【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

103 / 198
今週はちょっと忙しくて投稿できるわからんので今のうちに投げときます


21.エールちゃんは夜逃げする

サバサバの街を出てひたすら南へ。たどり着いたイタリアの街はこの国でもだいぶ大きな都市だ。

立派な市壁があり、高くてきれいな建物がいくつも見えるのだが…

「なんかこう、川下側に薄汚いスラム街みたいなのがくっついてるね…」

「うん…城壁の外にへばりついてる感じだね。」

「ちょっとくさいような…」

気のせいじゃないなあこれ…確かにちょっとくさい。

一応スラム街の外にも壁のようなものはあるけど…隙間だらけでぼろぼろ。高さも低いし、あんなんじゃあモンスターは防げないだろう。

「とりあえず手形はあるから、あっちの門の方にいこうか」

あたしたちは立派な市壁の門に向かった。

 

「手形を拝見します…えーと、エール・クリアさんですね。使えるのは神魔法…あと奴隷が二名と…」

すげーことさらっと言うなこの門番…いやわかっちゃいたけど…

「すみません、軽く魔力チェックをしますので、こちらの機械に手を…」

「これ?」ぴーっ。音と共に青いランプが点った。

「はい、オッケーです。それではどうぞお通りください。一級市民街へようこそ」

とにかく門を通ることは出来た。

「はぁー…やっぱ改めて聞くとすごいね…魔法使いじゃない人イコール奴隷なんだ…」

あたしはため息をついて奴隷二名…じゃない、健太郎くんと美樹ちゃんの方を向いた。

「うん、僕たちも次元の門の手がかりがゼスにあるって聞いてからしばらくゼスをうろついてたんだけど…」

「あちこちで検問だの取り調べだので全然動けなかったの。宿屋とかもなかなか泊めてくれなくて…」

「はえー…それでリーザスに…」

外国人の場合は一応別枠で、非魔法使いでも問答無用の奴隷扱いはされないようなのだが…それでもあちこちで邪険にされたり足止めを食ったりはするらしい。

なるほど、そんな状態であてもなくうろうろしたくないよね。

「イタリアには前も来たんだけど、門でだいぶ時間かかったよね。」

「うんうん、エールちゃんがいてくれてよかったー。」

アダムの砦であたしを代表者にしろと忠告してくれた役人さんの言う通りにしてよかったようだ。

「じゃ、お腹すいたしご飯でも食べようか。」

「やったー。私本場のカレーマカロロが食べたいなー。」

「あたしうどんがちょっとなー。ぴろぴろしてるから…」

「カレーマカロロはおふくろの味系だからお店で出してるところあるかなー?お金はあるし、いいところを探そう」

あたしたちは適当な飯屋を探すことにした。

 

結局、サバサバでもらったガイドブックに載っていたイタリアンレストランに入ることになった。

ちょっと高級そうで、ザワッスが名物であるらしい。

「カレーマカロロはないかー」

「宿屋さんで出るかもよ。…えーっと、あたしザワッスとオホホウフフの天ぷらにしよっと」

「僕もザワッスと…うはぁんかな」

「健太郎くん、私もうはぁん食べたいなー」

「じゃあ半分こしようか、美樹ちゃん」

適当に注文を済ませ、運ばれてきたザワッスはサカナと野菜がザワで真っ赤に染まっている。

「ひー。からそー…」

「でも辛くないんだよね…うまうま…」

「天ぷらとも合うねー」

へルマン帰りということを差し引いても結構うまいと思う。あたしはあっという間に完食してしまった。

二人はうはぁんをちみちみと仲良く食べている。

「あ、あたしお花摘んでくるね~」

「はーい」「行ってらっしゃーい」

と、あたしはその場を離れた。

 

お花を摘み終えて手を洗い、手を拭きながら出ると…なにやら店の中が騒がしい。

「治安隊だ」「もう来てくれたのか」「どこかの奴隷が暴れたらしいぞ」

なにやら客がヒソヒソと話している…ってかあたし達の席の方を見ているなこれ…嫌な予感がする。

「大人しくしろー!市民への暴行容疑で逮捕する!」

「ええー!」「なにもしてないよ私達!」

「言い訳は署で聞く!来なさい!」

なんと健太郎くんと美樹ちゃんが、治安隊の女の子に引っ立てられようとしている!

あたしは慌てて駆け寄った!

「ちょ、ちょっと!何があったんですか!」

「あっ、エールちゃん!そこの人が…」

健太郎くんの視線の先には赤髪をオールバックにした目付きの鋭い長身の男がいた。

ゼスの人間には珍しく腰には剣なんて差してる…

「貴女が飼い主ですか?奴隷達のしつけはちゃんとしておいて欲しいものですな」

「はぁ?」

「そこの男が私の手を払い除けたのですよ…まったく汚ならしい…私を誰だと思っている!この金融長官ズルキの息子、ハッサム・クラウンに向かって!」

「えー!?それだけで…?」

この男貴族かなんかか?マジかー…めんどくさいことになったなあ…

腰の剣もどうやら飾りじゃあないようだけど…何考えてんだろ。

「では連行する!貴女も同行して貰いますよ。責任者として」

「ええー…」

暴れるわけにもいかず、あたしは二人と一緒に引っ張っていかれたのだった。

 

