【笑うモヘカの再来】
アイスフレームはペンタゴンに協力することになり、ウルザさんたちは準備に追われている
けどグリーン隊に振られるのは人助けみたいな任務ばかり
今のうちに片付けちゃいたいのかな?あたしはまだちょっとお休みだ
お粥を食べた後、まだかったるかったので寝台でごろごろしていると、薄いドアがノックされた。
「どうぞー」
「やぁ、エールちゃん。目を覚まされたと聞いたので」
入ってきたのはアベルトさんだった。相変わらずのイケメンフェイスをこちらに向けて笑いかけてくる。
あたしも体を起こして応対した。
「ああ、アベルトさん。おかげさまで…」
「すごい魔法を使って、その反動で倒れたと聞きました。無理は禁物ですよ。女性は体を大事にしなくては」
「えへへ…いやぁ、ついノリで…」
「シィルさんも驚いていたそうですよ。高度な魔法をあんなに強引に使うなんて、とか…すごいですね。どこで身に付けられたんですか?」
尋ねつつベットの脇に腰掛けてくる。割と顔が近いな…まぁ眼福だしいいけども。
「…えーと、レッドの街で神官をしてるセルさんって人が…」
話し始めたところでどかどかと足音がして、ドアがノックなしで乱暴に開かれた。
「おう、エール。目を覚ましたのか」
「あ、お兄ちゃん。お帰りー…ってわぁ。どしたのそれ」
ドアを開けたランスお兄ちゃんはあちこち血まみれだった。ケガをしている様子はないけど…
「ああこれか。ちょっとイタリアの街で殺人鬼を退治したのだが、町が血まみれでな…お陰でみんな血まみれだ」
「そんなヤバい殺人鬼だったんだ…」
こんな時に殺人鬼とはいえ犯罪者一人捕まえるとかそんなことしてる場合ではないのではと思ったが、そんなことしてる場合であってたらしい。
「血まみれ天使、と呼ばれる連続殺人鬼ですね。確か治安本部で封印刑を受けていたはずですが…この前の騒ぎのどさくさでどうやってか脱走したようです」
アベルトさんが解説してくれた。そういえば治安本部でそんなこともあったような………
あー…………………………うん。あの時解放したやつか…どうしよ…
あたしはひそかに脳内エールちゃん会議を開催した。
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エールA『あたしたちのせいじゃなくない?あんなところ制圧されるゼス軍が悪いよ』
エールB『死刑にしてないのもちょっと…封印刑ということはいずれ解放されてたはずだし』
エールC『いや逃がしたのはいかんでしょ…しいて言うならお兄ちゃんのせいだけどさ』』
エールD『あの時仕留めそこなったのがね…』
エールE『でも、もっとヤバいことしてるテロリストともう協力関係になっちゃってるよ…?』
エールABCDE『『『『『…………』』』』』
エールA『見なかったことにしない?』
エールBCDE『『『『そうしよっか…』』』』
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そういうことになった。
今更どうしようもないし!退治したからよし!
…後でお祈りしとこ…
「ランス様ー…やっぱり着替えてからのほうが…皆さんに迷惑ですし、気持ち悪いですし…エールちゃんが心配なのはわかりますけど…(ぽかり)きゃん!」
「ええい、うるさい!」「うう…」
後ろから顔を出した同じように血まみれのシィルさんが頭をはたかれた。
「へー?ほー?ふーん?」着替えもせずに?知らせを聞いて一直線にここに。ふーん?
「なんだその目は…」
「いーえなんでもー♪」
「…ちっ、病み上がりだから勘弁してやる」
「あはは、相変わらず妹想いですね、ランスさん。」
舌打ちして顔をしかめるお兄ちゃんに追い打ちするのは、いつの間にか立ち上がって少し離れたところにいたアベルトさん。
「手がかかるだけだ…ってアベルト。貴様、こんなところで何しとったんだ」
「ええ、エールちゃんにお礼とお見舞いを。僕もフットとは元同僚ですので…」
そっか、元ペンタゴンなのは一緒だもんね。アベルトさんはにらみつけるお兄ちゃんの視線にも涼しい顔だ。
「なら用事は済んだろ、さっさと帰れ。忙しいんだろ」
「では、そうさせてもらいます。というわけでエールちゃん、これをどうぞ。では、失礼しますね」
「はーい。ありがとうございます」
荷物からうし乳の瓶を取り出して置き、さっさと出ていくアベルトさん。もう一本同じ瓶が荷物に入ってたのが見えたけど…ほかの誰かにあげるのかな?
