【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【ヘルマン皇子を保護】

ラドンの奴隷観察場にヘルマンの皇子がいるらしい
リーザスに攻めてきた皇子は死んだって聞いたし別の皇子かなぁ
なんであんなところに居るのか知らないけど、皇子ならいろいろ役立つだろう
ってことでお兄ちゃん達が向かうみたい、あそこは男しか入れないのであたしは留守番だ



18.エールちゃんはプレゼントをもらう

孤児院でお昼ご飯を食べた後、ぶらぶらしていたらカオルさんを見かけた。

「あっ、カオルさん。もう大丈夫なの?」

「ええ、皆さんが持ち帰ってくれた解毒剤がよく効きましたので」

カオルさんはにっこり微笑んで答える。

『がはははは!俺様に任せておけー!』とか言って病室に飛び込んだお兄ちゃんがタグが面倒になる感じに投与したので、正直ちゃんと効くか心配だったのだが…無事そうでよかった。

「そういえばお兄ちゃんどこに行ったか知らない?」

「ええ、『赤い引換券』がたまったから交換してくる、と今朝出かけられましたわ」

「へー。じゃあイタリアに行ったんだ。ならそろそろ戻ってくるかな…」

赤い引換券というのはたまに遭遇する強いモンスターが落とすことがある良くわからん紙切れだ。

なんに使うかさっぱりわかんないけど、イタリアにこれを欲しがっているしゃもじが店を開いていて、いろんなものと交換してくれるらしい。

「ええ…あ、ちょうど戻ってこられましたよ」

向こうからお兄ちゃんとロッキーさん、シィルさんが歩いてくる。シィルさんはずいぶんな大荷物を抱えて…ロッキーさんはなんか大きな板を持ってるな。

「おいロッキー、落としたら承知せんぞ!」

「は、はいだすランス様…」

「ロッキーさん…支えましょうか?」

「だ、大丈夫だす…」

「おかえりお兄ちゃん。なんなのその板…わぁ」

ロッキーさんが抱えている板をよく見ると、裸の女性がでかでかと描かれていた。

「がははははははは。ナイスな全裸女看板だ、いいだろう。家宝決定だ」

「ええー…あれだけ実物の女の子はべらしといて今更絵の女の子を欲しがるの…?」

「ふん、男のロマンを解さんやつめ。」

なんとなくロッキーさんを見たが、さっと目をそらされた。ちょっとはわかるらしい。

「ふーん。美少女は自前のを持ってるから要らないなぁ…あ、でも男の子だったら…」

あたしはアリオスさんやリックさん健太郎くんヒューバートさんにこの間会った少年、ついでにお兄ちゃんやマルクの全裸姿看板を思い浮かべる。

「…うへへへ…なるほど…左様…これはなかなか…」

「気持ち悪い想像をするんじゃない」げしっ 可愛いお尻を蹴られてしまった。

「いだっ…もー!いつもながら叩くことないじゃん!可愛い顔にあざでも出来たらどーしてくれんの!」

「どこが可愛いだ、今ぬぼぼみたいな顔しとったぞ」

「ラ…ランス様…さすがにそれは…」「むきー!」

「あーうるさいうるさい…ほれ、これをくれてやるからおとなしくしろ」

あたしが食って掛かると、お兄ちゃんはシィルさんの荷物から何かを取り上げてあたしに放ってきた。

「わっ…なにこれ?」

キャッチしてみれば、ピンクの包装とリボンで包まれた箱だ。

「プレゼントだ。開けてみろ」

「えー?あたしに!?お兄ちゃんが!?」

「なんだ、要らんなら返せ」

「いや要るよ!要る要る!わーなんだろ…」

早速包装を剥がしてみると、一冊の本がでてきた。

「これは…ちょうど読みたかった漫画の新刊!発売してたんだー!やったー!」

「がはははは、そんなものが欲しかったのか」

「え?どういうこと?」

「それは渡された人の欲しいものが出てくる魔法のプレゼントなんです。赤い引換券で手に入れまして…」

「へー…そういうものがあるんだ…」

どういう理屈か知らないけど…まこと都合のいい技術である。

「様子を見るに効果は本物らしいな。これで女どもの機嫌を取って…ぐふふふは」

「ありがとねー」

あたしはお兄ちゃんを手を振って見送ったのだった。

 

==============好感度上昇==============

エール FR==15+1/20

エール FR==16/20

=====================================

 

そして翌日。

「ヘルマンの皇子が?」

「ああ、奴隷観察場に居る、という情報が入った」

「なんでそんなところに…」

会議室に呼ばれたあたしたちグリーン隊一同は、ダニエルさんに説明を受けていた。

「理由は不明だが…友好的に接触できればヘルマンからの援助が得られるかもしれん」

ヘルマンからの援助ねえ…カチカチパンと干しダイコンとかが送られてくるんじゃなかろうか?よくて分厚くて重たい鎧とか?

