【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

162 / 198
ー任務表ー
【祖国の開放計画 フェイズ2】

ペンタゴンの【祖国の解放】計画というネーミングセンスのない作戦に参加することになった
四天王の塔の地下にあるマナバッテリーを破壊しよう
あたし達グリーン隊の目標はマジックの支配する弾倉の塔だ


42.エールちゃんはまた怒られる

作戦の準備ができた、ということであたし達は会議室に呼ばれていた。

「それでは、【祖国の解放作戦】作戦会議を始めます。その前に…」

ネルソンが芝居がかった様子でお兄ちゃんを手で示す。

「ランスさんの勇敢な行動により、マナバッテリーの場所を特定することができました。素晴らしい活躍です」

「がははははは、俺様にとっては楽勝だ」

ぱちぱち、とペンタゴン兵士の拍手が響き、お兄ちゃんは威張った。

「調子に乗るな、まだ作戦は途中だぞ」

「うむ…作戦はこれからが本番です…では、説明に入らせていただきましょう」

エリザベスがまぜっかえし、ネルソンがそれを受けて話し始めた。

 

祖国の解放作戦、の一連の流れは

①マナバッテリーを見つけてぶっ壊す

②マジノラインの供給魔力が不足する

③魔法使いたちは魔力供給にかかりきりになり、軍も魔物への対処で動けなくなる

④その隙にクーデターを起こして国を乗っ取る

⑤臨時政府を発足し、新生ゼス大統領を決める

⑥魔物が攻めてくる前にマジノラインを急いで直す

 

というものだ。

正直③まではともかく④以降については何の準備もしていなさそうなんだよね。

多分早々にうまく行かなくなり、クーデター派と軍が戦ってゼスは大混乱に陥るんじゃなかろうか。

そこをぶわーっと荒らしまわって女の子を食いまくるなり、リア様の力を借りて乗っ取るなりしよう、というのがお兄ちゃんの思惑らしい。

そこでアホ貴族がぶち殺されてクーデターが鎮圧されれば少しはまともな国になるんじゃなかろうか、とあたしも思っている。王様はどうもまともな人らしいし、ネルソンが勝ちそうならリア様にどうにかしてもらおう。たぶん現状よりはリア様の支配のほうがマシだしね。

まぁ、魔物が攻めてくるって言っても多少時間はかかるだろうし。

万が一の話だが、マジノラインが停止した瞬間速攻で魔物の大軍が攻めてくるようなことでもなければ多分大丈夫じゃないかなぁ。

 

とか思っているうちにもネルソンの話は進んでいた。

塔の正面からの攻略は不可能なので、忍び込んで破壊しよう、という事らしい。

あたしたちグリーン隊は、四天王マジックの弾倉の塔。

サーナキアさん達シルバー隊は、パパイアの跳躍の塔。

ペンタゴン隊は、ナギの日曜の塔。てっきりフットの隊が担当かと思ったが、違う隊に行かせるらしい。

そして山田千鶴子の王者の塔は、民間組織ネオコンなる連中が担当するはずだったのだが、アベルトさんが口を挟んでブルー隊がやることになった。

「では、ということで…よろしいかな。ウルザ」

「えっ…あ…あう……………は、はい…」

ものすごく何か言いたそうだが、結局何も言わずに頷くウルザさん。

「では、作戦開始。次にお会いするのは臨時政府の会議室となるでしょう」

ネルソンはマントを靡かせて偉そうに宣言したのだった。

 

四天王の塔は闘神都市の遺跡の上に建てられている…というか塔もたぶん遺跡の一部なんだろう。外見がなんかイラーピュにあったのと似てるし、地上に突き出た部分を塔として使っているんじゃないかな。

つまり塔の地下には闘神都市が埋まっているというわけだ。ゼス軍は地下遺跡側には警備をあまり敷いていないので、そこを突いて地下へ侵入しようというのが作戦なのだが…

 

