Area ガレージ
今日は、どう考えても学校は休校なので、フィリップは、いつもの服を着ていたちなみに士道は外に出ていていない
フィリップは、昨日のドーパントのことを調べていた
「……検索キーワードは……AST……刃……駄目だ絞り込めない…」
「……そこに追加キーワード、岡崎萌衣、鳶一折紙」
……ただし、折紙が代わりに事務所へと来ていたのだった 折紙は、数少ないWと地球の本棚を知る人物の一人であり、
昨日からいなくなっているエッジドーパントの行方を知りたいため、
鳴海探偵事務所に来たが、士道が学校に現地調査しに行ったと聞いたので若干落ち込み気味である
「……あった………エッジドーパント……間違いない、岡崎萌衣という人物だ……現在、プリンセスを狙い、ASTを避けつつ行動中らしい……」
折紙は、本部から取ってきた岡崎の情報をフィリップに見せる
「……どうやって探したんだい?」
「士道のためなら、例え、個人情報を握り潰しても…」
「ああ……分かったよ…ふむ………部隊一のバーサーカーか……確か、検索によると、模擬戦で折紙に連敗してたよね」
フィリップは、岡崎萌衣の情報をホワイトボードに書き記す
「……彼女は確か、私が入ったときには隊長を抜かして一番のCRユニット技術を持っていた」
「……だけど、最近伸び悩みで折紙にすら抜かされて、それを克服する訓練で、大怪我をする……恐らくその時点でガイアメモリを買って無理やり怪我を治したのか」
折紙は、律儀に士道がいつも座っているソファに座っていた
「……彼女は、良い訓練仲間だった………でも、彼女は今まで、限界を越えた戦いかたをしなかった………多分、私のせい……」
フィリップが、コーヒーを折紙の前に置くと、ブラックのまま、飲み始める
「君は、相変わらず変わらないんだね……はじめて会ったあの日からだけど」
「……」
「鳴海荘吉や君の親が精霊で死んだからと言って、精霊そのものに八つ当たりするために、無茶をする……正直、馬鹿らしい」
「……」
「……君のやっている復讐は無謀であり、無意味だ……まるで、虎が大切な人を殺したから、虎を皆殺しにするぐらい……いや、それ以上の馬鹿らしいことだね」
折紙は、黙っていた 何かを言いたいのは分かるが、正論を言われたため何も言い返せない
「……私は……どうすればいい?フィリップ」
「……士道なら、こう言っているだろうね………」
『自分を犠牲にしてまで、精霊を殺す……?そうかんがえてんのはお前だけだ!
少しは周りを見ろ!心配してるやつがいるだろうが!』
「……!」
『貴女、無茶しすぎよ、死にたいの?』
……折紙は、考えた……自分があまりにも精霊を殺すことを考えていたこと
に急ぎすぎて周りのことを考えていなかったのに気づいた
自分の無謀な行動が、隊長や、他の隊員にも被害があったとするならば………これは「チーム」ではないと気づかれてしまったのだ
自分の無力さに歯軋りをする
「……精霊を倒すならば、君だけの力に限界が来る……君が更なる力を求めた先に待つのは……破滅だ よく考えたまえ」
フィリップがそう忠告した後、フィリップのスマートフォンが鳴り出す 士道からのメールだ
「何?それは本当かい?……分かった」
スマートフォンを切るとフィリップが立ち上がる
「何処にいくの?」
「急用ができた 君はそこでゆっくりしていてくれ」
フィリップは、階段をかけ上がると折紙は怪しく感じ、コーヒーを飲み干すと尾行するために階段を登っていった
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Area 学校
士道は、昨日のドーパントの情報を探すために学校の空間震で壊れた教室を歩く
ちなみに今、着ているのは黒い仕事服といつもの帽子だ
「おーい!シンちゃん!」
そこには、パーマをかけた髭を少し生やしたおじさんが士道に向けて手を振っていた
「おっ、ウォッチャマンか 昨日依頼した情報見つかったか?」
士道は、教室から瓦礫を伝って降りていくと校門前のウォッチャマンに会うと、お金を一万円渡す
「いやぁ……行きつけのバーに知り合いの自衛隊隊員がいたからさ……結構べっぴんさんでね」
「あー、自慢話はいいからな?」
ウォッチャマンが自分の世界から現実に引き戻すと情報を伝える
「昨日行方不明になったのは……岡崎萌衣、男勝りの口調が特徴で、現在、捜索中らしいんだけど、見つかってないらしいよ?……だけどね〜この付近で、見つけた人がいるらしくてね、多分この付近にまだいるんじゃないかな?
