ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」   作:ていとくン

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☆9:RPG大好き様、佐波アギトV2様、yoshi10203040様

高評価を下さった方々、ありがとうございます!高評価なんてなんぼあってもいいですからね。嬉しい限りです。



スランプ気味で中々お話が思い浮かばず、更新が結構空いてしまいました。すみません。
さて、今回の閑話はリクエスト回です。
活動報告より、【gsころりん様】から頂きました、「アルマニャックが漫画の技などをどれだけ再現出来るか」(一部改訂)をお送り致します。

閑話は全体的にキャラがはっちゃけていますし、本編との整合性とか論理性とか割と適当にしていますが、今回のお話は今までに輪をかけてそこら辺めちゃくちゃです。ファンタジーに片足突っ込んでると思って頂ければ。



Interlude⑧ アルマニャックとひっさつわざ

 

 

 

 

 

 

日本某所。組織所有のセーフティハウス。

 

その一室にて、アルマニャックが真剣な顔つきで漫画を読み進めていた。

彼は感情が表に出やすい。面白い時は笑うし、感動する場面では大粒の涙を流す。

そんな彼が、大真面目な顔をして漫画を読んでいる。食い入るように、という訳でもない。

どちらかと言えば、内容に対する考察をしているかのような、そんな顔つきだった。

 

思考の大部分をそちらに傾けていたアルマニャックが、しかしふと顔を上げる。

しばしの後。ギィと音が鳴り、扉を開けて部屋にやってきたのはキールとキャンティだった。

 

 

 

「あ゙〜疲れた……」

「そうね、体より精神が疲れたわ……」

「おかえり二人とも。何か飲むか?」

「ビールだね!酒でも飲みたい気分だけど、外に行くのも億劫だからねぇ……」

「じゃあ私もビールにしようかしら」

「キールがこんな時間から酒飲むなんて珍しいね」

「それだけ面倒な仕事だったのよ……」

 

 

 

ソファに腰掛けてぐったりとする二人に苦笑しながらビールを手渡すと、勢いよくプルタブを開け、揃ってぐびぐびと飲み干していく。

 

 

 

「二人がそこまでなるなんて、どんな任務だったんだ」

「護衛よ。組織に多額の献金をしているパトロンのね」

「ふむ、特別困難な任務じゃなさそうだが……なんか訳ありだったのか?」

「そのパトロンがガキを連れていたのさ。とびきりクソ生意気なガキをね!」

「パトロンの一人息子らしくて、まぁわがまま放題だったのよ。私達はそれに巻き込まれたってこと」

「自分が狙われてるからアタイらを護衛に雇ったってのに、なんでそんな場所にガキなんざ連れてきてるんだよあのデブジジイ!」

「子供の方も酷かったわ……」

「あ~……なんというか、お疲れ様。……もう一本、飲むか?」

「「飲む!」」

「あいよ」

 

 

 

しばらく酒を片手に愚痴を吐いていた二人だったが、ふとアルマニャックの横に積まれている本にキールが目を向けた。

 

 

 

「そういえば、アルは今日一日読書の日?」

「おう、つっても漫画だけどな」

「アタイらがクソ面倒な任務をこなしている時に、いいご身分だねぇ」

「昨日まで3週間連続で任務だったけどな。今朝ソマリアから帰ってきたんだ」

「なんでそれでピンピンしてるのよ……」

「連戦には慣れてる。大したことじゃない」

「ハイハイアタイらが悪かったよ。んで、何を読んでたんだい?」

 

 

 

積み上がった本にキャンティが手を伸ばす。パラパラとめくってみれば、格闘技モノの漫画だった。彼女も読んだことがあり、大まかな内容は覚えていた。

 

 

 

「あぁコレかい。アタイも前に全部読んだよ」

「そうなん?面白いよね。個人的には囚人編が好き」

「初戦がピークだったやつだろ?アタイはトーナメント編も好きなんだけどね」

「準決勝あたりからベストバウト多過ぎてやばいよな」

「……私も読んでみようかしら」

「おうおう貸してあげるよ。これが1巻だぜ。他にも色々あるから、興味あるなら読んでくれていいぜ」

「これ全部アルの蔵書かい?」

「蔵書ってほど大層なもんじゃないが、そうだね」

 

