【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー

まっ白

さて、何をしようかな


3章 魔法の国のエールちゃん(LP4年・R6)
1.エールちゃんはまたまた旅に出る


『それでは最終問題です、なんとこの問題はポイントが10倍!』

『えーっ!』ずこーっ『これまでのクイズ意味なーい』ドッワハハーッ

魔法ビジョンから流れるのは心の底からどうでもいいクイズ番組。

「あははは…ふぁーあ…ぼりぼり」

あくびを漏らし、おせんべいをもう一枚とってかじる。

あたしはレッドの下宿の一室で、ソファに寝っ転がってだらだらしていた。

 

健太郎くん達をJAPANに送り届けてレッドに戻ってきたあたしは、その後しばらく、だいたい年が明けてLP4年になるくらいまではそれなりに仕事したり冒険したり修行したりしていたのだが…

 

なんか知らんけどとにかく急にめちゃめちゃやる気がなくなってしまったのだ。

もうとにかく面倒くさい。毎秒無気力キノコを踏んでいるみたいになーんにもやる気がしない。

ソファでダラダラしながらハナク…かわいいお鼻に白魚のような指を差し入れて美少女エキスが固化したような物体をたおやかに取り出す…そんな感じの行為をしていたら一日が終わっていたこともあった。

 

そんなあたしの世話を何も言わずにニコニコしながら焼いてくれるのがスリアさんだ。

ご飯を用意して服を着替えさせてくれ、脱いだ服は洗濯してくれるし、それどころかお風呂に入るのすらめんどくさくなったあたしをお風呂場に運んで、一緒に入って全身洗ってくれたりした。

申し訳ないなぁ、と思うがめちゃめちゃ機嫌がよさそうだし…まぁいいかぁ。

等と思いつつあたしはひたすらダラダラし続け、当然のことながらレベルはガンガン下降した。

大体冒険者として最低限必要なレベルが10…イカマンを安定して狩れるくらいと言われている。

感覚的に今大体15か…ちょっと低いくらいだ。そろそろまずいかなぁ…でもめんどくさいし…明日でいいや…ふぁぁ…

 

という感じにあたしは日々を過ごしていた。

「まぁ、レベルくらいその気になればすぐあげられるしね…さて、もうひと眠り…ん!?」キュピーン!

その瞬間、あたしの脳裏に電撃が走った!

「こ…これは…冒険の予感!!なんかお兄ちゃんが大事件に巻き込まれている気がする!!」

なんじゃそら、と自分でも思うがするものは仕方がない。ムシの知らせというやつかもしれない。

「こうしちゃいられない!」

あたしはソファから飛び起きて部屋からパジャマのまま飛び出した!

階段を駆け下り、料理をしていたスリアさんに叫ぶ!

「スリアさん!あたし冒険に行く!武器と服出して!」

「え?どっちもありませんよー」

すてーんとあたしは転んだ。

 

「…よく考えたら、武器…双剣はセルさんが『その剣、きっと何か謂れのあるものですよ。冒険に使わないなら鑑定したらどうです?』ってカイズに持って行っちゃったし…」

「服…レディチャレンジャーはこの間エールちゃんがカレーを盛大にこぼしてクリーニング中ですー」

なんてこった、忘れてた。流石に普段着と素手で冒険に行くわけにもいかない。しかし今すぐ旅立ちたい…

うむむむむ、と悩んでいると、スリアさんが何か持ってきてくれた。

「こういうのならありますけど…」

「何これ?」

「先日福引で当てたお買い得品のショートソード2本と、それっぽい古着セットです」

「どれどれ…うーん…どう見てもDランク装備って感じだね」

まぁ、背に腹は代えられない。

こんな装備でもパパっと身に纏えばスーパー美少女神官魔法戦士エールちゃんの完成だ!

「よーし出発!行ってくるねスリアさん!」

「いってらっしゃいー」

手を振るスリアさんを背に下宿を出て、あたしはレッドの町に飛び出した!

 

ベンビール商店に寄って旅支度を整え、あたしは一路アイスの町に向かった。

そのまま早速タイヤキ通りのお兄ちゃんの家に向かったのだが…

「お兄ちゃーん!シィルさーん!」名前を呼びながらゴンゴンノックしても返事がない。

よく見れば郵便物も少したまっている。そんなに長くはないが留守っぽいな…

「うん、キースさんに聞いてみよう」

あたしはとっととキースギルドに向かった。

 

「えー?依頼でゼスに行った?」

「ああ、家出娘探しの仕事でな。たぶんテープの街あたりに向かったはずだ」

相変わらずのアブラ親父のキースさんは、ハイニさんのお尻を撫でながら答えた。

「うーん。…ゼスかぁ…」

正直あんまりいい思い出ないんだよね。どうしよっかなぁ…

「まあそろそろ見つける頃だと思うが…しばらく戻ってこないかもしれんぞ」

「え?なんでですか?」

「今ゼスはちょっと面白いことになっててな…冒険功績キャンペーンって知ってるか?」

「冒険功績?なんですかそれ?」

「ああ、知らんか。まぁ当然だな…」

キースさんは頭を撫でながら説明してくれた。

 

冒険功績キャンペーンというのは、一言でいえばよくわからない自然現象だ。

期間も範囲もまちまちで、予告なく始まり予告なく終わる。現在はゼス全域が対象らしい。

 

