ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」   作:ていとくン

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☆9:妖怪首置いてけ様、吉石様、通りすがりの暇人様、雄兄貴様、魑魅魍魎さん様、バリハルト様

高評価を下さった皆様、ありがとうございます!祝、200名到達!皆様に、今一度心からの感謝を。
極々たま~に、評価欄の一言でめっちゃ色々書いてくださる方が現れたりします。あり得ない位に嬉しいのですが、もしよろしければ感想で頂けませんか……?理由は一つ。評価欄だと!返信出来ねぇ!!
アツい感想貰いっぱなしで応えられないのは申し訳ないので、皆に感想見られるのが何となく恥ずかしい、とかでなければ是非!



12/25 22:30 日間ランキング45位
       二次日間ランキング39位
12/26 11:30 日間ランキング36位
       二次日間ランキング29位
12/27 10:00 日間ランキング70位
       二次日間ランキング58位

皆様のご愛顧に感謝です!ここ数日、ずっとランキングに載せて頂いて、おかげでUAも評価数も増えて嬉しい限りです!



さて本題。お話の書き出しに迷走してちと時間かかりました。
原作と被るようなところは描写あっさり塩味でサクサク進めて行こうと思っています。その旨よろしくお願いします。



肝胆を砕く

 

 

 

 

 

 

「駄目だ、ジムと連絡がつかない」

「チェンも同様だ。定時連絡の時間から既に1時間以上経っている……殺られたか」

「暗号は解読されたと見て間違いないだろう。どうする?」

「暗号に関しては、俺達の中ではジムとチェンが一番だった。それが解読されたとなると……」

 

 

 

工藤邸、書斎。

 

紆余曲折あってFBIの協力者となった工藤優作・有希子夫妻の厚意で屋敷を拠点として借りたFBIは、そこで作戦会議を行っていた。

当初FBIは集合時間や場所、人員などを複雑な暗号でやり取りしていたが、未帰還者並びに死者が出たことで漏洩並びに解読されてしまった可能性が出てきた。

それを検証すべく周囲の反対を振り切って出ていった暗号班の2人との連絡が途絶えたことで、こちらの情報が筒抜けであることを確信。

すぐさま拠点のホテルを引き払い、新居を探していたところを工藤夫妻に拾われた形だ。

軍属経験者の一部は、今回の作戦に民間人を巻き込むことに難色を示す者もいたが、緊急故に他の当てがないこともあり、最終的に助力を請うことになった次第だ。

 

ふと、書斎の扉が開く。全員の意識がそちらに向かう。

入ってきたのは、一人の子供だった。

 

 

 

「あら、クールキッド!君も来たのね!」

「ジョディ先生?それにこの人達、もしかして……」

「えぇ、皆FBIの捜査官よ」

 

 

 

ジョディとコナンが会話をしている様子を、一部の捜査官が難しい顔で見ている。

信じられないことに、コナンと呼ばれるあの子供はFBI職員と知り合いらしい。堅物で有名なあの赤井秀一でさえ相好を崩している。

何の警戒もなく部屋に入ってきたあたり、恐らくは工藤夫妻の子供か、その知り合い。家を間借りしている身で言えた道理ではないが、出来ればこの場を後にしてほしい。

今回の作戦は非常に危険なもの。子供を巻き込みたくなどない。

 

そう考えていた捜査官達も、彼らの会話を聞いている内に驚きでその目を見開く。

 

 

 

「まさか、読めたの?私達が使っている暗号が?」

「うん!写真に撮って考えていたら分かったよ!」

 

 

 

そこから彼が話したのは、正にジムとチェンが作った暗号の解読法そのものだった。数字のデジタル表記を応用し、アルファベットも表せるようにしたもの。

文字の一部だけを反転させている為、自分達FBIでさえ専用のツールを用いねば解読出来ないものを、彼は脳内だけで解いてしまったらしい。

見たところ、彼の年は5〜6歳ほど。末恐ろしいとしか言いようがなかった。

そして、それを聞いていたキャメルが現状の打開策を思いつく。

 

 

 

「もしかしてこれはチャンスなんじゃないでしょうか?この待ち合わせの暗号を使って逆に奴らをおびき出せば……」

「釣られて来た奴らを内と外で挟み撃ちに!」

「悪くないな……ボウヤはどう思う?」

「うん!いいと思うよ!」

 

 

 

