【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【ロリータハウス破壊】

何も言いたくないことってあるよね。


38.エールちゃんは主人公(?)に遭う

「あ…うー…うー!あー…!あーっ!」

アルフラが手に持った石で割れた宝石をごんごん叩いて粉々にしている。

「ランス…ありがとうね…」

そんなアルフラをそっと抱き締めているキムチさんにお兄ちゃんは軽く頷いて、何も言わずに踵を返し、あたしとシィルさんもついていく。

「ランス様…ご立派です…」

「えへへ、いいとこあるじゃん。」

「ふん、あんなやせっぽちのがきんちょでも将来はいい女になるかもしれんからな」

後ろからは、鳴き声ともうなり声ともつかぬアルフラの声と、優し気に励ますキムチさんの声が、ごんごんという音に混じって聞こえていた。

 

 

あの宝石が何か説明するには、少し長くて嫌な話をする必要がある。

琥珀の城に侵入したもののラドン長官は見つけられず、仕方ないので娘のエミをさらってきたあたし達。

エミを尋問してみたがマナバッテリーの場所は知らないというので、エミを人質にラドン長官をおびき出すことにして脅迫状を出すことにした。

 

「がーははははは!ほーれほーれ!」

「あっ…いやっ…そんな…あーっ!」

 

という感じにエミがタグが面倒になる感じに死なない程度のひどい目に遭っている場面の写真を撮って、手紙と一緒に送ったのだ。

さーてラドンから返事が返ってくるまでのんびり…と思っていたら急に招集が掛かり、ロッジに向かったのだが。

「ちーっす、お待た…せ…」

「………」「………」

室内は静まり返っていて、部屋の隅でガチで機嫌の悪そうなお兄ちゃんがロッキーさんとシィルさんを従えて立っていた。

これは女を手に入れそこなった、とかそういう事でもなさそうな怒り方だな…何があったんだろ?

「あ、あの、ランス様。皆さん揃われただすよ」

「…おう。これからな、ナガールモールのある組織をぶっ潰しに行く。すぐに出発だ」

「え?ナガールモール?結構遠いよ?今は作戦の大事な時期じゃ…」

「関係ない。いくぞ。着いてこない奴は置いていく」

そう言うが早いか、さっさと外に出て行ってしまった。

「ちょっと待ちなさいよランス!せめて作戦内容くらい…」

「あ、あの…これ、任務表です」

「え、うん。えーっと…………これ…」

渋るかなみさんにシィルさんが書類を手渡し、目を通したかなみさんの表情が険しくなる。

「どうしたの?」「どういう内容?」「ちょっと見せてくれ…」

お兄ちゃんの変な態度を妙に感じていたあたし達も、かなみさんの持つ任務表を覗き込んだ。

「ロリータハウス…孤児院に見せかけた…児童買春組織…?」

「身寄りのない子供たちを引き取る、と見せかけて調教…ひどい…」

「収入の多い一級市民限定の商売…か。ゼスもたいがいだな…」

「…そっか…孤児院のあの女の子…アルフラちゃんもそこの…」

「『壊した』場合『処理費』1万G…?」

周りを見回すと、みんな先ほどのお兄ちゃんみたいな顔つきになっていた。あたしもたぶんそんな顔だったろう。

誰からともなくロッジを出て、先に行ったお兄ちゃんの後を追ったのだった。

 

ロリータハウスは一見普通に庭のある孤児院だが、ナガールモールの地下道の隠し扉から人に見られず中に入れるようになっている。

「お客様」向けのシークレットトンネルというわけだ。そこを通ってあたし達はロリータハウスに侵入した。

詳細は胸糞悪いので省くが、何人かぶちのめして子供たちを保護して、顧客リストを分捕って官憲に送り付け…んで院長のミンチン先生とか言うでかいババアをぶっ殺して胸元のでかい宝石を分捕ってきた。

それが冒頭でアルフラがゴンゴン叩き割っていたやつというわけだ。

助けた子供は、ウルザさんがナガールモールのまともな孤児院に収容されるように手配してくれたそうだ。

氷山の一角ではあるだろうけど…腐った連中を一網打尽にできたのは結構すっきりしたのだった。

 

 

 

もわんもわんもわん(夢を見る音)

--------------------------------------------------------------------------------

「俺様がランス様だー」

「すごいですランス様。ぱちぱちー」

「よっ!主人公!鬼畜戦士!お兄ちゃんかっくいー。」(ばさっばさっ(紙吹雪を撒く音)