「皇子の救出となれば重要な任務。騎士たるボクが適任だろう」

「残念だが、あそこは男結界があって女性は入れん」

「ぐぬっ…」

「では、父さん。また僕が向かいましょうか」

サーナキアさんが憮然とした顔で引き下がり、アベルトさんが進み出た。

「…ああ。すまんが頼…」

「いーや。俺様が行く」

そこにお兄ちゃんが割って入った。

「へ?」「お兄ちゃん!?相手は皇子だよ?皇女じゃないよ?」

「やかましいわ!文句はないな?」

なんか思惑があるらしい。

「…ええ、ランスさんがそういうなら」

「まあ、よかろう」

アベルトさんとダニエルさんが頷き、そういうことになった。

 

「うう…またあそこに行くだすか…」

「何をちんたらしとるんだ、さっさと行くぞ!」

「は、はいだす!」

「女の子モンスターはいそうにありませんね…」

「ふっ…地獄が俺には相応しい…」

「気を付けてねー」

お兄ちゃんとロッキーさん、タマネギさんとバーニン…バーナードさんは連れ立って出発していった。

あたしは特に用もないけど…うーん。

なんかこう、お兄ちゃんへの好意が高まったせいか、より頑張って役に立たないといけないような気がしてきたな…

「よーし。訓練でもしよう。でも何をしようかな…」

 

==============好感度ボーナス==============

  攻撃 威力アップ

ニアヒーリング 回復量アップ

  AL魔法剣 威力アップ(命中ダウン)

  経験値取得

  活動力取得

=====================================

 

「うーん、やっぱりヒーリングかなあ。えーっと聖典はどこにやったっけ…」

荷物をごそごそ漁り、底の方からAL教の聖典を取り出した。

スリアさんがどっかからもらってきたもので、アリスブックというらしい。

あんまり市中の本屋とかそのへんの教会では見たことないので、たぶんマイナーな聖典なんだろうけど…まあ平気だよね。

あたしは本を開いて机に座り、久々に聖句の朗読を始めた。

「えーと…。女神ALICE曰く~。

隣人に尽くしましょう、隣人が困っているときは、己が傷つくことも厭わず手を差し伸べましょう…」

正直これ退屈なんだよね…

でも神魔法の効率上昇にはこういう修行が必要なのだとシスターは言ってたし…

「人を幸せにすることで、人は幸せになります。 自分一人の幸せはいずれ、身を滅ぼすことになります。ALICE様はそう仰っています…ふぁーあ…」

ついあくびを漏らしながらも読み進める。

「…ゾンビは許してはいけません…うぅ…異教を信じてはいけません、魂を清く正しく保ち…ふぁ…神を信じて死を恐れず邁進しましょう…悪魔の…誘惑には負けないこと…うーん……ぐぅ。」

あたしは睡魔に負け、その場で寝てしまった。

 

「…はっ!いけない…寝ちゃってたな…うわっ」

ようやく起きたあたしの目に入ってきたのは、よだれで表紙がべちょべちょになったアリスブックだった。

どうやら寝る前にどうにか本を閉じたようだが、そのまま枕にしてしまったらしい。

必死で拭くけど、シミはとれない。表紙の凛とした女神ALICEの絵も滲んだのか、緩んだ感じの表情になってるし…

「どーしよ…スリアさんと女神様に怒られちゃうよ」

許します…むしろ…いえなんでもありません…

「ん?誰かなんか言った?」

振り向いたが誰もいない。気のせいだろう。

「まあいいや!朗読終わり!お兄ちゃんにもらった漫画でも読もーっと!」

あたしは聖典をしまい、漫画本を取り出してベッドに寝転んで…眠くはならずに、最後まで読んだのだった。

 

==============好感度ボーナス==============

 

エール ヒーリング 回復量上昇

 

=====================================

 

ちょうど漫画を読み終えた頃、外が騒がしくなったので表に出てみると、お兄ちゃんたちが首尾良くヘルマンの皇子を連れて帰ってきたらしく、アジトはその噂で持ちきりだった。

会議室に行ってみると、そこには皇子を一目見ようとたくさんの女の子たちが集まっていた。

「私、皇子って初めて見ます…」

「大分昔ですが、王子は見たことあるんですけどね…ちっちゃかったですが」

「きっと凛々しく紳士的な方に違いない」

「やっぱり金髪なんでしょうか…あっ、エールちゃん。」

「ヘルマン人で金髪は少ないんじゃないかな…皇子様が来てるんだって?」

「はい、アイスフレームに入団してくれるそうで…今手続きをしています」

「へー。戦えるんだ?皇子だからやっぱり剣かな」

あたしの脳裏に皇帝ザナゲスが愛剣でかっこ良く敵を打ち倒す、ザナゲスサーガーの1シーンが浮かんだ。

「リーザスに攻めてきたバカ皇子とは大違いだねぇ」

「これでランスも少しはおとなしくなるだろう」

「うーん…それはないかなあ…あっ」

やいのやいの話していると、がちゃりと会議室のドアが空いた。

そして…

「おぉ?ずいぶんと歓迎されてるみたいだな…」

「「「「へ?」」」」

開いたドアを狭そうに潜って、鍛えられた体をしたゴツい大男が姿を見せたのだった。




アリスブック

AL教の神官のうち、特に優れたものが信仰心と業績を認められて授けられる特別な聖典。
もらったものは生涯手放さないので、基本市中に流れたりしない。
セルさんのSランク武器。


漫画本
正体不明の漫画家、エススキ丼怒の作品。
不定期に読み切りや短期連載をするだけなのだがどの作品も評価が高く、根強いファンがいる。
作者の意向で刊行数を絞っているらしく、なかなか手に入らない。
しばらく前に短期連載された四コマ漫画『まぬけ王子ポットンくん』も掲載されている。
バカでデブで陰険で不細工で執念深いだけが取り柄のウドの大木、王子ポットン君が国を追い出され、乳母のオカンティやお付きのブーバード、石頭で痴呆気味の魔法使いブリーフと協力し、国に戻るために悪知恵を巡らせるコメディ漫画。
なかなか好評だったが圧力で連載終了したらしい。
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