【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー

まっ白

さて、何をしようかな


7.エールちゃんは孤児院で過ごす

アイスフレームには孤児院がある。貴族の暴虐で行くあてのなくなった子供たちを引き取っているうちに自然にできたそうで、キムチさんという女性がそんな子供たちの面倒を見ている。

んで、あたしは少し前からそこに出入りするようになっていた。

同じく孤児院育ちのあたしにとって年下の子の相手はお手の物だしね。今ではすっかり仲良くなり、朝食をここでいただくのが常になっていた。

もらった給料も少しだけど渡している。

 

「あ、エールお姉さん。おはようございます」

「おはよーカーマちゃん。どうしたのこんなところで」

孤児院の前に立っていた金髪の女の子…カーマちゃんに挨拶をした。

「それが…」

「カーマ、うし乳屋さんは来た?…ってエールちゃんか。おはよう」

「おはようございます、キムチさん」

その声を聞きつけたのか、扉からキムチさんが顔を出した。浅黒い肌をした、家庭的な雰囲気のなかなかの美人さんだ。

「キムチさん、あたしシチューのお鍋を見ておきますね。」

「うん、お願いね。…それにしても遅いわねぇ…」

カーマちゃんを見送ったキムチさんが首をひねる。

「どうしたんですか?」

「それがねぇ、うし乳屋さんの配達が来ないのよ。もうとっくに来てるはずの時間なんだけど…朝ご飯は久々に金魚シチューの予定なのに…」

「金魚シチューってうし乳抜きだと美味しくないですしね…なにかあったのかな?」

「わたしはご飯の支度があるし…悪いけどエールちゃん、見てきてくれない?」

「はーい。分かりましたー」

あたしはアジトの入り口の方に足を向けた。

 

「え?うし乳屋さんですか?さっき荷車を引いて通りましたよ」

「そっか、ありがと」

アジトの入り口の番をしているワニランちゃんに聞いたら、もうアジト内には入っているらしい。

いったいどこをほっつき歩いているのか…首をかしげて角を曲がると、その先にはお兄ちゃんとシィルさん、ダニエルさんが居て…

「わぁ」

その真ん中で男性が血を流して倒れていた。

どう見ても死んでいるし、よく見ればうし乳屋のおっさんだ。

そしてお兄ちゃんはちょうど剣を腰に収めたところだった。

「…何やってんのお兄ちゃん」

「なんだエールか。俺様はやましいことはしとらんぞ」

ふんと鼻を鳴らすお兄ちゃんに、ダニエルさんが詰め寄る。

「…やりすぎだ、お嬢ちゃんを守ることは当然だが…殺すことはなかろう」

「ふん、俺様の奴隷に手を出したのだ。手加減は無用だ」

見れば死体はズボンをずらしていて下半身丸出しで、シィルさんが涙目でへたり込んでいる。

うーん…なるほど。シィルさんに手を出したのか…そりゃまあ………死ぬな。

「なんで急にこんなことをしたんだろ。お兄ちゃんじゃあるまいし…」

「こら、それはどういう意味だ」

「…虐げられたものが、自分より力のない者、立場の低いものに優しくできるとは限らんのだ…むしろ、より苛烈に虐げることの方が多いのだよ…」

ダニエルさんが低い声で呟く。

「…この国の改革は大変そうだな」「だねぇ…」

「一事が万事、この調子だからな…積もり積もった恨みが、この国の人々を縛り付けている…」

ダニエルさんの普段通りの声が、なぜかあたしにはひどく疲れて聞こえた。

 

ここは自分が始末しておく、とダニエルさんが言うのであたしたちはその場を離れ、お兄ちゃんはシィルさんを連れて部屋に引っ込んでしまった。

始末…ってどうするんだろ?まぁ、考えても仕方がないか。明日からうし乳屋さんは来なくなるかもしれないが…

とりあえずひっくりかえった荷車から無事だったうし乳の大ビンを確保して、あたしは孤児院に戻ったのだった。

 