『縺吶?縺ア繝シ縺ヲ縺??縺偵k』どっかーん!「うわーっ!」

浮遊するでかい球体を中心に機械の上半身が被さっている、という感じの魔法生物、ナースホルンがぶっ放してきた聖魔法で数人が吹っ飛ばされた。

「どりゃー!邪魔だポンコツ!」「いっけーチューリップ!」どかどかーん!「縺?℃繧??縺」

突っ込んだお兄ちゃんに剣でしばかれ、砲撃を食らってもナースホルンは傷つきバランスを崩すがまだ健在。

「繝薙せ繝槭Ν繧ッ」「くっ…魔法バリア!」「ええと…いきます!」「でーい!」

まわりのクレッチマーややもりんなんかとは志津香さんリズナさんたちが渡り合っている。援護に行きたいけど…

「今宵の拙者はすごいでござるぞー」「くっ!やああっ!」きん、がきぃん!

こっちにはサメラーイが二刀を振り回して突っ込んできてる!とっさに間に入って止めた。

「はらほれひれ…」「だ、大丈夫ですか?いたいのいたいのとんでけー」

あたしの後ろでは不意打ちの魔法を食らったみんなをシィルさんが治療している。ここはあたしが相手するしかない!

サメラーイは間合いを詰めて短い刀を素早く振り回してくる!魔法で隙を作りたいところだが呪文を唱える暇がない!

「月影は叢雲!」「でりゃー!そりゃ、どりゃ!」きぃんきんきん!

繰り出される突き、払い、振り下ろしを躱し、受け止め、弾き飛ばす!

あたしも結構レベルが上がったこともあり、切り結べてはいる。このまま粘ってればあっちを片付けたお兄ちゃんがどうにかしてくれるだろう。

けど…そういうのは趣味じゃあないんだよね!

「刀の錆ーっ!」がきぃん!「……すぅー…だあああああっ!」

あたしはサメラーイの刀を受け止め、深呼吸。力を込めて押し返し、魂を燃やして足を踏み切る!

「AL…スラッシュ!」ずがばばっ!「がはっ…拙者の負けか 無念…」

高速回転からの4連撃が2刀を弾き飛ばして、サメラーイは倒れた。

「ふぃーーーー…」

思わず声を漏らす。久しぶりだったけど…成功してよかった。でも足やら腕やらが結構痛い。こりゃ治さないとだめだな…

「いい加減落ちんかー!超ランス斬りーー!」ばっきぃーん!「縺?℃繧?」

痛みをこらえて振り返ってみれば、球体を叩き割られたナースホルンが傾き、地面に落ちて沈黙したところだった。

 

============☆☆スキルGET!☆☆==============

 【 エール 】が技を覚えた。 

  ALスラッシュを取得 

======================================

 

他のモンスターも結構手ごわい。地下方面を警備していないのも納得だ。どうにか蹴散らしつつも地下遺跡を探索する。

何本かのビルのように太い柱が貫いている大きな空間に出たので、とりあえず柱に近づいてみると入り口らしきものがあったのだが…

「ん?なんだこりゃ?弾かれるぞ」

その入り口は青い光で遮られていた。お兄ちゃんが伸ばした手がばきーんと弾き飛ばされる。

「ああ…これ、結界ね。魔法で作られた壁よ。」

それを見た志津香さんが説明してくれた。

「結界?」

「ええ、イラーピュにあったのと同じタイプだと思う。特定の対象が触れた場合にのみ開いて、それ以外は弾き返すの」

「むむむ…不愉快だ」

「へぇー。あたしも触ってみよっと…へ?」

あたしが手を伸ばすとしゅいん、と結界は開いた。

「お、開いたな」

「ああ、魔力を判別して魔法使いだけ通してるのかしら」

「よし、入ってみるか」

お兄ちゃんが一歩足を踏み入れた瞬間。

『ビーッビーッビーッ!マホウツカイイガイハッケン!ハイジョスル!』

けたたましい機械音声が流れた!

「げっ!警報かよ!」

「うわっ!ランス!なんかくるよ!」

見ればナースホルンとクレッチマーが数体こちらに向かってきている!

