【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【囚人エールを救出せよ】
いやーまさか投獄されるとは思わなかったよね
どうにか抜け出したい
お兄ちゃん助けに来てくれないかなあ


14.エールちゃんは脱獄する

「…もうわかっているのよ、貴女が触れられたくないところ…」

「あっ、そんな…やめて…」

「ダーメ。…ここでしょう?」

彼女の細い指が危険な場所に伸び、かりかりと引っ搔いた。

「あっ、ああ…」

あたしは動けず、声を漏らすことしかできない。

「ふふふ…ほら、もうこんなに…」

「ダメ…そんなところを…そんなところを触っちゃ…」

「あはははは!もう遅いわ!さぁ、一気に…」

「何をやっとんじゃーーーーーーー!」

「「ひゃあああああああああああああ!?」」がしゃーん!

いきなり大声がして、あたし達は驚いて振り向いた。

「げっ…」ばばっ

「もーいきなり何よ!ジェンガが崩れちゃったじゃん…って!お兄ちゃん!?助けに来てくれたの?」

牢屋の鉄格子の前で腰に手を当てて仁王立ちしているのは緑の服の戦士。どう見てもうちの兄だ。

「美人所長のエミちゃんを頂くついでにな。感謝するがいい…というか、何をしとるんだ」

「何って…ジェンガだけど」足元で無残に崩れた積み木の山を指さす。

「それは見りゃわかるわ!なんで牢の中で、しかもかなみと一緒にやっとるんだ!」

「うう…やっぱりごまかせないか…」

お兄ちゃんに見つかりたくないのか、牢屋の隅っこで顔を隠していたかなみさんは観念して立ち上がった。

「それはねー…」

あたしは数日前の事を思い出して話し始めた。

 

ほわんほわんほわん(回想の音)

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「もがーっ!もががーっ!」

マジノラインの簡易砦で、あたしは他の皆と別の牢屋に放り込まれて猿轡を噛まされ縛られていた。

「全く、魔法使いの癖にテロリストに与するなんてなあ」

「何考えてんだか…結構かわいいのに」

牢屋の前で警備隊員がしゃべっている。ぐぬぬ…

「そんな勝手なことを言うものではありませんよ」

「あっ!春川殿!テロリストの捕縛、お疲れさまです!」

こちらに歩いてくるのはあたしをぶっとばしてくれたゼス軍の女隊長だ。黒髪ツインテールで、たぶんあたしと同じ年頃だろうか?

春川というらしい女隊長は警備隊員をじろりと睨んだ。

「…テロリストではありません、レジスタンス、です。法を執行するものはその解釈について厳格でなくてはなりませんよ」

「え…しかし… 」

「ゼス法においてテロ行為は無関係の市民を巻き添えにして自分達の主張を通そうとする行為を指します。彼らはゼス軍に反抗しましたが、テロ行為は働いていません。故に彼らはレジスタンスです。よろしいですね?」

「は、はい…」

なんかこの人真面目なんだなあ…指摘された警備隊員の顔はひきつっている。

「わかっていただけて何よりです。この人たちの処分については法に基づき適切に対応してください…」

それだけ言って女隊長さんはこちらに向き直った。他の隊員とあたしを交互に眺め…頭を深く下げる。

「へ?」「は?」「春川殿!?」」

「皆さんが今のゼスを憂いる気持ちはわかります…。しかし、そのやり方は良くないです…!」

あたしたちも警備隊員も驚くなか頭を上げた彼女は、あたしたちをしっかり見据えながら言葉を続ける。

「…どうか刑を終えた後で、あらためてゼスのために正しいやり方で働いてくださるよう、お願いします。微力ながら、減刑嘆願はしておきますので…では。」

女隊長…春川さんは最後にこちらに頭を下げ、警備隊員たちに会釈して出ていった。

うーん…体制側にもちゃんとしてる人もいるんだなあ…

「…刑期とか…何いってんすかねあの人?レジスタンスは死刑なのに」

「あー。一応レジスタンス行為…国家反逆罪だけだと死刑にはならないんだよ。王の強い反対でな。」

「え?でも捕まえたら皆殺ししてません?」

「レジスタンスなんか当然破壊活動とか貴族の財産窃盗とかテロ行為とかしてるだろ?そういうのあわせて死刑にしちまうんだよ。まあもしくは『事故』とかな…書類がめんどくさくてかなわんし、ああいう正義ぶった勘違いするヤツも出てくるんだ」

