【エミをお仕置き】
カーマは取り返したけどエミとドルハンはまだ自由だ
今のうちに叩いておかないとね
ロッキーさんは大丈夫かなあ
小さな神殿のような建物の前で、エミは待ち構えていた。
お兄ちゃんを助けた女の子はムシ使いの生き残りであるらしく、エミはドルハンにその女の子を犯させ、子供を作らせるのだとおほほと笑う。
ランスお兄ちゃんは怒ったが、祠からドルハンが出てきてワシには無理です、と土下座した。エミはさんざんになじったがドルハンが首を縦に振る事はなかった。
…ドルハンもエミの命令に従ってさんざんひどいことをしてきたんだろうけど…それでも譲れない一線はあるんだろうか。
なんでエミに従ってるのかはわかんないけど、何か事情があるのかもしんないな。
でも、少なくともあたし達と戦うのはセーフのようで、エミの命令で体を震わせて全身からムシを飛び出させたドルハンは襲いかかってきた。
針は飛ばすし火は吹くし、肩の大砲みたいなムシから砲弾をぶっぱなすし、マリアさんはそれを見て目を輝かせるしで大変に厄介だったのだが…
さすがに多勢に無勢だ。お兄ちゃんとパットンさんが二人がかりでぶん殴り、あたし達が魔法で援護。
たまらず飛び退いたところをカオルさんがつかんですぱんと地面に叩きつけ、砲弾と魔法、とどめのランスアタックがぶちこまれてドルハンは沈黙した。
「そ、そんな…ムシを追加して20%はパワーアップしたドルハンが…」
「がはははは!俺様相手には200%は必要だったな!」
「いーやーーーー!」
悲鳴を上げるエミを取っ捕まえておっぱじめるお兄ちゃん。
「がははー!とどめだーっ!」「あーっ!」
まぁ自業自得だよね…と眺めていると、ドルハンがふらふらと立ち上がった。
「うわっ…」
「え、えみさま…」
あちこち骨が折れていて生きてるのが不思議なくらいボロボロなのに、体のあちこちをぶるぶる震わせながらも、ドルハンは立ってエミの方を見ている。
「うおっ、まだやるのかオッサン!?」
「待って!様子が変!」
かなみさんの警告通り、体の震えはどんどん激しくなり…
「ああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
ドルハンが、崩れた。
「ぎゃああばああああああああ!!!!!!」
悲鳴らしきものを上げながら、のたうつドルハンの全身の肉がうごめき、流れてあちこちからムシが顔を出しては沈んでいく。
「うおっ」「ひっ…」「こ、これって…村に居た…」
「…おじちゃんは…心が壊れちゃったの…」
あたし達がドルハンを見てビビっていると、後ろから声がする。
振り向いてみれば、浅黒い緑髪の女の子が立っていた。この子が、お兄ちゃんを助けてくれたっていうムシ使いの女の子だろう。
「ムシを…ムシをたくさん入れ過ぎて…心を壊されちゃったの…やさしい…おじちゃんだったのに…」
「じゃ、じゃああのうろついてた怪物はやっぱり…」
「…」
涙を流して頷く女の子にお兄ちゃんが近づく。
「…これ、もうどうしようもないのか?」
「うん…そうなると…死ねないの…ずっと痛くて苦しいまま…」
「そうか。じゃあ、俺様が殺してやる」
お兄ちゃんが剣を構える。
「額…額を貫いてあげて…なりたてなら…それで死ねるから…」
「…わかった。…あばよ」どすっ
「…あ……」
剣がまっすぐに突き出される。額を貫かれたドルハンは、何か声を漏らして倒れ…動かなくなった。
「はぁ…ったく。手間かけさせやがって」
お兄ちゃんはぼりぼりと頭を掻いてこちらを振り向いた。
「…ばいばい…おじちゃん…」ふらっ「わっ!」
女の子が気を失って倒れかかるのを慌てて支えた。
「…うん、気を失ってるだけね」
「疲れたんだろ。アジトに連れ帰って寝かせてやれ…おい、ロッキー…はいなかったな。」
「俺が背負っていくよ」
パットンさんがでかい手で女の子をそっと抱えた。
「うむ、いろいろあったが可愛い子もゲットして、エミちゃんの処女もいただいた!さすがは俺様!グッドだ!がはははは!」
お兄ちゃんのいつものバカ笑い、こんな状況だとなんとなく救いになるような気もするなぁ。
倒れて痙攣するエミと、ドルハンだった肉の塊を残して、あたし達は帰路に就いたのだった。
アジトに帰るとカーマは目を覚ましていて、キムチさんにめちゃめちゃお礼を言われた。いやー良かった。
連れて帰ってきた女の子の名前はカロリアと言って、村が滅ぼされた後ずっと一人であの村で過ごしていたみたいだ。
まぁとりあえず無事みたいだし、とりあえず今日は疲れたし明日話そう…と思って寝た…のだが。
「…おいこらー…」
なんか外で叫び声がする。なんかお兄ちゃんの声っぽいな…何かあったんだろうか?
