ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」   作:ていとくン

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すみません微妙に投稿時間遅れちゃった……



☆10:もさ様、みゃー(´八`)様
☆9:葵川蝉様、エシメド様

高評価を下さった皆様、ありがとうございます!
あの、やばいです。名探偵コナン原作のssで【平均評価(高い順)】にソートかけた際、拙作が1ページ目に載るようになりました……!!やばいめちゃくちゃに嬉しい……!!
皆様、本当にありがとうございます!!



12/24 0:30 日間ランキング30位
       二次日間ランキング23位
12/25 17:30 日間ランキング58位
       二次日間ランキング51位

皆様のご愛顧に感謝です!久々にランキング入り、それもかなりの高順位!嬉しいですね!!
イブとクリスマスを通して丸2日ランクインしてました……!誇らしくない?誇らしいです。ヤッタネ!



さて、今回から"黒ずくめの謀略"編です。話数そのものは今までで一番短いと思います。
当初はカットする予定だったのですが、最終章に向けてどうしてもここで書かないといけないものが出てきてしまった為、じゃあ通して書こうか!という感じです。



Passion ─黒ずくめの謀略─
山雨来たらんと欲して風楼に満つ


 

 

 

 

 

 

男が歩いている。

 

高層ビルが立ち並ぶビジネス街。その大通りを、グレーのスーツを来た男が歩いている。黒いカバンを手に持つ彼はサラリーマンだろうか。

彼はしばらく歩くと、交差点の角にあるカフェテリアに入っていった。中で注文を終えた彼は外の席に出てくるとパソコンを開き、コーヒーを片手に何やら作業を始めた。

外の席なだけあって彼の周囲にはざわめきが満ちており、多くの人が通りを行き交っている。

 

 

 

 

 

 

その男を、遥か遠く700ヤードから観察する、一人の女性。H&K PSG-1のスコープ越しの景色を、ただ無感動に見つめる。

 

彼女は呼吸を深く、長くしていく。その方が精神が安定し、照準のブレも少なくなることを経験則として知っているから。

彼女は心を空にしていく。イメージは雪原だ。余計な感情を、無意味な雑念を、白く白く塗りつぶしていく。

標的への執念すら()()に過ぎない。一切の例外なく平らにしていく。それこそが狙撃手としての戦いなのだと、理解したから。

 

(右に1クリック修正。…………よし)

 

ミリ単位の細かな調整を繰り返し、照準を合わせる。

後はただ待つだけだ。だがこれこそがスナイパーにとって最も苛酷な任務であると言っていいかもしれない。

ついこの前までの彼女は、落ち着きがないと言える位には待つことが苦手だった。

"待ち"は今でも苦手であることには変わりないが、しかしここ最近は忍耐力がみるみると上昇している。ここに来て彼女を大きく変える()()があったらしい。

 

彼女は待ち続ける。心を空にして。引き金を引くべき刹那を。

 

そして。

 

 

 

 

 

 

タァンッ!

 

 

 

放たれた銃弾はまるで人の波を縫うかのようにその隙間を飛んでいき、グレースーツの男の脳天に着弾し、華を咲かせた。

どうと男が倒れ伏し、周囲が一気にざわついたところで、画面が消えた。

それを確認したのち、彼女は、キャンティはようやく一息つく。

 

 

 

「ふぅ。………………よし!700ヤードの難易度最高、これで10連発クリアだよ!!」

 

 

 