どんな現象かというと。普通冒険者はギルドで仕事をするほかに、ダンジョンに潜ってモンスターを倒して、持っているGOLDを拾ったり、お宝を見つけたりして収入を得ている。

しかし、キャンペーン中はモンスターはGOLDを落とさなくなり、ダンジョンでお宝も見つからなくなる。

代わりに見つかるのが黄色でくるくる回る謎の光…冒険功績だ。

これを集めると、何故かGOLDやいろんなアイテム、それに謎の玉が手に入るらしい。

玉は中に蟹と猿と鳶が見える赤黄青の三種類あり、それぞれ蟹玉、猿玉、鳶玉と呼ばれている。

この玉はそれぞれ最大三つしか持てず、それ以上は決して見つからない。またパーティーのリーダーしか持つことはできない。

んで、持っているといつのまにか消えてしまうのだが、消えるときになにかいいことがあるそうだ。

新しい冒険に出る気が沸いたり、日常のイベントがあったり、仲間との仲が深まったり、あるいは修行がはかどってスキルを覚えられたり…。

 

ここまで説明してみたけども、正直さっぱり分からん謎イベントだよね。

神様が冒険促進のために引き起こしていると言われているが…真相は分からない。

冒険者からしてみたら稼ぎは変わらないしちょっといいことがあったりするし、そもそも起きる頻度が数十年に一度とかなので二回経験する冒険者は滅多にいないし…で、変だけど別に苦労があるわけでもないので歓迎する人たちも多いそうだ。

 

「ふぃー、長々と話したらくたびれたぜ」

説明してくれたキースさんが言葉を切ってお茶を飲んだ。

「ってわけだ。ランスのことだから少し追加で冒険してくるかもな」

「うーん…じゃあ仕方ない…」

「お?仕事してくか?今なら…」

「いえ、あたしもゼスに行きます!」

「おお、そうかい。気を付けてな」

「ありがとうございました!それじゃあ!」

あたしはキースギルドを飛び出し、そのままの勢いでアイスを出て、ロックアース、パラパラ砦を通りすぎてアダムの砦からゼスに入国した。

今度はあたしだけだから選択の余地はない。魔法使い用ゲートを使って手続きする。

手形をもらい、ゼス国内へ。サバサバから南下してイタリアに到着。

一級市民街に滞在したんだけど、町はサーベルナイトとかいう殺人鬼の噂で持ちきりだった。

なんでも、二級市民街に出没して人々を殺しまくっているらしい。

そんなんが居たらおちおち眠れないと思うのだが…

「どーせ二級市民だろ?気にすることないよ。ああ、こっちは安全さ」

「はぁ…」

「臭くて汚くて下品で貧乏な連中だ、少し数が減ってくれた方がいい。そう思わないか?」

「う、うーん…」

「あーん危険なオトコってステキー。」

「えー…」

一級市民街の人たちは大体こんな感じだった。

あたしやっぱこの国好きじゃないなあ…その辺の気のよさそうなおっさんおばさんからこういう言葉が出てくると頭が変になりそうだ。

あたしも魔法使いだからだろうけど、あたしへの態度そのものは上品で親切なのも本当に困るんだよね。

しかしサーベルナイトかぁ…このネーミングセンスどっかで覚えがあるような…まあいいや。

あたしはイタリアを出てテープに向かった。

 

テープの町の冒険者ギルドに行くと、お兄ちゃんはもう仕事を終えていた。家出娘さんはぎゃーぎゃー言いながらうし車に押し込まれて自由都市に送り返されたらしい。

 

「あの、仕事を終えたあとお兄ちゃ…ランスはどこ行ったか分かります?」

あたしの問いに、ギルドの受付さんは帳面をめくって答えた。

「その後もうちょっと仕事をしたい、というのでこちらのクエストを紹介しました」

付き出された紙に目を通す。

「えーと、盗まれた金の燭台を取り返してほしい…依頼人は…琥珀の城のラドン長官?」

「ええ。盗人は廃坑洞窟Fに逃げ込んだらしく、お二人はそこに向かいました。でも時間が経ってますし、首尾よく取り返したなら琥珀の城にいる頃じゃないですかね?」

「なるほど、行ってみます」

 

というわけでテープからさらに南下して、琥珀の城の正門にたどり着いた。

噂通りに豪華でばかでかい城だ。なかにはいろいろ設備もあるらしいし、軍まで駐留している。金はあるところにはあるもんだなあ…

「うーん、でもこんなにでかいとお兄ちゃん達を探すのは大変そうだなあ、まあその辺の人に聞いてみよーっ…と…ん?」

ぐるーっと首を巡らせたあたしの視界に、ピンクのふわふわが引っ掛かった。

「ひっく…ひっく…うう…ぐすっ…」

「シィルさん!?」

なんでか泣きながら一人で歩いているのはシィルさんだった。あわてて駆け寄る。

「え?エールちゃん…?」

「一体どうしたんですか?お兄ちゃんに何かされたんです?」

「うううう…ランス様が…ランス様がぁ…うぇーーーーん!」

「わぁ!シィルさん、落ち着いて…」

シィルさんはあたしに抱きついて泣き出してしまった。

あたしは振り払うことも出来ず、必死に慰めるしかなかったのだった。




というわけでボチボチ始めていきます。
更新頻度はたぶん大分ゆっくりになりますが、お付き合いいただけると嬉しいです。
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