ピンガ「俺が生き残る為にオリキャラ生やした」 作:ていとくン
どの時間帯に投稿すれば、多くの人に読んで頂きやすいか、実験がてら毎回時間をずらして投稿しております。
現状20時位がちょうど良さそうだと思っていますが、僕の中で確定したら以降は投稿時間を固定しようと思います。
タァンッ!
昼下がり、閑静なオフィス街に響く一発の銃声。
程なくして、カフェのテラス席に座っていた男性が椅子ごと後ろに倒れる。眉間に風穴が開いたその男性が亡くなっていることは一目瞭然だ。途端に周囲から悲鳴が上がる。
その様子を400ヤード以上離れたビルの屋上から見下ろす男がいた。灰色の髪に黒い野球帽を被り、丸いサングラスをかけた男は、構えていたレミントンM24を下ろす。
彼の名前はコルン。
「ジン。俺、エール、殺した」
『了解、ご苦労だったなコルン。すぐに撤収しろ』
「分かった」
コルンが今回受けていた任務はNOC狩り。組織に潜り込んでいた諜報員を始末することだった。
組織は余りにも規模が大きく、それ故に鼠の侵入を完全に防ぐのは不可能だった。
その為ジンをはじめとする一部の幹部は、定期的に組織内部の人員を調査することで裏切り者のあぶり出しをしているのだ。
一仕事終えたコルンの顔に、表情の変化はない。元々感情の起伏に乏しく、加えて冷静沈着な彼は狙撃手になる為に生まれてきたような人物である。
そんな彼であったが、一抹の情はあったらしい。エールと名乗っていた男とはしばしば任務を共にしており、それなりの信頼関係を築いていたと思っていたのだ。
「俺、エール、信じてた。残念」
戦場を共にした仲間が実は裏切り者だった。既に始末したとはいえ、決していい気分ではない。
こういう時に気持ちを切り替える為の対処法は、コルンの中で決まっていた。
「今日は、飲もう」
カランカラン
「いらっしゃいませ」
コルンがドアをくぐると、ぴっしりとスーツを着た壮年のバーテンダーが、挨拶と共に出迎えてくれる。
薄暗い照明に、ゆったりとしたジャズが流れる。よく磨かれた木製のカウンターには椅子が数脚置かれており、マスターの背後には多くの高級な酒が立ち並んでいる。
ここは組織系列の施設だ。日々の仕事に疲れた者が一時の安らぎを得られるよう、福利厚生の一貫として設置された。コードネームを貰った幹部のみが利用出来る場所である為、機密漏洩の心配も要らない。
ここはコルンの行きつけの店だ。美味い酒を落ち着いた雰囲気で楽しめるこの店を、コルンは密かに気に入っていた。
コルンが入る時は他に客がいないことが多い。だが、今日に限っては先客がいたようだ。
焦げ茶色の髪をした、若い男。店の奥側の席に座り、ナッツを齧りながらカクテルを楽しんでいる。
「おぉ、マスター。これすごく美味しいよ」
「お褒め頂き感謝の極み」
「カクテルなんて洒落たもの飲めるようになったの、
「カクテルの種類は、それこそ星の数ほどございます。どうぞこれからもご贔屓のほど」
「勿論、こんないい店リピートしなきゃ損ってもんだ。……いやこれホントに美味しい。えっと、なんて名前だったっけ」
「モヒートでございます。ベリチィド産の良いミントが手に入りましたので、本日の一押しでございまして」
「どうしようかな〜。これもう一杯飲みたいけど、別のも飲みたいなァ……」
小声で楽しそうにウンウン唸っている男に、コルンは今まで会ったことがない。ここにいる以上はコードネームを貰っている筈なのだが。
独りで酒を楽しむ筈だったコルンは多少肩透かしを食らった気はしたが、幸い奥にいる男は落ち着いて酒を飲める人物のようだ。であれば邪魔になることもあるまい。
そう思い、男から二席あけたところに座ると、マスターがチェイサーを出しつつ注文を訪ねてきた。
「ご注文は如何なさいますか」
「モヒート。俺にも、頼む」
「かしこまりました」
しばらくもしないうちに、目の前にモヒートが置かれる。ミントの葉とライムを潰し、そこにラムと炭酸水を注ぐこのカクテルは見た目から爽やかな一杯であり、暑い今の時期にこそ味わうべき代物である。
飲もうと思い、ふと横から視線を感じる。見ると、先客の男がこちらを向いて軽くグラスを掲げていた。コルンも応えてグラスを掲げる。
空中で乾杯をしてから、一気に半分ほど飲み干す。ライムの酸味が舌に涼やかさを与え、炭酸の刺激と共に喉を通っていく。一拍遅れて鼻を突き抜けるのは新鮮なミントの爽やかな香り。たった一口で、ここしばらくの暑気が抜けていくような気がした。
