【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【魔女モヘカを倒せ】

ペトロ山に住む魔女モヘカが近所の村から少年を集めているが
子供たちはいつまでたっても戻ってこないそうだ
なんで魔女って呼ばれてるのか知らないけど、とりあえず調査しよう


25.エールちゃんは山に登る

「うむ、皆集まったな」

グリーン隊のロッジでランスお兄ちゃんが偉そうに鼻を鳴らし、ほかの事に気を取られていた皆の視線が集まった。

「次の任務だが、ペトロ山の頂上にモヘカとかいう魔女がいて、そいつは近くの村からガキを集めているのだが誰一人帰ってこないので調査してほしいそうだ。早速出発する…が、その前に」

お兄ちゃんはぐるりと首を回し…

「誰だお前」びしっ!

お兄ちゃんと同じくらいの背丈で濃い顔をした男性を指さした。

「あ…おら…おら…ロッキーだす…」

「うそつけ!ロッキーはもっとチビでずんぐりしててブサイクな顔しとるわ!」

「ひぃぃーっ!なんでか急にこうなってしまったんだすよー!」

鼻水をたらして泣くロッキーさん。顔に対して口調と態度がミスマッチにもほどがある!

「そんなことがあってたまるかー!」

「それがねぇお兄ちゃん…そんなことがあったんだよ」

「そうなんですランス様…そんなことがあったんです」

前に出るあたしとシィルさん。

「はぁ?どういうことだ」

「説明するのが難しいんだけどね…えーっと」

「良いからさっさと言え」

「ロッキーさんが一皮剥けたらキラキラ輝く着ぐるみのリアス様が降りてきてピカーっとなってこうなったの」

「さっぱりわからん…おい、シィル」

「はい…もうちょっと詳しく説明しますね…つまりかくかくがしかじかで…」

「…まるまるがうまうまになったのか…訳が分からんが…なんか急に変な存在にパワーアップさせられたということか?」

「はい…ウィリスさんに見せたら才能限界もかなり上がっているそうで…」

「この際強くなったのはいい…いいのだが…変わりすぎだろう」

「たしかにずいぶんイケメ…様変わりしたよね…」

「お、おら…ランス様のお役に立つために強くなりたいとは思っただが…こんな風になりたくはなかっただすよー…」

涙を流しつつ鼻水を垂らすロッキーさん。なんかバラみたいなエフェクトが出ている気もする。

「ロッキーさん…格好良くなられましたね…」

「うんうん、スマートになったし、才能限界も上がったんでしょう?」

「むっ…むむむ…」

あ、まずいかも。ちやほやされるロッキーさんを見てお兄ちゃんがちょっとむかむかしている。

「ま、まぁ年齢相応の顔になったってことじゃない?ほら、成長が遅れてたとか…」

「だ、だども…おらまだ14なのに…」

「「「…え?」」」

ロッキーさんの情けない声に、ぴしり、と空気が凍った。

「………おい待てロッキー、一応聞くが…お前、何が14なんだ?」

「なにって、年齢だすよ。おら、GI1005年生まれだすから…今年で14歳だす」

「「「「えええええええええええええええええええ?!」」」」」

 

ロッキー…くん…?…うん、違和感が凄い。ロッキーさんでいいやもう。

とにかく衝撃のあまり彼の処遇についてはうやむやとなり、あたし達はペトロ山の登山洞窟を登っていた。

「こらーっ!下りてこんかい!」

「うわーっ変な人がいるよー」「ばさばさー」

インバネスコートの飛行女の子モンスター、とりたまに向けて捕獲ロープを振り回すお兄ちゃん。

「うおおおお!プロレスぱーんち!」ばきーっ!

「ぐっ…まだまだぁ!おるあああああ!」ぼかーっ!

また一方では、パンイチマッチョの人型モンスター、プロレス男とパットンさんがくんずほぐれつして殴り合う。

「バンバンだよ、レッツゴー!」

その横を、うしのコスプレしてる女の子モンスター、うしうしバンバンが突っ込んできた!

「うわっこっち来た…」「おらに任せるだす!」

武器を構えるあたし達の前に、ロッキーさんが颯爽と飛び出し…

「さあ来るだす!」「バンバーン!」ぼかぼかぼかーっ「どひーっ!」

グルグルパンチを食らってあっけなく吹っ飛ばされた。

まぁ、才能限界だけ上がっても急に強くなるわけではないからね…

「よーっし!もういっちょいくよー!バンバ…」「AL魔法剣!」ずばん!「ぎゃーっ!」

グルグルパンチの勢いが止まったうしうしバンバンを、あたしはあっさり切り捨てる。

「おっ、そっちも片付いたか」

お兄ちゃんととりたまを抱えたタマネギさんが戻ってきた。

「まだ息がありますね…こちら、頂いても?」「あ、はい。どうぞどうぞ」

タマネギさんはホクホク顔でうしうしバンバンを縛り上げ始める。

「はらほれひれはれ…」

「だ、大丈夫ですかロッキーさん…いたいのいたいのとんでけー…」

「ふん、所詮はロッキーか…」

目を回したロッキーさんにヒーリングをかけるシィルさんを見て、軽く鼻を鳴らすお兄ちゃん。

「どうかしたのランス?」

「何でもないわ。おい、パットン!いつまでぐずぐずしとる!」

「分かってるさ隊長!これで終わりだ!ぬおおおお!」「があああ!?」

発破をかけられたパットンさんがプロレス男を持ち上げ、そのまま地面に叩きつける(パワーボム)

