「それでアリオスさん。結局考えってなんなんです?そろそろ聞かせてくれませんか」
食後のお茶をひとくち飲んで、あたしは切り出した。まぁ想像はついてるけどね。
「ああ…そろそろいいか。うん。魔封印結界を使うつもりなんだ」
ですよねー。
エスクードソードも封印されていて、カオスも日光もなし。こんな状況で魔王に対抗するには魔封印結界しかないだろう。
ていうか魔王に効くのかな…?まぁ、魔人には効いたし効果はあるか。未覚醒って話だしね。
未覚醒でも魔王は怖いっちゃ怖いけど、そんなんが人間界をうろついてる方が怖い。
「エールちゃんは魔封印結界は…」
「使えますよ。けどあれ、最低3つ、できれば4つの聖具が必要なんですが…」
例の聖印はスリアさんに洗濯されてなんかご利益がなくなっちゃったからなぁ。
あたしの剣が使えたりしないかな、と思ったけど、どっかその辺で拾った剣に命を懸けるのはどうかと思うし。
「ああ、聖具はカイズに居る友達が用意してくれる手筈になってるんだ」
「へー。そんな人が…どんな人です?」
「エリザベートっていう女の子だよ。前に旅をしてるときに賊に襲われてるところを助けたんだ。家族そろっての熱心なAL教徒だし、エールちゃんとも話が合うんじゃないかな」
「…へぇー。そうですか。」
ふーん。へーぇ。ほーう。まぁ…とりあえず置いておこう。
「それじゃあ、もう準備は出来てたんですね。」
「ああ、魔王の居場所さえわかれば、カイズに行って聖具を借りてそのまま向かうつもりだったんだよ。それはコーラが調べてくれている」
「じゃあ、それまでどうしましょうか?修行でもします?」
「うん。そうしようか」
そういうことになった。
ということであたしたちはしばらくレッドを拠点に修行とレベル上げに励んだ。
「はああああっ!」「おりゃおりゃー!」「きゃーん!」
アリオスさんとハイパービルやその辺のダンジョンに出かけてモンスターを倒しまくったり、
「はい、どうぞめしあがれ」
「美味しい!相変わらずものすごい味だ…コーラも食べるかい?」
「…いえ、遠慮します」
へんでろぱを作ってアリオスさんにいっぱい食べさせたり、
「ぐっ…魔獣ウルンセルだと!?なんだここのモンスターは!」
「死んでたまるかー!いたいのいたいのとんでけー!」
アリオスさんとMランドに出掛けてTowerというアトラクションで死にかけたり、
「いいですか?そもそもエールちゃんは神への敬意というものが足りていません…聖句を覚えるのも無論重要ですが、まずは日々の祈りから…」(くどくど
「うへぇー…」
セルさんに神魔法を教わって、魔封印結界の呪文を覚え直したりした。
時間があるときに孤児院にこっそり顔を出してみたが、マルクはすっかりガキ大将的な立場を確立していた。
孤児院の子供たちを率いて木剣を振り回し、畑を荒らすムシを追っかける年相応の姿を見ると、いいことをしたなぁと思えてくる。
そうそう、マスターからなんか町で怪事件が起きてるから調べてくれって頼まれて調査してみたら、ある盗賊が悪魔の女の子を支配して悪さをしていたんだよね。
へケートと言うその悪魔は、ある女の子の魂を狙っていたが失敗し、その後ついうっかり盗賊に真の名前を知られてしまったらしい。
結構格の高い悪魔だけに強いし、魔法だの呪いだのも使うしでだいぶ厄介だったのだが、あたしが気を引いている隙にアリオスさんが盗賊を一刀で切り捨てたのだ。
へケートは解放され、盗賊は死んで一件落着…そこまではいいのだが、なんとへケートはアリオスさんを気に入ってしまった。
「ありがとう!アリオスはすごいやつだなあ!」
「なーなーなにか頼みごとはないか?今なら魂ちょっとだけでなんでも聞いてやるぞ?」
「ど、どうしてもって言うならおれの名前だって教えても…あ、最初じゃなきゃダメか…」
などとアリオスさんにべたべたとくっつくし、アリオスさんの腕に抱き着いてこっちを見てふふんと笑ったりするし、あたし達が迷惑そうにしてもついて来ようとするしで…さっさと追っ払いたいのだが、なにせそれなりの階級の悪魔なのでかなり強い。
本当に厄介だったが、アリオスさんが猫鈴をプレゼントすると満足したのか、大事にするねーまたねーと喜んで去っていった。
猫鈴はなんかのマジックアイテムらしいが、人間がつけていると害があるので使い道に困っていたそうだ。
まぁ悪魔にはそれくらいで十分だろう。もう出てこないでほしい。
ていうかアリオスさんモテるな…勇者だからしょうがないけど。
