あたしはその後もしばらくブハードとお兄ちゃんについて聞いて回り、それに伴い騒ぎが起きたり起きなかったりした。
とまあ、そんな風に派手に動いていれば『警告』は来る訳で。
「ぐうう…」「いてえ…痛ぇよ…」「畜生…」
こうしてあたしの回りで腕や足を抑えたり痺れたりして転がっている男連中がそれだ。
路地裏を歩いていたらいきなり囲んできてあんまり嗅ぎ回るな、とかそれっぽいことを言ってきたので電磁結界をぶちかまして片っ端から切りまくったのだ。
「え~と…んじゃ、あんたでいいや。あんたら誰の差し金で来たわけ?」
比較的元気そうな髭面の男に剣を突きつけて訪ねる。リーダー格っぽかったしね。
「ケッ…言う訳ねえだろ」
そりゃそーだよね。とはいっても尋問のしかたなんて知らないんだよなー。
この事態になっても動じてないし、相当場数を踏んでるし殺してるだろうし…
しゃーない。あたしなりにやるしかないか。お兄ちゃんの真似はできないけどなんとかなるだろう。
「あっそ。んじゃまあ…いたいのいたいのとんでけー」
あたしはヒゲ男の手足にヒーリングをかけた。
「…なんの真似だ?」「うん。この通りあたしって回復魔法も使えるからさー。これくらいなら治せるのよ」
戸惑うヒゲ男ににっこり笑いながら続ける。
「ちょっとこういうことには不馴れなんだけど…もしやりすぎちゃってもこうやって治してあげられるからさ。安心してね」
「てめぇ…ぐあっ!?」「よし、んじゃいこっかー」
さくさくさくさくっと動けない程度に手足を刺し、男の襟首を引っ掴んでずりずりと引きずっていく。
「こんなところで立ち話もなんだから、ゆっくり話し合いできるところに行きましょ」
「がっ…やめろ…離せ!離せえええ!こんなことしてただで済むと思ってんのか!」
「はいはい、あんたがちゃんと話したらすぐ終わるからねー。」
正直気は進まないけどね。これなら暴れる汚いガキを洗う方が大分ましだ。
今度心を読む魔法…リーダーだっけ。あれとか覚えられないか試してみようかなー。
ここから先は描写しない。タグとか面倒だからね。
不馴れな作業の結果は芳しくなかった。
ヒゲ男はどっかの組織だかマフィアだかの外部構成員っぽいが、マジでなにも上からは聞かされていなかった。
日々の暴行業務の一貫として、色々嗅ぎ回っててちょっと目障りな女冒険者を痛め付けて、美人ならさらってこいとだけ命令されて来たそうだ。
上からの使いも毎回違うチンピラが言伝を持ってくるだけで顔も名前も知らないらしい。
用がすんだヒゲ男は縛ってそのへんに放り出しておいた。死んではいないけどもうあたしの前に現れることはない…と思う。
まぁ、あたしもさらわれるところだったんだからこれくらい当然だよね。
お兄ちゃんなら相手に女が混じってればがははははーと楽しみながらやるんだろうけどね。そういうわけにもいかないからなあ…
とはいえ、これでチョコボール一個は食べたわけだ。
次はもうちょっと大きいのが出てくるかなー…
それから数日後。路地裏を歩いていたあたしは気配を感じてぴたりと足を止めた。
「…出てきたら?」
返事はなかったが、短い口笛の音とともにあちこちの路地裏や物陰からチンピラがバラバラと出てくる。
「ふーん。前より頭数は多いけど…これくらいであたしを抑えられると思ってるの?」
見た感じ二束三文の雑魚ばかりだ。魔法を唱える暇はなくてもどうとでもなる…
「いや、無理だな。嬢ちゃんは見た目に似合わずかなり使うみたいだしよ」
帽子をかぶった目の細い男が一歩前に出る。こいつが頭か。
「へぇ、それじゃあ何しに来たの?悪いけどナンパならお断りよ」
「いやあ、なんとしても一緒に来てもらうぜ。」帽子男が指を弾くと、手下が物陰から誰かを引きずり出した。
「え?マルク!?」「…」
この間会ったスリのクソガキ…マルクはこちらをチラッと見て目をそらした。その両手は縄で縛られている。
…うーん…まさかこうなるとは…
「嬢ちゃんが暴れるなら、こいつは相応の目に遭う。そういうことだ」
「こいつの命が惜しければ降参しろって?バカじゃないの?なんであたしがそんなガキのためにあたしが…」「ぐあっ…」「っ…」
言葉の途中でマルクの縄が締め上げられ、あたしは言葉に詰まった。
「まぁ俺たちにとってはこんなガキの命どうでもいいのさ。見捨てるなら力づくでやるだけだ。ちょいと面倒が省けるなら…程度の話でね。」
帽子男がタハコに火をつけ、煙を吐きながらこちらを見る。
「…で、どうするね」
「……はぁー…………」
お兄ちゃんとシィルさん、シスター、セルさん、アリオスさん、健太郎くんたち。その他のみんなも…ごめん。
あたしは剣から手を離した。ガシャンと地面に落ちた剣をチンピラが取り上げる。
「殊勝だな。まあ、嬢ちゃんは上玉だ。傷つかないように丁重に扱うさ…おい」