でも、不思議だよね〜一昨日にCRユニットすら治せない怪我をしたのに治るなんて………」
士道は、やはりその人がドーパントなのかと確信をした……しかし、自衛隊の目を潜り抜けて逃げているとなると、困難……
一応昨日の夜、士道の周りにもフラクシナスでサーチしてもらったが、反応はないようだ
「……ありがとう、ウォッチャマン」
士道は、帽子を外して礼をしたが、ウォッチャマンは何かに気がついたようだ
「あーっ!きゃわいい子発見って、なんだ?あの服?」
ウォッチャマンが指先を向けた光景……あまりにも非現実的すぎて思わず二度見してしまった
そこには、昨日、会ったばかりの十香がいたのだった
「ウォッチャマン、悪い」
「えっ?」
士道は、時計型麻酔銃を使い、ウォッチャマンの首もとに麻酔針を打ち込むと
「zzz……」
ウォッチャマンは眠りについてしまった
士道は、面倒になるので目立たない電柱の影にウォッチャマンを引きずり、針を抜き、時計の中に入れると何も知らない顔をして
フィリップにメールをした後に十香の元に歩き出した
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「……十香?」
「あっ、シドー!」
士道が呼ぶと直ぐ様十香が走り出してこちらにやってきた
「……現界……?どうやってここに?」
十香は口をへの字に曲げると視線を斜めにする
「ふん…し、知るか」
……知らない……もしくは、何かしらいいたくない理由なのか………恐らく後者だ 確か、空間震はフィリップの検索によると精霊の意識とは関係なく出てくるらしい………つまり、自分から望んできたのか………?
「……というか、十香、腕、大丈夫か?」
十香はキョトンとした顔をするが、なんのことだかすぐに分かると腕を見せる
怪我は跡形もなく消えていた
「……私は、この通り、大丈夫だ それより早くデェトの意味を教えろ」
士道は、急かすように十香が言っているのを見るとよほど気になったのだろうかと苦笑する
「……ああ、そうだったな…だが、まずは服を変えないとな」
士道が言うと十香は目を丸くする
「私の霊装のどこがいけないのだ これは我が鎧にして領地 侮辱は許さんぞ」
「メカメカ団に追われたいならその服で構わんが?」
「ぬ……ではどうしろというのだ? どんな服がいいのだ?」
士道は、少し考えると近くに見知らぬ女子生徒が歩いていた
休校を知らなかったのだろうか、この際、どうでもいい
「あの服なら問題ない」
「ぬ……あれならばいいんだな?」
すると、十香の指先からレーザー光線を放とうとするのを士道が腕を掴んでやめさせる
「何をする?」
「何をする?じゃねーよ…そんなことしたらメカメカ団と一緒になるぞ?……人に危害を加えるな……
加えたらいくら俺でもお前を止めなくちゃいけなくなる」
十香は、確か士道の力は人を守るための力だと言っていたのを思い出して首肯する
「……むう……分かった、覚えておく……仕方ない、自前でなんとかするか」
指をパチンと鳴らすと身にまとっていたドレスから制服へと変化した
「霊装を解除して、新しい服を拵えた 視覚情報だけだから細部は異なっているが、まあ、問題ないだろう」
「いや、はじめからそっちにしろよ!」
ふふんと腕組みをする十香に、初めての突っ込みをする
「それより、デェトだ、デェト!」
「……分かった、俺が1日、十香とデートという行為をする………最後に意味を教えてやるから、考えてみろ」
「……自分で考えろか………それも面白そうだな」
十香は、少し不満な顔をするが、自分で解決し、士道の隣を歩き、大通りへと向かう
(……フィリップには伝えたが……どうするか……いや………十香には悪いが、ここは、あえてデートをして奴の気を引かせて人気がないところを逆に狙うしかないか………となると、デート中は人気が多いところだな)
士道は、ドーパントのことを危惧しながら大通りに歩いていったのだった
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Area 大通り
「……な、なんだこの人間の数は!総力戦か!?」
