まっ白
さて、何をしようかな
ゴツい、男であった。
体がゴツい。
腕がゴツい。
足もゴツい。首がゴツい。顔もゴツい。
その顔に浮かんだ笑みまで、ゴツかった。
そんなゴツ男(仮称)はあたしたちをぐるりと見回し、ランスお兄ちゃんに目を停める。
「おう、俺はあんたの隊に配属だそうだ。よろしくな」
「うむ、せいぜい俺様のために働け」
「あ、あのー…」
お兄ちゃんはいつものように偉そうにしているが、そんな二人にシィルさんが声をかけた。
「ん?なんだい」
ゴツ男はこちらに顔を向ける。
露出している太い腕は傷だらけ、左目には大きな傷跡。服も防具もボロボロで…手にはナックル。剣は持っていない…
どっからどうみても流れの
あたし、強い人は立ち居振る舞いを見れば大体わかるんだけど、スパルタはちょっと戦い方が独特だから…よくわかんないんだよね。
まあ見た目と雰囲気はすごく強そうではあるけど。
「あなたがヘルマンの皇子様なんですか?」
「ああ、一応そういうことになる。パットン・ミスナルジだ。よろしくな、可愛らしいお嬢ちゃんたち」
あたしたちを見回して、パットン…さんは顔に似合わぬくちゃっとした笑みをうかべて答えた。
「…だが、俺が皇子だってことはあまり口外しないほうがいい」
愛嬌のある表情から一転、険しい顔で続ける。
「え、なんで?お忍びで来てるとか?」
「残念ながらもっとタチの悪い部類だ」
あたしの疑問に、ダニエルさんがドアから出てきて続ける。
「はぁ?どういうことだ」
「パットンは、間違いなくヘルマンの皇子だ。ただし、国を追われたな…」
「えー!?」
「恥ずかしい話だが、お家騒動でな。対抗勢力に殺されかかって逃げだしたんだ」
「じゃあ、今でも命を狙われているという事か!?」
「そうだな、ヘルマンから刺客も来るかもしれん…ということで、隠れ場所として奴隷観察場に潜り込んでたんだ。修行もできるしな…」
なんだろう。アグレッシブな皇子だなぁ…
「じゃあ厄介者という事ではないか!俺様に押し付けたな!?」
「お前が拾ってきたんだ。お前が責任を取れ。」
「わんわんやにゃんにゃんじゃないんだぞ!」
「お前はいろんなところで人にさんざん迷惑をかけてるだろう。たまには善行を積め」
食って掛かるお兄ちゃんにダニエルさんはにべもなく言い捨てて立ち去ってしまった。
「はっきりものをいう爺さんだなぁ」
パットンさんは感心したように背中を見送った。
おおらかなのかいい加減なのか…ともかく、顔は怖いけど気のいい力自慢のおっちゃん、という感じで威厳とかはさっぱり感じとれないなぁ…悪い人ではなさそうけどね。
「…こうなると思った…」
かなみさんがぼやく。
「かなみさん、パットンさんについて何か知ってたの?」
「えー…そりゃあ、まぁね…パットン…さんの容姿も。よく知ってるわ」
かなみさんはパットンさんから微妙に視線を外しつつ答えた。
まぁ、リーザスはヘルマンに対しては色々複雑だろうからね。
攻め寄せたあのアホ皇子じゃないとしても、思うところはあるか…
「なんで言わなかったんだ!」
「ランスには何言っても無駄でしょ…」
かなみさんはぷい、と首を巡らせてさっとどっかに行ってしまった。
「ぐぐぐぐ…」
