【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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20.エールちゃんはゼスに行く

一度は来た道ということで旅は順調に進んだ。

ウォークランドから出発し、ラボリから南大橋を渡ってひたすら東へ。

「えーと、次はボルゴZに向かって、砂漠沿いの街道を通ってゼスに向かうんだよね」

コサックの宿屋の食堂で、健太郎くんが地図を広げた。

「うん、砂漠沿いの街道を通ってアダムの砦から入国だね」

ゼスとヘルマンはキナニ砂漠というでかい砂漠で隔てられているが、バラオ山脈と砂漠の間に一応街道があり、ボルゴZからゼスとリーザスの国境あたりにつながっている。

「入国したらフルーツ遺跡を目指して…ってあっ、そういえばフルーツ遺跡ってゼスのどこにあるのかな?」

「そういえば聞いてなかったねぇ、健太郎くん」

「そういえば言ってなかった。マジノラインの割とすぐ近く、マークの街の郊外だよ」

ミラクルさんに案内されて通用口らしきところから出たんだっけ。

ゼスビルテクノサービスなる会社が定期的に手入れしているダンジョンらしい。

曰く、『ゼスの上層部が何らかの目的で利用する予定があるのだろう。大方転送装置のネットワークと言ったところだろうな』だそうだ。

「じゃあ、国境近くのサバサバの街に入ったら南下してイタリア、テープ、オールドゼス。そこから西に向かえばいいかな」

そういうことになった。

 

ボルゴZは牢獄都市として建設された都市だそうで、最初にでかい監獄があって、その周りに街を作っていったのだとか。

しかし、なんだかんだあって国境の街になり、だんだん商売が盛んになり、古くなった監獄も閉鎖され、ババロフスクとかいう町に監獄が移転したのだそう。

まぁそんなことはどうでもいいか。

「このカチカチパンと薄いスープともいよいよお別れだね、美樹ちゃん」

「なんだか寂しくはなるねぇ、健太郎くん」

「そう?あたしもう飽きたよ…スリアさんの作ってくれるカレーかシィルさんのへんでろぱが食べたいなぁ」

「へー。その人たちだぁれ?」

「下宿のおばさんとお兄ちゃんの彼女だよー」

 

朝食を終えたらいよいよ出発だ。ヘルマン滞在は2週間程度だったけどだいぶ長居した気もするなぁ。

ボルゴZを出るときに番兵に軽く調べられたが、入国の時と比べればどうってことなかった。

ログBの封鎖について聞いてみたが、そろそろ評議委員二人が罷免され解除されそうな見込みらしい。

兵士はこれでやっと元通り、と胸をなでおろしていたが、病気が原因って話なのに大丈夫なんだろうか?

まぁ、もう出国するあたしたちが心配してもしょうがないか。

 

山脈と砂漠の間の道は細く険しく、うっかりすると落ちそうだ。

「おっとと…よし、前進!」

ちょっと崖に寄りすぎていたので慌てて方向転換。小石がパラパラと砂漠に落ちていく。

「うーん、怖いねぇ健太郎くん」

「そうだねぇ、砂漠に道があればいいのに…」

「この砂漠は少し前までは肥沃な台地で、人々もよく行きかっていたのですが…ゼスとヘルマンが戦争をした際に、禁呪で砂漠になってしまったのです」

「うわぁ…何考えてんだろ」

そのおかげでこんな狭い不便な道を通らざるを得なくなっているわけで、大変な迷惑だ。

「いつか砂漠に道ができて簡単に往来できるようになればいいのに…」

ぼやきつつもあたしは手綱を操作してうし車を慎重に進めた。

 

街道を抜けて平地に出れば、そこはパラパラ砦とアダムの砦の間、ゼスとリーザスの最前線だ。

過去に何度も戦場になったせいで土地も荒れ果てている。

普段のあたしなら荒地を見て…戦争は醜い…なんて感情になったかもしれないけど、どこもかしこも荒野だらけのへルマンを通って、キナニ砂漠を見たあとだと自然破壊のスケールが小さく見えるなぁ。