満足げに頷いたコルンが横を見ると、奇しくも先客が同じように味わい、頷いていたのが少し可笑しかった。
残りのモヒートを楽しんでいるうちに、先客は次の注文をしたらしい。マスターがシェイカーを振っていた。
「お待たせ致しました。ダイキリでございます」
彼が注文したダイキリは、モヒート同様ラムベースのカクテルだ。ホワイトラムとライムジュースをシェイクし、砂糖で甘みを調整するこのカクテルもまた、夏にふさわしい涼やかな一品と言えよう。
静かに、そして美味そうにカクテルを味わう彼を見て。興味を抱いたコルンは席を一つ詰める。先客と目が合う。
「俺、コルン。お前……顔見るの、初めて。新顔?」
「コルン……あぁ、名うての狙撃手だったっけ。俺はアルマニャックだ。組織に入ったのは半年くらい前かな?よろしくね」
アルマニャック。その名前を、コルンは一度だけラムから聞いたことがある。曰く、とてつもない戦闘能力を持った殺し屋だと。
「その名前、知ってる。ラムから聞いた……凄腕の殺し屋」
「あんたの名前も聞いたよ。組織に数いる狙撃手の中でも、一等の手練れだってな」
ストレートな褒め言葉に、頬を赤くするコルン。それを見て表情を柔らかくするアルマニャック。
「ここ、よく来るのか?」
「うんにゃ、来るのは今日が初めてだな。こんないい場所、もっと早く知ってればなァ。コルンはここ行きつけなのか?」
頷くコルン。そこから二人はぽつぽつと言葉を交わしていく。
時折相方と飲むことはあれど、基本的に独りで酒を飲むことが多かったコルンだが、アルマニャック相手に飲む酒を、悪くないと早くも思い始めていることに内心驚く。
「良ければ、オススメ、教える。酒とか、カクテルとか……つまみとか」
「おぉ!ぜひぜひ!勉強させてくれ」
当たり障りのない会話を肴に、二人の酒は進んでいく。何のことはない穏やかな、しかしそれ故に、闇を生きる者にとって千金にも等しい時間はゆるりと過ぎていく。
たまには、こういうのもいい。そう思いながらコルンはグラスを傾ける。
夜が、静かに更けていった。
ダァンッ、ダァンッ
薄暗い倉庫街に、銃声が響き渡る。頭蓋に彼岸花を咲かせて倒れ伏すのは、見るからに柄の悪い男達。
どこから狙われたのか、訳も分からず逃げ惑う連中を、一人一人確実に骸へと変えていく。
数分も経たず、彼女の視界にいた人間は残らず死に絶えた。屋根の上に寝そべっていた彼女は、立ち上がって伸びを一つした。
狐色のショートヘア、左目の目元にはアゲハチョウを模したタトゥーが入っている。H&K PSG-1を携えるこの女性の名前はキャンティ。
『俺だ。こっちは片付いた。そちらはどうだキャンティ』
「ジン!アタイもちょうど今しがた全員片付けたところだよ!」
『分かった。サツが近づいてきている。撤収しろ』
「了解!」
キャンティは組織での仕事を気に入っている。命を奪う快感と優越感、狙い通りの場所を撃ち抜いた時の達成感がたまらないのだ。
狙撃手は待つことが仕事とも言われる。キャンティは自分が短気であることを自覚しており、長時間じっと我慢することは好きではない。
だが同時に、待ち続けた末の一射は、限界まで引き絞られた弓を解き放つようでそれも心地良かった。
今回の仕事はキャンティ好みのものだった。所定のポジションに着いたら、あとは
気分良く仕事を終えられた、こういう時は好きなことをして更に気分を上げていくのがキャンティの習慣だ。久々にあの店に行くのもいいだろう。
「今日は飲もう!」
カランカラン
「いらっしゃいませ」
店に入ると、壮年のバーテンダーが迎え入れてくれる。
相方にこの店を教えてもらって以来、ここはキャンティの行きつけになっている。時折その相方と飲みに行くこともあるが、ここ最近は任務の兼ね合いで行動を共にしておらず、今日は一人での来店だ。
誰かと話しながら飲むのも好きだが、一人でゆっくり酒を楽しむのも悪くない。そう思って店に入ったが、中には先客がいた。
「おぉ、これがコルンってやつか。アルコールが強いけど、癖がなくて飲みやすいね」
「アルマニャック……いい。香りが、別格」
「俺あんま詳しくないけど、マスターが良いのを出してくれたみたいだからね」
「はい、アルマニャック・テナレーズの30年ものでございます。中々いいものが入荷出来ましたので是非」
「んじゃ次はそれ貰おうかな」
「俺も、コルン、飲む」
