【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

105 / 198
忘年会やらなんやらで胃もたれぎみ…

話が100話超えて30万文字もあると一気読みするのもつらいでしょうし、
1章のあらすじでもまとめてみるかと思ったんですが結構大変ですね
ぼちぼちやっていきます


23.エールちゃんは見送る

二人が前に立つのを待って、あたしは次元の門の操作盤に手を置いた。

「もう一度言っておくけど、これは帰還用の門であって、別の世界からこの世界に戻ってくるためのものじゃないの。この世界に戻ろうとしてもうまく行くかはわからないよ」

「うん、わかってる」

「この世界とお別れはちょっと寂しいけど…やっぱりおうちに帰りたいの」

二人の意思は固いようだ。それはそうだろう。

日光さんはなにも言わない。

「…じゃ、始めるよ」

操作盤と言ってもスイッチがあるくらいだ。ぽちっと押せば次元の門の各所が光って音を立てて動き出した。

バチバチと電光がひらめくと、輪っかの真ん中から空間の裂け目のようなものが生じ…それがぐわっと開いて安定した。

「あ、ビルだ!鉄棒とか水道とか見える…あっ、あのコンビニ…」

「…これ…あの日の公園の植え込みの中だ!オオサカだよ!美樹ちゃん!」

「う…よかった…よかったよぉ…帰れる…帰れるよ健太郎くん…」

抱き合った二人はしばし涙を流し、落ち着いたのかこちらを振り向く。

「あの、それじゃあ…さようなら。エールちゃん。」

「今までいろいろありがとう」

泣き腫らした顔で口々に礼を言う二人。

「…うん。よかった。本当に良かった…」

あたしもつられてちょっと泣きそうだ。笑って送り出した方がいいな。

「じゃあ、二人とも、またね…は言わないほうがいいか。元気でね!」

精いっぱいの美少女スマイルで笑って手を振る。

「では、行きましょうか。」

「うん、日光さん。いいの?」

「…ええ。」

尋ねる美樹ちゃんに日光さんが答える。

刀の姿だからわからないけど、こちらに向けて頭も下げたような気がした。

「じゃあ行こう!それーっ!」「えーい!」

健太郎くんと美樹ちゃんは、次元の裂け目を飛び越えて向こうに消えた。

一度だけこちらを振り向いて手を振ると、そのまま公園の外に走っていく。

「…じゃあね。みんな。ちょっと楽しかったよ…」

こうして、あの重い事情があるぽやぽやカップルと伝説の聖刀は異世界に帰ってしまったのだった。

 

ミラクルさんに長々と説明された次元の門の性質を思い出しながら、いろいろと小細工をする。

まず、別の世界からこっちの世界に人や物を送った場合、それを感知して、通過のあと自壊するようになっている…らしい。

『おそらく、逆侵攻を防ぐためだろうな』ってミラクルさんは言っていたっけ。

門はスイッチから手を放せば徐々に閉じて消えてしまうので、重しを乗せて紐でくくって固定。

これで門は基本開きっぱなしになり、もし、あの3人がこっちの世界に引き返さねばならなくなっても戻ってこれるはずだ。

向こうにいる別の誰かがこの門を見つけたりしたら、とは思うがそこまでは面倒見きれないな。まあ大丈夫だろう。

あとは…あたしは荷物から袋を取り出し、門の前に置いた。

中には二人からもらった財布と、あたしが買ったヒラミレモンが入っている。

これだけあればサーレン山に行くくらいはもつ…はずだ。

「あとは…」あたしは少し考えて、紙を取り出してペンを走らせた。

「この荷物が役に立たないことを祈ってます…と。」あたしの名前と住所も書いとこ。

袋に張り付けて、これで用事は済んだ。

部屋から出る前に、振り返って開きっぱなしの次元の門を眺める。

「なんだかんだ楽しかったよ。それじゃあね!」

独り言を残して、あたしはその部屋を後にした。

 

