神田明神。
もう初ライブも明日となってきた。初ライブ前日までここで朝練と夕方練習をしていたので体力も足の速さも上がっていた。今も俺が笛を吹いて穂乃果と海未が階段ダッシュをしているのだが同じくらいの速さで走っているのだ。始めた頃はバテバテだった穂乃果が運動部で体力がある海未と同じ速さで走っていた。しかも笑顔で走り終えていた。
「よし、穂乃果も海未もタイムが上がってるな。ことりも上がってるし、よく頑張ってるよな」
「それはそうだよ!今の私はやる気に満ち溢れてるんだから!」
だったら授業中に寝ない方がいいと思うぞ。プリントを回収するのも大変だし海未や先生からの睨みが怖えから寝ないで欲しい所である。
「では次、ダンスの練習に移りますよ!」
「「うん!」」
そしてダンスの練習が始まったのだが、階段ダッシュもダンスレッスンも見慣れた光景になってきたな。
「1、2、3、4、5、6、7、8、1、2―――」
小さな鏡を地面に置いて確認しながら踊っている。海未の掛け声を合図に踊っているのを俺たちは1人ずつ見ているのである。
「穂乃果!」
「タッチ!」
「自分達で声掛け出来るまでになったんだから凄いもんだよな」
「そうだよね」
最初は俺たちが指摘していたのだが最近では前に俺たちが言った事を指摘し合ったり声掛けするようになっていて成長も感じられるようになってきている。
「では、朝練はここまでにましょう」
朝練終わりの時間になったようである。穂乃果達は日陰の方に移動し始めたので俺たちはドリンクをクーラーボックスから取り出す作業に入った。
「ふうぅ~、終わったぁ……」
「ほら、水分」
「つ、冷たい!?」
「そりゃまぁ冷やしてあるからな」
俺は冷えたペットボトルを当ててやると、まぁ予想通りの反応をしてきた。流石は色んな意味で期待を裏切らないで有名な幼馴染である。
「もう何するのさ道君!」
「いや、そっちの方が気持ち良いかと思ってな」
「確かに気持ち良い……」
俺が考えた適当な理由で納得してしまう穂乃果。コイツは真面目に言えば大抵の事は納得してくれる。誤魔化したい時とかは楽で良いが本当に成績は不安である。
「海未ちゃん水分」
「あ、翔也ありがとうございます」
「はい。ことりちゃん」
「ありがとう拓郎君!」
朝練が終わり穂乃果達が疲れた感じになっているがこれが夕方もあるので自分だったら適当な理由をつけてサボりたいスケジュールである。だが穂乃果達はサボる事なくやり切ったのだから流石なものである。
「見ている身からしても3人とも上達してるように感じるな」
「そうだよね」
「2人がここまで真面目にやるとは思いませんでした。穂乃果や道夫は寝坊してくるとばかり思ってましたし」
「なんで穂乃果だけじゃなくて俺まで加えられてんだよ……」
「1年生の時の遅刻回数を覚えてますか?」
「さぁ……」
「77回ですよ!77回!!一体どうすればそんなに遅刻出来るんですか!?」
「エグい数字だ……」
俺は昨年度そんなに遅刻してきたらしい。まぁ布団は幸せだし睡眠も大事だから仕方ないよな。睡眠欲求に負けただけで穂乃果達から呆れたような笑いをするのを辞めて欲しい所である。
「私でも朝起きるの苦手だけどそんなに遅刻はしないよ!その代わり授業中にぐっすり寝てるけど!」
