【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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38.エールちゃんはもっと冒険がしたい

あたしは船の縁に手を掛けて、遠ざかるカイズの町並みを眺めていた。

結局、アリオスさんは見つからなかった。

エリザベートの話だと、なんだか元々元気がなかったが急にさらに意気消沈して、彼女は慰めようとしたのだが…

「…ごめん!」

の一言と共に走り去ってしまったそうだ。

追いかけたが追い付けず、そのままその日の最後の便でカイズを出てしまったようだ。

コーラさんもいつのまにかいなかったし。

「あのさー…アリオスさん、女の子にモテるのに彼女がいなかった理由って…」

「こういうことなのでしょうね…」

「「はぁー…」」

あたしとエリザベートは顔を見合わせてため息をついた。

「そういえば、結界志木壊れちゃったけど大丈夫?」

「かまいません。結界に使って壊れたんですから寿命だったのでしょう。あの袋には魔法ビジョンのアンテナでも詰めときますわ」

「そ、それでいいんだ…」

「両親には内緒ですが…どうせばれやしませんわ」

なんかエリザベートが開き直っている…修羅場を潜って度胸がついたかな?

「…あの、エールは住まいはどちらに?」

「自由都市のレッドの街だけど」

「住所、教えていただけませんか?もしアリオスさんを見かけたらお知らせしますので…」

「あー、うん。心配だもんね。いいよ。でもエリザベートが見つけたら…」

「ええ、無論お知らせしますわ。そして見つけたら…」「うん、見つけたら…」

「「とりあえず一発ひっぱたく」」

あたし達は頷き合ったのだった。

 

健太郎くんたち一行がカイズから早く出たいというと、エリザベートが小舟を一艘手配してくれた。

あたしもせっかくなので同乗し、川中島に移動して一泊。そのままジフテリア行きの船に乗り…

そしていま、あたしは甲板で黄昏ているわけだ。

「ふぁー…おはよー。エールちゃん」

あくびを漏らしつつ美樹ちゃんが声をかけてきた。

「あーうん。おはよー美樹ちゃん。」

「久しぶりだねー。目が覚めたらいつの間にか別の島にいてびっくりしちゃった」

「あはは…美樹ちゃん良く寝てたから…」

「えへへ…」

二人でなんとなく笑い合い…言葉が途切れる。

「…その、ごめんね、黙ってて…」

「美樹ちゃんが未覚醒の魔王だったってこと?」

「うん…その…隠してたわけじゃっていうか…エールちゃんの事疑ってるってわけじゃなくてむぎゅっ」

あたしは美樹ちゃんの頬を両手でつまんだ。

「つまんない隠し事をしてた口はこれか~~~~!こうしてくれるわ~~~!」

そのまま柔らかいほっぺたをグネグネと引っ張りまわす。

「いひゃいいひゃい!やめへ~~~~!」

「えへへへへ…これで許してあげる。…なんていうか、タイミングを逃して言いそびれちゃうことってあるからね」

「うう…いひゃい…けどありがとう…」

ほっぺたを抑えながらこっちを見る美樹ちゃんに微笑みかける。

「それに、まぁいろんな事情は置いといて…また貴方達に会えたこと自体はうれしいからね」

「エールちゃん…エールちゃーん!」「わっ」

抱き着いてきた美樹ちゃんを受け止めて抱きとめる。

(こんな小さくて柔らかい女の子が魔王だなんて信じられないなぁ…)

正直似合わないよね。魔王化を止める方法があればいいのに…。

あたしはちょっとだけそう思ったのだった。

 

