【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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26.エールちゃんは右往左往する

「自由都市の犯罪組織…?」

「ええ、ガ…征伐のミト様の活動は他国にも及んでいるんです。あなた方がノエマセを捕らえたおかげでゼス内での悪党どもの動きも一時的に弱まっていますし、ミト様の仕事もひと段落したので…」

お疲れさまでした、と言外に伝えている感じだ。

ん-。これたぶんあの偉いおっさんの仕事が終わったんで成敗活動に復帰したいから厄介払いってのもあるかな。

おっさんがそう命じたかは…わからない。どっちかというとウィチタさんや部下の人が気を回した可能性のほうがありそうかなあ。

まぁ世直しジジイの事情はどうでもいいし、あたしたちもそろそろ成敗にも飽きてきたところであるし、ちょうどいいかな。

「どうしますアリオスさん?あたしは異存ないです」

「うーん…でも調査か…そういうことはコーラ任せで俺はあんまりやったことがないんだよね…」

「ならあたしに任せてください!自由都市には詳しいですし、いい方法を知ってるんです!」

「そうなのかい?じゃあ引き受けようか!」

そういうことになった。

 

ウィチタさんと別れて国境に向かううし車の上で、渡された資料に目を通す。

ブハードという犯罪組織はなんでも自由都市地帯全般で誘拐だの窃盗だの違法取引だのなんだのをやっているそうなのだが、各都市の警備兵も捕らえきれていないらしい。

なんでも構成員を追い詰めたと思っても煙のように消えてしまう、ということがよくあるのだそうだ。

ただ、ロックアースのマフィアの構成員がブハードの連中と何らかの関係がある可能性が指摘されていた。

「ふーむ…とりあえずロックアースで調べてみるべきかな」

「そうですね、早速向かいましょう。」

 

アリオスさんと一緒にうし車でひたすら走り、サバサバからアダムの砦から出国。

さようならゼス。忙しいのもあったけど、あんまりいい国とは思えなかったな。魔法使いでなかったらもっと嫌な目に逢ってただろうし。

パラパラ砦を通ってから南下して自由都市地帯へ。すこし進めばすぐにロックアースへたどり着く。

ロックアースの街は表通りをパッと見る限りでは、店が開いていて酒場があり、大勢の人が出入りしていてそれなりの賑わいを見せている。

ここだけ見れば、そこそこな規模の都市国家という感じ。だれもここがマフィアの支配する都市だとは思わないだろう。

ロックアース都市長のアルカポネという盲目のおっさんからして実はDXの会というマフィアのボスなんだそうで、警備隊長も門番も官憲も当然みんなマフィアの息がかかっている。

表通りだけは有力マフィアが示し合わせてちゃんと治安維持をしているらしいが、そこから一本逸れればどこかのマフィアの縄張りだ。怪しい店やら工房やらがてんこ盛りで、旅行者が消えても誰も気にしない。

パッキャマラード・デンのようなアウトサイダーの巣窟とは違い、力をつけて自分達で社会の規範を定めるまでになった『悪』の街。それがロックアースなのだ。

 

あたし達はとりあえず表通りのバカ高いホテルの部屋を取り、そこで作戦会議をすることにした。

ちなみに部屋は別。アリオスさんとなら一緒でもよかったけど…ね。

 

「というわけで調査を始めましょう!

「うん。ところで前に言ってたいい方法ってどんなのなんだい?」

「それはですね…お兄ちゃん直伝、チョコボール式調査法(あたし命名)です!」

「チョコボール式調査法!?」

 

チョコボール式調査法(あたし命名)とは!以下のような手順である。

①その辺で「◯◯(何らかの犯罪)について知らないか!」と聞いて回る。

②そのうち、怪しい奴が「◯◯について探るのはやめておけ」とか『忠告』をしてくる。

③そいつをボッコボコにして情報を聞き出す。

④なにも知らなかったり聞き出せなかったら①に戻る。

⑤聞き出せた情報をもとにさらに調査を進める。

⑥そのうちどばーっと本気で殺しに来るので全員ボッコボコにすれば大抵解決する

 

箱入りのチョコボールを取り出し口から出すイメージで命名したこの手順は、頭を使わなくていいから楽なのはいいんだけど…

お兄ちゃんやアリオスさん、健太郎くんみたいな負けるわけない人と一緒じゃないとやりにくいのが難点かな。

 

