【祖国の開放計画 フェイズ1】
ペンタゴンの【祖国の解放】計画というネーミングセンスのない作戦に参加することになった
なんでもゼスの重要機密を聞き出すために長官四天王クラスの要人を誘拐するらしい
あたし達はのターゲットはラドン長官、琥珀の城に侵入するために沼地を突破するのだ
ある程度情報が集まった、ということで会議室にみんなが呼び集められた。
ウルザさんダニエルさんアベルトさんサーナキアさんにあたしたち三人はいつものメンバーだけど、今日はペンタゴンのネルソンとエリザベスも一緒だ。
椅子に自然体で腰かけたネルソンとそばに控えたエリザベスをみんな少し遠巻きに見ているが、二人とも気にする様子はない…
「…いくつかの情報ルートで、マナバッテリーについて調べました…」
ウルザさんが切り出した。
なんでもマナバッテリーの所在については最高機密で、かなりの高官であっても全く知らないか、存在は知っているが場所は知らない、という感じらしい。
これまでペンタゴンがさんざん聞き出そうとしてもわからなかったのも当然みたいだ。
「ふむ…となると、確実に知っている人物を狙うべきだな。」
ネルソンが髭を捻りつつ口を開く。
「確実に知っている、となるとゼス王ガンジーですが…彼の所在を知るものはほとんどいません」
「放浪王、などと呼ばれているだけのことはあるな」
なんとなーくカオルさんなら連絡の取り方を知ってる気がするが…まぁいいか。どうせ言わないし。
お兄ちゃんは時折カオルさんの地下牢に行っておっぱじめ、その後シィルさんが下りて行って世話をしてるみたいだ。ならまぁ命に別状はないのだろう。
考え事をしている間にも話は続いている。
「そしてガンジー王の個人戦闘力が極めて高いことも問題です…襲撃しても返り討ちに遭いかねません」
「数年前にあった魔物との小競り合いではすさまじい活躍を見せていたからな…あれで軍ではガンジー王人気が不動のものとなった」
「ふん、俺様ならそんな奴軽ーく捻ってくれるわ」
「ランス様…捻っちゃダメなんですよ、捕まえないと…」
「ちっ、そうだったな」
口を挟んだランスお兄ちゃんが引きさがったのを確認して、ウルザさんが続ける。
「次に、執務長官のグラダブス、そして四天王の山田千鶴子。二人も知っていると思われますが…いずれも王宮の奥で業務に当たっているため拉致は難しいかと。誘い出す作戦も…失敗していますし」
「…」
ウルザさんが言葉の途中でちらりとにらむが素知らぬ顔で流すネルソン。
「…家柄、在任期間、業務内容、人間関係、そして居場所などを考慮すると…残る対象は3名。軍務長官ナジリ、教育長官ラドン、マジノライン長官フクナム。彼らが狙うべきターゲットということになります…」
「成程、奴らなら聞き出せるかもしれん。流石はウルザ、情報収集の腕は落ちておらぬな」
「無理におべっかを使わなくて結構よ、ネルソン…」
「ウルザ、提督に向かって貴様…」
「…よせ。エリザベス。…そういうつもりはないのだがね…」
険悪になりかけた場を収めたネルソンが軽く咳払いして続ける。
「ナジリは王都郊外の軍指令所、ラドンは南部琥珀の城、フクナムはマジノライン指揮所に居るはずだ。アイスフレームのブルー隊、シルバー隊、グリーン隊は手分けをして3人を調べてもらいたいのだが」
「しかしどいつも男か、詰まらんな…ん?ラドン…ラドン…あー!あの野郎か!」
がたっと立ち上がるお兄ちゃん。
「ああ、ランスさんはラドンに奴隷観察場に入れられたんでしたね…」
「うむ、あのプルプル唇は忘れん。俺様がぶっ殺してきてやる」
「お兄ちゃん、殺しちゃダメだよ…」
「あーそうだったな…」
「では、グリーン隊はラドン長官を。ブルー隊はフクナム長官、シルバー隊はナジリ長官を調査してください。資料はこちらに…」
「あ、すみません。ナジリ長官に関してはちょっと僕に当てがありまして…僕に任せてくれませんか?」
アベルトさんが口を挟んだ。」
「いいですが…構いませんか?サーナキアさん」
「分かった。では僕がフクナム長官を担当しよう」
「うむ…頼みますぞアイスフレームの皆さん。共に…ゼスの未来の為に!」
「…っ…」
ネルソンの宣言に、ウルザさんはびくりと身をすくめたのだった。
会議が終了した後、あたし達はもらった資料を眺めながらグリーン隊のロッジに戻っていた。
