【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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4.エールちゃんは旅をする

 あたしはレッドの街からから西に伸びる街道をのんびり歩いていく。

「正直ちょっとドキドキしてたけど……なにも起こらないなー……ん?」

 なんか見える。街道から離れたところになんかモンスターの影が……うーん、イカマンが……何匹か。

「いっか……遠いし……」

 剣にかけた手を引っ込めてそのまま半日ほど歩き、特になにもなくラジールの街にたどり着いた。

 

 宿を取ったあと街を見て回ることにした……のだが。

「ねー宿のおじさん、この街でなにか珍しいものってある?」

「うーん……自由都市の中では地味な町だからなあ……これといって……ああ、町の南に地上灯台っていうでかい塔があるよ」

「へー! 観光できます?」

「いや、ダンジョンだから近寄らない方がいいよ」

「さいですか……」

 

 テンションが下がる応対をされたがめげずに街に出る。いわれた通りのどうってこと無い街だったが、これまであたしはレッドしか見たことがなかったので新鮮だった。

 

 町外れから南をみれば、確かに大きな塔がある。あの地上灯台にもいつか冒険しにいってみたいものだなぁ。

 

 領主の屋敷はけっこう大きかったが、別に重税を取ってるというわけでもないそうで。お金はあるところにはあるらしい。

 まあ、レッドの町のオレリイ大聖堂もやたらでかかったし、めちゃめちゃ大きなハイパービルの噂も聞いたことがある。世の中には大きい建物が多い。

 

 ぶらぶらしているといつの間にか町を一周してしまっていた。レッドに比べるとやっぱり小さい街だ。もう日も沈むし、宿に引き上げて寝た。

 

 翌朝、早めに起きてラジールを出発して西に向かう。またしてもなにも起こらず、昼頃にはカンラに着いた。

 

「んー……」

 カンラの街をぶらついて、唸りながら買った肉まんをかじる。

「何て言うか……ラジールのスケールを小さくしたような…… 城壁もないし、施設もない、やる気の無い町……」

 

 ぶらぶらしているとおなかがすいてきた。

「肉まん一個じゃ足りなかったか……なんかご飯食べれそうなとこは……おっ」

 ハニレスという料理店が見えたので早速入る。

 

「いらっしゃいませー。おすきなおせきにどーぞー」

 暇そうにしていた胸の大きなウェイトレスさんがやる気なさそうに案内してくれた。

 ほかに店内に客はいない。こんなんでやっていけるのだろうか? 

 

「ご注文は?」「あ、はい。ハンバーグセットひとつ」「へいへーい」

 

 ウェイトレスさんが去っていく。さて料理が来るまでどうしようと壁の良くわからん絵を眺めていると、ウェイトレスさんが戻ってきてしゃべりかけてきた。

 

「ねー貴女冒険者? そんな年ですごいわねー。どこか仕事?」

「もしかして……お仕事暇なんです?」

「うぐっ、年の割にすごいカウンターね……」

 まあこちらも暇なのでセティナさんというらしい彼女とおしゃべりすることにした。

 

 やはりこの街ではあんまりすることがないので、絵を描いたことはないがイラストレーターを目指してみようと思っているけど、機材が手に入らないらしい。

 すごいスペックのコンピュータがあればすごい絵が描けるって言ってるけどほんとだろうか? 

 絵なんて紙とペンがあれば描けるんじゃないかと思う。

 

 名所について聞くと、町の北にはティティ湖という大きな湖があり、けっこう綺麗なのだがハニーを崇める変な宗教の神殿があるそうだ。よりにもよってなんでハニー? ちょっと見てみたい気もする。

 

 あたしが孤児で、兄を探してるという話をすると最初はばつが悪そうにしてたけど、だんだん興味を持ったようだった。生き別れの兄妹というのは作品のネタになるらしい。

 

 食事を済ませてセティナさんと別れ、宿に戻る前に道具屋を覗いてみた。

「ごめんくださーい……えー……」

 

 店内には天満橋ありすちゃんの立て看板としゃもじがあるだけで店員の姿は見えない。

 

「なんでしゃもじ……えっ……?」

 

「ぐおーぐおー……むにゃむにゃ……」

 

 良く見るとしゃもじには手足が生えており、しかも寝息をたてていた。

 鼻? 提灯まで出ている……

(……妖怪か、もしくは何らかの前衛芸術とかかな……?)

 

 声はかけずにその場を去った。なんとなく怖かったので……




ラジール
自由都市地帯中央部、レッドの西隣にあるあまり特色のない中規模の街。
南に行けば技術都市カスタム、西に行けばカンラを経由してアイスにつながっている。

カンラ
ラジールとアイスの中間地点にある小さな町。
市壁も軍隊も持っていない。おそらくアイスの衛星都市。

しゃもじ
糸みたいな手足があって普通にしゃべるしゃもじのような種族(?)。
生態などについて説明されたことはない。
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