パジャマの上からコートだけ羽織って、剣だけ手にサンダルつっかけて歩いていくと、広場でお兄ちゃんとカロリアちゃんが話していた。
「うん…かろ、村に帰るの」
「あんなとこ、一人でいるのはよくない。俺様といろ」
「ランス…かろのこと、嫌いじゃないの?」
「は?」
「どしたのお兄ちゃん…に、カロリア…ちゃん。こんな夜中に」
ぽてぽてと近寄って二人に声をかける。
「お、ちょうどいいところに。エール、カロリアのこと嫌いか?」
「え?いや、別に…助けてくれたし、いい子じゃない?」
「うむ、俺様もそう思うぞ。しかもかわいい女の子だしな…」
あたし達の回答に、カロリアは首を振った。
「かろ、ムシ使いだよ…ムシ使いは、みんなのきらわれ者なんだよ…」
そういうカロリアの額から、緑色のムシがにゅっといきなり突き出た。
「わっ」「ひゃっ」
「ね…気持ち悪いでしょ?だから、かろの一族はみんなから離れてなきゃいけないの…」
「気持ち悪くてびっくりしたんじゃない。ムシが出てきたことにびっくりしたんだ」
「うん、そだね。そんなふうに出るんだー。へー。触っても大丈夫?」
「う…うん…あげはは毒とかはないから…」「どれどれ」
早速つついてみる、暖かくて硬くてうにうにしていて…なんか変な感じだな。でも、その辺のムシと違って魂を感じるというかなんというか…
「うむ、大丈夫だろ?お前は可愛い。だから俺様の傍に居ろ」
「うん、いい子だし、ちょっと面白いしね。それがいいよ」
あたし達の言葉に、カロリアはつぶらな目をぱちくりとさせた、
「かろ…かわいい?いい子?」
「ああ」「うん」
あたし達は頷く。
「ムシ使いなのに…」
「だからどうした」「別にいいんじゃない?」
「かろがいると、みんな、ランス達のこときらうかも…」
「エール、そんなことあるか?」
「んなわけないじゃん。んなきっとカロリアちゃんのこと可愛がってくれるよ」
「そうだろ、俺様の女にそんな性格悪いのは………えーと…リアとかはちょっとな…まぁここにはおらん」
「でも…でも…不潔とか、気持ち悪いとか…」
まだもじもじしているカロリアに、お兄ちゃんが畳みかける。
「ムシ使いは病気持ちなのか?」
「そんなことないよ…」
「じゃあ、汚いとか?」
「かろのムシは、みんなきれい好きだよ…」
「くさいのか?」
「…くさいのもいたけど…かろのは無臭だよ」
「じゃあ、普通じゃないか。なんで逃げる」
「だって…汚いとか思われてるし…」
うーん。また最初に戻ってしまった。こうなると…
「あー…もういい。来い」がしっ「ひゃっ…」
お兄ちゃんはカロリアの手を引いて、ずんずこ大股で歩き出した。
まぁ、お兄ちゃんならそうするよね。あたしもあくびをかみ殺してぽてぽてと後に続いたのだった。
そのままお兄ちゃんはカロリアをウルザさんとダニエルさんに引き合わせた。
無論どっちもムシ使いだからと言って差別するようなこともなく、カロリアはうちの隊に参加することになったのだった。
あの村で一人で過ごすよりはだいぶいいだろう。グリーン隊のロッジで皆に紹介したけど、まだもじもじしてお兄ちゃんの後ろに隠れようとする姿はなかなか可愛かった。
早く仲良くなれるといいな。
…ドルハンの末路とか、なれのはての存在を考えると、ちょっと心配にはなるけどね…
こっそり女の子で集まって話したのだが…
「ムシ使いというのはゼスにだいぶ昔から住んでいた皆さんなので…」
「よっぽどじゃないとああはならないとは思う…」
「そうね、何十代も続いてきたんだし」
「ドルハンはムシを追加しすぎたからああなった…ってカロリアちゃん、言ってたよね」
「じゃあ、ムシをこれ以上足さなければ平気なんでしょうか…?」
「最後の方、ドルハンはかなりムリしている様子でしたわ。カロリアさんはそういう様子はありませんし…問題ないのでは?」
たぶん大丈夫だろう、でも注意してみてあげようね、ということで皆で一致した。
カオルさんがカロリアにアジトを案内する、と言って連れて行き、あたし達は解散となった。
みんながぞろぞろとロッジを出ていく中で、シィルさんだけきょろきょろと誰かを探している。
「どしたの?シィルさん」
「あ、エールちゃん。ロッキーさんを見ませんでしたか?」
「見てないけど…そういえばさっきもいなかったね」
「も、もしかしてランス様の言葉を気にして…」
「そうかも…出ていった訳じゃないと思うけど、探してみよう」
二人でしばらく探して、アジトのはずれの丘で立ち尽くしているロッキーさんを見つけた。
「はぁ…」
深いため息をつくロッキーさん。
