「へルマンがリーザスに侵攻したらしい」
「マジか、国境を守ってた青軍は何してたんだ?」
「首都は陥落、国王夫妻は死んだそうだ」
「行方不明じゃなかったか?」
「攻めてきたのはトーマ将軍の第3軍で、なんか突然リーザス城に現れたんだそうだ」
「首都は陥落、赤軍黒軍は全滅。へルマン軍は周辺の平定を始めるらしい。北部で青軍白軍は抵抗してるらしいが……」
「こりゃリーザスは滅ぶかな」
「リア王女を王子の嫁に差し出して降伏するんじゃないか?」
カイズで第一報を聞いてからジフテリアまで戻る途中。港や船で聞き回って聞けた話はこれくらいだ。
どうやったのかはさっぱりわからないが、ともかくへルマン軍が急にワープしてリーザスの首都を落としたらしい。
ここまでならば別にいい言えばいいのだが。
「ジオはへルマンが攻めてくる前に勝手に降伏したらしいぜ」
この噂であたしの背筋は凍った。
なにせジオはレッドとホッホ峡を挟んで隣り合っている。
もしレッドの町がへルマン軍に攻められたら?
セルさんは? マスターは? ワヨソさん、宿屋のおかみさん、冒険者のみんなは?
そして、近くの村の孤児院はどうなるだろう?
「……戻ろう。一刻も早く!」
戻って何ができるわけでもないし、実際カイズは安全なのだからここにいたら、と止められたが、あたしはいても立っても居られなかったのだ。
そして、船でようやくジフテリアに到着し、そのままカスタムに向かおうと準備をしていると。
「へルマン軍がカスタムに迫っているらしいぜ!」
「うわ、マジか……早いな……」
「ってことは、レッドとラジールも落ちたってことか?」
そんな商人たちの立ち話が聞こえてきた。
「そ、それってほんとですか?」
あたしは食って掛かった。
「ああ、カスタムの方から来た行商人から聞いたんだ」
「連中、カスタムは抵抗するつもりらしいから物資が売れるだろうってその手の品をかき集めて戻っていったからな」
「あの、レッドがどうなったとかは……」
「わからないな……でも、へルマン軍がそこまで来たってことは落ちたか降伏したんじゃないか?」
「……ありがとうございました」
あたしは礼をいってその場を去った。
「……どうしよう」
レッドは陥落したのだろうか? 皆は? これからどうすればいいだろうか?
頭のなかでぐるぐると考えが渦巻き、考えがまとまらない。
「……あいたっ」
下を向いてふらふらと歩いていたら、何かに頭をぶつけてしまった。
「いたた……」涙目になりつつ目の前を確かめると、
『お困りごとなら、アイスの町のキースギルド』
あったのはハゲたおっさんかオイリッシュな笑みを浮かべる悪趣味な看板だったが、今のあたしには天の助けに見えた。
「そうだ、キースさんに聞いてみよう!」
レッドのマスターとも知り合いらしいし、それに油断ならないあの人なら情報も仕入れてるかもしれない!
あたしはさっそく北門に向かい、ちょうどアイスに物資を運ぶ商人のうし車に乗せてもらうことが出来た。
アイスも侵攻に備えて物資を仕入れているようだ。
揺れる荷車の隅で体を丸め、皆の無事を祈りながら少し眠った。
アイスに到着後、まっすぐキースギルドに向かっていると、途中に人だかりが出来ている。
「うわーっ武器屋の親父が死んでる!」
「ひでぇ! 全身めった刺しじゃねーか」
「まあ、態度も悪かったしあこぎな商売してたからなあ……どっかで恨みを買ったんだろ」
「なむなむ……」
殺人事件があったみたいだ。
物騒な話だが今は関わってる余裕はない。素通りしてギルドに駆け込む。
「がーっ! こんなガキどうしろってんだ!」
「そんなこと言われても今うちから出せるのはそいつしか……」
「ガキとは何だガキとはーっ!」
中から話し声が聞こえるが、構わず扉を開けて踏み込む。
「お話し中すいません! エールです!」
飛び込んだあたしに視線が集まった。
部屋のなかにはキースさんと秘書さん、いつか見たピンク髪の女の人に、忍者らしきお姉さん、あと鎧姿の小さい女の子がいて。
そして緑の服を着た戦士らしき男の人が、怪訝な顔でこちらを見て……大声で笑ったのだった。
「がはははは! 居るではないか! なかなか可愛いのが!」
ラチェットの件は明らかにライン越えてるので、エールちゃんが目撃しないように出会うタイミングをここにしました。
リスの洞窟で3000G稼ぐクエストをこなし、ローラを追いかけようと町を出る前に拾っていた求人票のことを思い出してキースギルドに来た、というところになります。