「どりゃあああああああ!」どかーん!カンカンカーン!「ぐふっ…見事…」

どっかから響くゴングの音と共に、プロレス男は倒れた(TKO)。あたし達は先に進むことにした。

 

「魔女っていうからにはやっぱ鉤鼻のしわしわのばあさんなのかねぇ」

「いや、美人だ」

「へ?知ってんのか?」

「知らん。知らんが美人だ。そうでなければ許さん」

「いや、許さんと言っても相手にも都合ってものが…っ!?」

「なんだ…ぬおっ!?」

先頭を馬鹿話しながら歩く二人が急に身構えた。

「ドラゴンか?!」「なんでこんなところに…」「がおーっがおーっ」

二人の視線の先には、巨大なドラゴンのような影が揺らめいていて、確かに吠え声のような音も聞こえてくる。

「ペトロ山にドラゴンがいるなどと言う情報はありませんでしたが…」

「魔女が持ち込んだのかもしれんな…ドラゴンか…腕が鳴るぜ」

カオルさんが首をかしげ、パットンさんがでかい拳をボキボキ鳴らす。

「えーい!ドラゴンがなんだ!お前ら行くぞ!」

「ドラゴンかぁ…話の通じる竜だといいんだけど」

あたしはキャンテルさんの事を思い出しつつ剣を抜き、お兄ちゃんに続いたのだが…

「がおーがおー」「「「…」」」

そこにいたのはただのちびとかげだった。

「あ、ここが洞窟の終わりみたい」「差し込む光で巨大に見えてたのね」

「「…」」「がおーがおー」

露骨にがっかりする男二人。

「で、でもランス様。ドラゴンじゃないですけど…結構かわいいですよ。ほら」

「ふん!」ぷちっ

お兄ちゃんはちびとかげを踏みつぶした。

「あっ!」「俺様を驚かせた罰だ、とっとと行くぞ!」

 

登山洞窟を出て、少し歩けば屋敷のある山頂についた。

「空気がおいしいー。」

「高いところは気分がいいな。やっほーほーらんらんらん」

お兄ちゃんの機嫌も直ったようで何よりだね。

「あの、ランス様…」

「なんだシィル、お前もやれ」

「いえ、足元にモンスターの死体が…」

「なに…あっ、ほんとだ」

見れば、屋敷に続く道の周囲に死体が点々と落ちている。

「剣で切られた感じじゃないね。なんか殴られてる?」

「ああ、でもこりゃ拳じゃないな。なにか四角い感じのものでぶん殴ったんだろう」

「でもハンマーにしては損傷が少ないわ…何でやられたのかしら」

あたしとパットンさん、かなみさんは首を傾げた。

「俺様達の前に誰かが来たのかもしれんな。気を付けて進むぞ」

 

「すみませーん、モヘカさんはいらっしゃいますかー…返事がないや」

「仕方ない、入るぞ。鍵は…開いとるな。おじゃましまーす」

というわけで入ったモヘカの屋敷は、調度品はそれなりに高級だが、人っ子一人おらず…そこはかとなく不気味な感じの洋館だった。

「おっ、宝箱があるじゃないか。」

お兄ちゃんが宝箱を見つけて駆け寄る。

「あ、人の家の宝箱を勝手に…」

「がはははは、これも正義の活動なのだ。さーて、何が入って…」ぎぃ…ばたん。

お兄ちゃんはすぐに宝箱を閉めてしまった。

「ランス様?」「どしたの?中身何だった?」

「見るな、これは捨てておく…おい」「は、はい…なんだすか」

あたしたち二人を追っ払い、ロッキーさんを呼ぶお兄ちゃん。

「…中身はなにが…どひー!」ばきっ「馬鹿、声を出すな」

「だ、だども…」「やかましい。適当に処分しとけ。いいな?」「は、はいだす…」

反応を見る限り、ろくなもんじゃなさそうだ。

「なんだったんでしょう?」「…気にしないほうが良さそうだね」

想像はつく。ちょっと気分が悪いけど…

お兄ちゃんが珍しく気遣ってくれるなら、それに甘えさせてもらおう。

 