===========================================

 

これはあとで知ったことなのだけれども、

一月くらいあとに、荷物は役に立ってしまったそうだ。

 

===========================================

 

行きは健太郎くんがいたけど帰りは一人。

いかにあたしがスーパー美少女神官戦士だとしても、この遺跡のモンスターたちはちょっと面倒だよね。

「だりゃーーー!ALスラッシュ!」「「あいやー!」」

わらわら湧いてきたハニーの群れを必殺技で強引に突破する。

「おのれー。許さないぞ!スーパーフラ…」

「あーっ!めがねっこの委員長がプンプン怒りながら速足で向かってきてる!」

スーパーハニーが衝撃波を放とうとするのに先んじてあたしは大嘘をついた。

「えっ?!どこ!?委員長どこ!」

「おでこは?おでこは出てるの!?ねぇ!?」

「わー。エッチな本を隠さないと(わくわく」

「はにほー!見つかるようにさりげなくだよ!」

わいわい騒ぐハニー共をほっといて走り抜けた。

魔物に出遭ってもとにかく突っ切る、逃げることを念頭に来た道をひたすら戻っていく。

橋を渡って連続落とし穴を飛び降り、階段を登れば外だ。

「健太郎くんたちは見送ったし、さて、これからどうしようかなぁー?」

まず一回レッドには戻るとして…またお兄ちゃんの様子でも見に行こうか。

そろそろブハなんとかとかいう犯罪組織も壊滅させているかもしれない。

「よし、じゃあ帰ろう!まさかこの出口を出た瞬間に別の騒ぎに巻き込まれたりはしないだろうし!どりゃー!」

あたしは勢いよくフルーツ遺跡の出口から飛び出した。

 

がきーんきーんどかーんわーっわーっ!

トンネルを抜けるとそこは戦場でした。

思い思いの武器を持った戦闘ジャケットの連中が逃げ回るのを、ゼス軍らしき人達が追いかけ回している。

「うわーっ!」(どかーん

「もうこっちはダメだ!ビルフェルムさんもやられた!」

「くそーっ!情報が漏れていたんだ!」

「アベルトに連絡を…ぐわっ」

「一人も逃がすな!包囲しろ!」

「ウォールと肉壁兵を押し出せ!」

森のなかは悲鳴や鬨の声、武器がぶつかり合う音、魔法の爆発音でやかましいことこの上ない。

「…えー…えーっ…」

こりゃどっかのテロリストだかレジスタンスだかを鎮圧してるんかな…

まあ戦場くらいで今更びびりはしないけど…厄介なことになった。

こうして軍人が民間人を追っかけてる状況だと…

「むっ!あそこにもテロリストがいるぞ!捕らえろ!」

「「「おーっ!」」」

あたしに向けて突っ込んでくる兵士たちとウォールや魔法メイトの魔法生物。

まあそうなるよねぇ!

「テロリスト!?人聞きの悪い!あたしは…」

「死ねーっテロリストめ!」「あーもーめんどくさい!」

弁解も一切聞かずに襲いかかってくる兵士の槍や殺人光線を防いで避ける。呪文を唱える暇がない!

かといって剣だと怪我じゃすまないかもしれないが…

「えーい知るか!ALスラーッシュ!」

「ぐわーーーっ!」「ピガーーーッ!」

包囲の一角、魔法メイトやウォールが多めの場所を必殺剣で強引にこじ開ける!

「よし、これで抜けられ…」「逃がさん!炎の矢!」「氷の矢!」

脱出しようとしたあたしに向けて魔法がバンバン飛んでくる!

「あだっ、痛っ…!あたたた…いたいのいたいのとんでけー!」

「逃げたぞ!追えー!」

「ヒーリング!?魔法使いの癖に二級市民に与するか!」

治療しながら走り抜けるが、追手の数は多い。

必死に逃げるが土地勘もないし、逃げきれる気がしない!