大きくガッツポーズをするキャンティ。彼女が今の今まで行っていたのは実際の狙撃ではない。

組織が開発した超高性能のシミュレータ。それによる狙撃演習だった。

ここ最近、彼女は暇を見つけてはシミュレータに潜り込み、狙撃の練習を積み重ねていた。誰よりも熱心に、誰よりも執着して。

訓練生時代の時でさえ、ここまで真面目ではなかったと自嘲しつつ、それでもひたむきに地道な練習を積み重ねていった。

その甲斐あってか、600ヤードが限界点だった彼女は、遂に700ヤードをほぼ確実に狙い撃つに至るまで成長を遂げた。

一つの大きな目標を達成したことへの喜びを全身で味わっていると、隣のブースから男が出てきた。彼女の同僚にして頼れる相棒、コルンだ。

無表情であることが圧倒的に多い彼は、しかし微かではあるものの、滅多に見られない笑みを浮かべていた。

 

 

 

「700ヤード、最高難度……10連続クリア。……これで700ヤード、制覇」

「やるじゃないかコルン!アタイも同じ条件でさっきクリアしたよ!」

「勝負、つかなかった」

「残念だけど、お互い奢りはナシだね」

 

 

 

さして残念でもなさそうにけらけらと笑うキャンティと、どこか満足気に頷くコルン。

お互いがお互いの実力を知っており、その腕前を信頼している。お互い本気で競えば、勝負は永遠につかないだろうと思える程度には。

 

ふと、両者の懐が震える。お互い携帯を取り出し、届いたメールに目を通す。

 

 

 

「へぇ……♪」

「指令、キャンティも?」

「あぁ。多分コルンと同じやつだよ」

「今、日本にいる幹部……全員参加」

「となれば間違いなくアルもいるね……いいねいいねぇ!血の雨が降るよ!ヨハネも真っ青の地獄がお出ましさね!!」

「FBIも、気の毒。今度こそ……御仕舞」

「組織に楯突くからさ。まぁ、馬鹿が湧いて出るおかげでアタイらも狩りを楽しめるんだけどね!」

「急ごう。アル……1人で全部、食べちゃう」

「そいつはまずいね!急いで準備するよコルン!」

 

 

 

いそいそとその場を後にするコルンとキャンティ。向かうは武器庫。そこで急ぎ準備を整えるのだ。

 

忌々しい猟犬(FBI)を、今度こそ殺し尽くす為に。

黙示録の日(アポカリプス)に、乗り遅れない為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、分かった」

 

 

 

電話を切り、一息つくジン。愛飲するゴロワーズの紫煙を楽しんでいると、傍らでハンドルを握っていたウォッカが話しかけてきた。

 

 

 

「兄貴、任務で?」

「あぁ、いつも通りのゴミ掃除だ。何度駆除しても湧いてくる、FBIというゴミの……な」

「ヘヘッ、連中も学びませんねぇ。俺達に敵う訳ねぇってのに」

「正義の味方は撤退という選択肢を選べねぇのさ。愚民の支持ありきの組織故に、な」

「哀れなもんでさぁ。FBIを殺してるのは馬鹿な民衆って訳っすね」

「違いない」

 

 

 

冷笑を浮かべるジンに、同じくFBIを嘲笑するウォッカ。

ウォッカが運転するジンの愛車、ポルシェ356の車内には冷え切った空気が満ちていた。

しばし冷笑が響いていた車内だが、ウォッカがふと疑問を持ちかける。

 

 

 

「でも、いくら兄貴といえど、今日本にいるFBI全部を駆除するとなりゃ相当な手間ですぜ。他に参加する幹部はいないんですか?」

()()()()()()()()()()()()()()。今日本にいる幹部全員参加とのことだからな」

()()、ですか……」

「?どうしたウォッカ、何か気になることでもあるのか」

「いえいえまさか!その日が楽しみでさぁ!」

 

 

 

途端に声が曇ったウォッカを案じるジン。彼が誰かを案じることなど、滅多にあることではない。

彼の気遣いに感謝しつつ、ウォッカの内心を占める心配事はただ一つ。

 

(今、アルマニャックって日本にいた、よな……?つまりアイツも来るってことだろ……)

 

急に険しい顔をして腹を押さえ始めたウォッカを見て、ジンが眉根を寄せる。

 

 

 

