【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【チューリップ1号の材料を探せ】

マリアさんがチューリップ1号の強化のためにヒララ鉱石を欲しがっていて、
ゼスだとノクタン鉱山ってところで取れるらしい
考えることは多いけど、まずはザクザク掘ってパワーアップだ


30.エールちゃんはいろいろ考える

第三試験会場の出口でマジック王女たちとにこやかに別れた後、ランスお兄ちゃん達を探したが居なかった。

しかたなく帰り木を使ってアイスフレームのアジトに戻ってみると、ロッジの傍にグリーン隊のみんなが集まっていた。

「ただいまー。」声をかけると、シィルさんがこちらを振り向く。

「ああ、エールちゃん。おかえりなさい。大丈夫でしたか?」

「あたしは平気だったけど…みんなが追いついてこないもんだから、王女様は無事試験を突破しちゃったよ。」

「そうですか…そのメダルは?」「なんかもらっちゃった」

あたしは首にかかった100点と書かれたメダルを手に取った。あたし学校行ったことないからこういうの初めてなんだよね。ちょっとうれしい。

「それで、何があったの?途中で揉めてたみたいだけど」

「それがですねぇ…」

 

シィルさんが言う事には、マジック王女を発見したお兄ちゃんは早速追いかけようとしたのだが、カオルさんがキレてお兄ちゃんに襲い掛かったそうだ。

んで、暴れるカオルさんをどうにか取り押さえて…そのままアジトに引き返したお兄ちゃんは、地下室にカオルさんを連れ込んでおっぱじめ…いや、スパイ容疑で尋問をしているらしい。

…あたしを置いてとっとと帰ったんか…うーん…

「すみません…連絡を取るのも危ないし、試験迷宮だし平気だろってランス様が…」

あたしの顔色を察してシィルさんが謝ってくる。

「そうなんだ…まあいいけどね。カオルさんのこと、ウルザさん達には伝えたの?」

「ランス様が報告はしたみたいですが」「そっかぁ…」

「あっ…ああっ…くっ…あーっ!」

「がはははは!どうだどうだー!そろそろ吐く気になったかー!」

地下からは元気いっぱいの喘ぎ声…じゃない、尋問の音が響いてくる。

「うーん、盛大にやってるけど…」

こりゃせいぜいただのスーパー非道タイムであって拷問とか尋問とかそういうんじゃないなあ…。別にあたしも詳しいわけじゃないけどね。何回かやってみたことがあるだけで。

「…とりあえず疲れたし、あたし先に休むね。」

「あ、はい…お疲れ様、エールちゃん」

皆に見送られて一足先にロッジに帰る道すがら、あたしはぐるぐると考えを巡らせる。

 

「う~~~~~~~ん…」

状況を整理しよう。

カオルさんはたぶん、ウィチタさんと同様、ゼスのお偉方…それも良識派、と言っていいのかわかんないけど、例えばアリオスさんと一緒に正義活動してきたときのでかくて光ってるおっさんみたいな人達の部下なんだろう。

あの時、なんか和服っぽいシルエットを見た気もするけどアレがカオルさんだったとは限らないし。

んで、アイスフレームに潜り込んで悪徳貴族の粛清とか、人助けとかそんな感じの事をやる支援をしていた。

ゼス共同銀行とか、治安本部の時とかいろいろ怪しいことはあったしね。

そのへんの事は薄々わかっていたけど、お兄ちゃんをドルハンの毒から庇ったりしたあたり、利用していただけってわけでもなさそうかなぁ?

その上で、マジック王女の拉致とかをやり始めて堪忍袋の緒が切れたってところだろうか。

あるいはカオルさんの主人がマジック王女…って可能性も…?いや、違う気がする。

「ここまではまぁ大きな間違いはないかな…」

んで、報告を受けてもカオルさんの処遇について何も言わないってことは、ウルザさん達も把握してはいなかったっぽい。

カオルさんは訓練を受けてるだろうし、お兄ちゃんがいくらいじめても口を割ったりしないだろう。

それにお兄ちゃん、それなりに仲良くなった女の子相手だと残酷になれないんだよね。前になんとかってヘルマンの女士官を拷問したときはなんか結構派手にやってたらしいけど、あれは気を許してはなかったからできたことだと思う。

となると…尋問はお兄ちゃんが楽しいだけで意味はないわけで…逃がしてあげたほうがいいかなぁ?

「うむむむ…」

うーん…どーしたもんかなぁ…義理はないっちゃないけど、あるっちゃある…でも女の子の事だからお兄ちゃん怒るだろうなー…

まぁ、多分…最終的には許してくれる、とは思う。思うんだけどもね。おそらく…裏切った上で、開き直ったり挑発したりする言い分をすると…たぶんマズい。

むきになってへそを曲げると後で後悔するようなことでもやっちゃうところがある。

それにかなみさんもいる。あたしとも仲いいし、うっかりしてるところも多いけど、なんだかんだちゃんと忍者なんだよねあの人。しばらくは地下牢を警戒しているはずだし、正面からならともかく、不意打ちされたらあたしはおそらく取り押さえられる。

必要となったらなんでもやる覚悟はあるだろう。出来るかどうかは別だけどね。イラーピュでも無理だったし。

というか、カオルさんの主人にはこのアジトの場所も当然割れているわけで…このアジトが軍に襲われる可能性もあるかも?流石にそこまで短気じゃないと思うけど…

いろいろ考えても結論は出ない。お兄ちゃんもどうせ聞きゃしないだろうし…

「とりあえずしばらく様子見かなぁ…」

いずれにせよお兄ちゃんがしばらくは付きっ切りだろう。今は無理だ。

あたしは部屋に引っ込んで寝てしまうことにしたのだった。

 