 

 

キールに漫画を差し出したアルマニャックも、手元にあった漫画を取り寄せてページを開く。

キャンティもそれにならい、しばしの間部屋にはページをめくる音が響いていた。

しかしページは進まず、真面目な顔で首をひねるアルマニャックの様子を見て、キャンティは怪訝な顔をする。

 

 

 

「どうしたんだい、さっきっから」

「いやな……これ、俺にも出来るかなって、考えててな」

 

 

 

そう言ってアルマニャックが差し出したページには、大の男が同じく長身の男を担いだ状態で、川を走って渡っているシーンが描かれていた。

たまらず、キャンティは吹き出す。

 

 

 

「ブハッ!いやいや、流石にアルでも無理だろ!こんなんファンタジーだよ!」

「そうかな……でも理屈は分かるんだよ。水って、優しく手を入れればスッと入るけど、思い切り叩きつければ固いだろ?それを高速でやれば……ってのは、なんか出来そうな気がするんだよな」

「アッハッハッハ!そんなこと大真面目に考えてたのかい!」

 

 

 

ついに腹を抱えて転がり始めたキャンティを不満げに見るアルマニャック。

すると、彼に向かって思わぬ援護射撃が飛んできた。

 

 

 

「なら、やってみればいいじゃない」

「アハハハハハ!キール、アンタまで何を言ってるんだい!」

「何事もチャレンジしてみなければ結果なんて分からないわよ?」

 

 

 

そう言うキールはどことなく目が据わっており、体を左右にユラユラ揺らしながらニコニコと笑っている。

思わず笑みを引っ込めるキャンティと、対象的に苦笑を浮かべるアルマニャック。

 

 

 

「なんか、キールの様子がおかしくないかい?」

「あ~やばい、流石にちっとばかし呑ませすぎたかな……?」

「キールってそんなに呑んでたかい?」

「おう、漫画読みつつずっと。なんならキャンティが愚痴ってた時もほとんど黙々と呑んでたな」

「なんで止めないんだい」

「いや、たまにはそうしたい日もあるのかなって……」

「ほら、何をしているの?行きましょう、川に」

 

 

 

変わらずニコニコと微笑んでいるキールは、既に外出の準備を終えたどころか、1人でそのままスタスタと出ていってしまった。

 

 

 

「こりゃアカン、追いかけるぞ」

「今のキールを1人にしておけないからね……まったく、なんで戻ってきてまでお守りをしなきゃいけないんだい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの川は、最近の都市圏では珍しく舗装がされておらず、石ころが転がる河原になっていた。

川べりに立ってこちらを向いているキールはやはりニコニコしているが、手に握っている石が一抹の不穏さを出している。

 

 

 

「ねぇ、アタイちょっとキールが怖いんだけど……」

「同感だな。あの顔で殴りかかられでもしたら漏らしちまうかもしれん」

「キールがああまでなったところなんて見たことないよ……何を飲んだらああなるってんだい」

「……………………()()()()1()7()6()

「……………………は?」

「未開栓だったのが、ほとんどなくなってた」

「馬ッッッッッ鹿じゃないの!?なんてもん飲ませてんだい!」

「飲ませたっていうか、キールが勝手に俺の酒を飲んでたんだけど……」

「二人とも、ちょっといいかしら」

「「アッハイ」」

 

 

 

キャンティは小声で怒鳴るという器用な真似をしつつアルマニャックを詰っていたが、キールが話しかけてきたことで会話を止め、二人揃って背筋を伸ばした。

当の彼女は、やはりニコニコしつつ石ころを強く握りしめていた。底知れない凄味を感じて顔を引きつらせる二人の様子に気づくことなく、彼女はその石ころで水切りをした。

数回跳ねた石は対岸近くまで飛んでいき、水に沈む。

 

 

 