「何も誇る所ではないし、そんな事してるから成績が悲惨な目に遭うのが何故わかんねぇんだ?」
「全くです……」
「あははは……」
もう誰が言ったって聞かないからなぁ授業睡眠に関しては。海未が諦めるというかお手上げなのは相当な快挙だと思うぞ?割とマジで……目覚まし時計とかを耳元で鳴らした方がいいのかもしれねぇな。授業が進まなくなっちまうから没の案だがそれくらいしないとダメそうだ。
「お?」
全員が穂乃果に呆れてると、俺たちの視界に赤い髪が動いた。いやもう十中八九の可能性で誰なのか分かるのだがもう隠れたりせずに素直な後輩でいればもう少し扱いが楽なのだがこれもまたこれで魅力なのかもしれねぇな。
「あっ、西木野さーん!まーきちゃーん!!」
見られた事に気づき慌てて立ち去ろうとしたが穂乃果がそんな事を見逃すはずがない。大声を出してフルネームで呼んだ。そして大声で呼ばれて恥ずかしいのか階段を上がってきた。
「大声で呼ばないで!」
もう自分の髪とそっくりの真っ赤の顔して穂乃果に抗議してくる。まぁ恥ずかしいもんな。
「ほぇ、なんで?」
「恥ずかしいからよ!」
道「当たり前なんだよなぁ……」
穂乃果は大声で叫ぶのを悪気があってやっている訳では無いのが困る所だ。そして穂乃果は大声で呼ばれても困らないという鋼のメンタルを持っているから気持ちは分からないのだろうな。
「そうだ!この曲、3人で歌ってみたから聴いて!」
「見事にスルーしてる……」
「これが日常だ。慣れろ」
翔也の言う通り穂乃果は割と相手の話をスルーするからもう日常の一部として受け入れるしか無いのだ。実際俺や海末の苦言を何度もスルーされてきたからな。
「はぁ、何で?」
「だって、真姫ちゃんが作ってくれた曲でしょ!」
「っ……、だからぁ、私じゃないって何度も言ってるでしょ!」
また、このやり取りが始まった。最近は会うなりずっとこのやり取りをやっているのでこの2人だけループしてるんじゃねぇかと思うくらいに見ている光景だ。
「まだ言ってるのですか……」
海未も隣から呆れたように言っているが、そう言われても文句言えないのだ。本当に飽きないコンビだな。
「え?」
「ぐぅぅぅぅぅぅ~~……」
「なんだ?ついに人間を辞めるのか?」
「ガオオオオオッ!!」
穂乃果が急にゲームのボスの怪獣みたいな声を出し始める。女子に失礼とかそんな事は関係ない。もし俺がプレイヤーだったら容赦なく攻撃するくらいに似てる穂乃果が悪い。
「うぁ、ちょ、はぁぁ!?何やってんのよ!」
「うふふふふふふうひひひひひひ……」
「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「110番通報されそうなやり取りなんだけど……」
もう、もはや通報されてもおかしくないと思ってしまうな。穂乃果は何も知らなければ電話されちまうやり取りをしながら手をポケットに入れていた。あぁ……何が目的なのかやっと分かったわ。
「ぃよぉし!作戦成功!」
「強引過ぎる作戦だなぁ。おい」
なんとも強引過ぎる作戦だった。相手にくっついて困惑させから耳にイヤホン突っ込むとか穂乃果くらいしか思いつかない方法である。
「えっ……?」
「結構上手く歌えたと思うんだぁ!いくよぉ~!」
穂乃果のその言葉にことりと海未も察したのか穂乃果の横に駆け寄る。いや、以心伝心が上手すぎやしませんかね?