「おいどうしたウォッカ。お前の様子は尋常じゃねぇぞ」

「い、いえ!大したことじゃありやせん!ちと、腹が痛かっただけで……」

「………………」

 

 

 

しばし無言で睨むジンに、身を竦めるウォッカ。ややあってジンは視線を外したものの、車内には気まずい空気が流れる。

ジンはハイペースで煙草を消費していく。車内に漂うゴロワーズの香りがいつもよりだいぶ強くなったあたりで、ウォッカが沈黙に耐えきれず口を開く。

 

 

 

「あ、兄貴……今日はえらく、煙草のペースが早いっすね」

「……………………」

「いえ、別に何の問題もねぇんですが……」

「……………………」

「す、すみません……」

「……………………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。今のうちに吸い溜めしてるだけだ」

 

 

 

ジンの口から出た、煙草を控えるという宣言。未だかつてない事態に、サングラスの中でウォッカの目が大きく見開かれる。

 

ジンとて馬鹿ではない。ウォッカが前に胃痛で倒れたことも、その原因もしっかりと覚えている。自身とアルマニャックの板挟みに苦しんだ故のことであるということも。

今、腹を押さえていたのは、再び自分達が火花を散らせる未来を想起してのことだろうとも。

そして、キャンティに言われた言葉も覚えている。

それら全てを考慮した結果が、今の行動だ。

つまり、これはジンなりのウォッカに対する気遣いであり、"ジンなりの"相当な譲歩だった。

 

そして、彼と長い付き合いであるウォッカは、それを正確に理解した。彼の目に、薄っすらと涙が滲む。

 

 

 

「あ、兄貴……!!」

「…………運転手がよそ見してんじゃねぇ。黙って運転してろ」

「……!はい!任せてくだせぇ兄貴!」

「…………いちいちうるせぇ野郎だ」

 

 

 

フイとそっぽを向くジンに涙声で答えるウォッカ。

敬愛する兄貴分からの"自分への気遣い"などという特上の褒美に、もはや胃痛など消え失せた彼は、上機嫌でハンドルを握る。

 

2人を乗せた黒いポルシェが、夜の高速道路に軌跡を残していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警察庁、公安部。

 

日本の警察、その裏側の中枢だ。今そこで、恐らく後にも先にも見られないであろう光景が広がっていた。

数十名の外国人が整列している。その先頭に立つ初老の男性が、壮年の男性と握手を交わしていた。

 

 

 

「改めまして、FBI捜査官のジェイムズ・ブラックです。此度は日本警察公安部の協力に感謝します」

「警視庁捜査一課管理官の、黒田兵衛です。此方こそ、貴方達の助力を得られるのは非常に有り難い」

「まさか、他国の警察と肩を並べて戦う日が来るとは……思いもしませんでしたな」

「同感です。理由が理由故に、素直に喜べないのが残念ですが」

「違いありませんな」

 

 

 

お互い、苦い笑みをこぼす。

 

"組織"による一連の犯罪行為とその被害を受け、日本の公安部と米国のFBI本部が遂にその重い腰を上げた。

従来までの秘密裏な提携ではなく、対"組織"を掲げて公的に同盟関係となった。

"組織"の存在そのものを公には出来ない為、世間に公開こそ出来ないものの、公安部とFBIの両組織内部では周知の事実として扱われる。人員の派遣や現場での協働がより容易になったのだ。

 

それ故の、この風景である。

手始めにFBI本部から派遣された捜査官、50名。

只の捜査官ではない。その大半が軍属経験者で構成されており、そして彼らを含めた全員が遺書をしたため、認識票(ドッグタグ)をつけている。

"死んでも終わらせない"、その覚悟をまざまざと見せつけている彼らの姿に、向かい合う公安部の捜査官も息を呑み、自然と背筋が伸びる。

 

 

 

