ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」   作:ていとくン

40 / 60

☆10:【異端】病毒様
☆9:マスターM様、くらき様、戦島 拓也様、紫煙隊様
☆8:ポセ様、カレー大使様

高評価下さった皆様、ありがとうございます!現状8.7中盤をうろうろしておりますね。まずは8.8到達を目指して今後も頑張っていきます。

また、今回は感想を多く頂きました!1話で6件頂いたのは初めてのことで、すごく嬉しいです!ありがとうございました!



11/23 0:30 日間ランキング54位
       二次日間ランキング44位

皆様のご愛顧に感謝です!ランキング入りすると分かりやすくUA伸びるので、やっぱり嬉しいですね〜!



これで純黒の悪夢本編というか、映画でのシーンは終わり。後はエピローグのようなお話を挟んだら本章終わり。閑話へと移行致します。
また、今回は後書きにアンケートを載せておりますので、差し支えなければご協力頂けると嬉しいです。よろしくお願い致します。



月とすっぽん

 

 

 

 

 

 

「あれ、哀ちゃん?どうしたの〜?」

「灰原さん!大変なんですよ!観覧車が止まっちゃって!」

「なんだ、灰原も観覧車に乗りに来たのか?」

 

 

 

停電により停止したゴンドラ。そこへ辿り着いた灰原とキュラソーが、どうにか上の非常用出口を開けて中を覗くと、そこには元気な3人がいた。

後ろに控えていたキュラソーは、思わず安堵のため息をこぼす。それを見てくすりと笑った灰原は、しかしすぐさま真剣な表情に戻る。

 

 

 

「3人とも、怪我はないわね?……結構。いい?説明は後で、とにかく今はここから出るわよ」

「出るって言っても、どうするんですか?僕達じゃそこまで届きませんよ?」

「私がみんなを引き上げるわ」

 

 

 

出口からキュラソーが顔を覗かせた。途端に3人から歓声が上がる。少し照れくさそうな顔でゴンドラ内部に降り立つと、しゃがみ込んで3人の顔を覗き込み、様子を確認する。

 

 

 

「3人とも、大丈夫?怪我はない?」

「歩美達は大丈夫だよ!」

「それよりお姉さんは大丈夫なんですか?病院にいなくて……」

「ありがとう。体はもう大丈夫よ。実は、ちょっぴり退屈だったから抜け出してきちゃったの。内緒ね?」

「なんだ、やるなねーちゃん!」

 

 

 

元太の笑い声につられてキュラソーも微笑みをこぼす。

しかしすぐに真面目な表情になり、歩美を抱え込む。

 

 

 

「うわぁ!どうしたのおねえさん?」

「ここから脱出するわよ。私が1人ずつ抱えるから、安心して」

 

 

 

そう言って、片手で歩美を抱えたまま垂直跳びするキュラソー。もう片手で出口のへりを掴むと、そのまま腕一本でよじ登る。

 

 

 

「うわぁ!おねえさん力持ちだね!」

「ふふっ、歩美ちゃんも頑張ればこれくらい出来るようになるわよ」

「そこまで頑張らなくていいわ」

 

 

 

上で待機していた灰原が思わずツッコミを入れる。そんな彼女に歩美を託すと、キュラソーは再び下に戻り、光彦を抱き抱え、同じように跳び上がる。

元太だけは中々に大変そうだったが、軽く助走をつけて跳ぶことで、無事に3人ともゴンドラから救出することに成功した。

 

 

 

「さて。し……哀ちゃん、3人を頼んでいいかしら」

「いいけれど……貴女はどうするの?

