【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【活動資金を銀行から奪え】

ゼス共同銀行は極悪銀行なので侵入しお金を奪おう
これは正義の行いである…のかなあ?


5.エールちゃんは侵入する

ただでさえ汚いイタリア二級市民街の下水道という大陸屈指の汚い場所に心を無にして突入し、何もかも描写したくない通路を少し歩いたところにその入り口はあった。

ぼろくて汚い下水道の途中の横壁に、唐突に金属の扉が取り付けられている。

そんなに質のいいものとは思えないが、錆も浮いていないあたり最近作られたものだろう。

「…ほんとにあったねぇ…」

「ええ、情報通りですわね」

ウルザさんから聞いた話を思い出す。

『二級市民街の下水道から、ゼス共同銀行の地下金庫に侵入できるらしい』

『危険は大きいが、大金を持ち帰れた者もいるそうだ』

正直眉唾ものだったけど、ほんとに扉があるとは…

「こんなところ長居したくない、とっとと行くぞ。ロッキー、開けろ」

「わ、わかりましただす」

お兄ちゃんはロッキーさんに扉を開けさせ、ずかずかと奥に進んでしまう。

「よし、行くぞ」「ま、待ってよー」

あたし達はあとを追いかけつつ、今朝の事を思い出していた。

 

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「…では、グリーン隊にはこの任務をお願いします…」

ウルザさんが差し出した任務表を皆でのぞき込む。

なになにえーと…『ゼス共同銀行の地下金庫室に侵入し…組織の運営資金のために100万Gを奪うこと…』これって要するに…

「…銀行強盗…ですか?」

眉をしかめたカオルさんが端的にまとめた。

「はい…ゼス共同銀行は二級市民の債務者を奴隷として身売りさせたりと悪行をなしています…ですから…」

「だからと言って強盗は…」

目をそらしたままぼそぼそと説明するウルザさんにカオルさんが食って掛かる。

「いいではないか」

「ランス隊長!?」

それを止めたのはお兄ちゃんだった。

「もう金がないのは知っているだろう?仕方のないことだ なぁ?」

「…」「…っ…」

お兄ちゃんがニヤつきながらウルザさんに目をやり、ウルザさんは目をそらした。

それを見たカオルさんは黙り込んでしまう。うーん…

「…」

ウルザさんの後ろに控えるダニエルさんを見たが、何も言わずにウルザさんを見つめながら突っ立っているだけだった。

「というわけで正義のために金を奪ってくるぞ。がはははははは!」

この組織本当に大丈夫なのかな…まぁ、いつもの事か。

馬鹿笑いするお兄ちゃんを眺めながら、あたしは笑ってため息をついたのだった。

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どうやらお兄ちゃんはウルザさんをどうにかしてこの組織の実権を乗っ取ってしまっていたらしい。

たぶんまぁ、タグが面倒になることをして写真を撮ったとかそんなんかなぁ…ウルザさん気弱そうだし…

前に男隊員がほとんどクビになったっていうのもお兄ちゃんの差し金だろう。

ていうかアベルトさんとかダニエルさんは何も言わないんだろうか?よくわかんないな…

 

考え事をしつつ通路をまっすぐ進めば、急に絨毯が敷かれた立派な部屋に出た。

「うわー、ほんとに銀行っぽい」

「うむ、サクッと大金ゲットだ!がはははは!」

まーここまで来たらやるしかないか。

お兄ちゃんを先頭に通路を進んでいくと、突然ビービーとけたたましい音が鳴った。警報だ!

「なんだ!?」

『ふはははは、ようこそ薄汚い二級市民諸君!』

どっかにあるのであろうスピーカーからちょっと高めの中年男の声が響く。

スピーカーからの声は、『私のアトラクションをクリア出来たら金をやろうははははは』みたいなことをおそらく二級市民であろう女性の拷問をBGMにのたまって途絶えた。

「…うーん…なんてわかりやすい悪徳貴族…」

「…やはり、これは罠でしたのね…この侵入口の情報も今の声の主が二級市民街にばらまいたのでしょう…」

「だよねー…通ってきた通路も新しかったし…」

「ランス様、やはり危険です…引き返しませんか?」

「おそらく、ここから生還できた方は居ないでしょうね…」

「ふん、俺様がその最初の一人になるだけのことだ。絶対意地でも金を奪ってやる」

そういうわけであたしたちは銀行の地下に足を踏み入れたのだった。

 

「死にくされー!」ずばーっ!「ぶひーっ!」

お兄ちゃんに叩き切られたぶたバンバラが血を吹き出し崩れ落ちた。

「がはははははは!おかし女を犯してくれるわー!」「いやあー。おかしがー」

そのままお兄ちゃんは裸エプロンの女の子モンスターに襲い掛かる。元気だなぁ…

「なんで銀行地下にモンスターが…」

「おそらく、侵入者が戦うところを見て楽しんでいるのですわ…むっ」「フリーダーム!」

カオルさんにムキムキパンツマスクのフリーダムが殴りかかってきた。

「はいっ!」すぱーん!