「ゼロは現在立て直しの最中。しばらくは貴方達の力を多く借りることになるでしょう。どうか、よろしくお願いします」

「お気になさらず。情報面で、我々は貴方達から十分に助力を得ています。皆の士気も高いですぞ。今度こそ、彼らを覆うヴェールを剥がしてみせると。……"ジャバウォック"との戦いも、覚悟の上です」

「…………かたじけない」

 

 

 

深く頭を下げる黒田と、それを宥めるジェイムズ。

その姿を見て、捜査官達は一層意気軒昂となる。悪をのさばらせはしない、その為に今一度覚悟を定める。

 

敵は強大だ。各国の諜報機関が長らく影を踏めずにいる詳細不明の秘密結社。そんな連中が、近年特大の戦力まで手に入れてしまった。

"ジャバウォック"、例の"組織"においては"アルマニャック"と名乗る男一人によって、公安部とFBIだけで既に数十名の犠牲を出している。紛うことなき特級の危険人物だ。

だが彼らもただ屍を積み重ね続けた訳では無い。両組織が情報を共有し、対"ジャバウォック"の作戦を今も必死で練り上げている。

 

今回日本にやってきた彼らの目的は、情報収集と()()()()だ。

"ジャバウォック"の詳細を、彼に繋がる情報を少しでも集める。あわよくば、他の幹部達も。

そして、本部が作戦を練り上げるまでの時間に"組織"の目を釘付けにさせ、自由にさせないことだ。

多くの犠牲を想定した上で、志願制により招集され、派遣された人物達。

 

彼らの目には、強い光が宿っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アルマニャック、今いいですか?』

「おん?どうしたラムの姐さん」

『FBIが日本に入国しました。その数、およそ一個小隊』

「ほう!そりゃまた随分と大所帯だな。戦争でもする気か?」

『目的はさておき、どう考えても秘密裏の動きではありません。キュラソーがもたらした"公安とFBIが手を組んだ"という情報に、いよいよ信憑性が出てきました』

「なるほどな……んで、俺はどうすればいい?いつも通り、見敵必殺(サーチ&デストロイ)でいいのか?」

 

 

 

某所のカフェテリア。キールと2人でティータイムを楽しんでいたアルマニャックの元に、ラムから通信が入った。

戦の匂いを嗅ぎつけ口角を吊り上げるアルマニャックとは引き換えに、キールの顔色はすぐれない。

 

 

 

『いえ。FBIの目的はどう考えても我々。ですがこれだけの人数が一度に動くというのは前代未聞です。この国に根ざす公安が同数を動かすのとは訳が違う』

「となると、まずは応手か?」

『えぇ。先手を許すのは気が進みませんが、今回に関しては一旦待ってでも敵の出方を伺うべきでしょう』

「連中が街に展開して動き出してからが勝負、ってところか。となると、俺はしばらく暇かな?」

『えぇ。いつ動いてもらうかはこちらで指示します。しばらくはスケジュールを開けておいてください』

「了解。何かあったら連絡してくれ」

『勿論。それでは』

 

 

 

通話を切り、携帯を懐に仕舞ったタイミングでキールがおずおずと話を切り出してきた。

 

 

 

「どんな話だったの……?」

「FBIが50人、日本に入ってきたらしい。十中八九、公安と共闘体制を取っているだろうな」

「50人って……!……目的は、やっぱり組織かしら」

「同意見だ。俺も他には考えられねェな」

 

 

 

そう言ったアルマニャックは、しかし難しい顔をして蟀谷を指で叩き始めた。

考えあぐねている時特有の、彼の癖だ。それを知っているキールは疑問に思う。

 

 

 

「何か、気になることでもあるの?」

「ん〜…………まァ、な」

「……聞いても、いいことかしら」

「ハハ、勿論大丈夫だよ」

 

 

 

瞬間にこやかに笑った彼は、再び真顔になり、因縁ある組織の名前を口にする。

 

 

 