それからしばらくは任務もなかったので、

あたし達は孤児院の畑で野菜を収穫したり(毒野菜も獲れたがお兄ちゃんがロッキーさんに無理やり食わせていた。気の毒なので拾った毒退くモンスターをあげた)、

リズナさんが志津香さんに補助魔法を習うというのであたしも勉強してみたり(リズナさんは身に付けられたがあたしには無理だった)、

適当なダンジョンに潜ってレベル上げと冒険功績集めをしたりした。

まぁ、カオルさんに無体しないように、みんなでお兄ちゃんを出来る限りあちこち連れ出したって面もあるけどね。

それでもお兄ちゃんがタマネギさんを連れて地下牢に行ったときははらはらしたけど…結局、タマネギさんが言う「ちゃんとした拷問」の内容を聞いてドン引きしてしまったらしく事なきを得た。

レベル上げと冒険功績集めの一環として、ノクタン鉱山ってところにヒララ鉱石を探しに行ったこともあった。

マリアさんの武器、チューリップ1号は銀色の筒からなんか爆発する弾を撃ち出す武器だが、魔力は使っておらずヒララ鉱石の反応をどうこうして弾を発射して爆発させているらしい。

一回、どういう仕組みなのか尋ねてみたこともあるのだが…ものすごい勢いの早口でしゃべりだして手が付けられなくなってしまった。

 

「えっエールちゃん興味があるのしょうがないわね教えてあげるわ遠慮しないでいいのよええとねどこから話そうかしらまずはヒララ鉱石に含まれるヒララ粒子はエネルギーをため込む性質があって特定の魔力や衝撃によってそれを解放させることができるのよその性質をより高めたのがこの砲身内に使われているヒララ合金でさらに吸収性能を高めていくことで装甲や武器として素晴らしい性質を示すヒララ合金DAを作り出すこともできるのヒララ合金DAの硬度はヒララ合金のおよそ2.24倍もあってこれだけの特異な性質を示す金属はめったになくてこれを装甲材に用いたチューリップ3号は主砲も合わせてまさにヒララ技術の集大成とも言うべきあっ話が逸れたわねともかくチューリップシリーズの基本原理はヒララ合金とその配列によってエネルギーに指向性を与えて弾体を加速させたりエンジンを動かしたりすることで…」

 

逃げ損ねて話を最後まで聞かされてしまった。

ヒララ合金はすごい合金でチューリップシリーズはすごいすごさがものすごくて、あたしはすごいなぁと思いました。あたしにはとてもできない。

 

ともかくそんなチューリップを改造するのに質のいいヒララ鉱石が要るということで、あたしたちはペトロ山のさらに奥にあるノクタン鉱山にやってきた。

ここはモンスターが湧いているとかで閉鎖されているらしく、今は鉱石掘り放題なのだ。

「チューチューチューリップー私のチューリップー♪どんどん強くなれー私のチューリップー♪」

「見事に浮かれとるな」「完全に浮かれてるね」

「あーもうマリア、そんなに前に出たら危ないわよ!」

「ご、ごめん志津香…気を付け…あっ」「ぼいーん」「ちゃそばー」

突き進むマリアさんを追いかけて坑道を進んでいくと、2m近くある黄色いモンスター数体が道を塞いでいた。

「む、ちゃそばじゃないか」

「沸いたモンスターってのはこれかー…」

ちゃそばというのは洞窟とか暗いところにいつの間にか湧いてくる丸々と太ったカエルに似た人型モンスターで、ちゃそばクイーンを中心に爆発的に増殖する。ちゃそばよけスプレーをかけてれば寄ってこないんだけど何しろ臭いので…使いたくない。

それでいて巨体から放たれる体当たりは結構な威力を持ち、タフさと腕力もかなりのものがある厄介なモンスターなのだが…

「死ねー!」「てやーっ!AL魔法剣!」ずばばーっ!「いくわよ!ファイヤーレーザー!」「スノーレーザー!」ずびびーっ

「「「あっ、死んだー」」」ずしーん

今更こんな相手に苦戦するようなあたし達ではなく、あっさりぶちのめして鉱山の奥まで降りて行き、目当てのヒララ鉱石を見つけ出したのだった。

 

「明日には改造が済むから!楽しみにしててね!うふふふふ…新型砲身なら使える弾の幅も増えるし、弾頭の製造効率も飛躍的に…散弾…いや、炸裂弾に、もっと引き金を軽くして援護射撃とかー…となると必要なのは…あれ、どこ行くの」

また高速でブツブツ言いだしたマリアさんから、あたし達はとっとと逃げだしたのだった。

 

そんな感じで過ごしていたある日。

「もうペンタゴンを放置してはいられません…私が行きます。彼らの本部に行って…直接交渉します」

会議室に集まったあたし達に、ウルザさんは言い放ったのだった。




捕虜になったカオルの扱いは正直難しいんですよね…
ランス視点だとカオルが逃げたら当然カオルの主人がゼス軍を連れてアジトを潰しに来るでしょうし。
実際にはガンジーはカオルが囚われていることを理解したうえで自らの大義のためにそれを放置しています。
カオルとしては見捨てられたも同然なんですが…ガンジーの望みのために死ぬならそれはそれでOKなんでしょう。
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