何やら威張っているお兄ちゃんをあたしとシィルさんでとにかく褒めている。

「がははははは、ゆかいゆかい。もっと褒めろ!俺様が主人公だー!」

「いや、主人公は俺だ!」

「え?」

突然声をかけられてそちらを見ると、純白の鎧を身に着けたツンツン頭の男が立っていた。

背中にはマントと剣。なんか見てるだけで恥ずかしくなる古代のザ・勇者スタイルだ。それも結構ガチ目の。

…というかアリオスさんにちょっと似てるな…なんというか、お兄ちゃんがリーザスの王様になるなんてありえない世界があったらアリオスさんはこんな感じの外見になるかもしれない。知らんけど。

「だ…誰だお前は!」

「俺か?俺は…主人(あるじひと)公太郎(こうたろう)だ!」ばばーん

「「「あ…主人公太郎!?」」」

「な、なんて主人公っぽい名前だ…」がーん

「そうかなぁ!?」

なんかお兄ちゃんはショックを受けている。

「そう!この世界の主人公は俺こそがふさわしい!お前のような性格の悪い鬼畜は後半で一応仲間にできるし強いけど給料高いしデメリット持ちでめんどくさいからできれば起用したくないポジション…要するにスパーンみたいな扱いをされているのがお似合いだ!」

「ぐっ…スパーンに似てるのはどちらかと言えば貴様の方だろうが!」

「スパーンって誰でしょうか?」「さぁ…?」

「誰か知らんが猪口才な!主人公は俺様だ!」

体勢を立て直したお兄ちゃんが主人公太郎に立ち向かっていく!

「ならば俺と主人公対決をしろ!」

「良かろう!勝った方が主人公だ!」

「主人公対決…何をするんでしょう」「さぁ…?」

「主人公は俺だああああああ!」

「いいや俺様が主人公だああああああ!」

あたしたち二人を置き去りに二人のテンションは加速し危険な領域に到達する!

「「いざ!決戦のバトルフィールドへ!」」

流れ始めた勇壮なBGMと共にあっという間に切り替わった舞台で、世紀の主人公対決が幕を開けた!

 

「まずは主人公漢字書き取りだ!」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」シャカシャカシャカシャカ!

目の前のノートに『主人公』という漢字を大量に書いていく二人!

「ふはははは!どうしたその汚い字は!止め跳ね払いが甘いぞ!」「ぐっ!まだまだぁ!」 

 

「続いて主人公千本ノックだ!」

「「どりゃあああああああああああああああああ!」」カキンカキンカキンカキン!

漢字の書かれた球をノッカーが打つのをグローブを嵌めてキャッチする二人!

「『公』を捕ったぞ!がははははは!」「ランス様、それは『ハム』では?」「なんだとっ!?」

「なんのこっちも…くそっ!これは『主』じゃなくて『玉』だ!」

 

「まだまだ行くぞ!主人公腕立て伏せだ!」

「おらあああああああああああ!」「せりゃああああああああああ!」

かちっかちっかちっ!

なんか叫びながら普通に腕立てをしてスイッチを顎で押す二人!

 

「次の勝負は…主人公デュエルだ!」

「いいだろう!これを食らえ!『キムチさん』+『ウィリス』!」ずららっ

「なんの!『村人テオマン』!」

「なにっ!なんでもありだと!?では悠長に星を上げている暇はない!」

「そしてこの『ニーナの首』で俺のコンボは完成する!」

「くっ!勇者コンボか!仕方ない!ではここで『過去の俺様』を12枚追加だー!」

「バカな!12枚もだと!?こいつ正気か!?ちぃぃぃーっ!」

「シリーズの歴史の重みを知れーっ!」「社会的抹殺ーっ!」

カードを構えた二人が交錯する!

「くっ、俺の判定負けか…」

「がははは、今の戦いで俺様は食券を3枚手に入れたぞ」

膝をつく公太郎に勝ち誇るお兄ちゃん。

 

「わ、わかりませーん!二人が何やってるか…全然わかりませーん!」ごろごろ

あまりの訳の分からなさにぽわぽわ頭を抱えて転がり回るシィルさん!

「シ、シィルさん、落ち着いて…」

「全然わかんないですー!」ぱちーん!