「私は彼の元に行かなければいけないわ。今、組織の目は観覧車頂上付近に集まっている。その目が下に降りる前に、ここを脱して」

「……分かったわ。貴女も、気を付けて」

「ありがとう」

「お姉さん……?どこ行くんですか?」

 

 

 

最初はキュラソーに会えて喜んでいた子供達も、観覧車頂上から聞こえる破砕音と時折周囲に降り注ぐ瓦礫を見て、流石に不安を隠せないでいる。

キュラソーは、そんな3人を強く抱き締めた。

 

 

 

「私はね、会いに行かなくちゃいけない人がいるの。だから、ここでお別れね。哀ちゃんの言うことを聞いて、水族館に避難するのよ」

「じゃあ、俺達もねーちゃんと一緒に行くぜ!」

「駄目よ、ここは危ないわ。皆が安全な場所に行ってくれれば、私も安心出来るの。だから、お願い」

「……分かりました。お姉さんも、その会わなきゃいけない人と一緒にすぐ避難してくださいね!」

「えぇ、ありがとう。……それじゃあ皆、元気でね。縁があれば、また会いましょう」

「分かった。歩美達は先に行って待ってるから!()()()()()()()()()

「!!…………えぇ、またね、みんな」

 

 

 

泣きそうな、切なげな、それでいて嬉しさを隠しきれない顔で答えるキュラソー。

灰原に連れられた3人を、手を振って見送る。彼らの姿が見えなくなった後、余韻を断ち切り顔付きを真剣なものへと変える。

アルマニャックに電話をかけると、すぐに繋がった。

 

 

 

「キュラソーよ。今いいかしら」

『おう。あの子達はどうした?』

「ゴンドラから救出させて、水族館の方に向かわせたわ」

『……まァ、お前が付き添いやればベルモット辺りに見つかる可能性もあるしな。仕方ねェか、了解。観覧車の下層部で待機しろ。赤井を仕留めたら俺が一騒ぎ起こすから、そのどさくさで逃げな』

「分かったわ、ありがとう」

『"貸し"の件、忘れるなよ』

「勿論」

『ならいい。何かあったらまた連絡しろ』

 

 

 

通話を切り、観覧車へと向かう。道中の店から変装用に服を拝借することも忘れない。

 

そうして観覧車の真下へと、到達した時だった。

上空から大きな爆発音。思わず見上げれば、爆炎によって僅かに照らされた組織のオスプレイ。

何事かと目を見張った直後。

 

 

 

観覧車から伸びる一筋の光。そこから、虹色の花火が大量に炸裂し、夜空を、そこに潜んでいたオスプレイを鮮明に映し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し遡り。

 

機関銃の掃射に追われて観覧車の中腹へと避難してきた赤井。そこで、降谷とコナンに合流する。

分厚い壁に隠れてひとまずやり過ごしているが、この壁もいつまで保つか分からない。3人の顔には焦りが浮かぶ。

 

 

 

「おいFBI、あのヘリをどうにか出来ないのか?」

「先程逃げてくる際に、スコープを破壊されてな。サイトのみで狙いを定めるには光量が足りない」

「光さえあれば、どうにか出来るの?」

「ローター部分に結合部を発見した。そこを狙い撃ち出来れば、闇夜に浮かぶ鉄の烏といえど撃ち落とせるだろう」

「光なら、僕がどうにか出来るけど……でも、ヘリの大まかな場所が分からないと難しいよ」

「どうにか出来るのか……君は本当に恐ろしい子供だね。分かった、大まかな場所さえ分かればいいんだね?なら、コイツが使えるだろう」

 

 

 

そう言って降谷が見せたのは、大量のC4。車軸に張り付いていたものを回収しておいたのだ。

 

 

 

「驚いたな。解体だけではなくそこまで済ませていたのか」

「全部じゃない、半数程度だがな。ただ飯喰らいのFBIとは違って、僕は仕事が出来る人間なんでね」

「君は本当に俺に対して厳しいな」

「……なんか、2人とも仲良さそうだね」

「どこが!」「どこがだ?」

「ほら、そういうところ」

「「ぐぬぬ……」」

 

 

 

コナンの指摘に揃って反応し、墓穴を掘る2人。その様子に思わず苦笑を浮かべるも、すぐさま顔を引き締める。

 

 

 

「それじゃ安室さん、よろしくね」

「任せてくれ。赤井、くれぐれもしくじるなよ」

「勿論だとも。俺は仕事が出来るFBIなんでな」

「ほざけ」

 