「ここにいらしたんですね、ロッキーさん」「あ…」
シィルさんが話しかけると、びくっとこちらを振り向いた。
「朝に集まった時に居なかったので…どうかしましたか?」
「お兄ちゃんに言われたことなら気にしないでいいよ」
シィルさんが手を伸ばすが…
「…う、うるさいだす!魔法使いがおらに触るなだす!」ばしっ「あっ…」
ロッキーさんはそれを振り払って逃げ出してしまった。だいぶ感情的になってるみたいだ。
「ロッキーさん…」「うーん、追いかけよっか。」
少し先でロッキーさんはうずくまっていた。転んで手を切ったみたいだ。
「大丈夫ですかロッキーさん…いたいのいたいのとんでけー…」
シィルさんがかがみこんでヒーリングをかける。
「う…うう…うううーっ…おら…おら…もう強くなれないだす…」
ロッキーさんは泣きながらぽつぽつと漏らし始めた。
「おら…女の子でもないし…魔法使いでもないから…ランス様のおそばにはいられないだす…男のおらがランス様の役に立てるのは、戦う事だけなのに…パットンさんみたいに強くないと…」
「ロッキーさん…」
「きっと、また捨てられてしまうだ…また…おら…」
そっか…これまでいろんな主人に仕えては、捨てられてきたのがトラウマになってるのかな…
どうしたもんか、と考えていると、シィルさんがロッキーさんをそっと抱き締めた。
「ごめんなさい…魔法使いの貴族がひどいことをして、ロッキーさんの心を苦しめたんですよね…」
「へ…?」
「いたいのいたいのとんでけー…体の傷は癒せますけど、心の傷は魔法じゃ癒せません…」
「い、いや…シィルさんがやったわけじゃ…」
「でも、ごめんなさい…」
シィルさんの腕の中で、ロッキーさんの目の険がふっと取れたような気がした。
「…………いや…謝るのは…おらの方だす…」
「へ?」
「魔法使いの貴族は、確かに悪い事をしてるだ…でも、シィルさんもエール様もいい人だす…魔法使いだから悪い奴、魔法使いじゃないからいい人…そんなふうに思うのは、二級市民を全部見下してた悪い魔法使いと一緒だ…」
「ロッキーさん…」
「おら、おら!悪い魔法使いには負けないだす!それで、戦い以外の事でランス様の役に立てるよう頑張るだ!」
「はい!その意気ですよ!ロッキーさん!」
「うんうん。それにロッキーさんの事、お兄ちゃんはだいぶ信頼してると思うよ?」
「へ?」
「だってカーマちゃんを連れ帰るように頼んだでしょ?女の子を男の人に任せるなんて…正直ちょっとびっくりしたもん」
「そうなんだすか…い、いや!あんな年頃の…しかも気絶してる子に手を出すなんてとんでもないことだすよ!」
「そういうところだよ」「そういうところですよね」
あたしとシィルさんはくすくすと笑い合った。
「さて、それじゃあアジトに戻って…ん?」「なんだすかこの光は…?」
何かぴかーっと光るものがこちらに向かってきて…
「…せしぼーん。私は、スターリアス様…」
ぎらぎらぴかぴかと輝く星型の着ぐるみ姿の女性が目の前に降りてきた。
「「「…は?」」」
いや、女性…だよな。顔しか見えないけど…というか…
『………ここは君の出番じゃないでしょ…てか何その恰好………』
「えーっと…あなたのその心意気…?私は感動しました。」「は、はぁ…」
何やら微妙に興味なさそうな顔でしゃべるスターアリ…リアス様…?どっかの神か何かかな…?
というか全力で指さして笑いたい衝動がどっかから降りて来ているんだけど…ここは我慢しよう…
「というわけで…いろいろとパワーアップしてあげましょう…蟷エ繝舌?繧クR15繝ァ繝ウ縺ォ縺ェ繧後ー!」
スターリアス様が強く光った!
「ひーーーーっ!」「きゃーっ!」「わーっ!」
光が収まると、もうそこには誰もいない。
「今のはいったい…」「わかんない…ロッキーさん、大丈夫…ん?」
「…え?」
「な、なんだっただすか…?はれ?」
ロッキーさんのいたところに、濃い顔のイケメンがへたり込んでいた。
いつも感想とか頂きありがとうございます。
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以下、妄想です。
ロッキー(パワーアップ)
槌戦闘1 ガード0 家事0
Lv19/64
ランスと同じくらいの背丈になり顔も濃いイケメンになったロッキー。
いなかっぺ口調が抜けていないのですごい違和感がある。
家事はうまいし斧ブーメランは溜めなし1.2倍列攻撃で案外強い。
原作でもレベル49まで廃棄迷宮で上げてからロッキー3を起こせば(強さは)こうなる。
外見は女神のサービス(のつもり)。エールはどうなんかなと思っている。