CIA(ラングレー)の動きが、見えねェ」

「!?」

「今この地上で、誰よりも何よりも俺をぶち殺したい筈の連中が、動いてねェ。それが俺には解せない」

「……前々から思っていたのだけど、CIAと貴方には何か因縁があるの?」

「すまんがそこは聞かないでくれ。せっかくキールと楽しい時間を過ごしていたのに、台無しにしたくねェ。……少なくとも、今は話したく、ない」

「……ごめんなさい、不躾だったわ」

「いいさ、別に責めてる訳じゃない。ただ、俺と連中が対立している理由についてはラムからも口止めされてるんだ。誰にも話すなとね」

「……相当な機密事項ってことなのね」

「そういうことなんだ。ごめんな」

 

 

 

申し訳なさそうに苦笑するアルマニャックを見て、キールは彼から見えないところで拳を強く握りしめる。

彼の笑顔が、気遣いが、自分に向けられる優しさが、今の自分には、酷く苦しい。

 

 

 

「話を戻そうか。とにかくラングレーの狗共は俺を是が非でも殺したい筈。だが東都水族館でも今回でも、奴らの動きが見えない」

「秘密裏に動いている可能性は?」

「なくはないが、低いな。ラムの姐さんからも連中に関する報告が来てねェ。んで現場で連中が動いてりゃ、俺が見逃す筈がない。魂まで腐りきったあのクソ虫共の臭いを、俺が嗅ぎつけられない筈がない」

 

 

 

言葉の端々からもCIAに対する強い憎悪が滲み出ている。

任務さえ絡まなければ比較的温厚な彼が、一体何をどうしたらここまで憎しみに囚われるのか。捜査官の性として気にはなったものの、とてもではないが聞き出せる雰囲気ではない。大人しく聞きに徹する。

当のアルマニャックは再び蟀谷をトントンと叩いていたが、ややあってぼそりと呟く。

 

 

 

「FBIは当て馬かな……?」

「!」

「俺の情報を集める為の生贄ってことなら、連中が動いていないことに納得はいく」

「同じアメリカの組織よ?いくら何でもそんなこと……」

「するさ。連中ならやる。必要とあれば仲間でさえ躊躇なく切り捨てるだろうよ。……だが、となると俺もあまり派手に動く訳にはいかねェな」

 

 

 

キールは内心舌を巻く。……数日前、本部から連絡があったのだ。

FBIが相当数、日本に入国すると。CIA本部は彼らを"ジャバウォック"への斥候に使うことを決定したらしい。

彼らとの戦闘を通じて"ジャバウォック"の現在の戦闘データを入手せよ、それがキールが請け負った任務だった。

彼らが動く前に、勘付かれた。アルマニャックの勘の良さに感心し、一歩遅れて自分が安心していることに自嘲する。

 

(この期に及んで、何を考えているのかしらね)

 

幸い表情には出なかったらしい。アルマニャックはそのまま話を続けていた。

 

 

 

「後でラムの姐さんにも相談するが、恐らく今回俺は裏方に徹する。せいぜいが暗殺位だな。キールと一緒に動くことになるかもしれん」

「…………えぇ、そうなったらよろしくね」

「……やっぱり、()()()?」

「えっ!?」

「キールはコロシの任務、嫌いだもんな」

「あっ、えっ、えぇ……」

「やっぱり、俺の補佐についてもらうよう姐さんにも伝えとくよ。握りたくもない銃を握る必要はないから、安心してくれていい」

 

 

 

一瞬、自分の内心がバレたのかと焦ったが。何のことはない、いつも通りの気遣いだった。

そして、それこそが何よりもキールの心を抉る。

疑問という形で、内心がこぼれてしまったのは、ある意味必然だったのだろう。

 

 

 