 

 

軽口を叩きつつ、降谷は助走をつけてC4の塊を上空へ放り投げる。

機関銃に撃ち抜かれたそれは大爆発を起こし、爆炎がヘリを照らす。

 

 

 

 

 

 

「コナン君、今だ!!」

「いっけぇぇぇぇぇぇええ!!」

 

 

 

 

 

ベルトから射出されたサッカーボールを、思い切り蹴り飛ばす。キック力増強シューズの出力は最大。

空を切り裂き飛んでいく一筋の光は、ヘリを飛び越えた上空で炸裂した。

 

 

 

 

 

 

七色の花火が、夜空を明るく染め上げる。

闇に潜んでいた鉄の烏が、鮮明に浮かび上がった。

 

 

 

 

 

 

「赤井!」

「………………堕ちろ!」

 

 

 

一射。放たれた弾丸はローターの結合部を正確に射抜く。

小さな破砕音。すぐに黒煙を吹き上げ、ヘリが露骨に制御を失い高度を落としていく。

 

 

 

「やった!」

「まだだ!隠れろコナン君!」

 

 

 

煙を上げ、徐々に墜落しながら、それでも掃射を止めないヘリ。機関銃の狙いが一点に定まる。その場所は。

 

 

 

「車軸が狙われているな」

「まずい、まずいよ赤井さん!あそこにはまだC4が!」

「クソっ……赤井!コナン君を連れてとっとと撤退だ!もうこの場で僕達が出来ることはない!」

「分かっている!君も行くぞ!」

「僕に指図をするな!」

「言ってる場合か!」

 

 

 

遂に掠ったか、C4が爆発した。1つ爆発してしまえば、後は連鎖的に残りも爆発していく。

地面全体を揺らす地響き。各地で崩落が相次ぎ、足場すら崩壊していく。

 

 

 

「うわぁぁぁぁ!!」

「コナン君!!ぐっ……!」

「まずいな……!」

 

 

 

観覧車が、遂に崩壊を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なんだありゃ、花火……?)

 

夜空を照らす花火。それがヘリを炙り出したのを、アルマニャックは観覧車へと向かう最中の道中で見ていた。

 

すぐに懐から単眼鏡を取り出し、観覧車へと向ける。

探す。探す。探す。探す。探す。―――いた。

ヘリに向けて、銃を構える一人の男。赤井秀一。

怨敵を視界に収めたと同時、ヘリが姿勢の制御を崩し始めた。片側のプロペラから煙を吐き出している。

 

(やってくれるじゃねェかよ、赤井……!)

 

殺意が湧き上がる。だがそれを必死に抑えて、アルマニャックは別の場所を探す。

 

(あの光量、信号弾とかそういうレベルの代物じゃねェ!赤井とは別の誰かが、奴の狙撃のアシストをしやがった!せめてそいつのツラだけでも拝まないことにはな……!)

 

赤井の周囲を虱潰しに見ていく。どんな些細な違和感も逃さない。

そうしていると、視界の端に何かが映った。小さな、子供のような人影が。

すかさず焦点を合わせると、そこにいたのは。

 

(()()……?なんであんなところに?)

 

()()()()()()6()()()()()()()が、物陰に隠れてヘリの様子を伺っていた。赤井と何やら会話をしているようにも見える。

あの場所にいる、それだけでも普通の子供ではないが、加えてFBI捜査官と言葉を交わしているともなれば、いよいよ怪しい。

眉根を寄せて眺めているうちに、アルマニャックの脳裏をよぎるものがあった。

 

(ん?あのガキ、()()()()()()()()()……)

 

記憶を掘り起こそうとした、その時だった。

徐々に高度を落としながら、それでも掃射を止めないヘリ。アルマニャックはそれを呆れながら見ていたが、観覧車内部で爆発が起こるに至って目の色を変える。爆音は連鎖的に響き渡り、そして遂に観覧車が明確な異変を見せた。

 

 

 