「見てたかしら?」

「お、おぅ……見事な水切りだったぜ。なぁ?」

「あ、あぁ……全くだよ。アタイでもあそこまで上手くは出来ないね」

「ありがとう。それで、私の言いたいことは分かる?」

 

 

 

微笑みつつ首をかしげるキールに、今度こそ冷や汗が止まらない二人は、小声で作戦会議を行う。

 

 

 

「……アル、アンタ分かるかい?」

「次はお前がこうなる、とか?」

「やめとくれよ。1人でトイレ行けなくなっちまう」

「早く答えないと、どのみちそうなっちまうんじゃないかな」

「アンタのバディだろ、何とかしなよ」

「俺にだって出来ないことはいくらでもあるんだぜ」

「私の言いたいことは分かるかしら」

「「ヒッ」」

 

 

 

全く同じ姿勢で問いかけられ、思わず一歩後ずさる二人。

キールはやはり微笑んでいるものの、目が完全に据わっている。

 

 

 

「えぇと……その………………すまん、分からん。教えてくれ」

 

 

 

戦場でもギラギラと笑いながら敵を屠るアルマニャックが、顔を強張らせ全身から冷や汗を垂らしつつ頭を下げた。

隣ではキャンティが既に半身になって逃げる準備をしている。

当のキールは頭を下げる彼を不思議そうに眺めていた。

 

 

 

「どうしたの?……まぁいいわ。さっき、石は水面を跳ねたわよね?」

「え?あぁ、何度か跳ねてたな」

「つまり、()()()()()()()()()()()と言っても言いわよね」

「歩けるって言葉はだいぶ違うと思うが……まァ言いたいことは分かるぜ」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「おっと急に分からなくなったな?」

 

 

 

恐らくはキールなりに励ましてくれてのことなのだろうが、いかんせん行動が突飛過ぎるのと目が据わっているのも相まって恐ろしさが勝っている。

とはいえ、元々アルマニャックも実験したかったことではある。ここで引けばキールが何をしだすかてんで読めないこともある。実験に踏み切ることにした。

 

 

 

「あ~、それなら試してみるか。キールに応援されたことだしな」

「えぇ頑張って。私もアルが水の上を歩いてるところ、見てみたいわ」

「おっしゃ、いっちょやったるで」

「えぇ……」

 

 

 

キャンティの困惑した声を無視して、水辺に立つ。軽くストレッチをした後、何度か水面を足で叩いて調子を確認する。

 

準備は整った。

 

 

 

「―――フッ!」

 

 

 

超高速で水面に足を踏み出し、その足が沈む前に次の足を踏み出す。その動作を残像が生まれる程の速度で繰り返す。

理論上は可能、そんな絵空事を大真面目にやりきったその結果。

 

 

 

「嘘だろ……!?本当に歩いてる……!?」

「流石だわ、アル」

「うぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!」

 

 

 

とてつもない量の水飛沫を飛ばしながら水面を走って対岸に辿り着いたアルマニャックは、同じように水面を走って二人の元に戻ってきた。

 

 

 

「これ、結構疲れるわ……」

「いやいやいやいや、疲れるとかそういう話じゃないだろ。アンタ本当に人間かい?」

「一応そのつもりだが……」

「凄いわアル!アルに不可能はないのね!」

「んなこたねェが……ま、どうにかやりきったぜ」

 

 

 

疲労の色を見せつつも満足げなアルマニャックに、目を輝かせるキール。

水面を無事走れたことより、彼女が先程までの据わりきった目ではなくなっていることの方に安心しているなどと、口にするつもりはない。口は災いの元という諺の意味を、彼は身に沁みて実感している。

 

しかし、口を開かずとも災い(ちょっとした面倒事)はやってくるということを、アルマニャックはすっかり失念していた。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、()()()()()()()()()()()()()!」

「へっ?」

 

 

 

そう言って鞄をごそごそと漁り始めるキール。パンパンに膨らんだその中には、どうやらぎっしりと漫画が詰め込まれているらしい。

横で見ているキャンティはげんなりした視線を隠しもせず、アルマニャックは苦笑いを浮かべている。

 

