いや、もう救出はされたんだけどね。
お兄ちゃんはまだやることがあるみたい。
きっと女絡みだろう。
「これまでの『エールちゃんの冒険』は…。」
「ブルー隊と一緒に捕まって女の子刑務所に収監されてしまった妹、エールを助けに行ったランスは、かつて退治した貴族ズルキが女レジスタンスを拷問していると聞き焦りを覚える。
ズルキの部屋に踏み込んだ時は既に女性が拷問されていた。激昂するランスだが、よく見ればその女性はエールではなかった。
ランス達は刑務所内を探索し、襲ってきたズルキの息子ハッサムを軽く返り討ちにする。
往生際悪くなおも戦おうとするハッサムは突然現れたテロ組織ペンタゴンによって無残に殺されてしまう。
ペンタゴンはズルキをも殺し、拷問されていた女性幹部エリザベスを救出して去っていった。
ランスは独房を巡り、ついに妹と再会する。しかしそこにはなぜか旧知のリーザス忍、かなみが一緒に捕えられていたのだった…」
「エールさんは何をやっているんです?そっちには誰もいませんけど…」
虚空に向かってしゃべるあたしを見てリズナさんが尋ねてきた。
「あー。えーとこれは…」
「マリアが昔魔法ビジョンで見てたドラマの冒頭に似てるわね」
「あー!あの無実の罪で捕まった兄を弟が助けにいくやつね!」
「なるほど、そのドラマの真似を…?」
「うん。暇なもんでつい…あのドラマ、なんか後半ぐだぐだになってたよね」
「ヒロインが急に死んだのびっくりしたわ」
「ギャラの問題で降板したとかいう噂聞いたわよ」
「長編ドラマあるあるだよねー…」
「刑務所ものなら、私は両目に傷がある男と女の子の話が…」
「ああ、プリンセスとイレブン…なんとかのやつ?」
「うう…お話についてけません…」
「あっ、ごめんねリズナさん」
あたし達がなんで不法侵入した刑務所のど真ん中でこうしてのんきにしゃべっているかというと。お兄ちゃんが…
「俺様の助けを待っている美少女がいるかもしれん!」
とか言って、ロッキーさんとシィルさんを連れてほかの牢屋を見に行ってしまったからだ。
「それにしても遅いなぁ。あ、戻ってきた…お兄ちゃん?どうしたの?」
「うう…うああ…」
「ランス様、しっかりしてくだせぇ…」
「あ、足元に気を付けて…」
お兄ちゃんは両肩を支えられてふらふらと戻ってきた。
「あはははははは…ブスが…ブスがいっぱいさ…ブスが俺をみて笑うんだ…」
顔色は真っ青で目の焦点は合わず、口からは妙なうわごとを垂れ流すばかり。
「…どうしたのこれ?」
「それが、上の方の牢屋には…その…個性的な外見の女性ばかりで…」
「おかゆフィーバーに似てる女の人とか、ボコボコにしたヤンキーみたいな女の人とか、るろんたを鼻かんだテイッシュで丸めたような女の人を立て続けに見たせいか、調子が悪くなってしまったんだす」
「とどめにヘルマンのミネバさんみたいな筋骨隆々の女性のポージングを真正面から見てしまい…」
「…夜空を埋め尽くすブス…ブスの大銀河…ブスが7割で空が3割…希望が…希望が見えない…!」
「要するにブサイクをたくさん見て様子がおかしくなったの!?」
我が兄ながら変な体質してるなぁ…世界一のブスとか連れてきたら死んでしまうかもしれない。
「ランス様。もう皆さんのところにつきましたよ」
シィルさんがお兄ちゃんの顔をマリアさんたちの方に向けた。
「あー…うー…美人…美少女…俺様の女…」
「わ、び、美人だなんて…」
「誰があんたの女よ」
「うう…ちょっと怖い…」
「本当に体調が悪そうですわね…」
「そういえば玄武城でも鬼ババアさんたちに会ったときあんな感じでした…」
「お、おお…」
お兄ちゃんの視線がマリアさん志津香さんかなみさんカオルさんリズナさんと一巡し、だんだん顔色が良くなってきた。よーし!あたしも…
「ほらほらお兄ちゃん、愛しの妹のスーパー美少女スマイルだよー」ぺかーっ。
「…」
あたしがトドメとばかりに両ほっぺに人差し指を当ててにこーっと笑って見せるとお兄ちゃんの目に光が戻ってきた。
そのまま両手をあたしの顔に伸ばし…
ぎゅーっ「あだだだだだだだだだだ!」
両頬を思いきり引っ張られた!