「μ's!」
「ミュージック〜」
「「「スタート!!」」」
幼馴染達のまるで打ち合わせしてたかのような連携から始まったであろう音楽を西木野は真剣に聞いていた。そして聴き終わると『まだまだよ!』みたいな厳しい発言をして去って行くのだが少し笑ってるように見えた。こういうのをツンデレと言うんだろうな。
「よし俺たちもそろそろ時間だし学校に行く準備するぞ」
俺がそう言うと3人とも人が来なそうな場所で制服に着替える。ジャージを着て練習をするのは良いが着替え場所がないので来なさそうの場所、そして俺たちは万が一に誰か来そうになった時に防ぐための見張りをすることにしているのだ。
そして着替え終わったら学校へと登校という訳だ。なんともいう忙しい朝のルーティンである。
ーーーーーー
「ふぁぁ~……」
校門を過ぎると隣からなんとも気が抜ける欠伸が聞こえた。
「眠る気満々ですね……授業中に寝るのはダメですよ」
「そうだそうだ、欠伸をすると俺も眠くなるからすんじゃねぇ」
「欠伸にそのような効果は無いはずなのですが……道夫もダメですからね?」
「うーい」
穂乃果のせいで俺にも苦言が飛んできた。とんだとばっちりであるが俺は眠ければ誰になんと言われようと勝手に寝るのであまり意味がない。穂乃果もそういうタイプなので海未の苦言全く効果がないのである。
「ねぇ、あの娘達じゃない?」
なんか、後ろから俺たちに対する視線を感じるし声が聞こえてきた。
「?」
ことりが立ち止まると穂乃果達も立ち止まる。やはり視線や声が気になったのであろう。やはり美少女と男子生徒が3人ずついれば注目も浴びるのか?だとしたら普段ももっと視線を感じそうなもんなんだが……。
「あなた達って、もしかしてスクールアイドルやってるっていう……」
声を掛けて来た生徒は緑色のリボンをしていたので先輩である事は分かった。やはり掲示板の効果は良かったようで先輩にも認知されているようだ。
「あ、はい!μ'sってグループです!」
「μ's?……ああ、石鹸の―――」
「違います」
「そのやり取りも久しぶりだね……」
「って!?男子生徒の人気ランキング上位の西海君まで居る!って事は西海君も……」
「違います」
ことりからグループ名を聞いた先輩は穂乃果と同じく石鹸ボケをかまして、もう1人の方は西海がいる事に驚きスクールアイドルかと聞く。もう穂乃果が2人いるみたいな感覚である。本物もいるから実質穂乃果3人か?ツッコミが追いつかないなこれは……。
「あ、そうそう。うちの妹がネットであなた達の事見かけたって」
「ホントですか!?」
なんでライブもやってないのにネットで見かけるのか謎に思ったがランキングか。でもこうやって広まって来てるんだから活動は順調という事だな。
「明日ライブやるんでしょ?」
「はい、放課後に!」
「どんな風にやるの!?ちょっと踊ってみてくれない!?」
「えっ?こ、ここでですか……?」
「先行プレミアム公開をお好みみたいだな」
「なんだそれ」
先輩達がダンスを見せる事を望んできた。後、翔也がよく分かんない事を言い出した。なんだよ先行プレミアム公開って……。
「ちょっとだけでいいからぁ!」
「ふっふっふっ、いいでしょう……もし来てくれたらここで少しだけ見せちゃいますよ~?お客さんにだけ特別にぃ~……」
なんか穂乃果が不敵の笑みを浮かべながら答える。なんかこの言い方だと怪しいお店の商売みたいに聞こえてくるんだが……。これ俺だったら購入拒否するレベルの怪しさである。
「お友達を連れてきていただけたら、さらにもう少し!」
ことりの方は普通の対応だった。そうそう、そういうやり方で意欲を呼び込むんだよ。分かったか?穂乃果。
「ホントぉ!?」
「行く行く!」
「毎度ありぃ!」
「店員シリーズにでもハマってるかのようなレパートリーで関心するぜ」
翔也の言う通り今度は商店街のおっちゃんみたいな対応を披露してきた。ネタのレパートリーが多くてこっちはツッコミのレパートリーが増えそうなのでそれを想像すると胃が痛くって仕方ないので考えるのを止める。
ビユーーーーン!!
