するなどフィクションの中だけの話であり、多数の敵が待ち構える拠点を落とすとなれば、此方も相応の兵隊を揃えるのがセオリーだ。よりにもよってラム程の男がそれを分らぬ筈がない。
つまり、ラムは兵隊を揃えるよりアルマニャック1人を置いておく方が確実だと考えているということに他ならない。
あのラムからそこまでの信を置かれるアルマニャックとは一体何者なのか。流石のジンも興味を抱いたらしい。凶悪な笑みを浮かべつつ、言葉を続ける。
「今回の標的は随分と臆病者なことで有名らしい。常に複数の護衛を連れているが、有事の際には逃げ足の速さを発揮するとのことだ。今回はそれを利用する」
「と、いうと?」
「拠点正面でアルマニャックが派手に暴れまわることで注意と兵力を引き付ける。奴が上手くやれば、危険を感じた臆病者の兎は独りでに巣穴から抜け出すだろう。後は無様に跳ねる愚かな贄の両耳を掴んでやればいい」
「成程。でも奴がしくじったら、どうするんで?」
「だとしても注意の目は正面に向くだろう。その時は俺達が巣穴に乗り込むまでだ。どちらにせよ問題はない。墓穴の場所位は、選ばせてやろうじゃないか」
ジンからすれば、アルマニャックとやらが成功しようがしくじろうがどっちでもいい。囮の役割さえ果たしてくれれば、後は自分一人で十分だからだ。
組織のナンバー2が太鼓判を押す男。興味はある。だがその興味とはアルマニャックの実力を信用してのものではない。
「新入りの実力を測るいい機会だ。コロッセオの花形剣奴か、弾丸に踊り狂う間抜けな道化か……まァどちらにせよ、虫どもをおびき寄せるいい松明になるだろうぜ」
組織の幹部、ジン。彼はどこまでも冷徹で、冷酷な男であった。
「よォ。あんたがアルマニャックでいいんだよな?」
「……そうだが、あんたは?」
「ラムから聞いてるだろ。俺はウォッカで、こちらがジンの兄貴だ」
「名前は聞いてるがな。人に名前を聞くなら自分から名乗りやがれ」
敵拠点である町外れのビル、その側で落ち合った三人。簡単な自己紹介を済ませたものの、何やらアルマニャックは不機嫌そうだ。
不機嫌さを隠しもしないまま、アルマニャックは、ジンの前に立つ。訝しげな表情をするジンに構うことなく言葉を投げる。
「お前が、ジンか?」
「そうだが、何だ?」
瞬間、アルマニャックの右手が
手刀で煙草を切り捨てられた。数秒あってそれを理解したジンの眼差しか剣呑なものとなる。
「……何のつもりだ」
「同じ台詞をそのまま返そう。何のつもりだ?何故、
苛立ちのまま吐き出されるアルマニャックの言葉に、思わずジンの顔が再び訝しげなものに変わる。
「俺が何をしていようが、テメェに文句言われる筋合いなんざ……」
「そういう話をしてんじゃねェ」
ジンの言葉を遮って吐き捨てるアルマニャック。マジで分かってねぇのかよ、と呟きながら頭をガシガシとかいている。
「仕方ねェから教えてやる。……裏社会に生きる人間が、何で
「は?」
「道具に拘るのは分かる。仕事の成否に関わるし、己の命を預けるものだ。そこから辿られるってなら、まァ仕方ないかもしれねェさ」
だが煙草はどうだ?とアルマニャックは問いかける。
「要らねェだろ。裏社会に生きるなら、
ラムの奴、とんだ阿呆を寄越しやがった。尚もぶつぶつと文句を言いつつ、アルマニャックは踵を返す。
「お前が馬鹿やってしくじる分には好きにすりゃいいが、お前が警察だとかに特定されりゃ巡り巡って俺にも迷惑がかかるんだ。だからやめろ。次から煙草なんか吸ってくんなよ」
「テメェ、どの立場で俺に命令なんざしてやがる……!!」
あまりにも自分を下に見た発言に、あまつさえ新入りごときに命令されたという事実に、ジンの眦が吊り上がる。
その声には裏に生きる者をして背筋を凍らせる程の殺気が込められていたが、アルマニャックはどこ吹く風だ。
「じゃあ俺は先にポイントに向かってる。俺が全部片付けるから、テメェ等は裏口さえ塞いどいてくれりゃいい。それくらいなら出来るだろ?」
「おい待ちやがれ……!」
んじゃ。後ろ手を振るアルマニャックの背中に突き刺さる殺気。それを全くもって意にも介さず、彼はその場を去っていった。
「あの野郎……!!」
「あ、兄貴!落ち着いてくだせぇ!兎にも角にも、まずは任務ですぜ!今回は急ぎでやらなきゃならねぇって、さっき兄貴言ってやしたし……」
「……………………チィッ!!……いくぞウォッカ!とっととこの仕事を終わらせてやる、あの生意気な野郎諸共な!」
「へ、へいッ!」
ここまで自分をコケにしてくれた代償は必ず支払わせる、ジンはそう決意した。
その為にも任務を速やかに片付ける。最早彼にとってこの任務は本命の前の些事でしかなくなった。