「…ふん、抱けん女の顔なんぞどうでもいいわ」
手を放してそっぽを向くお兄ちゃん。
「いたた…あたしを助けに来てくれたんじゃなかったのー!?」
「ついでだついで!俺様は美人所長の処女をいただきに…って、そうだった!ブスしかおらん牢屋にもう用はない!エミちゃんを探しに行くぞ!」
「えー!?」
お兄ちゃんはずんずん先に行ってしまい、あたし達は仕方なく後を追ったのだった。
==============好感度上昇==============
エール FR==14+1/15
エール FR==15/15
エール FR==15/15+5
エール FR==15/20
=====================================
「がはははは!見つけたぞエミちゃん!うーむ、写真で見るよりだいぶ美人ではないか」
「あ、あら、そんな…おほほ…」
「というわけで俺様とセックスしよう。さあさあ!」
「は?」
「めくるめく快楽の世界にご招待してくれるわー!」
「いーやー!変態!二級市民!変態!変質者ー!ドルハン!ドルハーン!」
「はっ…エミ様、お下がりを…」
「むっ!また貴様か!今度こそ剣のサビにしてくれるわ!」
という感じで突っ込む暇もなく話が進み、ドルハンとかいうらしい姿勢の悪いおっさんが襲い掛かってきた!
「はぁ!」がきん!「ふん!どりゃー!」ずばっ!「ぐっ!」
黒く硬質化した手で殴りかかってきたドルハンは拳をお兄ちゃんに弾き返され、右肩口を斬られる!
「なんだ、たいしたことなさそう…」
「気を抜いてはいけません!」
カオルさんの警告が飛ぶ。
「おそらくその男、ムシ使いです!ならば…」
「がああ!」ドルハンがこちらに向けて無傷の右腕を振り回してきた!
「わっ!?傷が治ってる!?」
拳を避けて慌てて飛びのくと、ドルハンの腕のムシから何か尖ったものが大量に突き出す!
「…ニードルシャワー!」ばしゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅしゅ!
声とともに大量の針がまき散らされ、あたし達は頭を抱えて逃げまどった!
「わーっ!痛っ…」「きゃー!」「いたたたたたたっ!」「い、いたいのいたいのとんでけー!」
畳みかけるようにドルハンが服の襟を緩める。
「…焼け死ぬがいい!!」ぼおおおおおーっ!
胸元から顔を出した赤いムシが派手に火を噴いた!
「ひーっ!」ロッキーさんがまともに炎に飲まれ…
「だりゃー!」「ふげっ!」その直前にお兄ちゃんがロッキーさんを踏みつけて飛んだ!
「ラーンス…」「…馬鹿め、狙い撃ちだ…!」
空中で剣を振り上げたお兄ちゃんに向けてドルハンが針を向けた。
「死ね…」「しっ!」ずばん!「ぐぅっ!」
針が放たれる直前、カオルさんが離れたところで腰から抜いた何かを目にも止まらぬ速さで振った!同時にドルハンの腕から血が噴き出す!
「しまっ…」「あたたたたーっく!」どがっしゃああああああああ!