 

 

「まさか、あの中全部漫画なのかい……いつの間にそんな準備してたんだか」

「ウハハ、すげェ量だな。こりゃあ今日は終日実験かな?」

「いいのかい?完全におもちゃ扱いだよありゃ」

「構わん構わん。何だかんだ楽しいし、もしかしたらその中に俺の必殺技に出来るものがあるかもしれねェ。この際だ、キャンティも何かやってほしいことあるか?チャレンジはしてみるぜ」

「………………アタイも漫画取りに行ってくるよ」

「あいよ、いってらっしゃい」

 

 

 

いそいそとその場を後にするキャンティと、鞄に頭を突っ込んでいるキール。

 

(普段の様子は見る影もないな)

 

アルマニャックは、どこか穏やかな笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実験① マッハ突き

 

 

 

しばらく鞄をごそごそと探っていたキールは、やがて一冊の漫画を出してきた。

パラパラとページをめくり、とある見開きをアルマニャックに見せる。

そこには、全身のしなりを利用して音速の拳を放つ男が載っていた。

 

 

 

「マッハ突き、って言うんですって!アルはこれ出来るかしら?」

「あぁこれか、知ってるぜ。この程度なら造作もねェ。ほれ」

 

 

 

 

 

 

パァンッ!!

 

 

 

 

 

 

軽い調子で無造作に放たれた拳は、しかし容易く音の速度を越えて周囲に破裂音を響かせた。

残像すら見える速度で拳を放ったアルマニャックは、手首をぷらぷらと揺らしていた。

 

 

 

「うん、この速度で打つと、やっぱりちょいと手首が痛いな」

「ちょいとで済んでるのがおかしいんだよ。ほら、漫画の中のキャラでさえ腕がオシャカになってるってのに」

「そりゃまァ、俺強いし」

「それで納得出来ちゃうのが何とも言えないねぇ……」

「凄いわ!凄い凄い!両手で打つことは出来るかしら?」

「おう、問題ねェ。行くぞ?」

 

 

 

 

 

 

パパァンッッッ!!

 

 

 

 

 

 

空気の壁を叩き割る音が二連続。キャンティ達の目には、アルマニャックの拳から発される衝撃波(ソニックブーム)すらしっかりと映っていた。

 

 

 

「なんでそれで腕が無事なんだい」

「無事じゃねェぞ。ちょっと痛い」

「それがおかしいって言ってんのさ」

「流石はアルね!格好いいわ!」

「……お、おう。どうもありがとよ」

「何鼻の下伸ばしてんだいおバカ」

「いやそうじゃなくて……なんか、無邪気なキールってのが違和感強くてな……」

「それは分かる」

「???」

 

 

 

結果:◯(成功)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実験② (ソル) 

 

 

 

続いて漫画を差し出してきたのはキャンティだった。

目にも止まらぬ高速移動。どうやら、地面を一瞬のうちに何度も蹴ることで瞬発力を生み出しているらしい。

 

 

 

「う~ん……クラウチングスタートの超強化版ってことか?蹴る力が強ければ強い程高速で走り出せるってことなのかね」

「それなら何回も蹴ればその分強い力で前に出れる、ってことなんじゃないかい?」

「それを一撃分に収束させる為に、一瞬で何度もってことか。まァ理屈は分かったし、やってることは水面歩きと似てるからどうにかなるか……?」

 

 

 

何度か足首を回したり軽い蹴りを放って調子を整えると、脱力した姿勢を取るアルマニャック。

 

 

 

「多分これ視線誘導(ミスディレクション)も込みだと思うんだ。だから今俺が立っている場所をしっかり見といてくれ」

「あいよ」

「分かったわ」

「行くぜ。―――シィッ!」

 

 

 

 

 

 

ズダンッッ!!

 

 

 

 

 

 

瞬間。重火器の炸裂と間違う程の爆発音。アルマニャックが立っていた場所の砂利が大きく飛び散るのと共に、彼の姿がかき消える。直後。

 

 

 

 

 

 

ギュバッッッッ!!