「へぇ、めんどくさいっすね」

「まったく。…王も下の迷惑を考えて欲しいね」

…訂正。やっぱカスばっかだわ。

「さて、んじゃこの嬢ちゃんをとっとと移送しちまうか」

鉄格子の向こうで警備隊員がよっこらせと立ち上がった。

「そっすね。魔法使い移送用のうし車、準備できてるっすよ」

「もがーっ!」

あたしは二人に連れられ、建物の外に止まっていたうし車に押し込まれたのだった…

 

===============================================

『…如何でしたか?』

『いや、結構面白かったよ…くすくす…いやぁ、彼があそこまで怒るとは思わなかったな』

『ボロボロにされた妹の姿を一目見た瞬間、部下と壁を蹴り渡って二階に飛び移り、下手人を斬り殺してましたね』

『その後もゼスへの憎悪を滾らせて暴れまくったねぇ…』

『ペンタゴンと共同戦線を張り、王に直接鎮圧されるまで手段を選ばず攻撃を続けて…』

『そこから逃亡してリーザス軍を動かして、アダムの砦を抜いて全面戦争になったところで…』

『マジノラインが停止。魔軍が侵攻を開始しました』

『うん、それなりの騒ぎになったね…あのアベルトとか言うのもどさくさで死んだし…』

『適当なバランスブレイカーで体を治すことも出来ましたが…』

『彼のリアクションが興味深くて最後まで見ちゃったよ…でも、それなりには面白かったけど、こういうのはたくさん見てきたからね。やっはり「あたし」…いや、あの「端末」ではちゃんと冒険をしたいな』

『わかりました。システム神に連絡いたします…』

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「…あれ?」

なんか一瞬ボーッとしてたような…あれ?変なところはないよね?

「さて、んじゃこの嬢ちゃんをとっとと移送しちまうか」

鉄格子の向こうで警備隊員がよっこらせと立ち上がった。

「あー、それが魔法使い移送用のうし車、調べたら車軸が折れてて…」

「…まあ滅多に使わないから仕方ないか…どうしたもんか」

「ここでやっちゃいます?」

「さすがにさっきの隊長さんに睨まれるだろ…そうだ。首都からの移送うし車がここに休憩で寄ってるだろ?一緒に連れてってもらえるよう頼もう」

「おっ、それがいいっすね」

「もう来てる頃だ、こいつも連れ出しとこう」

「もがーっ!」

あたしは二人に担がれて建物の外に連れ出された。

少し遠くのうし小屋の前に鉄檻がついたうし車が留まっていて、うしが干し草をみゃーみゃーと食べている。

「おーい、すまんが…」

「なんだね?」

警備隊員がうし車のそばに立つ役人に声をかけた。

「実はかくかくしかじかで…こいつを女の子刑務所に運んでほしいんだ」

「…まあよかろう。荷台に余裕もあるしな…」

「よし、じゃあ積み込んでと…」

「もがっ!?」あたしは檻の中に放り込まれた。

「檻の中は魔封じ結界が張られている。猿轡は取ってやれ」

「はいはい…よっと」

「ぷはぁ…」

やっと息ができるようになったが…確かに魔法は使えそうにない。

どうしたもんかなあ…と回りを見渡すと、こちらに背を向けて座る赤い服の女性の姿が見えた。

なんだろう、まるで忍者みたいな服装だ。かなみさんに似てるな…ん?