子供がご意見番気取りか、などと言う者は誰もいない。この短時間で、彼はその頭脳をこの場にいる全ての者に認めさせた。

 

 

 

「暗号は誰が作るんだ?」

「私が作るわ!やり方は分かるから!」

 

 

 

トントン拍子に作戦が決まっていくのを見て、思わず舌を巻く捜査官。

子供を巻き込むことに未だ罪悪感はあるものの、暗号解読程度であれば後方で自分達がしっかりと守護出来る。

 

上手くやれば、"組織"の幹部を捕らえられるかもしれない。

千載一遇の好機を、逃す訳には行かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カタカタ、とキーボードを叩く音が部屋に響く。パソコンの画面に映るのは、FBIが使用している暗号。

数日前、傍受に成功した暗号を解いたピンガは、そのまま他の幹部達へと指示を下していた。

その後ろではラムが愛用の葉巻をくゆらせながら、興味深そうに様子を見ている。

今回、ラムは全体の指揮をピンガに委ねることにした。向上心溢れるこの若造がどこまでやれるかを確認することが主な目的ではあるが、この決定はアルマニャックからの依頼でもあった。

 

(()()()()()()()()()()、とは……。何を目論んでいるのやら)

 

視点の深さ・広さや思考レベルで彼に負けるつもりは毛頭ない。

だが、彼は出自が出自だ。自分と違う世界が見えていることは確かな事実。これまでに、彼の"直感"が事態を好転させたことも多い。

背後で逐一確認さえしておけば最悪何かが起こっても自分で対応可能であることもあり、ピンガに指揮権を与えると共にこうして足を運んだ次第だ。

 

今のピンガは先程キャッチした暗号を解き終わったところのようだ。画面に表示されたソレを、ラムも背後から覗き込む。

 

 

 

KAdEHu 1-4

PArKING LOt

10.03. 19:00

 

 

 

「カデフ……果出風町、ってやつか?駐車場で夜7時集合。……この位置ならキャンティとキールが近いな」

 

 

 

地図を眺めながらピンガが呟く。

 

ジンとウォッカ、キャンティとキール、コルンとアルマニャックとベルモット。以上3組7名が今回の作戦に動員されている。

どういう訳だか、今回アルマニャックは"裏方に徹する"と言っており、事実コルンのサポートをメインに行っている。

必要に応じて暗殺は行っているものの、それすら普段は使わない自動式拳銃(オートマチック)を使うなど、何やら様子がおかしい。

内心かなり訝しんだピンガではあるが、結局理由は分からず。アルマニャックのやりたいようにやらせることにした。

一方でラムは何やら心当たりがあるらしい。話を聞いた際、難しい顔をして唸っていた。

ラムには分かり、自分には分からない。未だ遠い目標に苛立ちを抱きかけ、頭を振って思考を戻す。

 

(俺が目標(ラム)に遥か及ばないことなんざ、分かってた筈だ。今はそれでいい。今自分に出来ることを十全にこなす。まずは、そこからだ)

 

改めて画面に目を向けつつ、キャンティを中心に通話を繋ぐ。

 

 

 

「新しい暗号が来た。果出風町1-4、駐車場に夜7時らしい。キャンティ、お前が一番近い。いけるよな?」

『当たり前だろ!そこなら10分ありゃ釣りが出るさね!』

「よし、じゃあ任せる。後の2組は一旦待機だ」

『了解〜』

『チッ』

 

 

 

自分の指揮で動くというのが気に入らないのだろう。アルマニャックの軽い返事とは対照的に、ジンから返ってきたのは舌打ちだった。思わず悪い笑みが出る。

 

 

 

『にしても、F()B()I()()()()()()鹿()()()()()()()!これだけ殺されて、まだ気づかないのかい?』

「全くだぜ。()鹿()()()()()()()()()()……………………」

『ピンガ?どうしたんだい?』

 

 

 

発言が途中で止まったことに首をかしげ、キャンティが疑問を飛ばすも、ピンガには届いていなかった。

 

ピンガの思考は今、潜入先のインターポールでの仕事に戻っていた。

世界各地の監視カメラに対するアクセス権を持つ立場にいたピンガは、カメラ越しではあるものの、FBIの仕事ぶりを目撃したことも幾度かある。

FBIという組織に対する知識、自分の目で見た連中の練度。それらを総合的に分析しつつ、ピンガは考える。

既に彼らには9名の犠牲が出ている。暗号を用いて待ち合わせた場所で死体が上がっているのだ。自分達が暗号を解析出来ていることなど明白な筈。

にも関わらず、頑なに同じ暗号を使い続け、こうして捜査官を死地に送り込む。

 

解せない。

 

 

 

 

 

 

(連中(FBI)は、()()()()()鹿()()()()()?)

