【王女アノキアの亡霊を退治】
ペンタゴンの【祖国の解放】計画というネーミングセンスのない作戦に参加することになった
なんでもゼスの重要機密を聞き出すために長官四天王クラスの要人を誘拐するらしい
作戦チームが準備してる間ヒマなので、あたし達はてきとーな任務をやろう
安眠街道村で亡霊退治だ
「ここがアップル墓地?」
「うむ、あいかわらずじめじめして暗くて嫌なところだ」
あたし達は安眠街道村にあるアップル墓地という巨大な霊園にやって来ていた。
安眠街道村はその名の通り街道沿いにある農村で、近くにあるアップル墓地を管理している。
墓地の歴史は古く、なんでもゼス建国の前…GI700年ごろから使われているそうな。
すごい数の死体が保管されているんだからそりゃ陰気にもなるよね。さっき会った村長さんも村人もみんなどことなく陰気だった。元気そうなのは墓守のカップルくらいだ。
「えーと、お兄ちゃん達は前にモンスター退治できたことあるんだよね」
「あー。アバター様とかいう偉そうなのをぶち殺したな」
火炎流石弾を使う結構な高レベルモンスターだったらしいけど、良く勝てたなぁ。
「ええと、今回の任務を確認しますね…」
シィルさんが任務表を取り出して開いたのをみんなでのぞき込んだ。
アップル墓地の第二区画の奥には玄室があり、そこにはアノキアという魔女が封印されている。
アノキアはかつてゼスに併合されたモエモエ国という国の王女で、なんでも10万人の人を殺害したのだとか。
んで、この間の地震で封印が弱まったのか、第二区画の周辺でアノキアと名乗る女の声が聞こえるようになり、村のみんなが怖がっているらしい。
封印の状況を調査して再封印するなりぶちのめすなりしてほしい、というのが今回の任務だ。
歴史で数字を盛るのはよくある事らしいけど…10万って盛りすぎじゃあないかなぁ?
血まみれ天使でもせいぜい500…って500ってせいぜいってレベルじゃないけどね。
「さーて、アノキアちゃんの面でも拝みに行くか。美人だといいが」
「ランス様、相手は魔女ですよ…?」
「しかも体のない幽霊…」
「何事も最初からあきらめてはいかんのだ。行くぞ」
あたし達はアップル墓地の第二区画に足を踏み入れると、問題の声はすぐに聞こえてきた。
『………おねがい………私の名は、アノキア………おねがい………たすけて………』
うーん、女の子がすすり泣きながら漏らしているような声が延々と聞こえてくる…
「ひーっ!怖いだす…ポマードポマード…」「お前、うるさい」げしっ「どわーっ!」
「さて、どれどれ…」
ロッキーさんを蹴り転がしてお兄ちゃんは耳を澄ませた。
「確かにこんな声が毎日聞こえてきたらたまんないわね」
「ふむふむ…声からするとなかなか期待できそうだ。進むぞ」
階段を下りて地下の埋葬室へ。アノキアの玄室は一番奥だ。地下の黴臭くて冷たく湿った空気を吸い込みながら先に進んでいく。
こういう地下墓地はゾンビがつきものではあるが、ここの死体はちゃんと処理されているらしく、ゾンビが自然発生したりはしていないようだ。リーザスのゾンビだらけなマーガリン墓地も見習ってほしいもんだね。
とはいえ、こういう辛気臭いところにはどうしても湧いてしまうものはあるわけで。
「温かい体…ほしい…」「でーい!雷の矢!」「…」
呪ってくるアンデッドの女の子モンスター、スモッグシルフに魔法をぶち込んで散らす。
身体が霧で出来ているので物理攻撃は効果は薄いのだが…
「だーりゃーーーー!」「きゃー」
そんなことはお構いなしにお兄ちゃんは力任せに剣を振るってスモッグシルフをやっつけていた。
「ほう、やるもんだな隊長。俺はあの手のは苦手でなぁ…」
「がはははは、悪霊など気合で追い散らしてくれるわ。苦手な相手などおらん」
「なるほど、その心構えだけは立派だな」「だけってなんだ…おっ」
突然行く手の通路の床から紫色の煙が噴き出した。
「なんだ?」
「マジックガードだわ。銀行で出てきたやつ」
あー。あの風を起こす魔法生物か。
煙が渦巻いて姿を現したマジックガード、拠点精霊は変に響く声でこちらに告げる。
「立ち去れ、この先はゼス王国に反抗したモエモエ国の罪人を永久に閉じ込めるための場所だ。」