東都水族館の象徴たる、二輪式巨大観覧車。そのうち片側が外れ、地面へと着地した。

その衝撃で、ゆっくりと転がり始めているのを見て、流石のアルマニャックも顔に焦りを浮かべる。

 

 

 

「あ~あ~やばいやばいやばいやばい!なんてことしてくれやがるあのクソヤニカス野郎!!」

 

 

 

観覧車下層部に、キュラソーを待機させていた。彼女の命が危ない。

全力で駆け出す。装備のいくらかを駐車場での戦闘に費やしたものの、()()()()を抱えていることで総重量は出発時よりむしろ増加している。にも関わらず走る速度には一切の減衰が見られない。

 

遊園地の敷地内を駆け抜けながらも、観覧車が転がっていく方向を注視する。予測される観覧車の進路、その先に水族館があるのを見て、顔面を蒼白にする。

 

水族館には、志保達が避難していると、キュラソーが言っていなかったか?

 

 

 

「やっ……ばい。やばいやばいやばい!止めなければ!!」

 

 

 

既に全速力で走っていたが、更に速度を上げる。肺が悲鳴を上げ始めるが、知ったことではない。

走りながらも懐から端末を取り出し、キュラソーにコールをかけた。

 

 

 

「キュラソー!今どこだ!?」

『観覧車の側よ!動いてない方のね!』

「生きてるな!怪我はないな!状況を認識しているな!?」

『全てイエスよ!アレを止めなければ……あの子達が!』

「俺は頭が良くねェ!だからお前が作戦を考えろ!俺は今手榴弾3つとロケットランチャー2発を保有している!」

『火力は……まだ足りないわね。何かで補わなくちゃ……』

 

 

 

思考に沈むキュラソー。アルマニャックの目は両方の観覧車を絶えず行き来している。

ふと、電話先で小さな声が聞こえた。

 

 

 

『アレは……でも……』

「あん!?どうした!?」

『いえ、他に方法はない。私がやるべきね』

「何!?」

『……アルマニャック、作戦を思いついたわ。勝ちの目は、100とは言えないけれどそれなりよ』

「言え!」

 

 

 

そうしてキュラソーは作戦を語り出す。内容を聞くにつれ、アルマニャックの眉間に皺が何本も刻まれていく。

 

 

 

『以上よ。何か質問は』

「お前……死ぬ気か?」

『その問答に価値はある?この話をしている合間にも、観覧車は迫っているわ。時間がないの』

「だけどよ…………ん?いや待て。それをやるなら……」

 

 

 

何かを思いついたアルマニャック。既に彼は転がっている方の観覧車へと到達していた。

 

 

 

「それなら一石二鳥だ!おいキュラソー!お前、運転する前に()()()()()()!」

『……はっ?』

「時間がねェ!()()()()()()()()()()()!いいな!()()()()()()()!?」

『ちょっとそれどういう……』

 

 

 

キュラソーが何かを言っていたようだが、構わず通話を切る。

アルマニャックにとって、キュラソーの生存は必須でこそないものの、極めて重要なファクターだった。可能な限り、それを諦めたくない程度には、彼はキュラソーの命を重要視していた。

 

全ては、大事な人を守る為に。

 

 

 

「さて、俺も準備をしなきゃな……」

 

 

 

観覧車の追跡を止め、手近な茂みに入ると、背負っていた巨大なボストンバッグを開く。

 

 

 

「こういうのは流儀じゃないんだが、背に腹は代えられん。……悪いな、お前をとことん利用させてもらう」

 

 

 

そう言うと、彼はてきぱきと作業を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルマニャックからの通話が切れた後、キュラソーは全速力で目的の場所へと走っていった。

 

彼との通話中、あるものを見つけたことで観覧車を止める計画を思いついたのだ。

彼女が見つけた"あるもの"とは、工事現場用のクレーン。

それに加えて、アルマニャックが持っている火力。

それらを全て合わせれば、恐らく観覧車を止めることが出来るだろうと、彼女は判断した。

 