「ちっ、ガーディアンか!仕方ない、行くぞ!」

あたし達は武器を抜いて立ち向かい、モンスターたちをボコボコにした。

「はぁ…四天王の塔の地下にこんな場所があったなんて…」

「聖骸闘将ってことは、聖魔教団のセキュリティなのかしら」

「結界も動いていたし、この遺跡はまだ生きているみたいね」

リズナさんがぼやき、マリアさんと志津香さんがうんうんと頷いている。

ビルのような柱の中は実際ビルのようで、だいぶ上まで吹き抜けの空間が続いているけど、登るための階段とかは見当たらない。とりあえず見て回ってみよう、と歩いていると…

「はぁぁ?まさか…ありえない…ありえないわよ!」

急に志津香さんが足を止め、頭を抱えた。

「どうしたの志津香?なにがありえないの?」

「え…?この声…私にしか聞こえていないの?」

「なんだ、神の啓示でも聞こえたか?」

「違う!この部屋おかしいわ!でないと私がこいつにときめくなんておかしいもの!」

「なんだ、ときめいていたのか。では抱いてやろう」

「ふん!」「あだっ」「まったく…なんて嫌な細工をされた部屋なの!」

志津香さんはお兄ちゃんを蹴っ飛ばし、ぷりぷりと怒りながら進んでいった。

 

どうやら志津香さんはへんな声が『あなたはその男を愛している…』とか囁いてくるのを聞いたらしいのだが…

そのへんな声は部屋を回っているうちに他のみんなにも聞こえてきたみたい。

「まっ…まさか!そんなはずは…」

「どうした?」

「ひぃいい!来ないで!」しゅっしゅ

「どわーっ!何をする!」

真っ青な顔でお兄ちゃんにくないを投げつけて追い払うかなみさん。

 

「えっ…そ、そんな…そんなこと言われても…」

「マリア?」

「あ、あれ…私…どうして…今…あれれれ?」

「今度はマリアか、どうした」

「い、いや!なんでもない!なんでもないから!」

顔を赤くしてぶんぶんと手を振るマリアさん。

 

「はぁぁ!?」

挙句の果てにはパットンさんにまで。

「あん?」

「それはないだろ…一生…」

「何を言っとるんだ」

「変な声が聞こえるんだ。俺が隊長を心の底から愛していると…」

「いやな事を聞かせるな!」

「俺だって、いやだ…」

「あの、ちょっとそこのところ詳しく聞かせていただいてもいいですか?」

「お前も食いつくんじゃない!」

 

そしてとうとうあたしにも。

『貴方は、その男を愛している……心の底から愛している…』

どこからかそんな声が聞こえてきた。

なんというか透き通った神秘的な声で、確かにお告げっぽいと言えばそれっぽいが…でも…なんかちょっとドキドキするような。

「………」

「ん?なんだ、お前もか」

足を止めたあたしに気がついて、うんざりした顔でこちらを見るお兄ちゃん。…なんか3割増しくらいでかっこよく見えるような気もする…。

「うん、変な声があたしがお兄ちゃんの事を愛してるって」

「まったく、どうなっとるんだこの部屋は。くないは投げられるし男には言い寄られるし」

「えー?こんな美少女に好かれて嬉しくないの?」

「普通ならうれしいが…お前は対象外だ、対象外」

しっしっと手を振って背を向け歩き出そうとするお兄ちゃん。

……………なーんか腹が立つなぁ…?うーん……………よし。

「それっ」「どわっ!」

あたしは後ろからお兄ちゃんに抱き着いた。そのまま肩に手を回し、多少は成長したモノを押し付けながら背中に指を這わせる。そして、

「…ランスさん。あたし、そういうの初めてなので…その……優しくしてください…ね…?」

精いっぱいの甘い声で囁いた。

あの時のあたしじゃダメだったけど、今の成長したあたしなら…どうだ!

抱き着いた背中はビクビクビクッと大きく震え…いや、これ…全身が震えてるな?

