幸せな未来へ    作:多音

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2度目の交渉へ

 

「逆効果か……」

 

 俺の前の席である穂乃果は先生の話に耳も傾けず考え事をしていた。その原因は会長から言われた言葉である。

 

『スクールアイドルが今までなかったこの学校で、やってみたけどやっぱりダメでしたとなったら、みんなどう思うかしら?』

 

『私もこの学校が無くなって欲しくない。本当にそう思っているから、簡単に考えてほしくないの』

 

 この発言は問題無いのだが、言い方は意見の押し付けであり言い返えさせない反論させないという意図が分かりやすかった。本当にいうやり方気に入らない。

 

「私、ちょっと簡単に考え過ぎてたのかも……」

 

 

 

 

 休み時間、穂乃果は俺たちに気づいた気持ちを伝えた。

 

「やっと気づいたのですか?」

 

「でも、ふざけてやろうって言った訳じゃないよ? 海未ちゃんのメニュー、全部こなしているし、おかげで足は筋肉痛だけど……」

 

「確かに頑張っているとは思いますが、生徒会長が言った事はちゃんと受け止めなくてはいけません」

 

 道「まぁ、俺たちが出来るのはライブで真剣である事を示すしかないだろ?」

 

「ライブで納得させるって事?」

 

 道「まぁ簡単に言えばな」

 

 自分達がふざけてる、リスクのある行動を軽く考えてると思われてるのは確かだ。会長が恐れているのは上手くいかなかった。それにより来年の新入生が更に少なくなり廃校となるのを防ぎたいのだろう。

 

 西「やり方が違うだけで学校を守りたい気持ちは一緒なのにね」

 

 翔「リスクのある行動の考え方の違いだろうな。まぁ会長が気にしているのは失敗のリスクの大きさを気にしてるんだ」

 

 どちらも学校を守りたい気持ちは強い。やり方の違いでぶつかってしまうのだがどちらも間違ってはない。ただお互い変えなければならない所があるといった所だろう。

 

「そうだよね……あと一ヵ月もないんだもんね……」

 

「ライブをやるにしても、歌う曲くらいは決めないと……」

 

「今から作曲者を探している時間はありません。歌は他のスクールアイドルのものを歌うしかないと思います」

 

「そうだよね」

 

 それは辛いだろうなぁ……。作詞まで完成したものが曲に出来なくなってしまうんだから。時間無いのが原因だがそれで白紙になるのは気分が悪いな。

 

 道「確かに詰みかも知れない。だがまだやる事があるんじゃねぇか?」

 

「道君……?」

 

 道「確かに時間は無い。だがことりは衣装を海末は作詞を頑張っているんだ。穂乃果もお前にしか出来ない事があると思うぞ」

 

「出来る事って?」

 

 道「まず動いてみるんだな」

 

 穂乃果にしか出来ない事はたくさんあるのだ。だがその答えは自分で動いて見つけるべきだ。穂乃果も思いついたのか教室から出て行動に移し始めた。ことりと海末は突然の事でびっくりしていたが何かを察したのか追わなかった。

 

 西「追わなくても良かったの?」

 

「うん! 追わなくて大丈夫だよ」

 

「そうですね」

 

 やっぱり幼馴染には伝わるようだな。

 

 

 ーーーーーー

 

「入ってた?」

 

「本当!?」

 

 穂乃果が最初に思いついた事はグループ名の募集箱の確認だったようだ。穂乃果は自慢気に紙を見せている。

 

「あったよー!! 1枚!」

 

 1枚だけだが、この1枚で全てが決まるだろう。穂乃果の開いた紙をことりと海末も駆け寄る。まぁ俺達もその紙を見に駆け寄ったがな。こういうのはふざけて入れる人も居そうだけどな。購買のパンの種類を増やしてくれとかな。それは穂乃果が生徒会の生徒要望のBOXに入れた奴じゃねぇか。

 

「……ユーズ?」

 