 

彼らが送った暗号をもう一度よく眺める。大文字・小文字が入り混じった読みにくいそれを見つめているうちに、小さな違和感を抱く。

パソコンを操作し、過去にこちらで解析した暗号データを画面に映し出す。対象となるものは2つ。

 

 

 

FuruItO 2-1

tAXI StAnd

10.02. 20:30

 

 

 

(古糸町2-1、タクシースタンド。10月2日の夜8時半)

 

次に、もう一つの暗号を見る。

 

 

 

bEIKA 3-5

CAFE guAVA

10.03. 16:00

 

 

 

(米花町3-5、カフェ"グァバ"。10月3日の夕方4時)

 

最新のものと合わせて3つ、それらを入念に見比べていると、ようやく違和感の正体に気づいた。

 

("フ"の表記がズレている……?)

 

古糸町は"Fu"だったのに対して、果出風町は"Hu"となっているのだ。

暗号で表記揺れが出ることなど、まずあり得ない。解読に支障を来してしまうからだ。

偶発的な事故、それならいい。その時は、ノコノコやってきた愚かなFBIを狩ればいいだけだ。

既にそれなりの数を殺ってきた。その中に暗号担当がおり、人員不足故に慣れない人員を引っ張ってきた。可能性として、十分あり得る話だ。

 

だが、()()()()()()()()()()()。もし、()()()()()()()()()()()()

 

 

 

"戦場では常に最悪を想定しろ。理不尽で残酷なこの世界は、その想定すら下回ると思え"

 

 

 

(アルは、ことある毎にそう言っていた。初めて聞いた時以降、一種のヒステリー(PTSD)としか思っちゃいなかったが……)

 

経験の質も、量も、積み上げたキャリアも、憧れ達には遠く及ばない。或いは、才能すら。

そんな自分でも唯一勝てる可能性がある分野。それが思考。その速度と深度、精度。

ならば想定しろ。あらゆる可能性を検討しろ。切り捨てていい可能性など存在しない。無視していい未来などあり得ない。全てを考慮し全てを見通せ。

あらゆる最悪を予知し、それら全てに対して万全の策を構築しろ。遍く総ての糸を手繰り寄せろ。

 

ふと、背後で自分を見つめる(ラム)の存在に意識を向ける。

自分が畏れた男の存在に。自分がいずれたどり着くべき領域に。超えるべき頂に。

 

(ラムなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()、きっと、この程度、息を吸うように自然にやってのける筈なんだ)

 

明らかに埓外の頭脳。自分はいずれ、そんな男に並ばなくてはならない。そんな男を、超えなくてはならない。

 

でなければ、アイツ(アルマニャック)の隣には、立てない。

 

ならば考えを止めるな。考えることを止めるな。全てを演算しろ。未来を知れ。思考を回せ。脳髄を回せ。回せ回せ回せ回せ廻セ廻セ廻セ廻セ廻セ廻セ!

 

 

 

 

 

 

そうして、ようやくたどり着いた結論は。

 

(このスペルミスはミスに非ず!明らかに意図的な罠!敢えて綴りを変えることで、普段通りの集合ではなく罠であることを仲間に伝えつつ、ノコノコ釣られた俺達を狩るのが目的!)

 

背後ではラムが"ようやく気づいたか"と言わんばかりに僅かな苦笑とほんの少しの感心を滲ませていたが、生憎ピンガがそれに気づくことはなく。

目付きも鋭く、現場で動く全ての幹部に指令を下す。

 

 

 

「キャンティ、悪いが予定変更だ」

『あん?何があったってんだい?』

「罠の可能性が出てきた」

『!』

「今、現場で動いている幹部全員に指令を下す。集合地点である駐車場、それを遠巻きに監視出来る場所を探して、その場所を監視しろ」

『FBIが、俺達を嵌めにきたってことか?』

「可能性があるってだけだ、あまり期待はしすぎるなよアル。……ただ、俺の考えが間違ってなければ、そこにFBIが現れる筈だ」

 

 

 

結果は、果たして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果出風町、立体駐車場。

 