「…ふん、アホらしくなった。おいシィル。とっとと帰って風呂入ってセックスするぞ」
「えっ?あ、はい…それじゃあ、エールちゃん。お大事に」
「うん、ばいばーい」
「いいからとっとと来い!」「きゃあ!?」
二人は来たときと同じく、どかどかと出ていったのだった。
=============☆☆好感度上昇☆☆==============
エール FR==19/20+5
エール FR==19/25
エール FR==19+1/25
エール FR==20/25
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次の日、グリーン隊はペトロ山のモヘカの館から夜な夜な響いてくる気味の悪い笑い声の調査任務に向かった。
あたしはまだ本調子じゃないのでお休みだ。
することもないのでおとなしく寝ていると、なんだか妙な夢を見た。
もわんもわんもわん(夢を見る音)
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ここは神界のどこかにある神魔法役所のヒーリング部。
ヒーリングを担当する下っ端神…天使たちがひーこら業務に勤しんでいる。
隅の机で、一人の下っ端天使が凄いスピードで山のような光る書類にハンコを押しまくっていた。
「うおおおおおおお!(ぺたたたたたた)…よし!リーザス方面のヒーリング1、400件の決済終わり!」
「はーい追加ねー!ヘルマンで500件!」どさーっ!
「うぎゃーっ!無理ー!」
「泣き言言ってないでハンコを押しなさい!」
怒鳴りつけるのは隣に座るちょっと偉そうな天使だ。
「ひ~すこしはこっち手伝ってくださいよ~!」
「こっちはヒーリング2や3の対応をしてるの!いい加減でOKな1と違ってちゃんと審査が必要なのよ!」
「うう~…ちくしょー…ん?これは…あの、これって…」
「む?これは…おお、ヒーリング5の申請じゃない。久々ね…これは司教クラスの魔法だから、5級神以上の決済がいるわ」
下っ端が手に取った書類を見せると
「へー。初めて見ました。5級神っていうと…」
「あっちにいる天使がそうよ。…ん?これ…」「どうかしましたか?」
「…まぁいいわ。とりあえず見せに行きましょ」
少し離れた席に向かう二柱。
「ヒーリング5の申請ですー。確認お願いしますー」
眼鏡をかけたさらに立派な天使が振り向き、書類を手に取った。
「ん~?久々だねぇ。お、個人での申請…えーと、魔力量ヨシ、才能も問題なし…聖句は…ん?」
『神よ!いいから慈悲を…寄こしたまえ!!!!!』
「ダメに決まってんでしょ!」
すぱーん!と机に紙を叩きつける
「あー。やっぱだめですか…」
「そりゃそうよ!何考えてんの!こんな聖句で発動させたらヒーリング部の沽券にかかわるわ!術者に天罰でも落としてやろうか…ん?」
その時、机の上の書類に手が伸びて、誰かのハンコが勝手に押された。
「こら!勝手に何してん…の…?」
「えっ?女神AL…!?」
「これで問題ないでしょ?とっとと発動させなさい」
突然現れたさらにさらに立派な一目で格が違うと判る…天使?のような存在は、にこりともせずに冷たい声で告げた。
「は…いえ…でも…」
「…何か言いたいことでも?」
「はいっ!なんでもありません!すぐに執行します!」
「…」
「…なんだったんですかね?」
「さぁ…とりあえず…仕事しましょうか」
「そっすね」
二人の下っ端は仕事に戻ったのだった。
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もわんもわんもわん(夢終わりの音)
まぁ、起きたら忘れてしまったわけだが。どこの世界も下っ端はつらいんだなあ、と思ったことは覚えている。
ふぁぁ…良く寝た。けど微妙にだるさが取れないなぁ…
あくびをしつつ水を飲みに行くと、台所でキムチさんに出くわした。
「あらエール。おはよ。まだ調子悪そうね」
「ええ、だいぶ元気にはなったんですけど…」
「…うん、よし。フットの礼もあるしね。今晩はとっておきを作ってあげるわ」
「え?とっておきってまさか…」
「そう、キムチと名のつく人しか作れない伝説の食材、キムチを使った鍋…キムチ鍋よ!」
「やったー!」
キムチ鍋はカラウマでぽかぽかでみんな大好きなのだが、キムチの仕込みには結構時間がかかるのでめったに食べられないのだ。確率で言うと15%くらい。
