怠惰な神様によって魔法が存在し世界大戦が起こりそうだという世界に転生し放り出されたら、聞いていたよりさらにヤバい世界だった件 作:しゅーびんで
この白い空間がどこなのか、目の前の机にいる半裸の男が何者なのか、私は知らなかった。
知らなかったけど、ただなんとなくここが死後の世界で、目の前の半裸が神様なんだというのは何故か理解できた。
「あの──」
「くくく、本当に人間っていうのはくだらねえ奴らだぜ。いやぁ、勘違いで殺人っていうのは流石にウケる」
「…………」
「貴様……下賤な下等種族が仰ぎ見るべき偉大な存在である我らと相対しあまつさえ声を聞く奇跡の機会を得られながら、何を突っ立っているか! 平伏せよ下等種族が!」
「──ッ!?」
その半裸の男はまるで自分の最期のことを言っているのだろう、勘違い殺人の最後についてケラケラと笑っていたが、いきなり首が120度まわるとケラケラ笑っている顔から怒りをあらわにする顔が正面にきて、こちらを睨みつけてきた。
直後、突然謎の力に抑えつけられてその場に突っ伏すこととなる。
「無様、無礼、無作法。這いつくばる姿も実に忌々しい。主神は何故このような下等種族を我ら神々に似せた存在として創造なされたのか、甚だ理解できぬ」
「え? 俺は割と気に入っているけどな、この
「私は悲しい。信仰という何よりも重きものを捨て去らんとする愚物ばかりが世に蔓延る下界のあり方が。昨今の人間が忘れた本来何より尊ぶべきは、命や文明などという些事ではなく、偉大なる我ら神々への信仰であろう。それを捨て去る驕り、慢心、傲慢、怠惰……信仰を忘れ繁栄を謳歌しようなどという不遜な進化。ああ、悲しい」
這いつくばらされているこちらをよそに、半裸の首の上にある三つの顔は各々貼り付けた表情に沿った感情のままに好き勝手に何かを言っている。
うーむ、私は信仰とか興味ないから何にも感じないけど、まさに神様と言うべき人間のことをカケラも愛していないような傲慢な創造主の類そのものの姿を見せつけられている気分。
「ああ悲しい。信仰を忘れるような現代の人間たちには相応の苦行が必要であるかと。神に奇跡を縋り信仰に殉ずる正しき姿を取り戻させなければ」
「否。輪廻転生に載せる価値なし」
「と言いつつ管理が面倒くさいだけだけどな、ククク」
いつになったら解放するんだよこいつらと思いながら見ていたら、なにやら私の処遇に関して色々言い合っている様子。
なんか苦行を与えようとか、転生の価値なしとか、管理が面倒だとか、不穏な言葉が飛び交っている気もしますけど。
……現実逃避しない。飛んでるよ実際。
いや、自分が死んだことは理解できているし、この目の前の半裸3面が神様とかそういう存在であるというのもなんとなく理解できていますけど。輪廻転生とか言っているわけだし。
しかし、だがしかし。なんというか……人間のこと塵芥みたいに見ているタイプの神様なんだなって感想が浮かぶ。
面倒とかほざいているけど、正直この神様に輪廻転生させてもらおうかと言われても嬉しくない。
というか、いい加減放してくれませんかこの神。
動くどころか喋ることもできないんですけど。死後だし、喋れるかどうかわからないですけど。
私はいい思い出がないので宗教を嫌っている無宗教の人間ですから神様なんてものは信仰していないし、そんな人間なら世話する義理もないだろうし雑に扱ってもいいかもしれませんけど。
でもこの神の場合、性格ひん曲がっていそうである。
多分この神、自分のこと信仰してくれる人間も虫みたいに扱う性根腐ったタイプの神様だと推測する。
……うん、こいつは信仰したくねえな。絶対無理。性根腐っていそうだし。顔三つに腕4本とか中途半端で気持ち悪いし。首120度曲がる動きも気持ち悪いし。半裸の変態だし。
「まあまあ、ここは一つ俺に任せてよ」
動けないので、なんでもいいからいい加減に放せよこの性根腐った阿修羅もどき! と念を送っていたら、転生云々で話し合っていた3面半裸は何やら決着がついたらしく、再び首が120度回って笑っている顔が正面に来た。
「なんの因果か主神様が本来呼びつけようとしていた無神論サイコ野郎の代わりにきたこいつの世話を押し付けられたわけだけど、地獄行きにさせるのも管理が面倒だし、あの世界に転生させてやろうよ。ほら、この前主神様に喧嘩売って女に転生させられたあの人間が放り込まれた世界に」
「なるほど。かの世界ならば神への信仰を思い出す苦行を与えるに相応しいでしょう」
「俺は輪廻転生には反対だ。この場にきた下等生物どもの魂は処分し完膚なきまで消すべきだ!」
「2対1。よし、じゃあこの魂はあの世界に転生させよう」
怒った顔が反対しているが、どうやら処遇に関する話し合いみたいなのが決定したらしい。
しかし多数決で強引に決めるあたり、この半裸の神そうとうな面倒くさがりではないだろうか。
性根腐っている上に怠惰とか、そんなんだから信仰されなくなるのでは? 無宗教の私が言うのもなんですけど。そして押さえつけられているので言えてないですけど。
3面半裸の笑った顔は話し合い中もひたすら動いていた書類を捌く手を止めると、机から離れて一枚の紙を手にこちらに近づいてきた。
「さてと。勘違いで殺された(プフッ、ダメだ改めて見るとマジでウケる)哀れな無神論者の魂よ。お前は特別に輪廻転生に乗せてやることにした。そして久しぶりに面白えもの見せてくれた礼──ゴホン、もとい俺の多大な慈悲により魂に刻まれた記憶を残したまま(本当はリセットすんのが面倒くせえからだけどな)転生させてやるよ。魔法が存在する夢の世界に、な」
3面半裸の笑っている顔は所々本音をこぼしながらそう言うと、見たこともない文字で色々と書かれた紙を目の前に置いた。
どうやら私は生前の記憶を保持したまま、魔法が存在するという別世界に転生させられることになるらしい。
一体どんな世界なのか。
神が紙に書いた文字が読めないのでわからないので説明して欲しいのだが、要求することもできずに視界がぼやけて光に包まれていく。
初めての体験のはずなのに、こうして輪廻転生させられた前世でもあったのか、なぜかその時の私にはこの感覚が新たな命に転生するのだと言うことが理解できた。
……しかしあの神とことん怠惰だな。なんだよリセットするの面倒くさいって。そしてせめて説明くらいしろよ。
視界が光に染まり意識が遠くなっていく中で、私は怠惰で人を塵芥呼ばわりしていた性根の腐った3面半裸に向けて声にできない文句を最後に飛ばした。
そして私はかつて人違いで殺された前世の記憶というものを持って、魔法が存在する夢の世界とやらに転生することとなった。
しかし、そこは夢の世界などではなく────
次回から転生後の物語となります。
転生先については第一話の「国家紹介」にて実施しているアンケート結果に基づき決定致します。締切は9月15日です。興味のある方はぜひ一票をお願いいたします。
9月4日に森林三州誓約同盟などいくつかの国家を追加しています。アンケートの参考にして下さい。