「……どうして」

「ん?」

「どうして、アルは、そこまで私を気遣ってくれるの?」

「えっ?そりゃ、大事な仲間で、大事な友達だからだけど?」

「それだけで……!」

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

柔らかな笑顔を見せるアルマニャック。彼の顔が、ぼんやりと滲んで見えない。眩しくて、直視に堪えない。

 

 

 

「前に話さなかったっけ?キールからはお日様の匂いがするって。俺は、それが好きなんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから、出来れば汚れてほしくないなんて……我ながら随分キメェこと言ってんな!」

 

 

 

そう言ってわざとらしくカカカと大笑いをしたアルマニャックは、キールの目元を指で拭う。

 

 

 

「キールが、何に思い詰めてるのかは聞かない。話したくなったら、話してくれればいい。俺は、いつでも受け止めるから」

「わ、私は……」

「キールは、キールのままでいてくれればいいんだ。これは俺がやりたくて勝手にやっていること。だから、そう重く受け止めないで大丈夫だよ」

 

 

 

そう言い残すと、アルマニャックは伝票を持ってレジに向かった。

その後ろ姿を見届けることなく、キールは顔を両手で覆う。

 

(私は、私はもう、とっくに汚れきってる……!貴方に、そこまで言ってもらえる資格なんて……!)

 

キールは、しばらくその場から立てなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キキッ、という音が閑静な住宅街に響く。黒塗りのレクサスがブレーキ音を響かせたのだ。

 

降りてきたのは、金髪をコーンロウに束ねた一人の男。ピンガだ。

初めて訪れる場所ではあったが、事前に話は聞いている。彼は迷うことなく階を上り、マンションの一室に入っていく。

そこは、組織が今回の作戦の為に急遽用意した拠点だった。高性能のパソコンをはじめ、様々な機材が揃っている。

部屋に入ったピンガは一通り自身の目で機材を点検する。それが終わると、携帯を取り出しコールをかける。

 

 

 

「こちらピンガ。拠点についた。いつでも動ける」

『結構。今回は私の補佐として動いてもらいます』

「分かってる。精々経験値にさせてもらうさ」

『よろしい。後で私もそちらに伺いますので、そのつもりで』

「分かった」

 

 

 

言葉少なに通話を終え、携帯を懐に仕舞う。

潜入任務で忙しい彼ではあったが、ラムからの打診と、何より本人の希望により今回の作戦に加わることとなった。

 

(俺には、まだ経験が足りない。休みを満喫している暇なんざねぇ)

 

組織不動のナンバー2、ラム。彼から全てを学び吸収すべく、ピンガは動き出す。

 

 

 

全ては、憧れに並び立つ為に。

 

 

 

 

 

 





章の開始恒例、繋ぎの回ですね。話が動くのは次回から。



それと、閑話ではありませんがリクエストを採用させて頂きました。
活動報告より、【とんも】様から頂きました、「コルンとキャンティのシミュレータ」をお送りしました。
閑話というより本編で扱いたい内容だったため、ちょっと短めですがこういう流れになりました。
お題を下さりありがとうございました!引き続き、活動報告にてゆるりと募集をしておりますのでよろしかったら是非。



今更ですが、閑話を除き、各話のタイトルはことわざからお話の内容に合ってるっぽいやつを採用しています。これがまたチョイスに結構時間かかるのですが。
一方で各章のタイトルは音楽用語から来ています。これも、章全体の内容から連想ゲーム的に繋げるようなものをタイトルにしています。

prelude【プレリュード】:前奏
overture【オーヴァーチュア】:序曲
canon【カノン】:追走曲
nocturne【ノクターン】:夜想曲

第三章はfuga【フーガ】:遁走曲と迷ったのですが、黒ずくめから一方的に逃げる訳じゃなく、追って追われての方が印象としては正しいよな?と思いcanonを選びました、なんて裏事情があったりします。
つまり、今章のPassionも情熱ではなく音楽用語なんですね。さて、どういう意味でしょう?答え合わせは次回。



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