朝食後、片づけを手伝ったら昼まで自由時間だ。あたしは男のガキどもとチャンバラをして遊んでいた。

「てやー!とりゃー!」

男の子が振り回す木の枝を、こっちも片手に持った枝で軽くいなしていく。

「よっ、ほっ…そんなんじゃあモンスターには勝てないよ!それ!」「わぁ!」

ぺちーんと軽くはたいて手から枝を弾き飛ばしてやった。

「くっそー!エールねーちゃん胸ちっちゃいのに強い!」

「わはははは、胸ちっちゃいは余計よ」べちん「ぐえーっ!」

「あ、次!次俺ね!」

「はいはい順番に…ん?」

近づいてくる人影が見えた。アレはお兄ちゃんと…

「あれ、お兄ちゃん。それにロッキーさんも。珍しいね、何しに来たの?」

「あ、その……ど、どうもだす…」

「うむ、ちょっと用があってな。キムチさんはいるか?」

「居るよー。キムチさーん!」

「はいはい…あら、ランス。」

「おう、キムチさん」

あたしが呼びかけると、パタパタとキムチさんが出てきた。

「あ、あああああああああああ…」

…キムチさんを見たロッキーさんの目がめちゃめちゃ泳いでいる。

「えーと、あなたはランスと一緒に入隊した人よね。ロッキーだったかしら?」

「うむ、俺様の泥除けだ」

「…こ、ここここここここんにちわだだだす」

「ちょうどいい時に来たわね。それとも狙ってきたの?」

「ね、ねねねねねねねね狙うだなんて、おらおらおらおらおらおら」

どう見ても挙動不審にもほどがある。

「どうしたのロッキーさん。変なものでもお兄ちゃんに食べさせられたの?」

「な、ななななんでもないだす」

「で、何がいい時なんだ?」

「お昼のスープができたところなの。食べていくでしょ?今日はほららが入ってるのよ」

「うむ、頂くとするか。ロッキー、お前も食え」

「え、は、はははははいだす」

「キムチせんせー、早くご飯にしよーってみんなが…」

カーマちゃんがやってきた。一番小さい眼帯の女の子、アルフラも一緒だ。

「ほらーガキどもー。ご飯だってー。手を洗って食堂にねー」

あたしは男の子たちを追い立てて洗面所に連れていく。

途中で振り返ると、アルフラがカーマの後ろからロッキーさんを見ていた。

(珍しいな…アルフラは大人の男の人が居るとすぐ逃げちゃうんだけど…)

比較的ましなお兄ちゃんも話しかけると逃げられるくらいなのに…

気に入ったのかもしれないな。ロッキーさんはおとなしいし…

 

「…………」

お昼ごはんのスープを食べ終わった後、庭で体を軽くほぐしていると、ロッキーさんが庭の隅の方で遠くを見て黄昏ていた。

「…どうしたんですか?」

なんとなく声をかけてみる。

「わ、え、えええええエール様…何でもないだす…」

「何でもないってことはないでしょ…どうかしたの?」

「…いや…ただ…ここの雰囲気が懐かしくて…実家を思い出すんだす…」

「ふーん…わかるなぁ。あたしも孤児院育ちだから…」

「…は…へ? ら、ランス様のお家で一緒に育ったんじゃないんだすか…?」

ロッキーさんはぽかんと口を開けてこちらを見た。

「あー…うん。あたし達生き別れってやつでさ。再会したのは3年くらい前なんだ。それまではずっとこんな感じの生活だったよ。」

「…ええ…魔法使いなのに…?そっちの国ではそれが普通なんだすか…?」

「普通かどうかは知らないけど…うん…おもちゃもなくて木の枝でチャンバラしたり、薄いスープばっかでいつもお腹空かせたり…寒い時は、毛布が足りないからみんなでくっついて寝たっけ…」

いい思い出ではないけど、やっぱり懐かしさを覚えてしまう。

「はえー…魔法使いなのに…そんな…」

「おう、何をしとるんだ。ロッキー、ちょっとこっちに来い」「は、はいだす…」

お兄ちゃんが寄っていったロッキーさんと何やら二人でブツブツと言葉を交わしている。

============小声会話(聞こえていない)=============

「おら…恥ずかしいだ…キムチさん…まるでおっかさんみたいだ…そんな人に…あの子達のおっかさんに…おら…おら…なんて冒涜をしただすだろう…」

「…エール様のこともだす…この国の人じゃないから関係ないのに…おらは…なんにも知らないでとんだ失礼を…」

===============================================

ぼそぼそとしゃべったロッキーさんは肩を落とした。お兄ちゃんはぐふふと笑ってうんうんと頷いている。

よく聞こえなかったけど…なに話してたんだろ?

「そんな隅っこで何話してんの?男同士で」

二人にキムチさんが声をかけた。

「な、ななななんでもないだす」「うむ、男同士の秘密だ」

お兄ちゃんはぐいっと変なポーズを決めて言った。

「何それ?変なの…」

キムチさんが笑っていると、アルフラを連れたカーマちゃんも寄ってきた。

「ロッキーさん、楽しかった。また来てね」「…」

「は、はは…はいだす…それでは、失礼しますだ。エール様も…」

「はーい。じゃーねー」

結果、ロッキーさんはこれからも孤児院にちょくちょく来ることになった。

アルフラがなつく男の人は珍しいしね。いいことだと思う。

(しかし、なんで最初あんなに挙動不審だったのかな…)

お兄ちゃんと一緒に帰っていくロッキーさんの背中を見送りながらあたしは思ったのだった。

 