「それじゃあ準備するから待っててちょうだい」
「良かったら手伝いましょうか?」
「………うん、大丈夫よ。外でみんなの様子を見ててくれる?」
「はーい」
一瞬微妙な顔をしたキムチさんに見送られて庭に出て、子供の相手をしているとどやどやとグリーン隊のみんなが帰ってきた。
「おかえりー…って、どしたの」
「それが…変な女がいてだな…へ、へ…へーっくしょん!ぶるぶる…」
お兄ちゃんの顔色は青くて鼻水が出ていてぶるぶる震えている。どう見ても風邪気味だ。
「ランス様…ほら、ちーんしてください。ちーん」「うう…」ずびーっ
シィルさんから受け取ったティッシュで鼻をかむお兄ちゃん。
「何があったんです?」「それがねぇ…」
他のみんなに聞いたところによると、ペトロ山の頂上まで登ってみたら、モンスターみたいな女の子がウケケケケケケケと奇声をあげていたんだとか。
わけわからんことぬかして危ないので、ともかく退治しようとしたら結構強く、氷結パンチだの氷雪吹雪だのを繰り出してきて、どうにか倒して追い払ったのだが、女と見てズボンを脱いでフルチンで戦ったお兄ちゃんは寒さにやられて風邪をひいてしまったらしい。
「うう…寒気がする…」
「しっかりしてください、ランス様…」
まーそりゃーお兄ちゃんだからしょうがないとはいえ、氷雪系の敵相手に服を脱いだらいかんでしょ…
いつかハイパー兵器がカチンコチンチンにされてしまうかもしれない。
「じゃあちょうどいい時に帰って来たね。今晩はキムチ鍋だってさ。食べて暖まれば治るんじゃない?」
「そうなんですか?ランス様、キムチ鍋だそうです」
「おお…キムチ鍋…食べたい…ほかほか…カラウマ…」
「あのー、あたし達も食べていい?」「噂に聞いてちょっと興味が…」「かろも食べたーい」
お兄ちゃんも食べれそうだし、ほかのみんなも興味があるみたいだ。
「皆さーん キムチ鍋できましたよー」
台所からカーマちゃんの声がする。
「あ、準備できたみたい。それじゃあみんなで食べようか」
あたし達はどやどやと食堂に向かい、カラウマでぽかぽかなキムチ鍋をたっぷり食べた。
「おかわりはまだまだあるからね!どんどん食べて!」
「…辛い…けどおいしい…どうなってるのかしら…」
「汗がすごい…眼鏡がー…でもダイエットにもいいかも…」
「ひーひー…これ、止まんない…」
キムチ鍋はやはり好評だ。
「はひはひ…からから…むむむ!きたー!俺様復活!」
「じるじる…うまうま…よーし!あたしもついでに復活!」
そしてお兄ちゃんとあたしも元気を取り戻したのだった。
アベルトが持ってたもう一方の瓶にはいろいろ入ってましたが、ランス君が早めに帰ってきたので事なきを得ました。
エールちゃんが夢で見たのはあくまでイメージです。実際の神界がこんな感じというわけではありません。
似たようなことはあったかもしれませんが。
神魔法の発動をする部署を役所に例えるなら、魔法を発動する部署は人類管理局の管轄ですが、人間の申請(祈り)に応えて神魔法を使う資格を付与する仕事は魂管理局の管轄です。
もし仮に魂管理局の業務が滞った場合、誰も神魔法を新しく覚えることはできなくなるが、すでに覚えてる人は使えるという感じになります。
魂管理局と同等もしくは上の権限がある存在が許可したら覚えられるでしょうが…そんな存在はそうそういませんからね。事実上無理でしょう。
以下、妄想です。
血まみれ天使(サマール・ハッピネス)
Lv25/25
殺人Lv1
GI1011年にナタデココ病院で看護婦になりすまし、255人を一晩で殺害した伝説の殺人鬼。正体不明。
ランスがうっかり解放したせいでイタリア二級市民街で187件の殺人事件、死者300人以上と治安隊員の殉職3名という米花町の住民もびっくりの大惨事を引き起こした。
振り回されるメスはレベルと技能からかけ離れた異様に高い殺傷力を持ち、人特性を持たない等まさしく怪人。
見た目が可愛いのでランスがすぐには殺そうとしないのも厄介。
封印刑にされていたのは、ゼスでは重犯罪人は絶対服従魔法で支配して奴隷兵士として戦わせる制度があるため。
ランス10二部で東ヘルマン編が没になる前は東ヘルマンの武将として登場する案があったらしい。残念である。
R10カード
殺人鬼 血まみれ天使
AP6500
HP1200
殺人 AP2 1.5倍撃 対人間効果大
勝手に殺人 自動発動(50%) 2倍撃&自爆