 

 

 

 

 

 

先程立っていた場所から数メートル離れたところに、アルマニャックが立っていた。

停止にもかなりの膂力を要するらしい。同じように砂利が大きく吹き飛んでいた。

 

 

 

「……凄いね、本当に消えたよ」

「わ〜……アルはこんなことまで出来るのね!」

「いや、不完全だな。跳ぶ直前に上半身を落として、視界から消えることを意識してた。二人が俺を凝視してたから騙せたようなもんだ。漫画程の速度は出せてねェ」

「でも"消えて見える程の加速"には成功してるんじゃないかい?」

「俺的には微妙な出来なんだが……足首の負担がデカい。あんまり再チャレンジはしたくねェし、その言葉に甘えとくか」

 

 

 

結果:▲(視線誘導込みでギリギリ。結果は出たが速度は届かず)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実験③ レイザーズ・エッジ

 

 

 

「力は足りてる筈。後は指が保つかどうかだが……一応左手でチャレンジしとくか」

「いや、流石にこいつは無茶だろ……指の力だけで鉄を切る?いくらなんでも無理ってもんじゃ……」

「邪ッッッッッ!!」

 

 

 

拾ってきた()()()()()()()を話の途中で空中に放り投げる。刹那、アルマニャックの手がブレた。

 

 

 

 

 

 

バヅンッッッッッ!!

 

 

 

 

 

 

耳を劈く轟音。直後、指で引き千切られた()()()()()が地面に落ち、カランと音を立てる。

 

 

 

「出来た。出来たけど、指くじいた」

「…………やっぱりアンタ人間じゃないよ。いつ辞めたんだい?」

「生涯現役のつもりなんですが……」

「嘘つきは嫌われるわよアル」

「キールの当たりが急に強火で泣きそう」

 

 

 

結果:△(成功したが、体にダメージ。元の使い手は気軽に打てていた為)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実験④ フタエノキワミ

 

 

 

再度漫画を突き出して来たのはキール。一通り読んでみたものの、アルマニャックの脳内にはクエスチョンマークが大量に浮かんでいた。

 

 

 

「ごめん、これどういうこと?理屈がマジで分からない……」

「そんなの私にも分からないわ。でもアルなら出来るわよね?」

「無茶ぶり過ぎひん?」

「原理が分からなくても、何をやってるかは分かるんだろ?ならいいじゃないか」

 

 

 

曰く、全ての物質には抵抗が存在するため、その衝撃は完全には伝わらず、無駄な余波が出来てしまうらしい。

言ってしまえば空気抵抗のようなものかと、アルマニャックもここまでは理解出来た。

しかし次だ。拳で第一撃を加え、その衝撃が物質の抵抗とぶつかった瞬間、拳を折って第二撃を入れるとその衝撃は抵抗を受ける事なく完全に伝わり切るとのこと。

もうこの時点で意味が分からない。そんなことするより2回殴った方が早いんじゃないかと思ってしまう。

更に。衝撃というのは75分の1秒と非常に早く、その瞬間に第二撃を撃ち込まなければいけないらしい。

 

(絶対手首オシャカになるじゃんこんなの)

 

一回やって出来なかったら諦めよう、そう思って全身の力を抜き、息を整える。

キャンティとキールが面白そうに眺める中、アルマニャックは完全な脱力から拳を放った。

 

 

 

「―――アーッ!!」

 

 

 

 

 

 

グキィィッッ!!

 

 

 

 

 

 

「アイターーーーー!!!!」

「あ~あ、ありゃ完全に手首やっちゃったね。今日はこれでお開きかねぇ」

「そんな……まだアルにやってほしいことがあったのに……」

「流石に鬼畜が過ぎないかい?」

「アルなら出来るわよ」

「アンタ次から酒は程々にしようね」

 

 

 

結果:×(完全に失敗。手首に全治数日の怪我)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実験⑤ 打岩

 

 

 

あれから1週間後。アルマニャックはジープを運転していた。助手席にはキャンティが座り、後方座席ではキールが顔を押さえて悶えている。

どうやら彼女は、酔っ払った時の記憶がしっかり残るタイプの人間らしい。

 