その後、健太郎くん達と一緒にレッドに戻った。

万一あの魔人たちが追いかけてきた場合に、対抗手段は多い方がいいからね。一本よりも二本だ。

けど特に追手もかからなかったので、あたし達はスリアさんの下宿でしばらくダラダラ過ごした。

健太郎くんと美樹ちゃんはいつも通りにのんびりだったけど、なんか日光さんもなんとなくぼーっとしていた気がする。

なんだろう?カオスもこの下宿に居た時なんとなくぼんやりしてたし、武器をのんびりさせる雰囲気でもあるのかもね。

それなりに楽しく過ごしていたが、健太郎くんがそろそろここを発つと言い出した。

三人は相変わらず魔物に襲われないようにひとところに長居しないようにしているみたい。次は魔物界から遠いJAPANに行くそうだ。

まぁこの下宿が魔物に襲われたら…スリアさん一人しかいないし、きっと大変なことになるよね。

あたしも一緒に行かないか、と美樹ちゃんに誘われたのだが、少し考えてあたしは断った。

いってもよかったのだが、ちょっとお兄ちゃんの事が気になったのだ。

そろそろケガも治るし、何かしでかすころだと思うしね。

とはいえちょっと寂しいので、ポルトガルまで送ることにした。

 

レッドからポルトガルまで行く間の道中、Mランドに立ち寄って遊んだ。

145cm制限のジェットコースターに美樹ちゃんは乗れなかったがあたしはギリギリ足りた。

美樹ちゃんをなだめるために健太郎くんは乗らなかったので、日光さんと並んで乗る羽目になった。

日光さんは乗ってる間一ミリも表情を変えなかったが、降りたあとあたしたちがバルチック焼きそばを買って食べている時に長々と感想を語っていたので楽しかったのかもしれない。

 

ポルトガルではJAPANに通じる天満橋を通るための手形を巡って強欲な商人相手の騒動に巻き込まれ、たまたま知り合った相馬さんというJAPANのおサムライの助けで最終的にはどうにかなったりした。

相馬さんは腕は立つのけど大の女好きで有名らしいのだが、あたしも美樹ちゃんもまだ対象外だそうだ。助かったけどちょっと失礼だと思う。

 

あたしもだが、健太郎くんと美樹ちゃんも天満橋を見るのは初めてだったらしく、あまりのバカでかさに一同で大層驚いた。

大きさもそうだが、大陸の端の崖から伸びた巨大な橋が向こう岸につながっているのは圧巻だ。

一説によると天満橋はなんとかって神様が作ったモノで、これでJAPANを支えているのだとか。

さすがにんなわけないと思うが、そう思ってしまうのも無理はない。

なんとかって神様は大したものだ。

 

「元気でねー!」

「またねー!」

「落ち着いたら手紙書くからー!」

手を振りながらバカでかい天満橋を渡っていく二人と一振りを見送ってから、あたしはレッドに戻ってきた。

 

下宿に戻って手を洗い、スリアさんのご飯を食べ、シャワーを浴びてベッドに寝転がる。

「くぁ~~~~~~…」

やっぱ部屋は落ち着くな。天井を見つめて考えを巡らせる。

LP3年もそろそろ終わりだ。I・NETへの届け物を持ってレッドを出発してから…半年とちょっとか。

長かったような短かったような。

リーザス、ヘルマン、ゼス、自由都市。JAPANはまだだけど…人類圏を大体一周したわけだ。

健太郎くん達、リーザスのみんな、ヘルマンの人たち、ゼスの連中、自由都市の皆さん…それに、犯罪組織の幹部なんてやっていたお兄ちゃんに、マルクの奴。あ、エリザベートもね。

この旅で出会ったいろんな人達の事を思い出す。

いい人もいたし、悪い人もいた。やな奴かと思ったけどなんだかんだ仲良くなった人もいた。

「あー…けっこう…楽しかったな。」

ちょーっと物足りないけどね。お兄ちゃんがおとなしかったせいかな?