「………………………………離れろ…」

「あ、はい…」

固く握った拳をブルブル震わせながらマジな声で言われて、思わず手を放してしまう。

「ラ、ランス様…?」

「エールちゃん!あんた何やってんの!」

「そうよ!兄妹同士で!」

「あのね、そういうのだめだと思うの…」

「あ、その、すみません…つい…」

みんなにめちゃめちゃ叱られてしまった。そりゃそうだ。ついやりすぎてしまった。

「…………」

「あっ!ランス様?待ってください!」

その一方でお兄ちゃんはつかつかとどっかに歩いて行ってしまい、シィルさんがその後を追っていった。

 

二人が戻ってくるのを待っている間にその辺を調べていたら、文字の書かれたプレートを見つけた。

読んでみると、この空間は恋人の部屋といい、入った異性、場合によっては同性でもだが…とにかく入った人たちに軽い魔法のかかった声を聞かせ、お互い少し積極的に、そしていい雰囲気にしてしまう部屋であったらしい。

「なるほどなぁ…あたしはそれに引っかかったわけかぁ…面目ない…」

「道理で…いやな仕掛けだわ。」

「本当に迷惑!」

「聖魔教団の人は何考えていたのかしら」

「フリーク爺さんはなんかこういうの考えそうな気もするな…」

「どうした、何かわかったのか」

あたし達がぼやいていると、どうにか落ち着いた様子のお兄ちゃんとシィルさんがこちらに戻ってきていた。

早速部屋の仕掛けについて説明する。

「なるほど…ろくでもない部屋だな」

「あのー…ごめんねお兄ちゃん」

「…………………」

あたしが頭を下げると、お兄ちゃんは黙ってからあたしの顔にそっと手を伸ばし…頭をわきに抱えてヘッドロックをかけてきた!

「このバカ妹がぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」

「あだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!」

「もう二度とああいう事はするんじゃない!わかったな!」

「わかった!わかった!わかりました!もうしませんーーーーーーーーー!」

「本当にわかっとるのか!ちょっとヤバかったんだぞ!ええ?どうにかキースの顔を思い浮かべて耐えたが!我慢できなかったらどうなったと思っている!」

「ごめんなさい!あたしにセクシーの才能があったばっかりに!ごめんなさい!」

「そんなもんあるか!!このちんちくりんのオタンコナスめがーーーーーーーーー!!」

「ひーーーーーー!」

あたしはめっちゃ怒られてしまったのだった。

 

=============☆☆好感度上昇☆☆==============

エール FR==21+1/25

エール FR==22/25

=======================================

 




お読みいただきありがとうございます。

以下、妄想です。

民間組織ネオコン

改革派一級市民で構成された組織。ペンタゴンと同盟を結んでいる。
しかしその実態は魔法試験に合格したものの、能力や性格、家柄の問題でいい立場を得られずに不満を貯めている連中の集まり。簡単に言えば地位と家柄と権力のない長官連中である。
ネルソンの演説で彼に心酔しているが、ネルソンからは内心軽蔑されている。
クーデターが成った暁には要職につけるという口約束はしているが、当然そんなもの守るつもりはなく、不要になったら速攻で切り捨てるつもり。
ペンタゴンに入れずにわざわざ同盟組織としているのもそのためで、作戦時に一級市民の協力者として利用するにとどまっている。
ネルソンは彼らにひそかに爆弾を持たせ、始末ついでの自縛特攻でマナバッテリーを破壊しようとしていた。
とりあえず使い捨ては免れた彼らだが、マナバッテリー破壊後に暴動に巻き込まれ壊滅。
ペンタゴンからの救援は当然なかった。

恋人の部屋

聖魔教団時代に作られていた施設。
中に入った人間にランダムに声を聞かせ、近くに居る異性とくっつきやすくする。
たまに同性にも惹かれるようにしてしまうのは仕様。
バイオメタルの魔法を使って鉄兵や闘将、闘神と化してしまえば、当然もう子孫を作ることはできない。
改造を受けるのはやぶさかではないが、その前に子供を作っておきたい。そのために手っ取り早く恋人が欲しい…
という需要を受けて各地の闘神都市にそれなりの数作られていた。要は合コン用パーティー会場である。
ちなみに設計者はフリーク・パラフィンとM・M・ルーン。当時は結構ノリノリであった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。