「がはあああああああっ!」
対応が間に合わず、ランスアタックをまともに食らったドルハンは吹っ飛んで床に転がった。
「ふん!正義は勝つ!」
「そんな…ドルハン…」
「さーてエミちゃん!覚悟はいいな!」
「いーやーー!」
お兄ちゃんの方はさっそくタグが面倒になりそうなことをおっぱじめている。
あたしはそれをできるだけ見ないようにしながらカオルさんに声をかけた。
「…カオルさん、今のなに?魔法じゃあないっぽいけど」
「あら、見られてしまいましたか。これですわ」
「何これ?」
カオルさんが見せてくれたのは何の変哲もなさそうな小刀だった。特にマジックアイテムでもないみたいだけど…
「家伝の柔術で使う小刀ですの。居合切りという空を断って遠くを切り裂く技に使います。」
「へぇー!柔術かぁ…」
「難しいのですが、とっさに出せてよかったですわ」
どうやら剣技ではないらしい。あたしが覚えるのは難しいかな。
「ロッキー、大丈夫かい?」
「だ、大丈夫だす。あ、あつつ…」
向こうの方では背中を軽く火傷したらしいロッキーさんがプリマさんの手当てを受けていた。
どうもお兄ちゃんに踏まれてこけたせいで、背中以外は無事だったようだ。よかったよかった。
その少し離れたところからシィルさんがはらはらという感じでロッキーさんを眺めている。
ヒーリングしたいが断られるかも、と思ってるのだろう。いろいろと複雑そうだなぁ…
「しかし、ムシ使いですか…」
小刀を仕舞ったカオルさんが眉根を寄せた。
「そういえばそんなこと言ってたね。ムシ使いってなんなの?」
「ゼス国内に暮らす…いえ、暮らしていた一族ですわ。7年ほど前に…っ!」
「かあああああーっ!」突然飛び起きたドルハンが毒々しい色の針をお兄ちゃんに向けて飛ばした!
「ぬおっ…」エミをいたぶるのに夢中になっていたお兄ちゃんは反応できず、針が…
「危ない!」お兄ちゃんに刺さる前に、カオルさんが割り込んで針を受けた!
「くっ…ああっ…」体から力が抜け、崩れるようにカオルさんは倒れた。
「カオル!」「カオルさん!?」
「エミ様!失礼いたします!」「うう…」「あっ…」
あたし達がカオルさんに気を取られた瞬間、ドルハンはエミを抱えて逃げてしまった。
「おい、カオル!大丈夫か…」「はぁ…はぁ…」
お兄ちゃんの腕の中で、カオルさんは目を閉じて荒い息をついている。
「これは、毒…か?おい、お前らなんとかできんか」お兄ちゃんがシィルさんあたしプリマさんを見る。
「すみません、解毒はちょっと…」「以下同文!」「私も難しいことは…」
「ご無事ですか所長!」「魔法メイト、ウォール!前へーっ!」
同時に、ドアが開いて向こうから刑務所の係員が押し寄せてきた!
「ちっ…!撤退!撤退だ!逃げるぞ!」
「ひーっ!」「わー!待ってよー!」
あたし達はカオルさんを担いで、女の子刑務所から逃げ出したのだった。
ランスはブスを見るたびにシィルを見て精神を回復させていましたが一人では限度がありました。
以下、妄想です。
レッドアン・パフィ
Lv1/4
物書き1 ブス1
原作で、エミを襲うために女の子刑務所への侵入を決意したランスがウルザに命じててきとーに選ばせた救出対象の女性囚人。
二級市民が悪の魔法使いを倒す、という内容の小説を書いたことで冤罪でとっ捕まったが、別段そんなに売れたわけでもなく嫌がらせに近い。
おかゆフィーバーに似ていて、ランスに「見なかったことにしよう」された。
ちなみに女の子刑務所にブスの囚人ばかりいるのは、クラウン親子が美人を選んでいたぶっていたため。
ランス達が去った後、エミはランスへの仕返しのために職場に戻らず、クラウン親子も死んだので平和になった刑務所でのんびり過ごす。
獄中で書き出所後に出版した魔法使いと二級市民の男女が恋に落ち、ともに魔軍に立ち向かう小説はそこそこ人気を博した。
守備範囲外(11歳)
Lv1/12
ブス2 家事1
本名不明。
子供には甘いランスにすら「見なかったことにしよう」された。
親にも近所の人にも嫌われて虐待されていて、顔を見た貴族が体調を崩したために投獄される。
しかし、刑務所はご飯も出てくるし、看守も(ブスに慣れているため)特段いじめてこないので結構幸せに過ごしていた。
後にブスを見すぎて美醜感覚が破壊された看守と結婚し、かわいくない子供を授かった。
タカさん
Lv???/???
???
古典怪作エロゲ(アリスソフト製ではない)、Theガッツの登場人物(と思われる人物)。
ミネバに似ているマッシブな女性だが、気は優しくて力持ち…そしてスケベ。
立ってるチ(ぴーっ)は親でも使う。
なんでか牢の中にいて、ランスに「見なかったことにしよう」された。
今時だと許されないパロディだと思う。