まぁ、たまにはこういうのもいいよね。

ベッドの中でニコニコ笑いながらゴロゴロ転がっていると、なんだか眠くなってきた。

まぶたが重い。布団をかぶって、目を閉じる。

「えへへへへ…次はどんな冒険かなぁ?…今度は最初の方から一緒に行きたいなぁ…えへへへ…くふ、ふ…ふふふふ…」

「…楽しみだねぇ、お兄ちゃん…」

そうして、あたしの意識は眠りに落ちていったのだった。

 

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大陸のはるか地下深く。神界のさらに奥に存在する、巨大な空洞。

『……ふぁーあ…』

うとうととまどろんでいたくじら…ルドラサウムは、大あくびをしてゆっくりと目を開けた。

傍に控える女神ALICEが恭しく口を開く。

『…此度は、いかがでしたでしょうか?』

『うふ、くふふ、ふふふ…まぁまぁ…だね。「お兄ちゃん」との旅ほど刺激的じゃあなかったけど…それなりに楽しかった。面白いものも見れたしね…』

『面白いもの…ですか』

『前の魔王…ガイって言ったっけ…あれは面白い後継を選んだよねぇ…未魔王リトルプリンセス…意志の強さもそうだけど…本人の気質が破壊と殺戮、暴力からかけ離れている…そういう子だから魔王の血に抗えているし…』

『そして、そういうものほど魔王に屈した時…ですか?』

『くふふふふ…そうかもね…で、次なんだけど…あの端末はせっかく近いところにいるんだし…やっぱり「お兄ちゃん」と一緒なのがいいね…』

『かしこまりました。…手配いたします』

『よろしくね…じゃ、僕はまた眠るから…』

ルドラサウムのまぶたが落ちていく。

『ふふふふふ…次はどこでの冒険かなぁ…?ヘルマンかな?それともゼス?…どんなことがあるかなぁ…くふ、ふ…ふふ…… えへへ…』

『…楽しみだねぇ、お兄ちゃん…』

そうして、ルドラサウムの意識は眠りに落ちていったのだった。

 

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システムメッセージ

『魔王化を止める方法:第一段階』の条件がちょっと緩和されました

魔血魂×15→×12

六級神以上の封印玉→六級神以上の封印玉、もしくは創造神の羽毛

人間の心臓×50→×30 

魔物の心臓×50→×30

3/15生まれの三つ子×3セット→3/15生まれの三つ子の両腕×3セット

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くじら『(ぱちっ)あ、ALICE。言い忘れてたけど、まあ…なんていうか、ほどほどにね…』
ALICE『アッハイ』
くじら『それじゃあよろしく…ぐうぐう』
ALICE『…』

ALICE『どこまでセーフなのかしら…服を洗濯するのはいいとして…パンツを煮出してエキスを抽出するのはアリよね?』
クエルプラン『知らんがな』
ALICE『何よその態度!私と同じ規格なんだから、きっかけさえあればあんただって色ボケるんだからね!』
クエルプラン『は?そんなことあるわけわけないじゃないですか』
ということがあったとかなかったとか。
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ここまでお読みいただきありがとうございました。
これで空白の一年、LP3年の出来事を描く2章は完結になります。
ランス君という主人公の物語を引っ張るパワーと、自分の筆の未熟さを思い知らされ…またランスシリーズが好きになりました。

そして、長年貯めていた妄想ストック分をこれにて使い切ったことになります。
3章はR6、ゼス崩壊編になると思いますが、妄想のリチャージが必要になりますので、次は結構間が開いてしまうと思います。
出来れば気長にお待ちください。短編くらいはぼちぼち書くかもしれませんが。
読みたい話とかここが気になるとかありましたら、なんでも感想にください。
気が向いて可能であれば対応します。

お気に入り、評価、感想、ここすき、誤字報告、その他もろもろ、反応がもらえることがこんなに嬉しいとは、そして自分がここまで書けるとは思っていませんでした。
お盆休みに勢いで第一話を投下しましたが、この上なく正しい選択でした。
あの日の自分をほめてやりたいと思います。

重ねてお礼を申し上げます。ありがとうございました。
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