「いやーすまん、迷惑をかけるが…刺客が来ても、何とかするさ。」
パットンさんは太い腕をぐいっとまげて力こぶを作った。
「国を取り戻すために修行してるんだ。刺客くらい自分でどうにかできんとな。無論、あんたの足を引っ張るようなこともしねぇ。まだまだ強くなるよう、頑張るぜ」
「うう…勝手にしろ…」
お兄ちゃんはうなだれた。
「まぁまぁ…強そうな人が仲間になってくれたんだから良かったじゃん。」
「俺様は美女の部下以外は要らーん!」
「お兄ちゃんほんとそればっかだね…」
「お?隊長の妹さんなのか。」
パットンさんが声をかけてきた。
「うん、あたしランスの妹でエールっていうんだ。神官戦士だよ。よろしくね」
「おお、妹か…うん。兄妹で仲がよさそうで何よりだな…」
一瞬遠くを見るような目をしたパットンさん。
「あの…?」
「いや、なんでもない。神官なら、後で世話になることもあるだろうから…その時はよろしくな」
「では、グリーン隊のロッジの方にご案内しますね。皆さんにも紹介します…」
言い出したカオルさんに続いて、皆で会議室の前を後にしたのだった。
その後、任務もないので軽く訓練でも、と
あたし達グリーン隊はアジト周辺の周辺(あまねべ)の森に足を踏み入れたのだが…
「おるぁあああああああああ!」ばきっ!「あいやー!」
敵中に突っ込んだパットンさんのでかい拳に殴られたブルーハニーが吹き飛んでいく。
「なんだこいつー!」「赤の奴らか!」「はにほー!やっつけろ!」ぼかすかざくーっ
当然のことながら突出したパットンさんはモンスターに囲まれて攻撃される。
「ぐっ…っ…おらぁ!まだまだ!どんどん来いやぁ!」げしーっ「あいやー!」「うわー!」
多少血は流しているが…パットンさんは全然堪えた様子もなく、蹴るわ殴るわ噛みつくわ。大暴れでモンスターの群れを圧倒している。
なんちゅう体力任せの強引な戦い方だ…でも、強いことは間違いないよね。
冷静に考えて、あたしくらいの剣の腕ではあそこには立てない。すぐにダウンしてしまうだろう。
健太郎くんも…ちょっと無理かなぁ?対多数に向いてない。
ああいう事ができるのは、たぶんあたしに知ってる中ではリックさん、アリオスさん…
「めちゃくちゃしやがるなぁあの皇子…」
呆れた顔でパットンさんを眺めているうちの兄くらいだ。
「お兄ちゃん、似たようなことよくやってるじゃん」
「馬鹿め、俺様はもっと優雅に華麗にやっとるわ。あんな原始人と一緒にするんじゃない」
確かに、敵中に飛び込んだお兄ちゃんはこう…とにかく全身のバネで跳ねまわるように剣を振り回して切りまくり、一人で敵を圧倒してしまう感じで…
優雅で華麗かはともかくとして、確かにパットンさんとはタイプが違うな。
アリオスさんなら、大勢を相手にするときは素早く切り抜けて突破し、また切り返してくるんじゃないかな。
リックさんは…なんというか…普通の人が1回剣を振る間に、リックさんは3回剣を振り、5回の斬撃が放たれ、8人殺すからそれで突破できる…みたいな…?
何を言っているのかわからない?あたしもわからん。
「ぐおおおおーっ!」「パットンさん!?」
前の方からパットンさんの悲鳴が響き、あわててそちらに目をやる。
「光の矢びろーん」ずばーん!