 

 

「うぅ……私はもう終わりよ……」

「まだやってんのかい。いくら嘆いたって過去は変わらないんだ。諦めて受け入れな」

「キャンティは他人事だからそう言えるのよ!あんな……あんな恥ずかしい醜態晒して……」

「確かに醜態だったねぇ〜」

「うぅ〜〜〜!!」

「その辺にしてやれキャンティ」

「アンタ、キールに甘くないかい?」

「運転中に後ろで延々と唸られちゃ気が散るんだ。ぶっちゃけうるさい」

「アルまで、酷いわ!」

「ハッハッハ」

 

 

 

しばらく運転した後、山の中腹辺りで車を降りると、山の中を進んでいく。

やがて視界が開けると、そこには渓流が広がっていた。

 

 

 

「ここら辺ならちょうどいい岩がありそうだな。登っていくぞ」

「……アル、アンタ、足腰タフだねぇ……」

「私が、見たいって、言ったのに、何だけど、ここまでしなくても……」

「なんだ二人とも、もうバテたか。仕方ねェ。ほれ」

「うわっ!?」

「わひゃあ!?」

 

 

 

キャンティとキールを横抱えにしたアルマニャックは、そのままスタスタと山道を登っていく。抱えられた二人はジト目で彼を睨むも、生憎全く気づいていない。

数十分も歩くと、滝の麓へと辿り着いた。側には人の身長程の岩がいくつか転がっていた。

今から彼がやろうとしていることは、打岩。己の五体のみを道具として岩を削る荒行。叩き、突き、打ち、蹴り、そうして少しずつ少しずつ岩を球体に近づけていくという、中国拳法に伝わる修行らしい。

 

 

 

「ここで決まりだな。んじゃ二人は休憩しててくれ。っしゃ、やるぞ~」

「………………まぁ、分かってたけど」

「アルに情緒を期待するだけ無駄さね……」

「?」

 

 

 

手頃な岩の前に立ったアルマニャックは、そのまま拳で岩を殴りつける。

ゴィン!ガキン!などと、到底人体と岩がぶつかっているとは思えない音が周囲に響き、その度に細かな欠片が飛び散っている。

みるみる間に岩が削れて少しずつ小さくなっていくところまで見届けた一行は、視線を外して作業に取り掛かった。

 

 

 

「さて、アタイらはバーベキューの準備をするさね」

「食材の下処理は私がやるわ。セッティングは任せるわよ。貴方達も手伝ってくれる?」

「「「押忍(オス)!キールの姉御!キャンティの姉御!」」」

「何なら、今から食材取ってきやしょうか!」

「ここならいい川魚が手に入りやすぜ!」

「ウヒヒ……山菜にキノコ、木の実までよりどりみどりだぜ……!」

「さっき新鮮な糞が落ちてた。この山イノシシもいるぜ!」

「ジビエか!至高(イカ)すぜぇ!」

「決まりだな!今から襲撃(カチコミ)行くぞォ!!」

「「「ヒャッハー!!」」」

「あ~、それじゃ2人位ここに残ってくれれば後は自由にしてて大丈夫よ」

「「「押忍(オス)有難(アザ)ッス!姉御方!!」」」

 

 

 

めいめい得物を担いだスーツ姿の男衆が数名、雄叫びを発(ヒャッハー)しながら山中に消えていくのを見送り、作業に戻る。

彼らはアルマニャック子飼いの部隊のメンバーだ。彼が手伝いとして数名ほど呼びつけたのである。

出会った当初はキャンティもキールも彼らの言動や振る舞い(世紀末スタイル)に戸惑っていたが、数年間の付き合いで次第に慣れた。そういうものだと受け入れた。

 

そして数時間。テントを立てたりバーベキューの準備をしたり、狩人(ヒャッハー)組が狩ってきたイノシシを捌いたり、そうこうしているうちに、ふとキールは先程まで鳴っていた破砕音が途絶えたことに気づく。