両手が後ろに回され、縛り上げられる。猿ぐつわを噛まされる前にあたしは口を開いた。
「その子はもう用済みでしょ…離しなさい」
「おう、そうだったな…」
帽子男が命じるとマルクの縄はすぐに解かれた。
「ほら、さっさと…」「おい、約束は守れよ」
あたしの言葉はマルクが帽子男に話しかけたことで断ち切られた。
「ああ、無論さ。ちゃんとあの女を捕らえるのに協力してくれたしなあ…」
「…あー…そういうことか…」
あたしが力なく声を漏らすと、帽子男が横目でこちらを見て笑い、マルクはこちらを見てから慌てて目をそらした。
あたしって思ったより大分バカだったらしい。
「おらよ」「もがっ…」猿ぐつわを噛まされてこれで呪文も唱えられない。布袋も被されて視界も遮られる。
「………ふん、恨むなら恨めよ。でも騙される方が悪いんだぜ。自分以外の人間なんてみんな駒さ。役立つか役立たないかの差しかねぇんだ…あばよ、ネェちゃん」
マルクの言い聞かせるような声が聞こえるが、あいにくあたしは返事ができない。
「よし!引き上げるぞ!」
あたしは誰かに担ぎ上げられ、どこかに運ばれていった。
どれだけ経ったかはわからない。
階段やら梯子を上ったり降りたりしたことはわかるけど、今どの辺にいるかはさっぱりだ。
とはいえ、全体的に降りる方が多かったしさっきから空気が微妙に湿っている。たぶん地下だろうか?
「おかえりなさい。おっ、もしかしてそいつがダンをズタズタにしたって言う…」
「あー。例の女剣士だ。」
「ツラはどうでした?」
「話通りの上玉だったぜ。」
「ってことは…『ボス』への土産ですか?」
「あー。全く面倒だけどあの人には逆らえねえからなあ…」
『ボス』!?お土産?このスーパー美少女ボディを美味しく頂かれるってこと?予想はついてたけどやだー!
「…もがもが!」
「おっと、暴れんなよ。傷が付くと面倒なんだよ。ボスはそういう趣味はねえんだと」
抵抗もむなしくあたしはさらに運ばれていき…なにか柔らかいものの上に横たえられた。
なにやら鎖がガチャガチャ鳴った後、唐突に顔の袋が取り去られる。
「んが…もがが…?(ここは…?)」
辺りを見回せば、一見普通の内装の部屋だ。大きなベッドとテーブルがあり、シャワールームもある。
ベッドに取り付けられた鉄の柱にあたしの手錠から伸びる鎖が繋がっていなければ高めのホテルの一室に見えただろう。
「ここはボスのお楽しみのための部屋さ…せいぜい可愛がってもらうんだな。ボスが飽きたらこっちに回してくれることもある。そうなったらよろしく頼むぜっ…と」
「もがーーっ!!」
「ひひひ、じゃあな」
あたしを担いできたとおぼしき大男がニヤニヤと笑い、あたしのお尻を揉んでから去っていった。
一人残されたあたしはどうにか抜け出そうとするが、鎖は頑丈で素手では切れそうにないし、手錠も外れない。
魔法も詠唱できない。これは…無理かなあ…
あたしはベッドに寝転がった。
まさか初体験がこんなことになるなんて…
これならアリオスさんにもっと積極的に迫っておけばよかったなあ…もしくは最悪お兄ちゃんでも…あーあ。ごめんね二人とも。
あのドアがばーん!と空いてお兄ちゃんかアリオスさん、どっちかが助けに来てくれないかなあ…
などと思っていると、廊下の方から誰かが走る音が聞こえてきて、ばーん!と扉が開かれる。
飛び込んできた男がこちらに向き直り、叫んだ。
「がーはははははははは!お前が俺様達のことを探っていた冷徹な美人魔法剣士ちゃんか!不届き者め!俺様がじっくりねっとり尋問してくれる…わ…ん?」
「…もがっ」
どう見てもうちの兄です。本当にありがとうございました。
ランスが抱いた女を他に回したりするか?というご指摘がいくつかありました。
すみません、お尻を揉まれるエールちゃんが書きたかったんです。
というのも何なので理屈を用意しました。
女用意しろ女!というランスくんの要求に対し、組織のみなさんはめんどくせえなあ、と思いつつロックアースによくいる娼婦のみなさんをあてがいました。
がはははは!ハーレムじゃーいと楽しんだランスくんでしたが
そういう系ではない女の子も抱きたくなり、用意しなければ働かんし出てくしなんなら暴れるぞと言います。
組織の皆さんも某ホテルの美人メイドさんだのカジノの美人ディーラーだの花屋のお嬢さんだのをさらって提供するようになりました。
で、ランスくんにあんまり呼ばれなくなった娼婦のみなさんは暇なので自発的に営業活動を始めます。
ランスくんもよくエッチなお店を利用しますが、そういうお店の女の子がいちいち自分以外の客を取ることにキレたりはしません。
二~三人斬られましたがまあいいか、と言うことになりました。
ということでひとつ納得頂ければ…(ノリでかいたセリフの後付け)
よろしくお願い致します。