「ぐえええええええ!ま、魔法は…魔法は勘弁…」
パットンさんが魔法使いモンスター、メイジマンに追い立てられていた。
「うわっ大変だ!」
「まったく…とっとと経験値にしてしまうぞ」
あたし達は武器を抜いてモンスターたちに襲い掛かり、どかばきずばーっぼこーっぺちぺちがばーっどんどーんぐえーっと蹴散らした。
「お疲れ様ですランス様!」
「がはははは、あの程度俺様の敵ではないわ」
お兄ちゃんとシィルさんはいつも通りイチャイチャしており、
「ふふふ…」
ムシかごに入ったハチ女を眺めてタマネギさんが目を細め、ハチ女は恐れおののいている。
タグが面倒になりそうなことには関わらないことにして、目を背けるとパットンさんがのしのしと戻ってきていた。
「いてて…魔法は理不尽だから好かんなぁ…」
「大丈夫ですか?ヒーリングしますよ」
「済まんが頼む…」「はーい。いたいのいたいのとんでけー…」
「ふぅ。ありがとなエールの嬢ちゃん…」
ヒーリングで体力を回復させると、パットンさんは礼を言って拳を握った。
「うん、よし。…こりゃ、思った通りいい修行になりそうだ」
「まるで懲りてない…あんな危ない戦い方してたらいつか大けがしますよ?」
「カッカッカッ、すまねぇな。ハンティ…ああ、俺の乳母なんだが…そいつにもよく言われる…でも、俺にはこの戦い方が合ってるみたいでな。なぁに、頑丈さは折り紙付きだ。問題ねぇよ。」
にやりと笑うパットンさん。
うーん…こう、いかつい外見に反してけっこう愛嬌があり、強いは強いけどどっか抜けていて、それでいて頑固なところもあり…
なんというか、目が離せない感じの人だなぁ。
人望もありそう。お兄ちゃんとはまた違うタイプだけどね。
「…はぁ…まぁそれならいいですけど…気を付けてくださいね?」
「おう、もちろんだ。さーて、次の相手はどこかねぇ」
分かってんのかなこの人…
腕をぐるぐる回して楽しげに歩き出すパットンさんの背中を見ながらあたしは軽く笑ってため息をついたのだった。
そのあと森の歩道をぐるーっと回って、冒険功績と経験値を稼いでアジトに戻ったのだが、途中でお兄ちゃんが何か紙切れを拾ってぐふぐふ笑い、かなみさんが青い顔をしていた。
お兄ちゃんの手元を見てみればリア様謹製とおぼしき『かなみエッチ券』なるものが。
宮仕えって大変なんだなぁ…
翌日、なんでか知らないけどお兄ちゃんがどこかにシィルさんと出かけていき、なぜか二人ともボロボロの状態で帰ってきて、訳を聞いても教えてくれなかった。
その日の夕食時、パットンさんが夕方ジョギング中になんかすごく良いナックルを拾ったらしく、ここに来て早々ついてるぜと笑って話していた。
お兄ちゃんはそんなパットンさんを複雑な顔で見ていたのだが…
何があったのかは、あたしにはわかりようがないのだった。
本作の評価が1700に到達しました。ありがとうございます。これからも頑張ります。
9ではW主人公、と言われてるし
なぐりまくりたわぁとかでは主人公だし…ええやろ!なっ!
関係ない話ですが、国立博物館にドロボーが入り、Sランク武器カイザーナックルが盗まれました。
盗人は罠で地下のピットに落とされましたが、モンスターや魔法生物を突破して脱出したそうです。
怖いですね。
パットン君の技能について。
R6時点では剣戦闘Lv1、格闘Lv2と設定されていましたが、のちに設定変更がされ
剣技能は没収、格闘もLv1に格下げ。代わりにもらったのがプロレスLv2とガードLv1となります。
プロレス技能の他の所持者は、ペンタゴンのキングジョージが居ますね。
正直どういう方向の能力かよくわかりませんが、彼らの戦い方を見る限り
「回避にペナルティ」
「剣や槍、弓と言った『武器』の扱いが下手になり、壊しやすくなる(栓抜きやパイプ椅子、トゲブロック等の『凶器』は逆に威力が上がる)」
「その代わり体力と打たれ強さにボーナス」
Lv2以降の場合
「傷つきながら放つという条件で格闘技能の必殺技を使用可能」
と言ったところではないかと思います。
というわけで技能不明のノスにも付与してみました。某キン肉超人プロレスの漫画にも出てきそうな外見ですし…