【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【マジック拉致計画】

ゼスの王女様が学校の卒業試験のために迷宮に来るので、そこで王女をさらって
「王女の命が惜しければ平和な国にしろーっ」「ヒエーッしますー」「やったぜ。」
という計画らしい。そんなにうまくいくかなぁ?


28.エールちゃんは試験を受ける

結局カオルさんはランスお兄ちゃんを説得できなかったようで、マジック王女拉致計画は実行に移されることとなった。

試験の場となる第三試験会場は、卒業試験のためにわざわざ作られた人工迷宮だ。

マークの街の郊外の丘の上にちょっとした建物があって、そこの地下室に入り口がある。

そんな建物の傍で、あたし達グリーン隊は待機していた。

「うむ、では作戦は先ほど説明したとおりにな…準備はいいか?エール」

「うん…大丈夫かなぁ?」

あたしは普段のレディチャレンジャーではなく、長袖の黒いブラウスの上に紫色のケープを羽織り、やはり紫のベレー帽をかぶって黄色いタイを締め…

要するにゼス応用学校の制服を着て、腰に生徒用の練習剣を下げていた。

髪もいつものストレートではなく両側で緩く三つ編みにして、ついでに伊達メガネもかけている。

「お似合いですよ、エールちゃん」

「うん、いつもと印象がだいぶ違うわね」

「あたし18なんだけど…いいのかなぁ?応用学校卒業っで普通15歳でしょ?」

「飛び級とか留年は珍しい事じゃないらしいし、大丈夫じゃない?」

「見た目はほかの学生さんと変わらないと思いますよ」

「がはははは、胸がないのが役に立ったな…(げしっ)あだっ!」「ふん!」

 

どうしてあたしがこんな格好をしているかというと…

ターゲットである王女マジックは、魔法大国ゼスの王女で、現役の四天王。その戦闘力は計り知れない…と言われている。

まぁエミの例もあるし、七光りかもしれないけど…実力本位の四天王に選ばれるということはやっぱり本当に強いのだろう。

お兄ちゃん達は卒業試験のスタッフとして潜り込むことになったが、一塊で襲い掛かったら返り討ちになりかねないし、かといって本気でやって殺してしまっては元も子もない。

そこで、このスーパー美少女魔法使いことエールちゃんが学生の振りをして潜りこみ、マジック王女のそばに近づく。

そして、お兄ちゃんが気を引いている隙に後ろからこっそり取り押さえる…という計画なのだ。

卒業試験ということで、内部にはモンスターも放たれている。

あたしひとりだと苦戦して追いつけないかもしれないので、ロッキーさんとパットンさんが護衛の奴隷戦士という設定で着いてくる。

 

「はい、エールちゃん。受験票です。頑張ってくださいね」「はーい」

ウルザさんが用意してくれた偽名の受験票をシィルさんから受け取り、目を通す。

「えーっと…第三応用学校所属、サイダー・アサヒ…?」

「変な名前だな」

「あたしに言わないでよ、偽名なんだから仕方ないでしょ…えーっと、自由都市からの留学生、という設定なのね。」

「その方がぼろが出にくいだろう、と…」

「なるほどねー…」

返事しつつカオルさんのほうをチラッと見た。

普段はこういう事はカオルさんが説明してくれるんだけど…硬い表情で突っ立っているだけだ。変に暴発しないといいんだけど…まぁ、考えても仕方ないね。

「…あ、そろそろ時間みたい。」

建物のほうで、受験生の皆さんはこちらにーと号令がかかり、わらわらとあたしと同じ制服姿の生徒たちが集まってきている。

「じゃ、お兄ちゃん。あとでね」「うむ、せいぜい働け」

「それじゃあよろしくね!ロッキーさん、パットンさん!」

「はいだす、よろしくだす」

「おいおい、俺たちはエールの嬢ちゃんの奴隷戦士なんだろ?もっと偉そうにした方がいいんじゃないか」

パットンさんが口を挟む。

「あ、そっかー…えーっと…何をしてるのロッキー!パットン!ぐずぐずしないで!」

「は、はいだす!」「おお、いい感じじゃないか」

「えへへ、んじゃ行こっか。お願いしまーす」

受付に受験票を出すと、事務員さんがちらりと目を通し、

「えー…次…受験番号94741…サイダー・アサヒさんね。持ち込みは剣と奴隷戦士二人…剣の所持許可もよし…はい。問題ありません。では、頑張ってください」

あたしたち3人は、試験会場に突入したのだった。

 

今年の試験内容は、「三つのリンゴを集めてゴールまで持って行くこと」だ。

別に合格する必要はないとはいえ、マジック王女に見られたら疑われるかもしれない。一応、ちゃんと集めたほうがいいだろう。

というわけでぼちぼち探索しつつ進んでいく。

 