作戦は単純だ。まず自分がアルマニャックから残りの爆弾全てをもらい受けた後、クレーンを運転して観覧車の横腹に突撃する。

そのタイミングで、アルマニャックがロケットランチャーを放ち、クレーンを爆発させるのだ。

手榴弾とロケットランチャーの爆発、そこにクレーンという爆薬まで加われば、あのサイズの観覧車といえど横倒しに出来るだろうと、キュラソーは踏んだ。

 

無論、キュラソーとて命は惜しい。出来れば死にたくはない。

だが、キュラソーに取って一番惜しいのは。何に代えても失いたくないものは。

 

(あの子達の平和。あの子達の未来)

 

それを守る為に必要ならば、自分の命を捧げることに否はない。

 

 

 

クレーンに到着したキュラソーは、すぐさまエンジンを入れる。鍵が刺さりっぱなしだったのは彼女にとって幸いだった。

そのまま出発しようとして、しかしアルマニャックの言葉を思い出す。

 

 

 

「服なんて脱いで、どうするつもりなのかしら……」

 

 

 

まるで意味の分からない指示。彼がこの局面で無意味な悪ふざけをする筈がないという信頼を差し引いても、意図が読めない。

こうして考えている時間が勿体ない。そそくさと脱ぎ始めた。どうせ一度合流するのだ。その時に聞けば良い。

 

 

 

「……なんか、落ち着かないわね」

 

 

 

下着姿でクレーンを駆るという絵面に、思わず渋面になるも、ぴしゃりと頬を叩いて気を引き締める。

そのまま全速力で走り抜け、観覧車に突撃しようとした時だった。

 

バン!という音。思わず外を見ると、大きな荷物を抱えたアルマニャックがドアに張り付いていた。

 

 

 

「そのまま突っ込め!」

「ッ、了解!」

 

 

 

ドアを開けて彼が車内に入り込むと同時、クレーンが観覧車へと衝突する。そのままアクセルを踏み込み続ける。

 

 

 

「アルマニャック!早く手榴弾を……」

「んなもん後で良い!運転は俺がやるからお前は()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 

そう言って彼が背負っていたボストンバッグの中身を出すと、キュラソーから運転席とハンドルを奪い取る。

それは、下着姿になった一人の女性の死体だった。

 

 

 

「これは……」

「俺が殺した公安の人間だ!それにお前の服を着せるんだ!爆発で吹き飛ぶのはお前じゃなくこの死体!服の切れ端さえ出てくれば、公安はこいつをお前と判断するだろうよ!

「……まさか、私を確実に逃がす為に?」

「どうせ吹き飛ばすなら有効活用しようってだけだ!いいから急げ!」

「え、えぇ!」

 

 

 

狭い車内だが、急いで作業を終わらせる。とりあえずの偽装を確認したアルマニャックは、続けざまにキュラソーへと指示を下す。

 

 

 

「手榴弾はそのバッグだ!お前はランチャー持ってとっとと出ろ!それを撃つのはお前の役割だ!」

「待って。まさか貴方が死ぬつもり!?」

「馬鹿野郎!俺ならクレーンが爆発する寸前に飛び降りる位訳ねェっつうの!最強の殺し屋舐めるな!いいからはよ出てけ!」

 

 

 

そう言うと、アルマニャックは半ば蹴り出すようにキュラソーをクレーンから脱出させた。

地面を転がったキュラソーは、すぐさま体勢を整えると近場の物陰に隠れ、2丁のロケットランチャーを構える。

 

 

 

「お願いだから、私に貴方を殺させないでよね……」

 

 

 

アルマニャックにとっても、キュラソーにとっても、一番大事なものはあの子達の命。自分の命も他者の命も、全ては二の次に過ぎない。必要とあらば、キュラソーは迷いなく撃つだろう。

それでも、なるべく彼ごと撃ちたくはないのだ。無事に脱出出来るよう、そのタイミングを見逃さないよう、彼女はクレーンをにらみ続けた。

 

そしてアルマニャックは、運転席に死体を座らせ自身はドアにへばりつくようにしてアクセルを踏んでいた。程なくして、クレーンが軋みを上げ始めた。観覧車がそちら側に倒れてきたのだ。

 

 

 

ミシミシミシミシ!