これまでとは桁違いの人と車の量に驚いた十香は、指十本からレーザー光線を放とうとする
それに頭をパコンと叩き、十香を止めさせる
「馬鹿っ、誰もお前のことを殺そうと思ってねぇだろ!」
「ぬ……本当なのか?」
「そんなんなら、俺らは今頃、フルボッコに殴られているところだ」
「た、確かに」
そう言った十香は辺りを見回して何もないか確認するとレーザーを消した
不意に十香の顔から力が抜けて、何か鼻をひくつかせる
「……おい、シドー、この香りはなんだ?」
士道は少し嗅いでみると、香ばしい香りがする
「……ああ、パン屋か」
士道が指を指すと最近雑誌に載っていたパン屋が見えた
そこのショーケースらしきところから、十香はあるものをジッと見つめる
「シドー、この粉をまぶしてある物はなんなのだ!」
「そいつは、きな粉パンだな……食べたいか?」
十香は子犬、もしくは子供のように思いっきりブンブンと頷いた
「買ってくっから待ってろ」
士道は、直ぐ様きな粉パンを買ってくるとそれを十香に差し出す
「わ、罠じゃあるまいな?」
その輝いた目はやはり子犬にしか見えない 仕方ないので、袋からきな粉パンを取りだし、十香に差し出す
「ほら、食いつけ!」
パクっ
そのきな粉パンに食らいついた十香は、その味を口の中でモグモグと食べると、更に袋ごと士道の手から奪い、1、2分で食べてしまった
「は、はえーな」
「おかわり!」
「……ちなみにどのぐらいだ?」
十香は、少し考えるとショーケースの中のきな粉パンを数え出す
「ショーケースにあるもの全部だ!」
「多いな!?おい!」
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一方、フィリップは……
「なぜ、君もついてくるんだい?」
フィリップの後に付いてきたのは鳶一折紙だった
「……士道の隣にいるのは………精霊?……でも、空間震が観測されていないはず………」
「精霊は、二種類の現界が存在する、自分の意志で現界する場合と意志とは関係なしに現界する場合……2つの違いは、後者は、空間震を発生し、前者は発生させないことだ……」
「なっ……そんなことが…」
「……だから、空間震を発生させないためには危害を加えずに自分の意志で世界に留まりたいと感じさせることさ………」
そのような事実に折紙は驚愕してしまう それがもし事実なら、自分達が精霊を追い込ませて空間震を発生させているのに等しいからだ
「……ただ、いつロストするかどちらの方法だとしても観測データ上、未だに分からない………ただ、高度な精霊であればあるほど………空間震を起こさないだろうね……存在を隠すためにね」
「……」
そのような事実があるならば、プリンセスがもし知恵をつけたならば滅多に折紙達の前に現れなくなるだろうと推測を立てる……
実際、〈ナイトメア〉や〈イフリート〉は全く大規模な空間震を一度ぐらいしか出していないのである
「む………だけど、プリンセスをこのまま放っておくわけにはいかない……それに、彼女もいずれ出てくるはず………」
折紙は、ASTに連絡を入れるような動作をするとフィリップを置いて何処かへと行ってしまった
「……やれやれ……」
フィリップは、鞄からスタッグフォンを取りだし、ラタトスクへと通信を入れる
「……こちら、フィリップ、現在士道はルートCにて精霊とデート中」
『こちら、琴里………問題ないわ……しかし、驚いたわね……精霊の静粛現界』
琴里は、現在フラクシナスで監視をしつつもフィリップに尾行を任せて正確なルートを予測している
「……それほど、彼女……十香は士道のことを信頼しはじめてる証拠さ……それでどうだい?デートプランは?」
琴里の隣ではクイーンやエリザベスが担当のクルーにいろいろと指示しているのが聞こえる
『やっぱり、現役の先輩方は違うわね……』
ため息なのか、ホッとした息なのか分からない琴里の声が聞こえる
「君のデートプランを閲覧したが……流石に、大人のホテルに入れるのは不味い……そもそも、琴里ちゃんは彼氏いるのかい?」
『ば、馬鹿にしないでよ!まだ中学生なのよ!』
琴里の罵声がフィリップの耳元に聞こえる