パンチしてきた手をカオルさんが取って…次の瞬間にはムキムキの身体が一回転。床に叩きつけられた。

「ん…」ごーん「自由ー!」

すかさずセスナさんがマスク頭をハンマーでカチ割り、フリーダムは動かなくなる。

「こんにゃろー!どりゃーそりゃー!」「がぴーっ!」

あたしは押し寄せる魔法メイトを両手の剣で切り伏せる。強くはないけど数が多い!

こいつらそこそこ痛い光線を撃つんだよね。後ろからメガデスさんがボヨーンボヨーンと弓で援護してくれているが全然効いてる気がしない…あ、魔法メイトの目が光った。やばっ。

「ぴがーっ」「くっ…」「エール様!危ないだす…ぎゃーー!」「ロッキーさん!?」

殺人光線からあたしをかばったロッキーさんが崩れ落ちた。

「くっ…えーい!おりゃ!そりゃ!どりゃーー!」

あたしがロッキーさんの仇とばかり、残りの魔法メイトを蹴散らして戦闘は終わった。

「…は、はらほれひれはれ…」

ちょっと焦げたロッキーさんが目を回している。

 

地下金庫はまるでダンジョンみたいな構造で、あちこちうろついては手当たり次第にドアを開け、中にモンスターが居ればボコボコにする…その繰り返しでしらみつぶしに進んできたのだが。

これまでに見つけたのは、白骨死体がいくつかと、赤毛の貴族の男が女性を拷問する趣味の悪い映像が収められたラレラレ石。

なんでも赤毛はこの国のトップの一人、金融長官らしい。この国のお偉いさんはみんなこんなことやってるんだろうか?

他に手に入れたものと言えば、カチカチなのにしっかり臭い『カチカチうんこ』くらい…ってうら若き乙女に何を言わせるんだ。

お兄ちゃんは仕掛けたやつにぶつけると言ってシィルさんに拾わせていたが、やめてあげてほしい。

いつまでも荷物欄に残っていそうだし…

それはともかくとして、先へ進めそうな扉はあったが鍵がかかっていて開けられず、何か見落としがないか、とうろついていたらまたモンスターが出たのでとりあえずしばいたところだ。

「大丈夫?ヒーリングするね。いたいのいたいのとんでけー…」

「うう…ありがとうございますだ、エール様…」

おとなしくあたしのヒーリングを受けるロッキーさん。それを見て、シィルさんが近づいてきた。

「あ、よければ私もヒーリングを…」

「…要らないだす…平気だす……あーーーーーっ!!!」

ロッキーさんは立ち上がりシィルさんに背を向けた…と思ったら、急に大声を出した。

「うるさい」ばきっ「あたた…鍵を拾っただす」

ロッキーさんの手には安っぽい鍵が握られていた。「100円」とか書かれている。どこかの貨幣かな?

「ほう、ロッキーのくせによくやった」

「やったー。褒められただす」

これで先に進めそうだ。

 

扉を開いた先はキャットウォークで、足元に広がるのは棚がいっぱい並んだ部屋。ここが金庫だろうか?

高さがあるからこっから降りるのは危ないかな。

「…銀行プレイというのは如何ですか…?」

「お前はいつもそんなことを考えているのか…?まぁ、アリかもしれん」

「ふふふ…そうでしょう…」

お兄ちゃんとタマネギさんは、キャットウォークをがしゃんがしゃんと歩きながらしゃべっていた。

やっぱり気が合ってる…タグが面倒になりそうなのであまり聞かないようにしとこ。

ロッキーさんが蹴られて落ちそうになったりしつつ進み、また迷宮の中に戻ってきた。

適当にモンスターやら警備兵やらをしばきながら進んでいくと、途中で密室に閉じ込められ毒ガスが噴き出してきたりした。

脱出したければゼスの魔法使い、それも偉い人しか知らないであろうなんかの会議の開幕のあいさつを唱えろ、とかいうどう考えても殺す気しかないだろみたいなトラップだったが、文言をカオルさんが知っていて切り抜けられた。やっぱもとはいい家の人なんだろね。