「…っていうか、かなみさんじゃん!」

「えっ、誰…エールちゃん!?」

毎度お馴染みリーザス忍、見当かなみさんはこちらを向いて大声を出した。

「……ほう…お知り合いですかな、リーザスの間者殿?」

檻の外から役人の冷たい声がした。

「しまっ…」かなみさんは顔を青くして口を押さえる。

「まあ、貴女とそこのお嬢さんとの関係については、後程確認させていただきますよ…我々ゼス外交部が、丁重にね…」

この役人、なんか偉そうだと思ってたが外交部とやらの人らしい。

「うう…」

「それでは、出発しますよ」

がっくりするかなみさんと事情がよくわからんあたしを詰め込んだ護送うし車は、女の子刑務所に向けて出発したのだった。

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(ほわんほわんほわん)回想終わりの音

「で、今日まで普通に収監されてたの」

ちなみにジェンガは牢番のぶたバンバラが貸してくれたのだ。なんでぶたバンバラが牢番をしてたのかはわかんないけど…

「ほーん?ズルキのヤツ、エールに気がつかなかったのか?」

「え?あの目ぱっちりの拷問オヤジここにいるの?」

「おう、ここの所長と知り合いらしく中で好き勝手しとったわ。」

「うわーっ怖っ…なんでだろね?」

「まあもう死んだがな。ヤツの息子ともども地獄行きだ…」

「恐らく、手を出せなかったのでしょう」「へ?」

カオルさんが口を挟んだ。かなみさんのほうを見ながら続ける。

「そちらのリーザスの忍者の方…おそらくは間諜の類いかと思われますが…」

「わ、わたしはリーザスとは関係…」

「鎧の肩。立派な紋章ですわね」

「うう…」

へこむかなみさんを尻目にカオルさんは続ける。

「ともかく、リーザスの間者ともなればその取り扱いは外交長官の領分となりますので…、所長の一存で好き勝手はできません。エールさんも関係者と疑われたことで、手を出しにくくなった…ということではないかと。」

「外交長官ねぇ…?どんなヤツだ」

「宇垣さくらというお名前で、長官たちの中ではもっとも…というか、唯一と言ってよいまともな方です。」

「ほう、さくら…女か?美人か?」

「ご立派なおヒゲをされていますわ」

「なんだジジイか。つまらん」

「そのヒゲおじさんのお陰で助かったんだ…かなみさんに会えたのもラッキーだったし…あたしついてるな」

いつか会ったらお礼でも言っとこう。

「はあ。まあいい。とっとと行くぞ。おい」「は、はいだす」

お兄ちゃんの言葉でロッキーさんが鍵を開けてくれた。

「はーい、ありがとう…ほら、かなみさんも」

「ああ、うん…」 

「おお、そうだ。かなみ、お前も俺様の部下としてこき使ってやる、ありがたく思うがいい」

「はぁーーー!?」

かなみさんは嫌がったが、お兄ちゃんが取り出したリア様からの書状には逆らえず、部下になることになってしまった。

相変わらず大変だなあ…




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以下、妄想です。

宇垣さくら
Lv17/31
話術0 魔法1 魔鉄匠1 ヒゲ2

国境の街サバサバに住む、名門貴族宇垣家の当主でゼスの外交長官。
元雷軍所属で、すさまじいヒゲをしているハゲジジイ。
国外との交渉が多い職務についているため、まともな常識と愛国心を持つ長官というゼスではとても貴重な存在。
リーザスとの関係が悪いわけではないが、それはそれとして国内に侵入したスパイを捕えたら、当然情報を引き出すために拷問したり外交カードとして利用したりはする。
はっきりした親ガンジー派なのだが、たいていサバサバで仕事をしているので腹黒長官会議にはほとんど出てこず、千鶴子の胃の助けにはならない。

実はリーザス解放戦争時、リーザスからの避難民を独断で受け入れたり、へルマンからの協力要請を勝手に突っぱねたりしているのでリアからすると少し借りがある状態。
これは重大な越権行為であり、彼は辞表を提出したが、ガンジーは頑として受け取らず、結果的に留任している。

カーミラダーク時、彼と部下たちの外交努力によりリーザス軍のゼス侵攻はかなり遅れ、結果的にランスがギリギリで間に合う事となった。
一方で本人は魔軍に襲われ致命傷を負ってしまい、近くにあったパパイアの塔に運び込まれる。そして…

※外交長官という地位は作中に登場しませんでしたが、
常識的に考えて外交担当が居ないはずはないので、アリスソフトの他作品(大帝国)から拝借しました。
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