「君の読んでいる雑誌の一つ、ラバーズ天宮は確か、相当の場数を踏んだ人用の雑誌だ………しかも、無理やり恋の初心者にその類いをやらせるのは上級者とは思えない……ということは、君には恋人はいな………」
『うるさい!!このサンショウウオ!』
『おう!』
電話の向こうで琴里に神無月が暴力を振るわれ、それに快感を持っている神無月の声が聞こえる
そして、だんだんと琴里は冷静な姿を取り戻していった
『と、とにかく、あのドーパントが来たらすぐに対応できるようにはしなさい!いいわね?』
ピッ、ツーツー
電話がこちらから切られたようだ、フィリップは隣のハードボイルダーに乗り、士道をさがしだす
「まだまだ抜けているね、君達兄妹は」
その声は二人には届いていなかったのだった
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Area 商店街
「……お前……どんだけ食ってるんだよ…ここ、10軒目だぜ?」
最初のパン屋を一つ目と数えると、何軒もの店に渡っている しかも、その殆どの店は
「食べきれたらタダ」
というのが殆どらしく、この生きたブラックホールにしてみれば願ってもないことだ
よくよく店員さんを見てみると、チラホラ フラクシナスクルーがスタンバイしている
……なるほどフィリップはメールに気付いてくれたようだ
「シドー、ここの店の食べ物は何があるのだ?」
今、俺達が寄っているのは、「天麺」と呼ばれるラーメン屋でここの店主と俺は知り合いだ
「ここのラーメンの特徴は……まあ、見た方がはやいか」
「へい、お待ち!シン、彼女さんかい?」
「ああ、まあな」
「おお?なんだ?麺は何処にあるのだ?」
ここの麺の特徴は、なんといっても巨大なナルトだ
どんぶり一杯の面積がある
「そのナルトのしただ」
「おおっ!大きいな!」
ここの店主は、人見知りが激しいが、知り合いになると急に口達者になる
「ヒューヒュー!いいね、今日はサービスだ!好きなだけ食べろ!」
その言葉に十香は反応するすると、ズズッと一気にラーメンを食べてしまい、おかわりのどんぶりを差し出した
「……しゅふぃなふぁへ、ふぃふぃんふぁほは?」
(訳 好きなだけ食べていいんだよな?)
「……口に物入れながら話すなよ………」
店主は、少し苦笑いをして次のスープと麺と具材を入れていた
まあ、だいたいこんな感じだ……今まで寄ってきた店のレシートはすべて持っている
恐らく、ラタトスクもこれを見ているだろうから
あとで請求するつもりだ
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「いやぁ……たくさん食べたのだ」
十香がやっとお腹が膨れたと感じた俺は次に何処に行こうか迷っていた
「……そういえば、ゲーセンが近くにあったな」
「ゲーセンとはなんだ?シドー」
俺は、ゲーセンのほうに指を指していた そこは、確か天宮の中で大きいゲーセンの一つだ
「まあ、いろいろ楽しめる娯楽施設だ……いくか?」
「し、シドーが行きたいっていうなら……」
「行きたい………ちょー行きたい」
棒読みでそのようなおきまりごとを言ったおきまりごとを言うと十香は嬉しそうな顔になって
「うむ!」
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Area ゲームセンター
「おお!なんなのだ!ここは!メカメカ団の基地なのか!」
俺達はゲーセンに来たがやはり十香にとってみれば、初めての場所だったらしい
「ちげぇよ………」
何回目なのか分からない、そのようなくだりをすると十香はUFOキャッチャーの商品に目が行った
「こ、これは………!」
それは、何故置いてあるか分からないが、きな粉パンのクッションの商品があったのだ
「欲しいのか?」
「ど、どうやって取るのだ?」
俺は、百円を一枚投入し起動させ、実際にやってみせる
「アームをこの二つのボタンで操作して商品を取るんだが………ムズいな……これ」
きな粉パンのクッションはアームにかかったもののそのままずり落ちてしまう
「やるか?」
俺は再び百円を中に入れると十香に場所を譲る