そして数日後。あたしはグリーン隊のロッジでプリマさんと装備更新の話をすませたあと、そのまま駄弁っていた。

「そういえばナターシャがアベルトさんに告白したんだけど、振られちゃったらしいよ」

「へー。理由はなんて?」

「なんでも好きなタイプじゃない、ってはっきり言われちゃったとか…」

「うへー…でも確かにアベルトさんって女性の好みにうるさそうだよね。ナターシャさんってちょっとメイク濃いめだし…」

「どんな子が好みなんだろうね?」

「おや?僕の話ですか?」

「わ、アベルトさん!?」

急にアベルトさんが出てきたのでびっくりした。それに…

「なんかボロボロですね…どうしたんです?ヒールしますか?」

アベルトさんはあちこちに包帯を巻いていて、そこに血がにじんでいた。それでにこやかに笑っているのでちょっと怖い。

「いや、ちょっと予想外のトラブルがありましてね…実はヒーリングを頼みに来たんですよ」

「もちろんいいですよ。いたいのいたいのとんでけー…いたいのいたいのとんでけー…」

「ふぅ、ありがとうございます…」

ヒーリングである程度回復させると、アベルトさんは腕をぐるぐる回した。

「うん、いい感じですね。お礼と言っては何ですが…よろしければ」

アベルトさんが取りだしたのはうし乳の瓶だ。

「え?いいんですか?やったー。結局新しいうし乳屋さんが見つからなくて困ってたんです…孤児院のみんなと分けますね!」

「ああ、孤児院には別に届けてありますから。それはエールちゃんの分ですよ」

「ならいただきますね。ありがとうございます!」

「ははは、これくらいお安い御用ですよ。では」

アベルトさんはにっこり笑って手を振って去っていった。

「…エール、あんたアベルトさんに気に入られてんの?」

プリマさんがちょっと真顔で質問してくる。

「うーん…そうなのかな…」

「あの手の男はちょっと危ないような気もするんだけどね…セスナもなんとなく避けてるし…」

「えー?でもちょっと怪しいけどいい人ですよ? それにお兄ちゃんよりは…」

「ああ、うん…そういえばランスの妹だったわね…そりゃ変な男にも慣れるか…」

プリマさんは諦めたように首を振ったのだった。

 

アベルトさんからもらったうし乳は、なんだかめちゃめちゃ濃くてコクがあるのにほんのり甘くて飲みやすく、あっという間に飲んでしまった。

どこのだか知らないけど、また買ってきてくれないかな…今度頼んでみよう。




キムチさんは孤児院をやるかたわらアイスフレームの男たちの性欲処理を引き受けており、それにキレたランスが男団員をほとんど首にして自分専用にしてしまった、ということが前にありました。
ロッキー(童貞・14歳)はその噂を聞きつけてスケベ心を出し、孤児院にやってきましたが、ランスの思惑通りにキムチさんの母性に触れて撃沈しました。


エールちゃんは日々ちょっとづつ成長しています。

1章1話時点 146cm / 41kg  AAカップ
現在  153cm / 47kg Bカップ

ランス君の採点
82点→87点(妹につき参考記録)
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ある日のゼス新聞の記事より抜粋

貴族の○○氏の持っている牧場から伝説の超高級うし『マツザカうし』が盗難に遭った。
犯人は厳しい警備をかいくぐり、まんまと『マツザカうし』を盗み出したのだという。
『マツザカうし』は肉質もさることながらその乳は栄養満点で、
滋養強壮、疲労回復のほかに、身長が伸びたり女性のバストアップなどの効果があるとされ、高値で取引されていた。

治安隊によると、犯行当時に近くで銀髪の妖しい雰囲気の男が目撃されており、この男が事件に何らかのかかわりがあるとみて捜査をしている。
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後特に関係はない話ですが、
カミーラっていわゆる「タッパと胸と尻がでかい女」ですよね。
リズナとかパパイヤもそうですが。

以下、妄想です。

カーマ・アトランジャー
Lv1/29
盗賊2 怪獣使い1

孤児院で過ごしている女の子。
この時点ではただの無力な一市民だが、冒険者としては才能があり、
ランスクエストではレンジャーとして仲間になる。

以下独自設定
ローベン・パーンは3代目メインプレイヤーを作る際に、まずプロトタイプを作成した。

このプロトタイプは寿命こそ短いものの天使を元にしていたため、血吸いベッタンやギーコなどの呪いの武器もデメリットを受けずに使用できていた。
(武器にかける呪いはそもそも人間に嫌がらせするために後世に新しく作られたので、天使には対応していない)
さらに生き残った旧メインプレイヤーに対抗するため、神の僕たる怪獣の操作能力と、丸い者とドラゴンに対する特攻能力を与えられていた。

なお、これらの能力は「メインプレイヤーが強いとつまらん」という理由で没になり、今のような呪われるし弱い人類が正式採用され、プロトタイプたちもあっさり処分されたが、わずかな生き残りが人類と交わり子孫を残した。

カーマはその末裔で先祖返り。
なんとなくエールの言うことを聞かないといけないような気がしている。
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