 そこにはμ'sと書かれていた。まぁユーズとも読めるかも知れないが穂乃果はもう少しお勉強しようぜ。

 

 

「多分、μ'sミューズじゃないかと」

 

「ああ、石鹸?」

 

「違います……」

 

 翔「コントみたいだな……」

 

 まぁやるとは思ったが流石は穂乃果だな。自信満々でボケるのを見てると面白いがやはり心配になってしまう。

 

「恐らく、神話に出てくる女神から付けたのだと思います」

 

 西「その知識量は凄いね」

 

 海末もかなりの知識が豊富だな。ギリシャ神話はあまり興味がない人が多いと思うのだが、海末は流石であるな。

 

「へぇー……」

 

「良いと思う! 私は好きだな!」

 

 西「そうだね。僕も気に入ったよ」

 

 翔「俺も気に入ったぜ」

 

 みんな気に入ってるみたいだな。ことりは笑顔で答え、西海と翔也も気に入った様子である。俺もギリシャ神話には詳しくないがこのグループ名は気に入った。

 

「……μ's……うん! 今日から私達は、μ'sだ!」

 

 穂乃果の一声でたった今決定した。誰も異論はない。しっくり来るし穂乃果達に本当に合ってると思うしな。

 

 ーーーーーー

 

 さて、穂乃果の次の行動は真姫への2度目の交渉へと1年生の教室へと向かっていたがもう誰も居なかったのである。

 

「ああ~、誰もいない……」

 

 道「遅かったみたいだな」

 

 まだ授業終わってそんなに時間経ってないはずなのだが帰るの早えぇなぁ。

 

「にゃ?」

 

 道「おぉー……猫っ娘か?」

 

 誰も居なくて困っていたら猫っ娘が現れた。にしても話した事ない先輩に向かって猫語で話しかけてくるとはかなりの後輩だな。にしても『にゃ?』で伝わるの凄いな。

 

「ねえ、あの子は?」

 

「あの子?」

 

 いや、それで伝わらないよね。逆に伝わったら……。

 

「西木野さん、ですよね。歌の上手い……」

 

 道「分かるのかよ……」

 

 後ろに居た眼鏡を掛けた少女はこんな情報の無い質問で答えを導き出せるの凄いなぁ。確かな確信を持つ声音で恐る恐る答えた。

 

「そうそう! 西木野さんっていうんだ」

 

「はい。西木野、真姫さん」

 

「用があったんだけど、この感じだと、もう帰っちゃってるよねえ。だは~」

 

 道「まぁそうだろうな」

 

「音楽室じゃないですかー?」

 

 オレンジの髪の子が答えたが眼鏡の子も同じ考えのようで、うなづいている。

 

「あの娘、高江君としか喋らないんです。昼休みはいつも図書館だし、放課後は音楽室だし……」

 

 俺もびっくりするくらいに浮いてしまっている。まぁ高江? って奴が間に入ってるからある程度は上手くいきそうだが、やはり美人で話しかけて来ないクール系となると話かけづらい雰囲気になってしまうのだろうな。

 

「そうなんだ……2人共、ありがとう!」

 

 どこに居る事が多いという有益なな情報を得られた穂乃果は笑顔で礼を言う。

 

「あの!」

 

「うん?」

 

「が、頑張ってください……アイドル……」

 

 聞き取りにくい小さな声だったかもしれないが、力になる応援を貰う。やっぱり自分達の活動に不安もある穂乃果には嬉しい言葉だろう。

 

「っ! ……うん!! 頑張る!!」

 

 ガッツポーズをして今度こそ去る穂乃果。俺も着いて行った。

 

 あの2人のような妹みたいな雰囲気な後輩もいれば、西木野って子や昼に話しかけて固まってしまった奴みたいに話すのが苦手な奴もいる、かと思えば出会って2日でその西木野と行動するようになる物好きや場の雰囲気を一瞬で変えてしまう、なのです口調の男の娘もいる。それが一つのクラスに固まるとかカオスだなと思えてしまった。