ん?今隣からもの凄い風圧が……。何かが走り去って行くような感覚だった。
「あれ、もう1人は?」
「アイツ……」
「海未ちゃん……?」
穂乃果やことりは分かってなさそうだが俺には分かる。あいつ恥ずかしくなって逃走しやがった。
ーーーーーー
あの後、教室に居た海未に話を聞こうにも無理ですを連呼するだけのマシーンみたいになっちまっていた。そして不覚にも笑ってしまったのは無理ですとか連呼しながらノートは取るし、当てられたら答えを答えて着席したらまた連呼し始める事だ。そのせいで翔也は大笑いを我慢出来ずに先生に怒られ課題が増えたのだ。俺はクスクス笑った位なのでバレてない。
「やっぱり無理です……」
「もう放課後だぞ?」
そして今では放課後の屋上で体育座りをしているのだ。いや引き摺りすぎやろ。どんだけ深刻なんだよ。
「えぇー!どうしたのー?海未ちゃんならできるよー!」
壊れてしまった海末に穂乃果は励ましの言葉を言う。
「……出来ます」
「え?」
「おぉー……、やっと無理です以外喋った」
「気にすんのそこじゃねぇだろ……」
予想外の言葉に驚く穂乃果とことりに西海。予想外のボケにツッコミを入れる俺。もう予想外ばっか起きてんなこの空間は。
「歌もダンスもこれだけ練習してきましたし……でも、人前で歌うのを想像すると……」
「緊張しちゃうんだね?」
「……」
西海の問いに無言で頷く海未。
とんでもないレベルの恥ずかしがりやである海未にはライブなんて相当きついのだろう。厳しいメニューを2人にバンバンやらせていたから自分も覚悟を決めてたかと思ってしまっていたわ。
「……そうだ!そういう時はお客さんを野菜だと思えってお母さんが言ってた!」
いや野菜なんて何種類あんだよ……。もっと具体的に人参とかじゃがいもとか言って提示してやれば良いのに……。なんかカレーが食べたくなる組み合わせだなこれ。
「野菜……。っは!私に1人で歌えと!?」
「そこ……?」
「野菜が見ててもそれに辿り着くってもはや才能だな」
「な」
海未もこう見えてポンコツ化する事が稀にあるのだ。そのポンコツは面白いんだがしっかりして欲しい時にされると悩みの種になっちまうから困ったもんである。翔也の言った通り野菜が見てても1人の事を気にするとかもう手遅れな気がしてならない。
「はぁ、困ったなぁ……」
「でも、海未ちゃんが辛いんだったら、何か考えないと……」
「どうすればいいんだろう……」
「人前じゃなければ大丈夫だと思うんです!人前じゃなければ……!」
「海未ちゃん、それ意味ねぇぞ……」
みんなで解決策を考えていたのだが人前じゃなければとかいう無理難題を要望する海末に頭を悩ませる。と言ってもライブは人に観てもらうもんなんだから慣れなければ……!?そうか。
「穂乃果!海未を多少無理にでも立たせて場所を移動するぞ」
「えっ?まぁ分かったけど……。ほら海未ちゃん、場所を移動するって!」
「何をするつもりですか道夫……」
「動かない事には始まらねぇからなぁ?少々、荒療治しようってわけだ……」
「な、何をするつもりなのですか!?」
「あ、そういう事か!」
俺の意図が分かった穂乃果は納得、海末はビビりだした。てか怯えられるのは俺の笑っている表情からなのかねぇ?失礼な奴だ。
「チラシ配りだよ?チラシ配り……」
「ヒィッ……!?」
「なんか道が悪い顔してんだけど大丈夫か……?」
翔也が何か言っているがもう構ってられない。前日になってこんな事言い出した方が悪いんだからな?
「さぁ、行くぞ」
「い、嫌です!穂乃果!ことり!助けてください!」
「穂乃果は道君の案に賛成!」
「ことりも〜!」
「そんなぁ〜!?」
穂乃果に裏切られてことりにも裏切られて絶望的な状況になる海未。いや不機嫌な俺も悪いがチラシ配りくらいでそんなに騒ぐなよ……。
オリキャラが喋る時に名前がいるかどうか教えてください
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いる
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いらない