「むむ……難しい」
十香の場合は何処にも引っ掛からずに終わってしまったのだ
俺はどうにかして取りたいものだと考え、百円を再投入し十香に声をかける
「……十香は、上アームをやってくれ、俺が離すタイミングをいう」
「分かったのだ」
まず、俺は右アームのボタンを押し、UFOキャッチャーの操作をする
すると、かなり絶妙な位置に止めることに成功した
「次は、私だな」
十香は、上アームのボタンを押すと、ゆっくりと上にUFOキャッチャーが動き出す まだだ……あと少し………あと少し………
「離せ!」
「!」
俺が命令した瞬間、瞬時にボタンを離す
すると、UFOキャッチャーは幸運にもきな粉パンのクッションを掴み、排出口に持っていく
ガゴン
クッションは見事、排出口に入ったのだった
「っしゃあ!」
「は、入った!」
俺は、きな粉パンのクッションを排出口から取り出すと十香に差し出す
「ありがとう、シドー」
「食べるなよ?」
「わ、分かっている!」
……十香は冷や汗を少しかいて、目を上の空にする
……食べようとしていたな…こいつ
「……ゲーセンと言ったら次はプリクラか?」
「プリクラ?なんなのだ?それは」
俺達は、プリクラコーナーへと足を運んだ そこにはたくさんのプリクラマシンがあったのだった
最近は恋人用のプリクラとかあるらしく、俺達が入ったのはそっちのほうだ
「写真を取るための場所さ………思い出に残るだろ?写真に残すってのは」
「うむ………確かにそうなのだ!」
……俺達はプリクラに二人で中に入る……周りの視線が痛かったのはあれとして……
多分、十香に聞いても分からないだろうから、エリザベスやクイーンに教えてもらったプリクラセットを試みる
「ふむ……結構写真をとるというのは難しいのだな」
……やはり、彼女に任せなくて正解だったのだろう
パシャ
写真を撮った俺達は、次に落書きコーナーへと入る
「シドー、これはなんなのだ?」
「この写真に落書きができるのが、普通の写真との違いだ……まあ、貸してみな」
十香は、文字を書くのはあまり得意ではないとみた俺は、写真に名前やキラキラしたデコレーションなどといったものを適当につける
「こんな、感じだが……やるか?」
「うむ!」
十香も落書きのペンを持ちいろいろと書いていく……なるほど……なかなかのセンスで書けてるな
ピコン……ウィーン………
プリクラが排出されると俺は自分が設定したものと十香が設定したものを半分に分けて十香に渡す
「ありがとうなのだ!」
……その笑顔は、写真にも劣らない、眩しい笑顔であったのだった
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Area 天宮タワー
そんで、恐らくデートの最終目的地であろう、天宮タワーの展望台に上っていた
周りには人がいない
恐らくラタトスクのクルーが配慮したのだろう
「おお、絶景だな!」
展望台はオープンスペースになっていて、外の絶景をこの町の風を感じながら堪能することができるデートスポットだ
「……いい風だ」
俺は、風を直に感じ取れるこの場所が好きだ
いつも、悩みや嫌なことがあった時、ここに来ればとても落ち着いた気分になる
「ところで、シドー、デェトとは一体なんだったのだ?」
夕焼けを背景に佇んでいる彼女は、とても美しく、風景画として名前が出せるのではないかと考えるほどだった
「……男女が一緒に出掛けたり遊んだりすることだ」
十香は、拍子抜けた顔をしていたが、すぐさま笑顔になった
「……なんだ、そんな意味だったのか………なら私達、思い切りデェトしたのだな」
「あ、ああ………」
「どうしたのだ?顔が赤いぞ?」
……その笑顔を直に見てしまった俺は、顔を少し赤くするほど恥ずかしくなってしまう
「なんでもねーよ」
俺は、少し目をそらすことでこの恥ずかしい気持ちをなんとか抑えようとする
「……本当に今日は有意義な1日だった 世界がこんなに優しいだなんて、こんなに楽しいだなんて、こんなに綺麗だなんて……思いもしなかった」
そして、十香は眉を八の字に歪めつつも苦笑を浮かべた