彼女はアルマニャックの方を振り向き、絶句する。その様子を見て、同じ方向を向いた面々もまた、同じように言葉を失った。

 

 

 

非実在(アリエネ)ェ……」

真実(マジ)かよ……」

幻想(ユメ)じゃ、ねぇよな……」

 

 

 

 

 

 

そこには、()()()()()()()()()()()()()()()()と、それに手を付き立っているアルマニャックの姿があった。

機械で研磨したかと見紛う程に滑らかな表面をしているその岩は、いたるところが血で汚れており、作業の壮絶さが伝わってきた。

見ると、彼の両手は真っ赤に染まっていた。

 

 

 

「アル!腕が!」

「ギハハハハ、いてェ!滅茶苦茶手がいてェ!でもやり遂げたぞォ!!」

「流石隊長!俺達に出来ないことを平然とやってのけるッ」

「そこにシビれる!あこがれるゥ!」

「馬鹿なこと言ってないで救急キット持ってきな!」

押忍(オス)!キャンティの姉御!」

 

 

 

かけつけた男衆から救急箱をふんだくり、処置を始めるキールとキャンティ。

見た目に違わず重傷で、骨には何箇所もヒビが入っているだけでなく、所々肉が抉れていた。

 

 

 

「こりゃ帰ったらしばらくは安静にしてなきゃ駄目だね……」

「なんでここまでするのよ……」

「いやァ、やってるうちに楽しくてテンション高揚(アガ)っちゃってよ、気づかなかったぜ」

「おバカ」

 

 

 

結果:◯(成功。原作と違い重傷を負ったものの、大幅な時短が叶った為)

 

 

 

 

 

 

「……で、必殺技は見つかったのかい?」

「あん?そういやそんな話もしてたっけか」

「アンタねぇ……」

「ハハハ。んで、そうだな……マッハ突きとレイザーズ・エッジは普段から似たようなことしてるし、打岩はそもそも技じゃねェ……でも(ソル)は練習して形に出来ればそこそこいけるかもって思えたわ」

「なら良かったよ」

 

 

 

 

 

 

このあと打岩見ながらめちゃくちゃ肉食べた。

 

 

 

 

 

 





数週間後
コルン「アル、これ……」
アルマニャック「あん?どうしたんだ、急に漫画なんか持ってきて」
コルン「アバンストラッシュ、やってほしい……見てみたい」
アルマニャック「あ~、キャンティ辺りから聞いたな?どれどれ……」
コルン「」ワクワク
アルマニャック「いや〜キツいっす」
コルン「な、何で……?」
アルマニャック「そりゃ、"気"とか何とか言われても……これもう分かんねぇな」
コルン「斬撃、飛ばすのは?」
アルマニャック「前に試したことがある。(結果は)駄目みたいですね……」
コルン「」ショボンヌ
アルマニャック「ごめんて」



漫画に出てくる肉体派キャラが出来ることは大体全部出来る、ってのがアルマニャックのスペックだと思って頂ければいいかと。無論、魔法なり何なりが絡むと無理ですが。
呪術廻戦の伏黒甚爾とか、刃牙の範馬勇次郎とか、そこら辺をイメージして頂ければオッケーです。流石に孫悟空は無理ですね。



さて、これにて閑話は終わりです。次回からいよいよ"黒鉄の魚影"編へと入っていきます。
そこでですが、2週間も開けておいて早々に申し訳無いのですが、しばらく更新をお休みします。
というのも、魚影編はテンポを落とすことなく投稿していきたいんですね。なので一旦全て書き切ってから投稿したいと考えています。
進捗は活動報告で順次行っていきますので、よろしければそちらを確認して頂ければと思います。
自分が今書ける最高の物をお届け致しますので、しばしお待ち頂ければと思います。よろしくお願い致します。



最後までお読み頂き、ありがとうございました。よろしければ、感想・評価・お気に入り登録の程よろしくお願いいたします。
特に感想と高評価は凄く嬉しいです。モチベーションに直結しますし、本当に励みになります。
どうか、よろしくお願い致します。
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