混乱したシィルさんにはたかれた。あたしだってわかんねぇよぉ…ぐすっ。

 

その後も主人公料理対決、主人公クイズ対決、主人公靴飛ばし対決、主人公プールの上にかかった丸太の上でバルーンで殴り合う対決等、訳の分からん勝負が繰り広げられ、そして結果は…

「ふはははははははは!俺の圧倒的勝利だー!」

「くそおおおおおおお!」

勝ち誇る主人公太郎の前で悔しがるお兄ちゃん。

通算成績ではお兄ちゃんが圧倒的に負けていた。

運動系は互角だったが文科系をほとんど落としているのだ、これでは勝てるはずがない。

「というわけでこれからは俺が主人公だ!これからこのシリーズはス〇ッチにも移植できるような、ご両親が安心してお子様に勧められる健全な作品に…」

「なるかーーーーーーーーーーーーーーー!」ずばーっ

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーー!」

主人公太郎は死んだ。

「がはははははは!見たか!やはり力こそすべて!俺様が主人公なのだーーーーーーーー!がーはははははは!!」

「これ…いいんでしょうか?」「うーん、いいんじゃない?」

あたし達はともかくお兄ちゃんに拍手して紙吹雪を投げたのだった…

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

もわんもわんもわん(夢終わりの音)

 

「…んあ?」

目を覚ますと、そこはアジト近くの草原だった。うーん。訳の分からん夢を見てしまった。

「ふごーーーーふごーーーー…むにゃむにゃ…」

傍にはお兄ちゃんが大の字になって寝ていて、お腹が呼吸に合わせて上下している。

そうだった。散歩に来たらお兄ちゃんが昼寝していて、ずいぶん気持ちよさそうだったからあたしもつい寝ちゃったんだった。

「………すぴー…」

お兄ちゃんにもたれかかって寝ているのはアルフラちゃんだ。

あたりに花が散らばっていて、ぶきっちょな出来だけどどうやら花冠らしきものがお兄ちゃんの頭に乗っかっている。

「…………………うん。えへへ…」

つたない花冠を頭にのっけて大口を開け、アルフラと一緒に気持ちよさそうに眠るお兄ちゃんは、ちょっとカッコ悪いけど…確かに主人公だ、と思える。

あたしは、キムチさんが二人を起こしに来るまで、なんとなく二つの寝顔を眺めていたのだった。

 

 

============☆☆スキルGET!☆☆==============

 【 ランス 】が技を覚えた。 

  『主人公』を取得 

======================================

 

=============☆☆好感度上昇☆☆==============

エール FR==20+1/25

エール FR==21/25

=======================================

 

 




読んでいただきありがとうございます。

戦国ランス以上に30人枠が厳しいんですよね大戦国ランス…ぐぬぬぬ…

以下、妄想です。

主人公
ゲーム中でランスがレベル40くらいになると覚えられるスキル。正体不明。最後の一人をランスが仕留めると経験値が1.5倍(強化後2倍)に増える。
鳶玉三つも必要なだけあり非常に高性能。特に才能限界無限の本人との相性がいい。
痺れをやってこない固定敵相手に専属看護婦さん+無視メガネを付けて周回するレベリングが流行った。
説明しにくいスキルだが、レベル設定にかかわる以上もう神側のひいきとしか考えられないのでこういう事に。

スパーン
アリスソフトの別作品、大番長に登場するキャラ。
油田を堀当てた大金持ちでハワイの王だが大のエルフ好き。
主人公勢力がエルフの村を発見したという情報を聞くと自分のホテルを焼いて炎の旅立ちをした挙げ句エルフを拉致していくが、ホテルを焼く前に交渉すれば仲間にできる。
戦闘力は即戦力として運用できるレベルだが、給料は高いし回りのユニットの忠誠度を下げてくるし胸くそ悪いイベントはあるしでできれば起用したくない。
使い道としては絆組と一緒に防衛に充てるくらいか。
ロードス島戦記のパーンのパロディキャラ。ジャイアン同様今はもう出せないと思う。


主人 公太郎
Lv31/99
剣Lv1 主人公Lv1
どうやって主人公スキルをランスに覚えさせようか三日くらい悩んでいたら発生した謎の存在。
とりあえず外見が主人公っぽいということで鬼畜王アリオスっぽい描写にしているがビッグアーサの方が近い。
ラークとかスパーンとか、この手の「ザ・ファンタジー主人公キャラ」をおちょくるのがアリスソフトの味。

アルフラ・レイ
Lv2/25
鉄砲Lv1 手芸Lv1
孤児院の女の子。カーマよりも少し年下。
カーマと違って妙な血筋等の設定もなく、6以降に出番もない。
微妙に才能限界が高いがそれだけ。技能も不明。
とはいえこのイベントでランスの子供には優しい一面が描写され、根付いていくので結構重要。作者も好き。
ちなみにR10二部時点では25歳。心の傷も癒えて美女に成長していてほしいと思う。
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