「バリアが道を塞いでる…」

「魔法使いのバリアとは感触が違うな。殴ってどうにかなるとは思えん」

「あっ、こっちにへんな魔法陣があるだすよ」

「これをいじるのかな…えーと…ここかな…?おっ、消えた。」

「よかった、先に進めるだす」

 

「ん?脇にドアがあるな。近道…と書いてある」

「でも鍵がかかってるね…」

「あ、おらスカウトキーを持っているだすよ。これで…(がちゃ)よし、開いただす」

「ロッキーさん、その使い捨ての鍵どうしたの?」

「鍵のかかった扉があった時に、たまたま拾ってた鍵をランス様にお渡ししたら褒めてくださったんだす。おら、それからお小遣いを使っていつも鍵は三色とも切らさないようにしてるだすよ」

うーん…立派だなぁ。召使の鑑だ。

「おっ、リンゴがあったぜ。」「よーし、次に行こうか」

 

「えーと、今度は問題か…えーと、スイッチの魔法陣が三つあって…『これを5にしろ』?」

「三つしかスイッチがないのに5なんて表せないだすよ」

「ん~…ああ、二進法じゃないかこれ?『1』『0』『1』…っと」

「あ、開いた。」「パットンさんすごいだす!」

「二進法は軍の信号とかで使うんでな。昔、一応教えられてたんだよ」

「へーっ、流石は皇子様だなぁ」

「リンゴがまたあっただす!これで二個だすな!」

 

会場内にはほかの受験生の他に、モンスターも放たれている。

「ピピルマープリルン!」「う、うぎゃー!」

魔女っ娘女の子モンスター、魔法使いサワーちゃんの呪いがロッキーさんを包む。

「な、なんかぞわぞわするだすー!」魔法防御低下かな?陰湿な…

「イカとは違うのだよ!イカとは!」

あたしには、イカマンの上位種、大王イカマンが触手を振り回し襲い掛かってくる!

こいつに隠れ墨をまき散らされると、攻撃が当たらなくなって大変厄介。なので…

「大王だろうがイカはイカでしょうが!雷の矢!」「イカっ!?」

「かーらーの…AL魔法剣!」ずばばーっ!「ゲソーっ!」

お久しぶりの魔法と必殺技の連続攻撃で強引に仕留めた。

向こうでは、パットンさんがモンスター数体と取っ組み合っている。

「おらおらーっ!」ばきっ!どがっ!「ぐっ…にゃー…」

でかい拳でしばかれて、ツボに入った獣型モンスターのねこつぼが悲鳴を上げるが…

「父さんの愛の鞭でござんす~」「にゃっ?にゃ~」「ちっ!回復してるのか」

全身緑色の指圧マスターがすかさず回復する!

「じゃあそっちから仕留めるか!」「貴方にプッシュ!」

指圧マスターは攻撃用の指圧で迎撃の構え!対してパットンさんは拳を握…らないで指を立てて…

「はぁぁぁぁ!」気合いの声とともに彼の右手が白く輝く!勝利をつかめと轟き叫ぶ!

「『輝指』ぁぁぁぁ!」気を纏って光り輝く指を突き出した!

どすっ!「ぎゃー!ま、またのご指名お待ちしてござんす…」指圧マスターは体を貫かれて倒れた。

「おおー…カッコいい技だす」「ピ…ピピルンまた来週…がくっ」

サワーが悠長に呪ってくる間に斧でぼこぼこにしたロッキーさんが感心する。

「ああ、指には指ってことでな… あんまり使う機会がないんだが」

なるほど、流石に鎧とか相手には厳しいか。突き指しちゃうよね。

ねこつぼはいつの間にかどっかに行ってしまったし…

「さーて、んじゃ次の部屋に…うわっ!」

ドアを開けたあたしは悲鳴を上げた。

「「「「「「ころころー」」」」」

狭い通路に球体に簡単な顔が付いただけのモンスター、まるとその上位種のまる改がひしめいていた。まだこちらには気が付いていないようだが…

「まるか…古代種なんだっけ?」「そうらしいな…厄介だぞこれは」

まるはなんでもすっごい昔から存在している古代種と呼ばれるモンスターで…体の構造が単純極まりなく、分裂するみたいに増えるし表情も変わんないし食って寝て増えるだけ。

それでいてムシではなく、立派に魂を持つ生物であるらしい。

 

