【無人金貸し装置を破壊】
イタリアの街にはサラキンという極悪非道金貸しマシーンがあるらしい
根こそぎぶっ壊して二級市民を救おう
「…はい、問題ありません。では、これからよろしくお願いしますね…」
書類をたしかめたウルザさんがハンコを押して、あたしとシィルさんは正式にアイスフレームに加わることになった。
アイスフレームのリーダーのウルザさんは車椅子に乗った儚いお嬢様…といった感じの美人だ。正直これが反政府組織の長と言われても誰も信じないだろう。
あと、これは勘だけど、お兄ちゃんの好みにドンピシャなタイプだ。
シィルさんの視線にほんの少しだけ笑顔以外のものが混じっているしね…
そばに控えていた四角いシルエットのおじいさんが口を開いた。
「儂はダニエル。ウルザの主治医だ…二人ともグリーン隊に配属希望だったな。そのように手配しておく」
「はい、ありがとうございます」「はーい」
というわけであたしたちは副隊長のカオルさんに案内されながらアジトの中を歩いていた。
「なんかあんまり人がいないね…」
「それに、さっきから男の人をあまり見かけないです」
「この間、人員整理がありまして。男性隊員を大量に解雇したんです…」
「へぇー…」大丈夫なんかなこのレジスタンス…不景気なのかな?
「ですが、ちゃんと立派に活動していますのよ。この間もランスさん達がサーベルナイトを討伐しましたし…」
「へー。サーベルナイトはお兄ちゃんが倒したんだ」
「ええ、最後は征伐のミトに捕まったようですが…」
カオルさんは一度言葉を切って続ける。
「ランスさん達グリーン隊の他にも、ブルー隊やシルバー隊といった部隊が活動しているんですよ」
「ふーん…アベルトさんはブルー隊なんだっけか」
あの人強い…って感じじゃないけど、油断できない感じだった。
ダニエルさんは相当やりそう。剣じゃなさそうだし、格闘でもするのかもしれないな。
そうこうしているうちに緑の屋根の建物に着いた。
「…ここがグリーン隊のロッジですわ。皆さんに紹介しますね」
「はい、お願いします」「よろしくお願いしまーす」
ロッジの中に足を踏み入れると、中にいた人たちがこちらに視線を向けた。
女の子がひいふう…3人。はそれいいとして、男の人も何人かいるな。
先ほどのロッキーさんに、やせぎすの長身にコートを羽織ったメガネの男性。なんかこっちをじろじろ見ながら手に持ってる…タマネギを生で齧ってるな…こわっ。
そして大きなショルダーガードを付けたごつめの赤毛…ん?
「あれ?バーニングさん。ゼスに来てたんですね」
「…知らん」
声をかけたが、彼は首を振った。
いや、よく見ればシミターも下げてるし。ちょっと髪が逆立ってるけど、リーザスで一緒だったバーニングさんだ…よね?
「え?でも…」
「…バーニング・B!は死んだ…俺はバーナード。バーナード・セラミテ。それ以上でもそれ以下でもない…ふっ…」
「…えー…」何やらかっこつけられてしまった。ていうかこっちはB!までは言ってないのに…
うーん…まぁそういう事ならほっとこう…男には触れられたくない過去があるもんだって聞いたことがあるし。
カオルさんにほかの皆を紹介してもらった。
女の子3人はそれぞれ衛生兵のプリマさん、弓使いのメガデスさんに、槌使いのセスナさん。
なんだかいつも眠そうなセスナさんは、なんとワヨソさんの従姉妹であるらしい。世界は案外狭いなぁ…
メガネの人はタマネギさんと言って調教師…だそうだ。
なんでレジスタンスに調教師が…と思ったが、なんか女の子モンスターを調教したいとか。
変態だぁ…お兄ちゃんとは話が合いそうだけれども…。近寄らんとこ。
で、ロッキーさんなんだけど。
「ていうわけでエールでーす。よろしくねー。」
「こ、こちらこそよろしくお願いしますだ」ぺこぺこ
「シィルです。よろしくお願いしますね」
「………………はいだす、よろしくだす」ぷいっ
うーん…露骨。っていうかそっぽ向いてるし…シィルさんはおろおろしてる。
まぁ、アジトに来た時もいろいろあったし。反魔法使いのレジスタンスならこうもなるか…
なんとなく微妙な雰囲気になったところで、ロッジの扉がバーンと開いた。
「全員揃っているな。次の任務が決まったぞ」
みんなの視線が集まる中、どかどかと入ってきたのは無論お兄ちゃんだ。なんとなくほっとしてしまう。
「おかえりなさいだす、ランス様。次の任務だすか?」
「この間は殺人鬼を退治したし、今度は汚職政治家の成敗とか?」
「うむ、それはな…」
「て、てやーっ」「貴様は腐った蜜柑だ!」「…ぐぅ…」「こら、セスナ…!」「…おお…!」
路地の奥、壁に沿うように置かれている物体に、剣やら斧やら、時々ハンマーやらががこーんばきーんと叩きつけられる。
ぶっ壊されているのは、ゼス共同銀行がイタリア二級市民街のあちこちに設置しているサラキンという自動金貸し装置。簡単な手続きで高利で金を貸し付けるんだそうだ。
で、期日までに借金を返せないと…死ぬ。マジで。呪われて死ぬ。全身に呪いの文様が浮かび上がり、のたうち回って死ぬ。
正直こんな条件で借りるのはアホしかいないと思うのだが…そういうアホは結構いるらしく。
借りてしまったアホは死にたくないので返すために無理をする。そういうアホが無理をすると…まぁ強盗だの身売りだのに走ってしまう。
そんな感じで迷惑を二級市民街にばらまいているのでぶっ壊そう、というのが今回の作戦らしいのだが…
「なんていうか…しょぼい任務ー…」
あたしが少し離れたところで比較的綺麗な壁に寄りかかってぼやいていたら、弓使いのメガデスさんが近寄ってきた。
そのままあたしのすぐ隣に立つ。ちょっと近いな…?