「だからあたしはテロリストじゃなくてただの通りすがりのー!」

「こんなところを通りすがるやつがあるかー!観念しろー!」

「くそー!そりゃ信じないか!あーもなにこれ!」

そうこうしているうちに川沿いに追い詰められてしまった。

「おとなしくしろテロリストめ…くくく、見れば上玉じゃないか。じっくり優しく尋問をしてやるからな…」

隊長らしきオッサンがニヤニヤしている。気持ち悪いなあ…

とはいえ、そもそも振り切ったところで指名手配でもされたら出国が出来ない。どうしようもないし…投降するか…?

でも腹立つし、セクハラされそうだし、問答無用処刑投獄とかされるかも…

(あーもうめんどくさいなぁ…この際、全員ぶっ殺すつもりでやればどうにか…)

などと剣に手をかけた瞬間。

「壱式・ショウキ!」

「「「があああああ!?」」」

あたしを包囲していた兵士やウォールがまとめて吹き飛ぶ。

「えっ…?」

呆気にとられるあたし。吹き飛んだ兵士立ちの向こうには、剣を振り切った体勢の青い鎧に赤毛の戦士。

「ふぅ…峰打ちにしておいた。一応ね。」

呟きつつ、剣を背中に戻す。今戻したものと抜かなかったほう、二本の剣が背中でガチャリと鳴った。

「ええ…?どうしてあなたがここに…?」

震え声で呼び掛ける。

「この国に用があってね。

帰り際に気になる情報を聞いて駆け付けたら、たまたま君を見かけたんだ。

…間に合って良かったよ」

今代の『勇者』、アリオス・テオマンがあたしに微笑んでいた。




魔王カップルの帰郷は、史実でもありましたが1週間くらいでヒラミレモン切れで終わってしまいました
この事実を踏まえると魔王を異世界に返すはランス視点はともかく二人にとっては遠回しな自殺ですね

エールちゃんが巻き込まれた戦闘は、
アイスフレームというレジスタンスが仲間の救出作戦を実施するとの情報をつかんだゼス軍が実施した殲滅作戦だそうです
ゼス軍はアイスフレームの中心人物であるプラナアイス夫妻及び長男を討ち取り、勢力を大きく削ぐことに成功しました。


以下、妄想です。

セドリック・プラナアイス
魔法1 政治1 軍師1
34/34

コーネリア・プラナアイス
弓1 剣1
32/40

一級市民の資産家の跡取りであったセドリックが二級市民の傭兵コーネリアに一目ぼれし、猛烈なアタックによって結ばれた夫婦。
その過程でセドリックは二級市民の境遇について実感し、二級市民の待遇向上活動を志す。
粘り強い活動の結果、各所にその理念に共感する人々…のちに氷溶の者と呼ばれる人たちのネットワークを作り上げた。
子供たちがテロリスト集団であるペンタゴンに参加してしまったことには少し頭を抱えていたが、二人が独立して穏健派レジスタンスを設立すると聞かされ、それならばと夫婦そろって参加。私財をなげうってアイスフレームを設立した。
最後まで子供たちの身を案じていた。

ビルフェルム・プラナアイス
詩1 教育1 剣0 魔法1(封印)
25/33

ウルザの兄。文学的でおとなしい性格だったが、学校を優秀な成績で卒業後、妹とともに当時はまだ比較的まともだったペンタゴンに参加。
本人の人柄と能力、両親の名声もあり八騎士の一人となる。
才能限界はそこそこだが戦闘系技能は封印した魔法1しかない。
最後までウルザの身を案じていた。

ウルザ・プラナアイス
剣1 弓1 軍師1 政治1
30/45
ランスに抱かれまくる前はこれくらいかな、と。
戦国で強すぎたせいで軍師2じゃないのが不自然に思えるが、
おそらく軍師としては少人数(最大3000人くらい?)の部隊を率いるのに向いているタイプ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。