正直…生物としては見ていてつまんないんだよね。クッキーのゲームの方がもうちょっと楽しい。流石にこれはないと思う。

これを作った皆さんもまぁ当時は経験不足だったんだろうし、いろいろマイナーチェンジ版を出したりして努力は感じられる。実際最終進化系のリスは結構いい出来で、ちょっと面白い変異個体(ケイブリス)も出た。でもやっぱり限界はあるよね、次はもうちょっと頑張ろうね…

って思ってたら次は頑張りすぎて逆にちょっと…ちゃんとしすぎてて…

『いつまでも平和に暮らしました』を実現とかされると、申し訳ないけど…飽きる。

本とかなら閉じて別のを開くとかできるからいいんだけどさぁ…それだけずーっと見せられるのはきついっていうか…

 

「どうしたんだ嬢ちゃん。部下が初めて作った作品が微妙だったけど文句は言いづらい時みたいな顔して」

「あ、ごめんごめん。なんでもな…いかな?」

パットンさんの怪訝な声で我に返る。

…あれ?あたし何を考えてたんだっけ?…まぁいいか。それより目の前のまるの群れの事だ。

「こいつらカウンターが厄介なんだよね。どうしよう…」

こいつら、近接攻撃に自動的に反撃する習性があるのだ。

電磁結界で一掃するにしても、悠長に呪文を唱えてると襲い掛かってくるだろうし…

お兄ちゃんが居ればランスアタックで一網打尽なんだけどね。

「あの、エール様。おらに任せて欲しいだす。」ロッキーさんがざっと前に出た。

「ロッキーさん?あ、もしかして…」

「はいだす、一緒に練習したアレを試してみたいと思うだ。」

「ああ、アレね…」うん、確かにいいかもしれない。

「アレってなんだ?」「まぁ見ててよ」「よーし、行くだす…」

ロッキーさんは濃い顔に決意を浮かべまる達に向き直る。深呼吸をして…顔つきが変わった!

 

「ロッキィィィ!トマホーク()ブゥゥゥメラン!」

 

神の谷を明るくするような、あるいは石の川を(ひい)でさせる(おとこ)のような、そんなシャウトと共に猛烈に回転する斧が放たれた!

「「「「ころっ!?ころりんーっ!!!!?」」」」すぱぱぱぱーん!ちゅどっどどどど…どかーん!

唸りをあげて飛ぶ斧にまるの群れは両断され…爆発する!

(ぱしいっ!「…やった!やっただす!出来ただすよ!」戻ってきた斧をキャッチして喜ぶロッキーさん!

「やったー!成功だ!」

前からこっそり二人で練習していた斧ブーメランの強化プラン…どうやらうまくいったようだ。

「…名前を口に出すと技の威力が上がる、って噂はあったが…実際にこうも強くなるもんなのか…?」

「パットンさんだってさっき口に出してたし、たまに『松岡ァ!』とか叫びながらキックしてるじゃん。お兄ちゃんも必殺技(ランスアタック)の時叫んでるし」

「いや、アレは必要なことで…あれ?トーマもやってたな…?ロレックスも…そういうもんなの…か…?あるいはヒューの奴が強さの割になんか地味なのも技名を叫ばないせい…?」

首をかしげてブツブツ言うパットンさん。皇子なら当然あのトーマの事も知ってるか。

「ところで、なんであいつら爆発したんだしょう?」「さあ…なんかのノリじゃない?」

どうでもいい事は置いといて、あたし達は先に進むことにしたのだった。

 

トラップ地帯を抜けて手に入れた鍵で扉を開け、少し先に進んだところで前方から声が聞こえてきた。

曲がり角からそーっと覗いてみると…

「キヨコ、足はどう?」

「うん、少しは楽に…痛っ…ゴメン…ちょっと歩けそうにない…」

「どうしようマジック…」

「…」

3人の生徒が通路の途中で足を止めていて、そのうちの一人…写真で見た覚えのあるデコ眼鏡の美少女が、床にへたり込む女生徒の前に立って、顔をしかめていたのだった。




サイダーちゃんの外見ですがメリムにちょっと似てる感じです。

ランス世界では戦士はみんな技名を叫んでいるので、技名を口に出すことに意味があると思われます。
ロッキーが強化斧ブーメランを投げ放つ時は声だけでなく顔も眉毛が太くなり宇宙電波に選ばれた感じの顔つきになってます。
電波系宇宙人に気に入られている男なのでそういうこともあるかと思います。

輝指と松岡キックはパットンがなぐりまくりたわぁシリーズで使ってた技ですね。
ゲームの都合上無駄に技が多いんですが、ほとんどは披露されません。
9でも必殺技はお尻ペンペンだし…
BLWLWやクアルレーンみたいに封印される技はランスシリーズではよくありますが、もっとモリモリ使って欲しいものです。
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