 

 

 

「あぁ潰れる!潰れる!」

 

 

 

火力には決して余裕がある訳ではない。1ミリでも長く観覧車を押し込み、ギリギリのタイミングで全てを爆発させる必要があった。

だがいよいよ運転席がひしゃげ始めた。ドアを無理やり蹴り開け、転がるように脱出する。

 

 

 

「今だ!てェッ!」

「えぇ!」

 

 

 

2発のロケットランチャーがクレーンへと向かって発射される。

脱出したアルマニャックは地面を転がりつつ、その勢いで飛び退きクレーンとの距離を稼ぐ。

 

そして。

 

 

 

 

 

 

ドガアアアアアアアン!!!!

 

 

 

 

 

 

「グエッ!」

「きゃあっ!」

 

 

 

大爆発。周囲一帯を薙ぎ払う爆風がアルマニャックを吹き飛ばし、キュラソーも思わず姿勢を低くして爆風に耐える。

爆発によって揺らいだ観覧車は僅かに傾くと、その姿勢のまま停止した。

水族館のスタジアムに少しだけめり込んだ状態の、正に間一髪の出来事だった。

 

爆風が収まると、キュラソーは周囲を見回し、近くの木に頭から突っ込んでいるアルマニャックを発見した。

駆け寄ると、彼はちょうど体を引っこ抜き、そして地面へと落下した。

 

 

 

「大丈夫!?」

「ゲホゲホッ……あぁクソ、ひでェ目にあった。……とりあえず、帰ったらジンの阿呆をボコボコにしようと思うのですが構いませんね!?」

「い、いいんじゃないかしら……」

 

 

 

どことなく締まらない空気ではあったが、アルマニャックは特に大きな怪我を負っている様子はなく、キュラソーは胸を撫で下ろす。

そして思い出したかのように、道中拝借してきた服をとりあえず着ていく。

軽く身だしなみを整えると、アルマニャックがこちらを見ていた。

 

 

 

「さて、これで任務は終いだな。公安の残りと赤井を始末出来てねェが、これだけ派手にやらかせば自衛隊すら出てきかねない。残念だが撤退だ」

「でしょうね。今回は流石に派手過ぎたんじゃないかしら」

「あの銀髪ヤニカスが悪い。観覧車まで吹き飛ばしやがって……」

 

 

 

ぶつぶつと悪態をついていたアルマニャックだが、すぐに頭を振って意識を切り替える。

 

 

 

「では改めて。お前の死は偽装した。ラムにもひとまずキュラソーは死んだと報告しておく。だが先に言った通り、組織がお前の生存を嗅ぎつけ、俺に抹殺命令を下した場合、俺はそれを断らない。…………いいか、絶対に見つかるなよ?」

「分かっているわ。シェリーちゃんへの貸しの件も、忘れるつもりはないわよ」

 

 

 

その言葉に頷くと、アルマニャックは懐から紙とペンを取り出し、何かをサラサラと書いていく。ものの数秒で書き終わったそれをキュラソーに渡す。

見てみると、そこには住所が記載されていた。

 

 

 

「これは……?」

「俺が持ってるセーフティハウスの1つだ。これはラムにも教えてない、俺しか知らないやつだから足がつく心配はねェ。しばらく使っていいし、必要なものがあれば持っていってくれて構わない」

「……何から何まで、ありがとう」

「代わりといっちゃ何だが、1つ仕事を頼まれてもらう。なに、大したことじゃない」

「何かしら?」

「3日後位に、封筒を届ける。それを志保の元に届けてほしいんだ。俺は居所を知らないし、俺が近づくのは危険だからな」

「了解、請け負ったわ」

 

 

 

助かる。そう言うと、アルマニャックは立ち上がって姿勢を正す。キュラソーもつられて同様の姿勢を取った。

 

 

 