その近辺。駐車場一体を一望出来る場所に、4名のFBI捜査官が待機していた。各々が武器を構えている。その内の一人、ビルがスコープ越しに駐車場を見渡しつつ、収穫のなさにぼやく。

 

 

 

「誰も来ねぇなぁ……」

「暗号は合っていたのか?」

「ジェイムズさん達が確認していたから、そこは問題ないとは思うが……」

「気を引き締めろ。作戦中だぞ」

「分かってるさ。監視は怠ってない」

『駐車場を見張っている外部班!状況は?』

 

 

 

そこでジョディからの通信が入る。駐車場に意識は向けつつ応対するものの、ビルのどこか気の抜けた様子は変わらない。

 

そして、それが彼と彼の戦友にとって命取りとなった。

 

 

 

「こちらビル。異常なし!」

「こちらデイビッド。駐車場があるビルに近づく人影ゼロ……」

「やっぱジョディさんが書き間違えたんじゃないですか?」

「俺もそれに一票……」

 

 

 

 

 

 

ドシュッ

 

 

 

 

 

 

何かが弾ける音。ふと隣を見ると、額を真っ赤に染め上げたデイビッドがどうと倒れていた。

狙撃されている。残りの仲間にそう警告を出そうとして、声が出ないことに気づく。

自分の胴体を滴る液体。それが自分の喉から吹き出す血液であることに気づいたと同時に意識が暗転し、そこでビルは永遠の眠りに就いた。

 

 

 

「なっ!?」

「貴様!」

 

 

 

残る2人は即座に伏せつつ銃を構える。

その先には、フードを被り顔をガスマスクで隠した全身黒ずくめの男。サプレッサーを付けた拳銃を構えてこちらを見下ろしていた。

あまりにも特徴的なその風体。ブリーフィングで聞いていた()()()()()()()と合致するその見た目に、刹那、息を呑む2人。

 

そしてそれが、()()()()()となった。

 

 

 

 

 

 

パシュパシュッ

 

 

 

 

 

 

黒ずくめの男と真反対の方向から響く小さな発砲音。残る2人のFBI捜査官は揃って頭蓋に華を咲かせ、その命を散らす。

倒れ伏す男達をしばし見つめ、その耳に装備されたインカムをつまみ上げると握りつぶす。

そうしてようやく一息ついたアルマニャックは、同じく胸を撫で下ろしたベルモットに話しかける。

 

 

 

「な、大丈夫だったろ?初歩的な視線の誘導(ミスディレクション)なんだが、これが存外有効なんだよな」

「……ここまで上手く決まるとは思ってなかったわ。FBIを2人始末しろと言われた時は、流石に肝を冷やしたけど」

「状況さえ整えれば、強敵もまた易くなるってことだ。コルンもパーフェクトな狙撃だったぜ」

『この程度、造作もない』

「ハハ、そりゃそうか」

 

 

 

コルンが狙撃して1人。それを合図にアルマニャックが拳銃で1人。残る2人の視点を双方に固定したところで、死角からベルモットが同じく拳銃で2人。

人間は急激な変化に弱い。狩る側の立場と思い込んでいた自分達がいきなり命を狙われるという立場の急変。それによる焦燥に追い込むことで、思考と視野を制限する。

ある程度以上の戦場経験を持つ者には効きづらいが、そこは"ジャバウォックの登場"という劇薬で誤魔化す。

杯戸中央病院を襲撃した際の服装と敢えて同じ格好をしたのは、万一FBIがまだジャバウォックという存在を捕捉出来てない場合でも危機感を十分に煽る為だ。

単純極まりないが、それ故に有効な一手で危うげなく4人を始末した一行は、指令役であるピンガに通信を入れる。

 

 

 

「こちらアルマニャック。4人全員始末したぜ」

『おう。ジンの野郎も外部で監視していた奴らを仕留めたらしい。残るは駐車場に籠もってる間抜け共だけだ』

「戦果は上々、ってか。にしても本当に待ち伏せしていやがるとは……お前の読みが当たったな。ダイヤの目がついてきたじゃねェかよ」

『ハッ、この程度で褒められても嬉しかねぇよ』

 

 

 

言葉とは対照的に上機嫌なピンガの声。それを察してニヤリと笑いつつ、アルマニャックは指示を乞う。

 

 

 