驚いた。相方のコルンが店にいたこともそうだが、彼が誰かと酒を飲んでいる。
コルンは決して人見知りという訳ではないが、とにかく寡黙な人物だ。その為交友関係は決して広くない。任務ならいざ知らず、プライベートの時間を共にする人物など、ほとんど自分位しかいないと思っていた。
あのコルンと親しげに話している焦げ茶色の髪をした男は何者なのだろうか。この店にいる以上コードネーム持ちの幹部なのだが、生憎キャンティは会ったことがなかった。
「やぁコルン、久し振りじゃないかい。まさかアンタもこの店にいたなんてね」
「キャンティ、久し振り。最近……任務、被らなかった」
「だねぇ。忙しいったらありゃしない。にしても、アンタが誰かと飲んでいるなんて珍しいじゃないか」
キャンティがそう言うとコルンの頬が赤く染まる。彼はこう見えて意外と表情が豊かなのだ。
「隣の色男、紹介しておくれよ」
「分かった。彼、アルマニャック。最近入った、幹部」
その名前にキャンティは聞き覚えがあった。あのラムの肝煎りで入ったとかいう新入り。組織ナンバー2のお気に入りであり、加入と同時にコードネームを貰ったということで一時期ちょっとした話題になっていた。
だが、そのこと以上に、主に幹部の中で最近話題になっていたことがあった。何でも任務中煙草を吸っていたジンの
ジンは"あの方"からも覚えのいい男だ。幹部の中でも現場でのまとめ役を担うことが多い男だが、それ以上に冷酷な男として知られている。コードネーム持ちの幹部でさえ、ジンを恐れる者も少なくはない。
そのジンの顔面に水をぶっかけるなど、およそ正気の沙汰ではない。今なお存命であることが何かの冗談なんじゃないかと思える程だ。
「アルマニャックというと、アンタかい?ジンの顔面に水をぶっかけたってやつは」
「ん?……あぁそんなこともあったな。だが一つ訂正だ。俺は水をぶっかけたんじゃあない。水鉄砲で撃ってやっただけだ」
「アハハハハハ!尚の事イかれてるよアンタ!よく生きてられたねぇ!」
キャンティは腹を抱えて笑っている。ラムも随分愉快な男を幹部に据えたものだ。コルンもしたり顔で頷いている。
「コルンが紹介してくれたが改めて。俺はアルマニャック。組織に入って半年ちょっとになるかな?コルン、俺にもそこのタトゥーが素敵なお姉さんを紹介してくれよ」
「彼女、キャンティ。俺の……コンビ」
「あら、見る目があるじゃないかい♪アタイはキャンティ。コルンと一緒に狙撃手をやってるよ。よろしくね色男」
「お姉さんがコルンの相方か。彼が名前を出してたよ、信頼出来る相方だってね。腕利きのスナイパーって評判は俺もよく耳にしてる。こちらこそよろしくね」
「アタイもあんたの評判は耳にしてるよ。とんでもない実力の殺し屋だとか。あとは……ジンに喧嘩を売ったイカレ野郎ってね」
キャンティがニヤリと笑ってそう答えると、アルマニャックもニィと笑う。
「任務中に煙草を吸うなって俺は何回も注意してやったんだからな。それでも止めないアイツが悪い。臭いがこっちにまで移るし、アイツの吸ってるやつ臭いんだよね」
「ジンが吸ってるのはゴロワーズだったっけ?確かに臭いはキツイけど……だからってなんで水鉄砲なんだい?」
「そりゃ、俺はお前をおちょくってますっていうメッセージだからだな」
「プッ、アハハハハハ!!アンタ本当に面白いやつだね!!」
笑いながらようやくコルンの隣に座るキャンティ。すかざずマスターが注文を聞いてくる。
「ご注文は如何なさいますか?」
「そうだねぇ……二人は何を飲んでるんだい?」
「俺はアルマニャック」
「俺、コルン」
「なんだか自己紹介みたいだね。それじゃあ、アタイもキャンティを貰おうかな」
「かしこまりました」
キャンティの前に出されたのは自分と同じ名前の酒、キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ。イタリアワインの顔とも言われる赤ワインがキャンティだが、その中でも2年以上の熟成がなされた物がリゼルヴァを名乗ることを許される。豊かな果実味と程よくきいた酸味が調和した、非常に飲みやすいワインとして有名だ。
酒が揃った三人は、誰が言うでもなくグラスを軽く掲げる。
「「「乾杯」」」
「ん〜♪やっぱり仕事終わりの一杯は最高だねぇ」
「夏に飲む酒……美味い」
「分かるなぁ。俺は今日仕事じゃなくて研修だったけど、仕事より疲れたよ」
「あん?コードネーム貰ったのにまだ研修なんて受けてるのかい?」