「琥珀の城って前行ったけど結構大きい城だったよね?しかも雷軍の本拠地…どうやって忍び込むのかな」
「裏の湿地帯は無人だそうですのでそこから…モンスターが出ますし、道もないみたいですが、どうにか突っ切るしかない、と…」
「うへー、湿地帯かぁ…湿っぽいの嫌いなんだよね。」
「替えの靴下を用意しましょうか…あれ?ランス様は?」
見ればお兄ちゃんは足を止めてアベルトさんと話していた。
「何話してんだろ…わっ」
にこにこ笑いながらしゃべるアベルトさんにお兄ちゃんが急に剣を抜き打ちして、アベルトさんはそれをとっさに躱した。
けっこう本気だったな今の…あたしじゃ避けらんなかったかもしれない。
しかし二人はそのまま険悪にもならず、お兄ちゃんも剣を収めて話を続け、何事もなかったように離れた。
アベルトさんはあたしに気が付くと軽く笑顔で手を振って、そのまま向こうに行ってしまう。
「ランス様…どうされたんですか?急に切りつけたりして」
「ふん、奴がくだらん事を言っただけだ」
「そういえばなんか当てがあるとか言ってたよね。なんだったんだろ?」
「さぁな。なんか資料室の禁書庫がどうのとか言っていたが…どうでもいい。行くぞ」
鼻を鳴らして歩き出すお兄ちゃんの顔は別に不機嫌ではなさそうだ。やっぱなんか気が合うのかもしれないな。
「失礼、ランス殿はおられるかな?」
出発まで少し時間があったのでロッジの前で軽く体を動かしていると、ネルソンとペンタゴン兵士数名がやってきた。
「え?お兄ちゃんですか?今は部屋にいると思いますけど…」
「…ほう?ランス殿の妹御ですか。…同志フットを救ってくださったと聞いています。礼を言わせていただきたい」
「えっ、いやあの…」
恭しく一礼するネルソン。元はと言えばうちの兄がぶった切ったわけだからそこまでされなくても…ていうかいいのか?あたし魔法使ったけど…
「あたしは、神魔法でフットさんを治したわけですけど…ペンタゴン的にはそれっていいんですか?」
「ん?ああ、そういう事ですか。我々は確かに反魔法使いを掲げておりますが…神に仕えて傷を癒す神官を憎むほど盲目ではありませぬよ。」
「へぇー。」まぁ、思ったより冷静ではある。
「そう、神官は傷つき倒れた戦士の傍らで祈り、救いと癒しを与える存在…他人の後ろに隠れて魔法で遠くから攻撃する卑怯者とは違う…そう思っております。自由都市やカイズに戻られましたら、我々はそう考えていることを皆様に伝えて頂けるとありがたいですな」
ひげを捻って笑うネルソン。一応戦後?の事を見据えているという事ではあるのかな。なんか調子に乗ってる感じはするけども、まぁいいか…
「…えーと、わかりました。お兄ちゃんに用事ですよね?呼んできます」
あたしはネルソンたちを任せてお兄ちゃんの部屋に向かった。
「お兄ちゃん、ネルソンが会いたいって」
「女はいたか?」
「男だけだよ」
「会わん。帰れ」
「だそうです」
にべもなかった。エリザベスやポンパドールが居れば多少は可能性もあったのかもしれないけどね。
「ふーむ…まぁ仕方がありますまい。アレを」
「はっ」
ペンタゴン兵士が重そうな袋をどすんと置いた。じゃらりと漏れた中身は…うわ、ゴールドじゃん。結構あるな…5万Gくらい?
「どうしたんですかコレ?」
「我々の資金の一部です。祖国の活動作戦の成否は、グリーン隊の皆さんの活躍にかかっております。これで装備を整え、ぜひとも作戦を成功させていただきたい」
「い、いやこんなにもらえないですよ…」
「では、ランス殿によろしくお伝えください。では」「あっ…」
呼び止めようとするあたしを尻目に、ネルソンたちはざっざっざと帰ってしまった。
「どうしようこれ…」
「なんか金の音がしたな…お、どうしたんだこれは」
ロッジから出てきたお兄ちゃんが目を丸くした。
「ネルソンが押し付けていったんだよ。活躍期待してますって…」
「ふん、まぁいい。貰っておくか。そうだな、ブルーペットが来てたろ。隊の連中の装備更新でもしよう」
「良いのかなぁ…」出所がわからないのは怖いけど…まぁお金はお金か。
あたしも気にしないことにしたのだった。
================装備更新================
ランス(とバーナード)を除く部隊全員の装備がCランク(数打ちの品)からBランク(店売りの高級品)に更新されました!