「ランスー。あげは情報。あっちにも宝箱があるよ」

「む…そうか。よくやった」「えへへ…」

探知系のムシを頭から生やしたカロリアの頭をちょっと固い表情で撫でるお兄ちゃん。

「おいロッキー、回収しとけ」

「は、はいだす…」

『宝箱』を中身ごと回収し、応接間へとやってきた。

「この先に誰かいるみたいね」

「魔女かなぁ?」「どうだしょう?」

「よし、いくぞ!どりゃー!」

ドアをけ破って中に入ると…

「あれー?ランス」

水色の髪をした…巫女に見えなくもない格好の女性が立っていた。

お兄ちゃんを見て目を丸くして笑顔を浮かべる。

「やー。運命の再会やー。こんなところに何しに来たん?」

「お前は………誰だっけ?」

その女性はずこーっと盛大にこけたのだった。

 

女性はコパンドンというポルトガルのおみくじ巫女で、商売もしているらしい。

お兄ちゃんとは玄武城で出会ったそうだ。そういえば前に名前を聞いたなぁ。

コパンドンさんはモヘカが持っている株を売ってもらいに来たのだが…ちょっとしたはずみでケンカになり、ついつい撲殺してしまったそうな。

よく見れば、机の陰から倒れている人の脚が見えていて、持っているおみくじ箱の角には血がべっとりついている。凶器はこれだろう。

そりゃ強盗じゃねーかとは思うんだけど、あの『宝箱』の中身からして、どうせお兄ちゃんにぶっ殺されていただろう。ブサイクなババアだったらしいしね。

んで、コパンドンさんは大吉君という理想の彼氏を探しているのだが…いざ大吉君が見つかっても振り向いてくれないことがあると、大吉君であるお兄ちゃんにフラれて気が付いたそうな。

んで、大吉君を無理やり振り向かせるパワー…お金をたくさん集めるために、商売を始めたらしい。

なかなかアグレッシブな人だなぁ…。

「で、ランスは何しに来たん?」

「君を探しに来たんだ…さぁパンツを脱げ」

「きゃーんうれしー。じゃあそこの隅で…って嘘やろそれ」ぺちん

「ちっ、バレたか。本当は正義のレジスタンスとして魔女を退治に来たのだ」

「ほーん…レジスタンス…ほんほん。なぁ、うちもそのレジスタンスに協力させてくれへん?」

「お前がか?…まぁよかろう」

「やったー。」

またそうやって勝手に仲間にする…まぁウルザさんも何も言わないだろうけどね。

「えーと、シィルちゃんと、リズナちゃん以外は初対面やな。うちはコパンドン・ドット。よろしゅうな」

商売人らしくニコニコ笑いながらひとりひとりに挨拶をしていく。

「で、あんたは…ん?なんかランスに似とる…」

「うん、エールっていうんだ。ランスの妹だよ。よろしくね」

「…へぇー!」ぎゅんがしっ「わっ」

あたしが自己紹介すると、コパンドンさんは目をぱちくりとさせ…ぎゅんと距離を詰めてきた。

「いやー、ランスにこんなかわいらしい妹さんが居たとは思わなかったわー。」

「あ、はい…」

「困ったことがなんでも相談してくれてええからなー。将来の義…いや、なんでもない。ともかく、これからあんじょうよろしゅうなー」

コパンドンさんは、にこにこ笑いながら握ったあたしの手をぶんぶんと振ったのだった。




ランス君「うーん…あんまりガキ相手にムキになるのもなんだしな…それに濃い顔で情けないことしとるのはちょっと面白いし…まあ、モテそうにはないからいいか」
ということになりました。

どうもコパンドンはモンスターをおみくじ箱で撲殺しつつ一人でここにやって着た挙句、モヘカも撲殺したようで…
体育館の試験イベントでもザマランチ1号を瞬殺できるあたり、意外と腕力があるのかもしれません。
まぁサーナキアでも勝てる程度の相手なんですが。ザマランチ1号。

以下、妄想です。

魔女モヘカ
Lv3/5
絵描きLv1 経営Lv1 魔法0

腰の曲がったばあさん。一応ゼスの貴族でもあるが、大した家柄でもなく性格が悪いため社交界でもぼっちだった。
株取引で財産を築いたが、それ目当ての男や詐欺師が近寄ってくるのに辟易し、ペトロ山の屋敷にこもるようになる。
理想的な相手と見込んだ少年を屋敷に招待してもてなしたが、しばらくすると帰りたいと泣いていう事を聞かなくなり、つい殺してしまった。
その後、趣味の絵のモデルとして二級市民の少年を呼んでは殺して死体の絵を描き、首は切り取って防腐効果のある宝箱に詰めておく正真正銘のサイコ殺人鬼と化した。

なお、魔女というのは学生時代からのあだ名で、特に魔女っぽいことができるわけでもない。
一回噂を聞いて眉毛を縫い付けてる怖い女が家を訪ねてきたが、結構趣味が合って盛り上がったらしい。
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