あたし以外に9人くらいガールフレンドが居たりするかもしれない。やっぱ必殺のへんでろぱで胃袋を捕まえておいた方がよさそうだ。
そうこうしているうちに時は過ぎ、LP3年も残り1/4くらいになったころ。
コーラさんから知らせがあったのだった。
「魔王ですが、今カイズにいるようです」
「えー?カイズに?」
「驚いたな…なんでAL教の総本山に…魔王から一番縁遠い場所だろう…」
「それが、なんでか魔王は魔物に追われてるようでして…魔物に襲われる危険がないところを選んだようです」
「なんでだろう?」
「…未覚醒のままなのとなにか関係があるのかな…」
「まあいい、好都合だ。早速向かおう」
「エリザベートには手紙を出しておきますね」
ということで、あたしたちはレッドを発ってカイズに向かった。
ジフテリアから船で川中島に向かい、小舟でカイズに上陸すると、神官服を着た紫髪の女の子が待っていた。
「アリオス様…良くいらしてくれました…ええと、そちらは…?」
上気した顔で駆け寄ってきてアリオスさんに声をかけ、こちらに目を向けてくる。
「ああ、この子は…」
「……エールです。エール・クリア。冒険者で、アリオスさんと一緒にあちこち冒険してます。」
「……そうですか。エリザベート・デスと申します。アリオスさんを守っていただき、ありがとうございます。」
「「……ふふふふふふふふ」」
あたしとエリザベートなんとなくにらみ…見つめ合いながら笑い声を漏らした。
立ち居振る舞いになんとなく品がある…ように見える。たぶんいい家の出とかだろう。
まぁでも、見た感じ戦いの心得もなさそうだし魔力も感じない。神官と言うか信者だな。勇者の仲間としては不足。ふん…戦闘力5か。ゴミめ…
等と思いつつエリザベートを見ると、向こうは『ふん…庶民か。ゴミめ…』みたいな顔をしていた。微妙にむかつくな…
「どうしたんだい、二人とも似たような顔して。もう仲良くなったの?」
「え?あー。いや、うん。はい。」
やっべ、顔に出てたのはあたしも同じか…?
「…ええ。では、まずは私の家の方に参りましょうか…」
彼女に案内されて、あたし達はカイズの街中へと向かった。
エリザベートの家は普通の古びた一軒家だったが、カイズに家を持っているだけでものすごいステータスではある。
家の調度品も、派手ではないがしっかり金をかけているなこれ…孤児院とは大違いだ。
高いもん買ってもすぐにガキがぶっ壊しちゃうからね。
「今お茶を入れますね」
「…いや、先に確かめさせてくれるかい?」
「分かりました。少々お待ちを」
エリザベートは家の奥に引っ込み…AL教の聖印が描かれた袋を抱えて戻ってきた。
「今両親は巡礼に出てまして…おかげで楽に持ち出せましたわ」
「じゃあ、見せてもらうね」
アリオスさんが袋を広げる。中身は…十字の金属の棒が4本。
「なんですかこれ?」
「結界志木ですわ。魔封印結界専門の触媒で…我が家の先祖が魔のものを封じた時に使用した由緒正しいものです。……エールさんは神官ですのにご存じありませんの?」
「……へぇー。知らなかったー。でもエリザベートさんは魔封印結界使えないんだね」
「「………うふふふふふ」」
「エールちゃん、その結界志木は使えそう?」
にこやかに笑いあうあたしたちにアリオスさんが声をかけてきた。
「あ、はい。えーっと…うん、大丈夫そう…かな?」
うーん。古びてるし、手入れはされてるけどちょっとボロいな…
とはいえ微妙に神聖さを感じる。たぶん大丈夫だろう。
「…よし。じゃあ、まずはカイズに居るっていう魔王を探そう。悪いけど、ここを拠点にさせてもらうよ。」
「ええ、もちろんですわ」
「うん、よろしくね」
とりあえずいろんなことを棚上げしつつ、あたしは頷いたのだった。
アリオスの恋人についてはセシル以外はニーナは冒頭で死亡、ヘケートとエリザベートはエロシーンのみでキャラですらなくアイテム扱い(しかも弱い)で、正直描写がないので頑張って書いてみました。
他の六人は…まあ死んでるんじゃないですかね。
ヘケートは第五階級悪魔らしく、めちゃめちゃ強いはずなんですがそんな風にはまるで見えませんね…カードも弱いし…
エリザベートに関しては、この時期にアリオスがサテラとハウゼルを倒しているということは魔封印結界を使ったしかありえない、となると神官の協力者を探したはず、ということでこの時期に知り合ったことにしました。
エリザベートは神魔法使えそうにないので、触媒用意役に。
正史ではカオスの件で知り合ったセルさんあたりに頼んだんじゃないかなと思います。