「魔法生物を封印のキーと護衛に使ってるのね…流石ゼスだわ」
志津香さんが感心したように言った。
「王女アノキアは特に危険だ…あの鬼女を再び世に放つわけにはいかん。立ち去れ」
「鬼女…?アノキアちゃんがか?」
もうちゃんづけしとる…お兄ちゃんの脳内では美女確定しているらしい。
「そうだ、恐ろしい女なのだ。立ち去れ」
「いや、お前の方が悪党ぽい。倒す」
「仕方あるまい…たつま…」「死ねー!」ざくーっ「ぐわっ…」
お兄ちゃんはあっさりマジックガードをぶち殺してしまった。
あーあ…まぁ今更ではあるんだけど。いつものことなので頭を抱える気にならない。
「ふん、馬鹿が。先に進むぞ…ん?」
通路の先に、何かドレスをまとった女の子がいる…まさか…
「美女発見!げーっと!」すかーっ「おろろ?」
飛び掛かったお兄ちゃんの腕はすかーっと通り抜けた。なんか半透明だし…
『すみません、私の身体はこの先に封印されています…私はモエモエ国の王女アノキア…ゼスに滅ぼされた、小さな国の王女です…』
「やっぱり…」
『私は、ゼスを許しません…騎士様…どうかわたしを助けてください…マジックガードを倒し、封印を解いてください…自由になった暁には、望む褒美をなんなりとお渡しします…』
「おお、なんなりとと出たか」
『お願いします…』
アノキアの霊は掻き消えた。ぶっちゃけた話、結構かわいかった。なので…
「ぐふふふふ…美人だったな。実に美人だ。可愛そうだし、助けるに決定だ」
まぁ当然こうなるわけで…やっぱどう考えても怪しいよね。
「お兄ちゃん…やめといたほうがいいんじゃない?幽霊のいう事だよ?」
「怪しいわよ、怪しすぎ。マジックガードも言ってたでしょ。鬼女って」
「綺麗なバラにはトゲがあるってパターンじゃないのか?」
「ゼスを許さないとも言ってましたよ」
「ランス様、私もあまり…」
あたし達は口々に思いとどまらせようとするが…
「ふん、お前らは女を見る目がないな。あれは優しい子だ。俺様にはわかるのだ」
まぁ聞くわきゃないのである。この間も大変なことになったばっかなのに…
あたし達は仕方なく奥に進んでいった。
「10万の市民を殺した鬼女アノキア。決して封印を解いてはならぬ…」
「アノキアちゃんはそんなことをする奴ではないわー!」
「アノキアは消えぬ魂を持つ復讐鬼…決して地上に出してはならぬ…」
「なんかアノキアちゃん偉い誤解をされとるな。まぁいい、死ねー!」
「ゼスに逆らう鬼女、災いをもたらす女アノキア。助けてはならぬ…」
「鬼女に心を惑わされしものよ、今すぐ立ち去るのだ…」
「俺様の直感がアノキアちゃんはよい子だと言っている、間違いはない!」
マジックガードを倒すたびに、アノキアは現れて、
『騎士ランス、素晴らしい活躍です…私をぜひ助けてください…』だの
『もう少しで復活できます…そうしたらお礼を…』だのと声をかけて来ていたが、
『ふふふふふふ…自由になったわ。ありがとう、ランスさん…お礼を言います…ふふふふふ…』
最後のマジックガードを倒すと笑い声を残して消えてしまった。
「おい、それだけか?」
『祭壇でお待ちしています…』
埋葬室に声だけが響いた。うん、これは…
「うう…ポマードポマードポマード…」
「やっぱまずいんじゃないかコレ」
「あーあ、こんなことだと思った」
「今からでも引き返しませんか?ランス様…」
「お兄ちゃん、あたし簡単な結界なら…」
「俺様はアノキアちゃんを信じる、祭壇に行くぞ。」
当然ながら聞きゃしねぇのである。でも一人で行かせてなんか本格的に操られたりしても困るしなぁ…
この辺りになるとだいぶ深いので、辛気臭さもひとしおだ。スモッグシルフよりもだいぶ面倒なコンテなんかも湧いていて、流石に気合でどうにかはならないが、魔法をぶち込んで蹴散らす。
「あっ、石板がありますね。祭壇はここを右だそうです」
「ほかにもなんか書いてあるな…なになに…『すべての魂はルドラサウムに還り、再びこの世に帰ってくる』…?なんだこりゃ」
「ルドラサウム…聞いたことありませんね…エールちゃんは知ってます?」
「まったく記憶にございません」
「なんか政治家みたいなこと言ってるな」
覚えがないもんはないんだから仕方ないの。ないっつってんでしょうが。ないんだからね!