 

「何笑ってるの道君?」

 

 道「いや、今年の1年はカオスだなと思ってな……そう言うお前も顔が緩んでるけどな」

 

「だって応援して貰ったんだよぉ〜? 嬉しいに決まってるよ!」

 

 道「そうですかい」

 

 穂乃果はというと応援された事で頬が緩みまくっていた。まぁ応援される事は嬉しいものだし良いんだけど、もう少し表情を抑えるとかした方が良いと思う。

 

「道君、私、頑張る。今までも頑張ろうとは思ってたけど初めて会った子に応援して貰ってもっと頑張ろうって思えたんだ」

 

 道「そうだな。まだライブもやってないのにあれだけ応援してもらったんだ。完成度の高いライブをして応援して良かったって思わせないとな」

 

「うん!」

 

 本人もやる気のようだし、全てが完璧とはいかずとも納得のいくライブが出来そうだなと感じた。

 

 

 ーーーーーー

 

 今俺と穂乃果は音楽室の前で待っていた。着いたので俺が引き戸に手を掛けようとしたら止められたのである。終わるまで聞いていたいんだとさ、まぁ気持ちは分かるな。やがて演奏が終わり隣からうるさい位の拍手が聞こえてきた。

 

 道「拍手がうるさい。それと顔が凄い事になって驚かれてるぞ?」

 

 俺の苦言を無視して拍手を終えると音楽室へと入っていく。いや、無視は良くないと思うのだが……‥。それと西木野は不機嫌を隠さない表情になっている。隣の高江という奴は苦笑いしている。

 

「何のようですか……?」

 

 高「まぁ、何となく内容分かるけどなぁ」

 

 西木野は嫌そうに聞き、高江はまた来たねみたいな反応している。

 

「やっぱり、もう1回お願いしようと思って」

 

「しつこいですね」

 

 道「本当にそれな」

 

 穂乃果は確かにしつこい所がある。俺も同意したくなってしまうくらいに、だが穂乃果はその諦めないで捉え方によってはしつこいと思われる何度もチャレンジする性格で結果を出してきているのだ。

 

「そうなんだよねえ、海未ちゃんにいつも怒られるんだー」

 

 高「認めちゃったよ……」

 

 海末に毎日のように怒られてるもんな。そりゃあ認めるようにもなるだろう。

 

「私、ああいう曲一切聴かないから、聴くのはクラシックとか、ジャズとか」

 

 高「確かにアイドルとは違う感じの曲だね」

 

 アイドルのような曲は全然興味が無いようだな。反対に俺はジャスとかクラシックは全然知らないな。アイドルも穂乃果がやろうと言い出したから勉強しただけだし俺は音楽あまり好きじゃないのかもしれない。

 

 

「……へえー、どうして?」

 

「軽いからよ! 何か薄っぺらくて、ただ遊んでるみたいで」

 

 確かに知らない人が見れば笑顔で踊ってるだけに見えてしまうだろうな。それはテレビで出てくるアイドル達は笑顔で歌って踊り、バラエティーでは弄られキャラになるアイドルもいる程だ軽いと思われてしまうのも無理はないだろうな。

 

「そうだよねえ~」

 

「え?」

 

「私もそう思ってたんだ。何かこう、お祭りみたいにパァーっと盛り上がって、楽しく歌っていればいいのかなって。……でもね、結構大変なの」

 

 そう、穂乃果が言ったように盛り上がって楽しくやれば良いと思われがちだが大変なんだアイドルは。テレビとかでよく観るアイドルグループの中にはオーディションを行われて選ばれた人達で結成されてるアイドルも居るみたいだし、その座を得る大変さがそれだけで伝わってくる。

 

「ねえ、腕立て伏せできる?」

 

「はぁ!?」

 

 道「確かに体験して貰った方が早いな」

 

「何でそんな事を!?」

 

「出来ないんだあ~」

 