「俺読み書き出来ないんだ。機械の使い方とかも全然分かんない。だからそこら辺を教わる為の研修だね」
「読み書き出来ない!?……そりゃまた、随分と酷いところで生きてきたんだねぇ」
「地獄そのものだったよ。……まぁこの話はこの辺にしとこう。せっかく誰かと飲んでるんだから楽しい酒にしたいよね」
「同感。キャンティ……今日は、何の仕事?」
「そうそう聞いとくれよ二人とも!今日の仕事なんだけどさ……」
仕事終わりの一杯に楽しみを見出すのは、表も裏も変わりなく。そこで話に花が咲くのも変わらない。……話の内容が時折血なまぐさいのはご愛嬌か。
仕事の内容から始まった話が、次第に他愛もない雑談に変わるのも、酒場の常である。
「そういえば、二人はいつから仲良くなったんだい?」
「飲むのは、これで、2回目」
「最初はコルンから話しかけてくれたんだ」
「へぇ!そりゃまた驚きだね。アルマニャックも分かると思うけど、コルンは口数が少ないからねぇ」
「確かに。でも飲んでる時ってそれ位がちょうどよくない?こうやって賑やかに飲む酒も美味しいけどね」
「一理あるね。落ち着いて飲む時は誰しも口数が減るもんさね」
話が進むうち、誰ともなくグラスが空になった。キャンティとコルンが次の注文を考えていると、アルマニャックがマスターに話しかけていた。
「ねぇマスター、
「それでしたら、スティール&アイアンは如何でしょうか。シップスミス・ジンと薬味酒のウンダーベルグで作るカクテルなのですが、コルンの生産国であるドイツでは、ジンをコルンに変えるのが一般的なのです」
「スティール&アイアン、美味い。俺の、オススメ」
「おっ、じゃあそれくださいな。コルンは次どうする?」
「じゃあ俺……キティ、頼む。ワインは
「成程、いいねぇ♪じゃあアタイは……そうだ、ニコラシカにしようかな。勿論、ブランデーは
「かしこまりました」
キティはワインベースのカクテルだ。混ぜるジンジャーエールによって飲み口が変わるのだが、軽い飲み口が特徴のカクテルである為、通常は甘口のジンジャーエールで作られることが多い。
辛口で作るのは珍しい部類に入るが、その分キリッとした飲み口になるので、そちらを好む者もいる。
キャンティが頼んだニコラシカは一風変わったカクテルである。グラスにブランデーを注ぎ、グラスの縁にスライスレモンと固めた砂糖を乗せる。飲む際は、二つ折りにしたレモンを砂糖ごと口に入れ、口内で混ぜる。そしてグラスの中のブランデーを一気に口に入れるのだ。
口の中で完成させる独特なこのカクテルは、その飲み方の都合上一気にブランデーを煽ることになるため、その味わいによってカクテルの味が大きく変わることも特徴だ。
各々頼んだ酒が揃ったところで、再度乾杯をする。美酒が喉を潤し、誰ともなくため息がこぼれる。
「うん、美味い」
「こっちも美味いね。随分いいアルマニャックじゃないか」
「マスター、言ってた。それ、30年モノ」
「ホントにいい酒じゃないか!」
「これも美味しいなぁ。薬草使ってるだけあってパンチが効いてるよ。飲み口も涼しいし、夏はこれかモヒートだね」
「なら、アタイは次それを飲もうかな」
「俺はキャンティのカクテルにするよ。……コードネームが酒の名前だと、こういう楽しみもあるんだね」
「お互いの名前の酒、飲むのも、いい」
「アタイもよくやるよ。何飲むか迷った時なんてちょうどいいからね」
他愛もない雑談を肴に、酒を飲む三人。話が途切れることはなく、酒が途切れることもなく。
悪党同士で絆を深めるのも悪くはない。いつ死ぬともしれぬ身、一日を全力で楽しむことも必要だ。
夜が、賑やかに更けていった。
翌日
コルン「吐き気、やばい、気持ち悪い。死にそう」
キャンティ「アタイの頭で鐘を鳴らしてるのは誰だい……」
アルマニャック「スピースピー」(爆睡)
コルン・キャンティ「…………若いっていいなぁ」
この二人、原作でもあんまり出てこないのでどうやって話に絡めようか、中々困りまして。迷った末にこうなりました。
でも、せっかく酒の名前がコードネームになってるんだし、こういう話作らなきゃ損じゃない?だからいいよね!
ただアダルティというか、落ち着いた雰囲気を出すのが難しかったですね……ここら辺はもうちょい色々な作品を読んで勉強したいです。
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