見るものもないのでさっさとアダムの砦に向かおう。

「えーと代表者は小川健太郎…目的は…観光でいいかなあ?」

「いいんじゃない?」

アダムの砦の入国ゲートで、渡された書類のの空欄を埋めマルバツをつけていく。

「よし、だいたい終わり…あとは…魔力の有無?」

「まああたしはあるから◯、二人は✕と…」

とりあえず書いて出すと、受け取った職員が書類を見てめんどくさそうな顔をして、小声で話しかけてきた。

「あの、代表者欄ですが。クリアさんに変えませんか?」

「へ?なんで?」

「代表者が非魔法使いですとあちらのゲートで手続きになります」

職員さんは併設されている武骨でぼろっちいゲートを指差した。

石造りのベンチとテーブルがあるだけであんまり長居はしたくない。

「取り調べとかもありますし、手続きも多いしで結構長くなりますよ?半日はかかりますね」

「うぇー…」

「魔法使いの方が代表で、護衛や供回りをつれている、という形であればあちらのゲートになります。手続きも短く済みますよ」

そちらにはピカピカで中にソファーやウォーターサーバーが置いてあるのが見えるゲートがあった。

「うーん格差社会…」

あたしたちは仕方なく代表者欄だけ書き換えて出した。

「前に出国したときは気がつかなかったけど、入国の時はこんなにめんどいんだねー」

「僕たちがゼスに来た時もさんざん待たされたりしたけど、あれは魔法使いが居なかったからだったんだなあ」

「待ってる間健太郎くんとしりとりしてたけど、やりすぎてお尻がなくなっちゃうところだったよ」

「おーい君たちー」

あたし達が待合室で話していると、白衣を来た若い男性がにこやかに話しかけてきた。

「私はアスクニナ。検疫を担当している医者だ。入国前に軽く診察をさせてもらえるかな?」

「はーい」

「それでは失礼して…はい、口を開けてー」

「あえー…」

「えー…うん。問題なし。」

お医者さんはあたし達に軽く問診して喉や目を覗き込んで頷き、書類にペンを走らせた。

「ゼスへの入国は大変だねぇ、美樹ちゃん」

「へルマンは楽だったのにねー。」

「でもログBが伝染病で封鎖されたとか言ってたからね。きっと大事なんだよ」

「…それは本当かい?」

ペンの音が止んで、お医者さんがこちらを見ていた。

「ええ…たしか…なんだっけ?」

「黒なんとか病とか言ってたよ」

「黒…まさか黒死病…?」

「あー。たぶんそんな感じでした」

お医者さんは顔をひきつらせて少しばかり黙り込んだ。

「……君たち、ログBには寄っていないんだよね?」

「あ、はい。封鎖されてましたから…でも、もうすぐ封鎖を解くって…」

「…!そうか…わかった。ありがとう。君たちは大丈夫と思うが…体調が悪くなったらすぐに医者にかかるように。いいね?」

「あ、はい」「わかりましたー」「はーい」

それだけ聞くとお医者さんは白衣を翻して走っていってしまった。

お医者さんはたいへんなのだなあ…病気は神魔法では治らない場合もあるし。

あたしも体調には気を付けよ。

 

アダムの砦から一番近いサバサバの街はキナニ砂漠に面していて、国境に近く商売が盛んな街だ。

穀倉地帯にも近くて、何か名物があるわけではないが食料は豊富。

そんな街の食堂で、あたしたち3人はなんでもない定食を食べて涙を流していた。

「パンが柔らかい…バターもついてる…」

「スープに味がするのってこんなに嬉しかったんだね、健太郎くん…」

「具がごろごろはいってる…うれしいねぇ、美樹ちゃん…」

正直目立ってしまうかと思ったが、ヘルマン帰りの人は多かれ少なかれこうなるようで、

周りの客も生暖かい目で見るだけだった。

 

食堂を出てサバサバの街中をぶらついていると、割と大きな公園があった。

「公園に屋台がいろいろ出てるよ!」

「うおおおおおお!甘味!クレープ!りんご飴!」ずどどどど!

あたしはわき目も降らずに屋台に突っ込んだ!

「あっ!エールちゃん!」「僕たちも行こう美樹ちゃん!」「そうだね健太郎くん!」

「「うおおおおお!」」ずどどどど!

「あー…ぷるるん焼きおいしー!カラカラ焼きとも合う!」

「アイスつめたーい!」

「チョコバナナあまーい!」

 

甘味に飢えていたあたしたちは屋台の食べ物をさんざん食い散らかし…

ベンチで3人揃ってダウンしていた。

「うーん気持ち悪い…」「うう…吐きそう…」「最後のお団子はやめとけばよかったね…」

「大丈夫ですか3人とも…気持ちはわかりますが、食べすぎは良くありませんよ」

「「「はーい…」」」

人の姿になった日光さんがもらってきてくれた消化にいいお茶を飲みつつ、3人で反省したのだった。

 




ゼスの社会制度ですが、外国人をどんな扱いしてるのかよくわかんないんですよね
流石にやってくる非魔法使いを片っ端から二級市民扱いしていては商売すら出来ないでしょうし
国境に近いサバサバあたりはわりかし寛容な雰囲気だが、南や西の方は結構ひどい、けどいきなり殺されたり牢屋に入れられたりは滅多にない、くらいを想定してます
ラドンが外国人のランスを問答無用で観察場にぶちこんでいますが、流石にこれは長官くらいの権力が必要みたいな感じではないかと

なんと百回目の投稿になります。
ここまで書き続けられるなんてびっくりですが、
ここまで読んでくれてありがとうございます。

2章では、健太郎たちを次元ゲートまで送ったら、ブハード絡みの話、
それからアリオスのカイズ襲撃までを描こうと思っていますが、
何か気になるところとか書いてほしい話とかありましたら
感想欄にいただけるとありがたいです。
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