「確実に任務を遂行しろってなら……
ポルシェに乗り込み、殺意も露わに嗤うジン。その後部座席には、大量の爆薬が載せられていた。
「ひっ、お、お前は……ジン!」
「よう、鼠野郎。せめて遺言位は聞いてやる……そのつもりだったが、事情が変わった」
「ま、待て!誤解だ!私は裏切った訳では……」
「問答をするつもりはねぇ。それに、この後急ぎで片付けなきゃならねぇ本命が出来たんでな。これで、ジ・エンドだ」
パシュッ
サプレッサーを装備した拳銃から放たれた一発の銃弾は、過たずターゲットの眉間に風穴を開けた。
倒れ伏す男を見ることもなく、ジンは電話をかけながらその場を後にする。
「おいウォッカ。首尾はどうだ?」
『ゼェ……ゼェ……へい。兄貴が、指定した箇所全て、爆弾の設置が、完了しやした。いつでもやれますぜ』
「よし、合流したらとっととずらかるぞ。急げ!」
『了解!』
遡ること十数分前、アルマニャックがビルの正面入口に爆薬を積んだダンプカーで突入したのと同時に、ビルの裏口に入ったジンとウォッカはすぐさま二手に分かれた。ジンは逃げ出すであろう標的が通る隠し通路へ向かい、ウォッカは各所に爆弾を仕掛けるべくビル中を駆け回った。
突入の手口もさることながら、アルマニャックは相当派手に暴れているらしい。真反対の此方側まで銃声が響いてくるものの、敵側の構成員の姿は殆ど見られない。せいぜい標的の護衛が数人いた程度だった。いずれもジンの手によって既にこの世を去っている。
おかげで拍子抜けするほど簡単に仕事をこなせた。ジンの中でアルマニャックの評価が多少上がるが、それはそれ。抹殺の決定を覆す程のものではなかった。
そう、抹殺である。ラムからの指令は、正確に言えば標的の暗殺ではなく、「標的を含めた構成員と拠点の撃滅」である。ジンはこれを利用した。拠点を破壊する為という名目でビルを爆破、それに巻き込む形でアルマニャックを始末しようと目論んだのだ。
当然ながらこのことはアルマニャックには伝えていない。最後にぬかって脱出し損ねたが故の事故と伝えればラムも文句は言わないだろう、そう考えていると、ドタドタと足音が聞こえてきた。
「お、お待たせしやした、兄貴」
「来たか。……お前はもう少し体力をつけろ。この程度でへばってんじゃねぇ」
「し、精進しやす……」
「フン、行くぞ。出口はすぐだ」
そうして二人で出口へ向かう。勝手口の取っ手を掴んだその時だった。
ジンの耳に風切り音が届く。殆ど反射で首を傾けると、そのすぐ横を大ぶりのナイフが飛んでいき、ドアに深々と突き刺さった。
「あん?なんだ、お前らだったか。この状況でビルから逃げ出そうとしてたから、敵側の人間だと思ったぜ。悪い悪い」
カツカツと足音を響かせてやってきたのは、両の腕を返り血でしとどに濡らしたアルマニャックだった。
「アルマニャック……!!」
「中々歯ごたえのあるやつが数名混じっててな。そいつらの相手してるうちに木っ端共が散り散りに逃げやがってよ。おかげでビル中駆けずり回る羽目になった。時間くっちまったぜ」
「……まさかとは思うが、敵の構成員を全て始末したとか抜かすんじゃないだろうな……?」
心なしか声の固いジンの詰問にさらりと答えるアルマニャック。
「あぁ、
「あ、ありえねぇ……!ビルに突入してからたったの20分程度しか経ってねぇんだぞ!?」
「じゃあ聞くが、
「ッ!」
驚きのあまり墓穴を掘ってしまったウォッカのおかげで、逆に詰問される側になってしまった二人。
アルマニャックはしばらく半眼で二人を眺めていたが、フ、と笑って視線を外す。
「おおかた、ビルに爆弾仕掛けて俺諸共吹き飛ばそうとした、ってところか。残念だったな、当てが外れて」
「…………さて、何のことだ」
「ハ、まぁいいさ。爆破解体は俺としても都合がいい。監視カメラ対策に一応は変装してるが、全て吹き飛ばしちまえば証拠も残らないしな」
そう言うと、返り血に塗れた服とカツラを脱ぎ、オイルをかけて燃やすアルマニャック。それを見るジンとウォッカ。
自分が消されかけていたことを気にも留めない度胸。単騎で敵をほぼ殲滅しきった実力。そして、自分に繋がる証拠を断ち切る徹底的なまでのスタンスを見て、ジンは遂に殺気を収める。
「……認めよう、アルマニャック。任務に対するお前の姿勢は、本物だと」
「兄貴……」
「そりゃ、お褒め頂き感謝の極み、とでも言っとけばいいか?」
アルマニャックの軽口にも、ジンは鼻で笑うのみに留める。少なくとも、先程の怒りは収めることにしたらしい。ウォッカは安堵のため息を零す。
「直にサツが来るだろう。その前に解体を済ませたい。……ずらかるぞ」
「了解」「了解」