道中で健太郎くんに話を聞いてみたが、さっきのハッサムとかいう目付き悪男が、

「ほう、これはいい剣だ…」とかいって断りもなく日光さんを勝手に取ろうとしたので、

「やめてください」と手を払ったらキレて治安隊を呼ばれたらしい。

治安隊の女の子も悪男の言うことを一方的に聞くだけでこっちの言い分には耳を貸さないのだと言う。

思っていたよりだいぶ最悪だ。最悪番付で言えば大関昇進間近といったところか。

治安隊の建物に連れてこられ、健太郎くん達は荷物を取り上げられて留置場に連れていかれてしまった。

美樹ちゃんが不安定にならないといいんだけど…健太郎くんに任せるしかないか。

あたしは別室に通され、治安隊の女の子と今後の対応について聞かされることになった。

 

「えー?あたしは罰金5000G、二人は刑務所行きー!?」

「このままだとそういうことになります」

キューティ・バンドとか言うらしい治安隊員の子は表情を変えずにそういった。

「そんなめちゃくちゃな…」「めちゃくちゃでもなんでもありませんよ。規則ですから」

どーしたもんかなこれ…暴れてどうにかなる…とは思えない。

お兄ちゃんが一緒ならなあ…とりあえず後先考えず暴れてはくれるのに…頭を抱えていると、キューティが口を開く。

「ですが、被害者のハッサム様は条件によっては示談にしてもいいとおっしゃられてます」

「はぁ…条件って?」

「あの刀を渡せば水に流してもいい、奴隷に振るわせるにはもったいない代物だ、だそうで」

「ええ~!にっこ…あの刀を!?」名前は出さないほうがいいか。めんどくさそうだ。

「そういえばあの刀、銘はなんというのです?確かに見事なものでしたが。にっこ…?」

やべ、どーしよ。適当にごまかすか。

「え~っと、その…にっこ…ニッコニコブレードです」

「ニッコニコブレード!?ダサッ!なんですかその名前は!」

「JAPANでは今こういう名前が流行ってるんです!」

「…そうなんですか…所詮は田舎ですねぇ…まぁ、わかりました。で、どうします?」

信じるんかい。まぁいいけど…

うーん…これ、どう考えても言いがかりだよね…で、治安隊もあっちに加担…

正直リア様に頼んで政治的に圧力をかけてもらうくらいしかないけど、それじゃあ時間がかかりすぎるし…

うーん…よし。こうしよう。

「仕方ありません…お渡しします。でも、ニッコニコソードはあたしの家の家宝なんです。お渡しする前に、少し別れを惜しませて欲しくて…」

「名前変わってません?」「気のせいです」

「まぁ…いいでしょう。少々お待ちを。持ってきます」

キューティは席を立って部屋を出ていった。

 

しばらく後。あたしが治安隊の建物の前で待っていると、健太郎くんと美樹ちゃんが出てきた。

荷物は持っているが、日光さんは健太郎くんの腰に無い。

「エールちゃん、どうしよう…出られたけど日光さんが…」

「うう…なにこの人たち…嫌な人たちだよね…いっそ消えちゃえば…」

「わーっ!美樹ちゃん!ほらヒラミレモンヒラミレモン!」「…ちうちう」

「うん、まぁここじゃまずいから。あっちで話そうか。」

あたしは二人を連れてそこを離れたのだった。

 

そしてその日の深夜。あたしたちはイタリアの南門から少し離れたところでうし車に乗って待機していた。

「まだかなぁ…」「日光さん大丈夫かなぁ…」

3人で毛布でくるまって門の方を眺めていると、門のそばでちかちかと何かが光った。

「おっ、合図だ。」あたしもそれに応えて魔法ライトの明かりを調節して合図を返す。

ほどなくして、暗闇の中から和服美人…日光さんの姿が現れた。

「よかった…!抜け出してこられたんですね!」

「ええ、さすがに刀が人になって逃げだすとは思っていなかったようです。監視もありませんでした」

あたしの考えは何のことはない、日光さんを渡すふりをして、あとで自分で脱走してもらうというものだ。日光さん普通に強いしね。

渡す前にこっそり話したのだが、日光さんも似たようなことを考えていたので話はすぐに済んだ。

それであたし達は釈放され、門の外で待機していたのだ。

「それじゃあ乗って!さっさと出発しちゃおう!」

「「おー!」」「ええ」

あたしはうし車を発進させた。

「ばーかあーほうしのけつ!間抜けのボンボン貴族!もう二度とこないぞー!」

「あはははは!」「そうだそうだー!もう来ないぞー!」「3人とも、はしたないですよ…」

あたし達の笑い声と日光さんの説教は闇の中に溶けていったのだった。




というわけで政治的な厄介でした。
ランス君なら普通にぶった切るところですが、エールちゃんはそこまで思いきれませんね。

腐敗長官たちの設定を見てみましたがマジで全員カスとしか言いようがないですね。
バショウとかみたいな名家ならではの才能とかも一切なし。
政治とか経営とかその手の技能もなし。

ズルキは限界1桁に技能ナシというどうしようもないカスなのに対して、
目つき悪男ことハッサムは剣1持ちで才能限界30台と言うそこそこ優秀な才能持ちです。
まぁ肝心な魔法技能がないのでその辺がコンプレックスで、下手に戦える分変な趣味に走ったのかもしれませんね。

ラドンはスリープが使える割には魔法技能なし、エミは才能限界そこそこで肉壁兵の才能が有るので、ハッサムとコンビを組めば強いかもしれませんね
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。