…と言うことにしておこう。たぶん悪い人じゃあないし。

 

毒ガス部屋を突破した先にあったひときわ豪華な通路を抜け、扉を蹴り破ると、そこにはラレラレ石に写っていた、赤毛でお目目ぱっちりな貴族の中年が立っていた。

その足元には…うわぁ。血まみれの全裸の女性。生きてはいるみたいだけど…

「お前がズルキとやらか!女の子にこんなことしおって!」

「ふん…汚らわしい二級市民共が…」

ズルキの視線が巡り、あたしで一瞬止まってからカオルさんのところで止まった。

「ふむ…、少し小さい…おお、多少はマシな女もいるな…喜べ。お前は私が直接遊んでやろう。」

カオルさんを指差しながら陶然とした表情で続けるズルキ。

「そうだな、まずは水を大量に飲ませて、その肢体を醜く歪ませた後に犯し…そして腹をナイフで突いてやれば…ふふふ」

「お断りしますわ。出来るとも思えませんが」「その通りだ、ぶっ殺す!」

もう何も言う気にならないあたしが剣を抜く前に、カオルさんが答え、お兄ちゃんが前に出た。

「まったく…高尚な趣味を理解しないゴミどもめが…」

ズルキが指を鳴らすと奥の扉が開いて、治安隊の制服を着た女が入ってくる。どっかで見たような…?

「お呼びですか、ズルキ様!」

「そこのテロリスト共を掃除しろ。ただし、その黒髪の女だけは殺さず私のもとへ連れて来るように。ではな」

「はっ!了解しました!お気をつけて!」

「了解するんだ…」

そこに血まみれの女の人倒れてるのに、それを無視して部屋から逃げ去るズルキに頭を下げる治安隊長。ほんとこの国はどうしようもないなあ!

「いくぞ!ゼスの平和を乱すテロリストどもめ!皆殺しだ!」

キューティの号令と共に、奥の扉から魔法メイトやウォール、治安隊員たちが大量になだれ込んでくる!

「しゃらくせー!こっちが皆殺しにしてくれるわ!」

あたし達は武器を抜いて斬りかかった!




久々の戦闘シーンですが仲間が多いと大変です
このダンジョンは明確なボスがいるわけではないし…

本作の評価が総合評価が1600を突破しました。ありがとうございます。
ただの数字にすぎませんが、見ているだけでニヤニヤできます。

以下、妄想です。

キューティ・バンド
Lv5/20
魔法0 魔法化学1 メイドなし

ゼス治安隊のイタリア支部に所属する治安隊長。一級市民の家出身だが、魔法試験はギリギリ合格だった。
隊長になれたのはコネ以外の何物でもないが、基本的に隊長はコネ採用ばかりで、その中では職務に対するやる気を持ち合わせている貴重な存在。
よく現場に急行してくれるため、クラウン親子に重宝がられている。
一応昔は二級市民でも遊び半分になぶり殺しとかよくないでしょ、程度には思っていたが、クラウン親子に逆らえず、「高貴な趣味」の尻ぬぐいや後始末ばかりしているうちに、なけなしの倫理観も完全にマヒしてしまった。
そんな状態なので人望も皆無。
部下はほとんどついてこないので代わりに使っている魔法ウォールや魔法メイトの手入れが唯一の趣味。
ちなみにクラウン親子が刑務所にぶちこまれた後、二人に与していた責任を問われ、テープの治安本部勤めに配置変更されている。


ズルキ・クラウン
Lv1/7
拷問0 魔法0 商人なし 園芸1

ゼス腐敗軍団その3くらいのおっさん。目だけはやたらパッチリ。

クラウン家は代々続く名家ではあるがすっかり腐敗しきっており、魔法の才能がない者もよくいるが権力とコネで好き勝手している。
現ゼス炎将のサイアス・クラウンは分家筋に当たるが、とっくに見切りをつけられ家を飛び出されている。

ノエマセのようなイヤミやラドンのようなかわいげ(?)すらなく、
才能限界も低ければ技能もない、まさしく何の能もない。
ゾンビになってからは脳を食べたがるのはそのせいかもしれない。
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