数分後、一棟のビルが爆破解体される。警察が駆けつけ、捜索の末に瓦礫の山から数十名の遺体を見つけたものの、犯人に繋がる証拠は一切発見出来ず、事件は迷宮入りとなった。
(ハァ…………)
あれから早数年。ジンとアルマニャックはしばしば任務を共にすることとなった。
最初の接触時のような、ジンが本気でアルマニャックの始末を目論むような事態には陥っていない。
アルマニャックの戦闘技術に関しては、後日別の任務の最中、二人で目の当たりにした。
ジンも「ラムが肝煎りにする訳だ」と納得し、これだけの札を組織が入手したことに口角を上げていた。
兎にも角にも、二人はアルマニャックを新しい組織の一員として、幹部の一員として名実共に認めることとなった。
しかし、
その都度ジンが殺気を放つところまで、最早お決まりの流れになっている。
(兄貴なりのコミュニケーション、なのか……?いやいや、放っている殺気は毎回本物だ。ありゃ本気で苛ついてる)
前にはアルマニャックが水鉄砲でジンの顔面をびしょ濡れにしたこともあった。あの時は本気で肝が冷えた、とウォッカは知らず胃の辺りを押さえる。
せめて任務中位は煙草を辞めればいいじゃないか、それとなくジンに伝えたものの、「お前はあの野郎の肩を持つのか」との一点張りで取り付く島もない。
ならばアルマニャックの方を諌めようとしたが、こちらも「俺は悪くねェ」の一点張りだ。なまじ実力があることに加えて上からの覚えも良い為、これ以上は踏み込めない。……それに、正直彼の意見の方が理がある。
尤も、そんなこと内心認めはしても、ウォッカ自身の口から言える筈もなく。
少なくとも、ジンはあのやり取りについて自分から折れるつもりはないらしい。兄貴と慕い、敬愛するジンが誰かを相手に妥協する姿勢など確かに想像出来ない。出来ないが……あのやり取りは、胃に悪い。
とはいえウォッカにはどうすることも出来ない。その都度あたふたして胃を痛めるのが関の山だ。
これからまたアルマニャックとの共同任務だ。ウォッカは懐から胃薬を取り出しガリガリと噛み砕く。ここしばらくの間ですっかり習慣となってしまった。
最早ジンを差し置いて一番の相棒とも言える胃薬をしまい、ウォッカは再び腹を押さえる。
(あぁ……今日も胃がいてェ……)
組織随一の強情な男二人の板挟みになるウォッカは、組織随一の苦労人であった。
あの二人の間を取り持つことが出来る、その事を上から高く買われ、密かに給与の査定が上がっていることなど、ウォッカ本人は知る由もなかった。
ビルの爆破解体直前、ポルシェ前にて
ジン「おいちょっと待て、お前その格好で乗るつもりか」
アルマニャック「そうだが?」
ジン「ふざけんじゃねぇ。パン1の野郎を俺の車に入れるつもりはねぇぞ」
アルマニャック「仕方ないだろ、服は燃やしちゃったんだから。文句言うなら屋根にしがみつくぞ」
ジン「テメェ……!」
ウォッカ「お、俺が予備の持ってきてやすんで!おらアルマニャック、とっとと着替えろ!」
アルマニャック「お、サンキュ。助かったぜウォッカ」
ウォッカ「お前これまでどうやって帰ってたんだ……」
アルマニャック「返り血で服を処分しちまった時は、死体から剝いだ服着てたぞ」
ジン「蛮族かテメェは」
うん、ジンむずい……ポエムも難しければ取り扱いも台詞回しも難しすぎる……
アホな子の立ち回りをしがちなジン。ジンが本当に抜け目ない人物なら、そもそも名探偵コナンは始まる前に終了してしまうので、彼のポンコツは脚本上の都合という面が大きいと思います。
一方で私が気になったのは、煙草。原作ではウォッカに「吸い殻を捨てるな」「痕跡を残すな」という話をしているのに対して、『天国のカウントダウン』では普通に吸い殻を路上に捨ててるんですよね。同じ車に乗り続けてるせいで普通に特定されてるし、スナイパーに狙われてるのにしゃがんだだけで物陰に隠れたりしないし。
なのでジンのポンコツムーブメントが脚本上の都合なのか本人由来なのか、結構判断が難しいなと思いました。
じゃあ無能かって言われたら全くもってそんなことはないのが話をややこしくしていて。殺し屋としての技能は文句なしですし、推理力も相当なものなんですよね。こんなキャラどう扱えばいいのか分かんねぇって……難易度高い……
考えに考えて悩み抜いた挙げ句、なんかこうなりました。迷走している自覚はあります……
ひとまず、当ssではウォッカを挟みつつギャグテイストに持っていく形にしようと思います。おぉ可哀想なジン、ひとえに俺の能力が足りねぇせいだが……
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