ランスの装備がAランク(めったに出回らない業物)に更新されました!
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琥珀の城は人口10万の都市、琥珀の郊外に位置する巨大な城だ。
大きさもそうだが、豪華さにおいても王宮に肩を並べるほどで、ここの主であるラドンの財力がよくわかる。
そんな琥珀の城は伝統的に雷軍の駐屯地であるだけに当然警備が厳しくとても入り込めないのだが…
城の裏手はテテの沼地という広大な湿地帯になっていて、モンスターが徘徊しているらしい。少し前にはオイウェートとかいうボス級モンスターも出没していたとか。
この沼地側は警備が手薄で、モンスター避けの設備くらいしかないそうだ。
まぁ、沼地は軍が突破するには厳しいからね。そこをあたしたちが少数精鋭で突破して侵入しよう、というのが今回の作戦な…のだが。
「めっちゃ歩きにくいね」ばっしゃばっしゃ
「うむ、地面がふわふわして頼りないなあ」ばっしゃばっしゃ
「きゃっ…」「おっと」足を滑らせたシィルさんの手をお兄ちゃんが掴んだ。
「あ、ありがとうございますランス様…」「おーっと手が滑った!」「わっ…きゃあ!」ばしゃーん
「ううー…びしょびしょです…」「わはははは、ぬれぬれのすけすけだ」「何やってんだか…」
そんないつものやり取りをしつつばっしゃばっしゃと進んでいく。
湿地帯の地面は不安定なのか、通れたところもいつの間にか通れなくなっていたり、その逆もあったりと大変面倒だ。
地図もないのでとにかく手探りで進んでいくしかない。
スク水女の子モンスターのちゃぷちゃぷや、回復してくるズかっぱなどを蹴散らして進んでいると前方に琥珀の城が見えてきた。
「うひゃー…話には聞いてたけど」
「おっきい城だねぇ」
「ちっ、侵入したらついでに何かパクってやる」
ブツブツ言いながら近づいていくと城と沼地の間にある大きな谷と、そこにかかった橋が見えた。
「うわーなにこれ…深いね…」
沼の水がザーザー音を立てて流れ込んでいく。底はだいぶ深そう…なるほどね、こんなのがあったら警備も手薄になるか。
「監視もなさそうだな。渡るか…」そう言ってお兄ちゃんが橋に一歩足を踏み入れた瞬間。
バリバリバリーッと近くにあった塔から電撃が放たれた!
「ぬおおおっ!」
「わっ…」「ランス様!」
バシーッと弾き飛ばされ、谷に落ちかけたお兄ちゃんをシィルさんと二人でつかんで止める。
「ふー、びっくりした…なんだありゃ」
「アレは電撃塔ね…近づいたものに無差別で電撃をぶつけるの。」
「むむむ、厄介な…ここからどうにかできんか?」
「魔法は効きにくいし…チューリップでどんどん撃てばいつかは壊れるだろうけど、そんなの絶対見つかっちゃうわよ」
「ちっ、仕方ない。ほかのルートを探そう」
あたし達はまた沼地に戻っていった。
しばらくうろついて、降りた状態の手動式橋を見つけた。電撃塔もないし、向こう岸のハンドルで橋を架けられるらしい。
かなみさんが決死のジャンプで向こう岸まで飛んで橋を架け、どうにか谷を渡ったあたしたちは琥珀の城の裏口にたどり着いたのだった。
ここのところ仕事や私生活が忙しくてあまり執筆時間を取れないのですが、
感想や評価、お気に入り、ここすきなどのモチベの外部電源のおかげで少しづつですがスキマ時間に書き進められています。
この場を借りてお礼を申し上げます。
アベルト君ですが、なにか王宮の書庫とかに行きたがってるみたいですね。
何か抹消されたゼスにとっては不都合な記録とかが見たいのでしょうか?
そんなところに入れるとは思えませんが、どうにかするのでしょう