「え、え~…」

あたしの説明を聞いたアリオスさんは微妙な表情をしている。

「エカルちゃん、それ何度かやったことあるの?」

「はい!お兄ちゃんはいつもだいたいこんな感じですよ。」

「ええ…うーん…お兄さんってどんな人なの?今は何を?」

「いやー強くてかっこいいんですけど女好きでスケベで、今は…」

えーと、お兄ちゃんは年明けに会ったあとは会ってなくて…確かネカイさんが…

『あー。キースに聞いてみたらちょっと前から…ブハードって地下組織を調査する仕事をしてるらしいわ』

「あーーーーーーーー!!!!」

「どうしたの?」

「お兄ちゃん!確かしばらく前にブハードを調べるって仕事をしてたって!」

「ええ?それいつの話?」

「話を聞いたのがレッドを発つ前だから…少なくとも1月くらいは経ってますね…」

「だとしたらもう仕事は終わってるかな?話を聞けるかもしれない」

「そうですね…」

アリオスさんと相談して、あたしはお兄ちゃんに会いに行くことにした。もし手が空いてるなら一緒に来てもらうつもりだ。アリオスさんを一度連れてこいとは言われてたしね。

アリオスさんはこの街に残る。すこし穏便に聞き込みをしたいらしい。

 

ロックアースとアイスは隣同士だ。翌日朝に発ったあたしは昼前にはアイスに到着。早速タイヤキ通りのお兄ちゃんの家を訪ねた。

「お兄ちゃーん!シィルさーん!」ゴンゴンとノックしてみても返事がない。

郵便受けを開けてみれば郵便物でパンパンだ。

「…こりゃしばらくは戻ってきてないな…」

仕方ないのであたしはキースギルドに向かったのだが…

 

「ランスか?ここしばらく見てねぇぞ」

キースギルドのマスター、ハゲアタマアブラ親父のキースさんは葉巻をぱちんと切りながら言った。

「ええー…?」

「地下犯罪組織ブハードの調査、って仕事を受けて、一月前にロックアースに向かったのが最後だな…向こうのギルドからの連絡もねぇし…まぁ、どうせアイツの事だから無事ではあるだろうが…」

「…ありがとうございます。失礼しますね」

あたしはキースギルドを出た。

まぁ、確かにお兄ちゃんがそう簡単に死ぬなんてあり得ない話だが…

もし、仮にだが。女絡みで罠にはめられたら…

 

(ほわんほわんほわん)(想像の音)

=====================================================

『あはーん。うふーん。』

『がはははははは、俺様のハイパー兵器を食らわせてくれるわ』すぽぽぽーん

『かかったなばかめー』さくっ 

『ぎゃーっ がくっ』

『ああっ、ランス様…!なむなむ…』

=====================================================

 

(ほわんほわんほわん)(想像終わりの音)

「ううっ…ちょっとあるかも…」

妄想の中のシィルさんがピンク髪を剃髪して尼になりお兄ちゃんの菩提を弔うところまで妄想して、あたしは頭を抱えた。

「…とりあえずロックアースに戻ろう…」

アリオスさんもいるし、お兄ちゃんの行方を追うという別の目的もできてしまった。

というわけで急いで引き返したのだが…

 

「お連れの方でしたら、出かけられましたよ。」

ホテルの受付からは無情な返答が返ってきたのだった。

「伝言をお預かりしています。『コーラから連絡があったからちょっと出かける。すぐに戻る』 だそうです」

「えー…あ…はい…」

まぁ、あたしがとんぼ返りをするとは予想外だっただろう。仕方ないっちゃ仕方ないか…

「うーん…」

一人だとちょっと危ないけど、じっとしてるのもアレだし。

とりあえずキースギルドと提携しているこの街のギルドに行ってみようか。

「あのー。この街のギルドってどこにあります?」

「…冒険者のギルドでよろしいですよね?」

「あ、はい…」ほかにギルドがあるんだろうか。あるんだろうな…

場所を聞いたあたしはホテルを飛び出したのだった。




次どうしようかなーとひつじ小屋を眺めていたらカミーラの名前を長いことカーミラだと思い込んでいたことに気が付きました
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