「まー、どっちかっていうとこれくらいの仕事の方が多いかなー」
「やっぱそーなんですか?」
「うん。ここんところはずっとこんな感じー。」
メガデスさんがこちらを向いた。あたしとだいたい同じくらいの身長なので、顔がすぐ近くに来る…
「え、いや…あの…」
「だからさー、ちょっと刺激が欲しいって言うか…ね?」「ひっ…」
やばい…この人お姉さま…いやリア様と同じ属性の人!
手が伸びてきて、あたしの脇腹あたりに触れた。思わず声を漏らし…
「……?」
何も来ない。恐る恐る目を開けると、なんか真顔になったメガデスさんが動きを止めていた。
「…んー…その反応。もしかして処女?」
「は、はい…一応…」
「ちっ…処女は面倒だから、パス。」
あたしが答えると、メガデスさんは顔をゆがめ、舌打ちして去っていった。
「………………………………………………………………」
いや!なんやねん!別に期待とかしたわけじゃないけどさ!なんやねん!呪ったろか!あたし神官だけど!なんか致命的じゃない感じで!うがー!
「ふーい、んじゃ次に行くか…って何をしとるんだエール。虫歯のるろんたみたいにぐねぐねしおって」
「…ふん!」げしっ
「痛った!こら!兄の尻を蹴るな!尻を!」
==============好感度上昇==============
エール FR==10+1/15
エール FR==11/15
=====================================
その後、サラキンを探して一晩中イタリア二級市民街をうろついたのだが…ぶっちゃけ辛かった。
一級市民街から見ていたので、臭くて汚くて危ないだろうと思ってはいた。
実態は想像をはるかにぶっちぎって臭くて汚くて危険であったのだ。
道のわきには汚水が溜まっているし、そこになんかがぷかぷか浮いている。
なんかってなにかって?なんかはなんかだ。描写したくない。気になる人は道端の水たまりに浮いていたらいやだなぁ、と思うものを各々で想像してほしい。
不相応に豪華な教会の裏路地を覗けば乞食なんだか死体なんだかわからん人たちがごろごろと転がっているし、暗くてわからんけどなんかのムシが集団で這いまわっている。
常時なんか嫌な臭いがしているので嗅覚がマヒしている気もするし…
そして、まぁ夜盗が出るくらいは想像してたが、ぷりょだのハニーといったモンスターが出るわ、
中華娘のてんてんやお絵描き娘のスケッチといった女の子モンスターまで出没する。
治安が悪すぎてダンジョン扱いなのだろうか。冒険功績まで湧いている始末。
これならぶっちゃけラドンの奴隷観察場の方がましではなかろうか?
あたし達も女の子モンスターを捕まえられてホクホクしているタマネギさん以外はいやそーな顔でうろつき回り、手当たり次第にサラキンをぶっ壊し、夜が白み始めたころに引き上げた。
そして翌日。ご飯を済ませて外に出ると、お兄ちゃんが商人のブルーペットと何かしゃべっていた。
「おはよーお兄ちゃん…何やってんの?」
「おお、エールか。見ろ、装備を新調したのだ。いいだろう」
見れば、処分寸前のオンボロだったお兄ちゃんの長剣と鎧が数打ちではあるがまともな物になっていた。Cランクってところかな。
「へー。ちょっとはマシになったじゃん。あたしも買い換えたいなー」
「がはははは、せいぜい頑張って金を貯めるんだな。さーて武器卵と防具饅でも使うか…」
機嫌よさそうに去っていくお兄ちゃんの背中を見送る。
(それにしても、あんなお金どこにあったんだろ…)
その疑問は翌日、高熱にうなされてぶっ倒れたお兄ちゃんの全身に『金返せ!』という文字が浮かび上がっていたことで氷解した。
事もあろうにこのアホ兄はあのバカ装置でこっそり金を借りていたのである!
「うーん…うーん…苦しい…」
「あーもう!なんであんなとこから借りるのー!」
「と、とにかく早くお金を返しましょう…」
仕方ないので有り金をかき集め、あたしとシィルさんで一級市民街のゼス共同銀行に行って返済した。
二級市民街のサラキンはあらかた壊していたので銀行に行くしかなかったのだ。手形がまだ生きててよかった…
あと、みんなからお金をかき集めていた時に知ったのだが、メガデスさんが財布を落としたらしい。
お金の管理には気を付けないといけないなぁ…
今更ですが、本作はゲームをプレイした人を念頭に置いて書いています。
例えば今回のFRがどうこうという色付きの部分は、ランス6の仲間キャラの好感度が上がった時の表示を再現してみたものです。
今後もこういう感じでやっていきますが、わからんことがあったら聞いていただければ喜んで答えます。
ちなみになんですが、ロッキー君はこのとき14歳です
そう考えると、まぁいろいろとしょうがないかなぁ…君は偉いよ…
と思えるようになりますね。
以下、妄想です。
武器卵、防具饅
この世界に出回っている装備強化アイテム。
大中小の3サイズあり、大きいほど効果が高い。
強化したい装備の上で割って中身を振りかけて使う。
原理は不明だが剣でも弓でも杖でもその他の特殊な武器でもちゃんと働く。
一つの装備に使えるのは2個までで、一回使えば数か月はもつ。
小はその辺の店でも買えるが、中は結構貴重で、大サイズになると博物館に飾られたりする。
どんな冒険者も、一度は『いつか愛用の得物を武器卵大で強化したいなぁ…』と思うらしい。
食べられない。