そんなどうでもいい事は置いといて、右に進んで祭壇らしき場所にたどり着いたがアノキアの姿はない。
「何もないな…お?この墓は…」
「アノキアって書いてあるわね」
「よし、この向こうにアノキアちゃんが居るんだな。ぬぐぐぐ…」
お兄ちゃんは蓋を持ち上げようとしたが動かない。
「重いな…おい、皇子手伝え」
「お、俺か…?やれやれ、人の墓をあばくなんてぞっとしないぜ…」
ぎぃぃぃ。と二人がかりで墓の蓋は持ち上がった。その先には、バラバラになった人骨があった。
「ああ、ぼろぼろだよ」
風化しかけたドレスを身に纏っているが、この目玉の模様は彼女が着ていたものと同じだ。ってことは…
『やっぱり、もう無理だったのですね』「おわっ」
背後にいつの間にかアノキアの霊が現れていた。
『私の体は風化してしまった…せっかく封印がとけても体がなくては…』
「ほら、やっぱり世の中に復讐したいのよ、この悪霊は!」
志津香さんが手に魔力を籠め始める。
『ランスさんにお礼ができない…』
「「「へ?」」」
お兄ちゃん以外の一同は声を漏らして口を開けた。
『ありがとう、ランスさん。私、やっと自由になれました』
『みんなが私の事を疑っていたけど、ランスさんだけは信じてくれた…嬉しかったです…』
「よかったな。これからどうするんだ」
『もう少ししたら、成仏します…お礼ができなくて、すみません…私、もう何の力もなくて…』
「そうか、しかたないな。気にしないでいいぞ」
『…ありがとう…ランスさん…』
アノキアの姿はふっと消えてしまった。
「ほら、俺の言ったとおりだったろう。いい子だ。無事に成仏して欲しいものだ」
「はい、ランス様…」
「…悪いこと言っちゃったわね…」
「うん…てっきり貴様らの身体をよこせー!とかいうパターンかと思った…」
志津香さんと共に少しへこむあたし。
…うん、成仏する前にせめて、ちょっといいことがあるようにお祈りしておこう…
アジトに戻って解散して、晩御飯前にぶらぶらと歩いているとアベルトさんに出くわした。
「あ、アベルトさん」
「やぁ、エールちゃん。任務お疲れ様です」
「ブルー隊も今忙しそうですよね。要人誘拐をするとか」
「はい、いろいろと工作や情報収集を進めてます。おそらく目標はラドン長官になるのではないかと」
ラドンと言えばお兄ちゃんを奴隷観察場にぶち込んだという教育長官だ。お兄ちゃんは喜びそうだ…
話しながら歩いていると、いつの間にか人気がないあたりに差し掛かっていた。
「あれ、こんなところまで来ちゃった。そろそろ戻らないと…っ?」
振り向いたあたしの手がそっと握られた。そのまま体を引かれ、近くの樹の幹に押し付けられる。
見えてはいたが反応できなかった…えっ?これって…
「エールちゃん…少し話が…」
混乱するあたしにアベルトさんが顔を寄せてきた。ううっ相変わらず顔がいい…つかこれそういう事だよね?
いや、あたしにはアリオスさんが…いやでも別に付き合ってるわけでも…アベルトさんが嫌いなわけじゃないんだけど…!
暴れれば振り払えそうだがそういう感じじゃないし…えーとえーとどうすれば…
焦るあたしの目にアベルトさんの剣の柄が飛び込んできた。この目玉の模様、どっかで…あ!
「あ、あの!その剣!」あたしはアベルトさんを一瞬抑えて剣を指さした。
「…この剣ですか?いえ、昔から持ってるものですが…これが何か?」
「そうですか、なんか今日の任務で見たモエモエ国の王女様のドレスの模様に似てるなぁって思ったもので」
「モエモエ国…?」
「はい、200年くらい前にゼスに滅ぼされた国だそうですけど…?」
どっかで拾ったんですか、と聞こうとしたが口から出なかった。アベルトさんがやたら真剣な顔をしていたからだ。
「あの、アベルトさん…?」
「すみません、少し調べ物をする必要が出てきましたので。失礼しますね」
アベルトさんは踵を返してさっさと行ってしまった。なんだったんだろう?
その夜、ランスの部屋に現れたアノキアの幽霊はなんでか不明ですがランスが触れたので
早速いじくりまわして美味しくいただいたそうです。
総合評価が2000を越えました。ありがとうございます。
ひとつの目安にしていた数字なので、達成できて嬉しいです。
これからも頑張ります。
以下、妄想です。
アノキア・モエモエ・スリン
Lv1/46 (生前Lv39/46)
呪術Lv1
GI807年、ゼス王国に滅ぼされたモエモエ国の王女。
モエモエ国の王族は代々呪術の使い手で、アノキアは当時国一の呪術師であり、ゼス建国王パセリとも仲が良かった。
パセリ失踪後の国内混乱の果てに裏切って侵略してきたゼスに対してアノキアは容赦なく呪術で反撃し、10万人とはいかないが結構殺している。
部下の騎士隊長と付き合っていたが結ばれる前に戦争が起きてしまい、彼に国宝である宝剣モエモエソードを託した。
結局モエモエ国は敗北し、騎士隊長は行方不明、アノキアも捕縛されたが殺されても魂だけで呪いをかけてくることが予想されたため、アップル墓地へ封印されることとなった。
最初は恨みはらさで置くべきかと思っていたが200年も封印されているとだいぶどうでもよくなってしまい、
もう復讐とかいいからさっさと成仏したいなぁと思っていたところにランスが来たのでいい感じに乗せて封印を解いてもらった。
清らかなお姫様っぽい態度には結構演技が入っていたが、ランスへの感謝の気持ちは本物。