「それでは。……おさらばだキュラソー!いずれ地獄でまた会おう。それまでのお前の旅路が、実り多いものであることを祈っている

「……えぇ、ありがとう。そしてさようなら、アルマニャック。貴方から受けた恩は一生のもの。何かあったら呼んでちょうだい。駆けつけるわ」

「そしたらお前の生存がバレるだろうがよ」

「変装は貴方やベルモットの専売特許じゃないのよ」

「そうかい」

 

 

 

どちらともなく、くすくすと笑いがこぼれ落ちる。

その時、キュラソーの背後から太陽の光が降り注いだ。いつの間にか日が上っていたようだ。アルマニャック思わず眩しさに目を細める。

それを合図に、2人は頷き、握手を交わした。

 

 

 

「じゃあ、元気でな」

「貴方も、元気でね」

 

 

 

手を解き、キュラソーはアルマニャックに背を向けて歩き出した。

日の出の光に目を庇いつつ、街の方角へと進んでいった。

 

それを見届けたアルマニャックは、同じく踵を返すと薄暗い茂みの方へと歩いていく。

直に警察が大挙して押し寄せる筈だ。堂々と表を歩く訳には行かない。

 

 

 

「流石に、今日はちと疲れたな……」

 

 

 

大きく伸びをしつつ、暗がりを伝って歩いていく。

アルマニャックがこれから考えるべきことは多いが、今彼の脳内を占めていたのはキュラソーのことだった。

 

裏社会に身を浸した者が表で生きていくというのは、並大抵のことではない。

きっとこの先、彼女をいくつもの苦難が襲うのだろう。組織での仕事で立ちふさがってきた数々の難題に、勝るとも劣らないようなことが。

それを分かった上で、彼女は光の道を歩むことを選んだ。アルマニャックが、ついぞ選べなかった道を。

 

今の生活に不満はない。数こそ少ないが友人が出来た。信頼に足る部下も、尊敬に値する上司にも会えた。

アルマニャックは組織を愛している。自分に、日常をくれた居場所として。

それでも、僅かではあるものの、彼はキュラソーへの憧憬を抱いていた。苦難の道を、迷いなく選んだ彼女に対して。

 

ふと振り返り、キュラソーが進んでいった方角に視線を向ける。

木々に遮られているものの、朝の日差しが降り注いでいる。その光に、知らずアルマニャックは目を庇った。

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、俺には眩しいや」

 

 

 

苦笑いを浮かべると、彼は再び振り返ると、茂みの中へと姿を消していった。

 

 

 





という訳で、キュラソー生存√となりました。今後彼女は出てくるのでしょうか?予定は未定です。



結構はしょって書いたつもりだったのですが、なんと10話も書いてしまった……随分かかってしまいましたね。
あと1話、エピローグ書いて〆とします。あと少しだけ、お付き合い頂けたらと思います。



さて、アンケートです。正に、上でお話した内容に重なるものですね。
今回、なるべく1話の文字数があまり長くなりすぎないように切ってお話を作っていました。
しかしその影響で話数が増え、トータルの文字数もむしろこれまでの章より増えております。
そして、それが原因かどうか分かりませんが、純黒の悪夢編に入ってからUAの下落っぷりが割と馬鹿にならない領域になっていまして。

皆様にお聞きしたいのは、今後の構成についてです。

①1話辺りの文字数は長くなってもいいから、話ごとの展開を早めて話数も短くする。
②今回のやり方を継続して1話辺りの文字数を控えめ(当社比)にする。その分話数とトータル文字数は増えても構わない。

皆様的にはどちらが近いでしょうか?ご意見頂けたらと思います。よろしくお願い致します。



最後までお読み頂き、ありがとうございました。よろしければ、感想・評価・お気に入り登録の程よろしくお願いいたします。
特に感想と高評価は凄く嬉しいです。本当に励みになります。高評価頂くたびにニッコリなりますし、感想通知来るたびにテンション上がりすぎて動悸がヤバいです。
どうか、よろしくお願い致します。

今後の構成について

  • 話数少なめ字数マシマシ展開早め
  • 1話毎の字数少なめ話数マシ
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