「駐車場担当はキャンティとキールだったか。どうする?援護に向かうか?」

『いや、まずは報告を待つ。お前らは一旦その場から離れろ。……噂をすればだ、通信が入った。そっちにも共有してやる』

「おう、頼むわ」

『こちらキャンティ!1人仕留めたけど、もう1人には逃げられちまったよ!』

『ごめんなさい、私がしくじったせいで……』

『……そこで終わらせられるのがベストだったが、まだ問題はねぇ。今から全員で狩りの時間だ。追い詰めてやれ』

『了解!』

『チッ!』

「了解。……コルン、今から拾いに行くから準備しといてくれ」

『分かった』

「ベルモット、運転は任せても?」

「構わないわ。もう表には立ちたくないしね」

「射撃の腕前は悪くないのに、勿体ない」

「生憎私の戦場はそこじゃないのよ」

 

 

 

軽口を叩きつつ、車に乗り込む2人。走らせてすぐ、コルンを回収する。

向かうはFBIの生き残り、その足元。

 

 

 

「さてさて。最後の一匹を仕留めるのは誰かね?」

「順当に行くならキャンティじゃないかしら?」

「俺、頭撃ちたい」

「コルンってたまに怖いよな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャメル!状況の報告を!」

 

 

 

インカムの向こうで声を張る赤井。焦燥と驚愕に支配されていた心が、僅か冷やされる。

 

 

 

「こ、こちらキャメル!駐車場を出たところで狙撃されました!俺はたまたま避けられたんですが……マークが……」

「……そうか。とにかく今はお前が生き残ることを最優先に動くんだ」

「はい!」

 

 

 

とは言うものの。背後から迫りくるバイパーは純然たるスポーツカー。中々に間隔を広げられずにいた。

路上駐車の車に紛れることで撒いたものの、今度はすれ違ったポルシェから猛追される。

よりにもよって、黒塗りのポルシェから。

 

 

 

「ポルシェ356A!」

「ジンの車か……!焦るなキャメル!自分の腕を信じろ!」

 

 

 

それなりに間隔こそ開けられているものの、撒くまでには至らず。

とはいえ車の馬力では勝っていたようだ。海ボタルのトンネルを使い、更に間隔を開けることには成功する。

このまま千葉方面に行けば、ジンの執拗な追跡を振り切ることも可能だろう。

未だ予断を許さないものの、キャメルの心に幾ばくかの余裕が出てきた。

 

 

 

 

 

 

だからだろうか。緊張のほぐれが、視野を確保することに繋がったのかもしれない。

それに気づけたのは、只の偶然だった。

 

 

 

 

 

 

遥か前方。対向車線を走ってくる1台の車。運転する妙齢の女性の顔に、何やら見覚えがある気がした。

 

だが、それ以上に。

 

助手席に座っている、あの男は。

ガスマスクをつけ、フードを被った、全身黒ずくめのあの男は。

今正に、ドアを開け、こちらに向けて銃を構えようとしている、あの男は。

 

 

 

 

 

 

「じ、ジャバウォック……!?」

「何ッ!?」

 

 

 

ハンドルを切ったのは、ほとんど反射だった。先程まで自分の頭があった場所を弾丸が掠めていく。

恐怖する間もなく、次弾が飛んでくる。無茶苦茶にハンドルを切ったおかげで致命傷は免れたものの、肩を撃ち抜かれてしまった。灼けつくような痛みが走る。

 

その痛みに気を取られ、ハンドルさばきを間違えた。

 

ガードレールを突破し、海へと突っ込んでいくキャメル。

派手な水しぶきを上げ、沈んでいく1台の車。大きく揺れていた水面が、すぐに落ち着きを取り戻す。

 

 

 

 

 

 

その様子を、車から降りた黒ずくめの男が、静かに見つめていた。

自身から逃げ切ったことへの、僅かな驚きと共に。

 

 

 

 

 

 





Passion:【the Pa〜】キリストの受難。受難曲

誰にとっての受難なんでしょうね……?()



あと1話で黒ずくめの謀略編は終わりです。出来れば年内に締めたかったのですが、残念です。
一応既に書き始めてはいますが、流石に間に合わないんじゃないかな……



8月に投稿を始めて早4ヵ月、応援してくださる多くの読者の皆様に恵まれてここまでやってこれました。本当にありがとうございます。
来年も、完結目指してゴリゴリ書いていきますので、引き続き応援のほど、どうかよろしくお願い致します。



それでは皆様、良いお年を。
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