「あいつら……ASTとやらの考えも少しだけわかったしな……」
その顔は少し悲しそうだったが孤独のような寂しさのような顔ではなかった
「私は……いつも現界するたびにこんなにも素晴らしいものを壊していたんだな……ASTが私を殺そうとする道理が……知れた」
「……」
俺は黙って帽子を取り、それを十香の頭にそっと被せると外のほうに顔を向ける
「……お前は、この町が受け入れた住人だ……例え空間震の原因がお前だろうと……この町はお前を敵対する心は絶対にない」
「……でも、私は……この町の破壊者なのだぞ?どうしてそれが分かる?」
俺は、帽子の下で少しだけ涙を流している十香を感じながら、答える
「……俺は、探偵として、仮面ライダーとして、この町のありとあらゆる顔を見てきたつもりだ………」
「……」
「そして、いつか思えるようになったのさ……町を泣かしているやつと、そうでもないやつを………」
俺は、少し黙ると肩を震えている十香の肩を優しく支える
「お前は、絶対にこの町に……いや、この世界にいていいんだ!……世界に消えなければならないと言われたとしても、俺はお前の居場所をさがし続けてやる!」
十香は、少しの間、黙りこんでから小さく口を開いた
「……本当に、私は、生きててもいいのか?」
「ああ」
「この世界にいてもいいのか?」
「……当たり前だ」
「……そんなこといってくれるのは、シドーだけだぞ ASTはもちろん、他の人間達だってこんな危険な存在が、自分たちの生活空間にいたら嫌に決まっている」
「……俺は、この町に……いや、世界にいるお前に涙を流してほしかねぇ!……
そんなに他の連中がお前を否定するなら、俺がそれを潰すぐらいに「肯定」してやる!」
俺は、十香に向かって手を差し伸べた
「握れ……!今はそれだけでいい」
「シドー…」
俺と十香の手と手が触れあおうとしていた時だった
……俺は殺気を感じたのだ
Edge
「死ねぇ!プリンセス!」
ステルスで隠れていたのだろうか、CRユニットを装備したエッジドーパントが現れる
「……十香!間に合えっ!」
ザシュ………!エッジドーパントの刃が十香に当たろうとしていたとき、俺はとっさに二人の中に入り、十香を庇う
「ぐはっ………!」
「シドー!!」
そして、不幸は立て続けに続いていてしまった
今度は、エッジドーパントのほうに巨大な弾丸が発射されたが……
「はっ!」
「しまった!?ぐぅ!?」
エッジドーパントが避けた瞬間に、対応できなかった十香の腹に大きな穴が空いてしまったのだ
「と……お…か」
「かっ………はぁ……に、逃げろ……シドー………!この霊力を……私は、……制御……で……きな……い」
遠くで、誰かに似た叫び声が聞こえ、こちらに接近してくる……そして、十香は自身をコントロールできずに、体が修復されていると共に……さらに、さらに「黒く」変色していったのだった
「な、なんなんだ………!これほどまでにない霊力値は……!」
そして、目を死なせた「十香とは似て非なる人物」が、鏖殺公とは違うとても黒い武器となり、エッジドーパントを睨み付ける
「……貴様は……誰だ?」
十香は、今までにないどす黒い覇気を放ち、エッジドーパントに剣を差し出す
「ああ……なるほど………「私」は、大切な何かを……世界に……貴様に奪われたのだな………ならば……」
「……なんなんだ、せ、精霊が放つ気じゃねぇよ!」
そして、十香らしき人物は、彼女に無慈悲なる言葉を……魔王にふさわしい宣告をドーパントに与える
「死ね」
巨大な黒い剣を握り、エッジドーパントを容易く真っ二つに斬ってしまう
グシャ……
「ぎゃあああああああ!」
パキン
体内にあるメモリごと彼女は……魔王に斬られたのだった
「雑魚が……」
……そして、天宮タワーの頂上にふわりと飛翔すると
「暴虐公……終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)」
王座と剣が融合し、更なる巨大な剣へと変化する
「……全てが「私」を否定した………ならば……全てを潰してもかまわんのだろう?」
無慈悲な魔王は、空間震警報を無意識に発生しつつ矛先を天宮市全体に定めたのだった