「うぇっ!? で、出来ますよそのくらい!」

 

 高「ちょろいね」

 

 穂乃果の挑発的な言葉に真姫もイラついたのか反抗的に言葉を返す。後、高江はストレートにちょろいとか言っちゃダメだろ……。西木野はもう穂乃果の挑発に対する苛立ちで聞いてないみたいだが。

 

「1、2、3……これでいいんでしょう……!?」

 

 高「割と余裕そうにやってるじゃん」

 

 ブレザーを脱いで、ワイシャツを捲り腕立て伏せをしていたが余裕そうにこなしていた。なんか何をやらせても出来そうだなコイツ。

 

 

「おおー凄い……! 私より出来る!」

 

「……っ。当たり前よ、私はこう見えても――」

 

「ねえ、それで笑ってみて?」

 

「え、何で?」

 

「いいから!」

 

 穂乃果は昨日海末に言われた事をそのまま西木野に伝える。言葉を遮られて嫌な顔をしていたが穂乃果に言われた通りにやればアイドルの大変さを少しは理解出来ると思う。

 

「……ぅ、うぅ……うぅううっ……、はぅ……」

 

 言われた通り笑顔で腕立て伏せをするが、その表情は硬いものだった。

 

 

「ね? アイドルって大変でしょ?」

 

「何の事よ!?」

 

 高「もう敬語が抜けまくってるね」

 

 まだ分からなかったのか敬語が抜けた状態で抗議する。敬語苦手な娘なのかもな。

 

「ふぅ……全く!」

 

「はい、歌詞。一度、読んでみてよ」

 

 穂乃果はそう言って歌詞を手渡す。

 

「だから私は……!」

 

「読むだけならいいでしょ? 今度聞きに来るから。その時、ダメって言われたら、すっぱり諦める」

 

 穂乃果の奴、賭けにでやがったな。まぁ確かにこのまま押し問答を続けてもお互いにとって良くないし良いと思うぞ。

 

「答えが変わる事はないと思いますけど……」

 

 そう言いながらもしっかりと歌詞を受け取る。これはさっきまでとは大きく違うな。

 

「だったらそれでもいい。そしたら、また歌を聴かせてよ」

 

「え?」

 

 道「そうだな。俺もまた聴きたいな」

 

 穂乃果と同じであの西木野の歌は何度でも聴いていたいと思える歌唱力とピアノだ。穂乃果は西木野にやってもらいたいが聴いているのも楽しいという事だろうな。俺も聴きたくなってるから気持ちは良くわかる。

 

 

「私、西木野さんの歌声大好きなんだ! あの歌とピアノを聴いて感動したから、作曲、お願いしたいなーって思ったんだ!」

 

 穂乃果は伝えたい事は伝えた。後、どうするかは西木野次第だ。

 

 道「毎日朝と夕方に神田明神の階段で練習してるんだ。興味があったら見にくるといいぞ」

 

「うん! 良かったら遊びに来てよ!」

 

 俺もどこで練習してるかだけ伝えて音楽室を後にする。穂乃果も俺に続いて音楽室を出る。

 

「ねぇ道君。西木野さん作曲してくれるかなぁ?」

 

 一緒に廊下を歩いていたら少し不安そうに聞いてきた。まぁ心配になるのは分かる。

 

 道「西木野が決める事だから俺にも分からない。だが最初のアプローチの時よりは期待出来ると思うぞ」

 

 恐らく西木野は作曲するかどうかで迷うだろう。それは穂乃果達の活動にも興味を持ち始め断固拒否から悩むまでに持っていったのだ。後は西木野の気持ち次第だ。それに入学してから一緒に行動してる奴が側に居るんだし、もう俺らが出る幕ではない。

 

 道「俺たちも行くぞ」

 

「うん!」

 

 俺たちも神田明神での練習に向けて、練習場所へ向かう。俺も良い結果で迎えられる事を祈りながら歩き出したのだった。





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