ペンタゴンの【祖国の解放】作戦という計画性のない作戦に参加することになった
四天王の塔の地下にあるマナバッテリーを破壊しよう
まぁその前にサーナキアさんを元に戻さないと
とりあえずもうお昼過ぎだし、ということで出発前に孤児院でみんながご飯を食べている間、もうお昼を済ませていたあたしはバスケットにあんパンやらうし乳やらを詰めてアジトから少し離れた丘に向かった。
向かった一本松の根元でヤンキーが体育座りしてため息をついていて、その傍では鎧姿の女性が縛られてうがうが言っている。
サーナキアさんの魂が入ったヤンキーとヤンキーの魂が入ったサーナキアさんだ…ややこしいなぁ。
「サーナキーさーん、お弁当ですよー」
「くっ…そんな名前で呼ばないでくれ」
「でも紛らわしくて…はいどうぞ。でもヤンキーってあんパン食べられるんですかね?ステーキとかハンバーガーとか揚げバターとかピザしか食べられないんじゃ」
「ええい、ヤンキーがあとで腹を壊しても知るもんか。ボクはさっさと元に戻るんだからな」
サーナキーさんはそう言ってあんパンをバクバク食べた。
「くっ…口の中がヤニ臭い…うう…早く元の身体に戻りたい…どうしてボクがこんな目に…」
サーナキーさんは屈辱をこらえるように歯噛みする。
そんな彼女…いや今はヤンキーだけど…を見てるとなんかこう…湧き上がってくるものがあるなぁ。
あたしは自分のことは棚に上げて口を挟んでみることにした。
「負けたからじゃないです?」
「…くっ…それは…」
「ぶっちゃけ話を聞いた限りだとパパイアに捕まった時点で生きてるだけで十分幸運ですよ?」
「ぐ…うう…」
「でもまぁこの先ヤンキーとして生きていくことになるのなら死んだほうがマシかなぁ…」
「うっ…くぅ…好きでこんな姿になったわけじゃ…」
サーナキーさんはぐぬぬ顔で目に涙を浮かべ始める。
うーん、ちょっとお兄ちゃんがこの人をからかいたがる気持ちが分かってきたかも…くすくす…
サーナキーさんに謝った後、用意を済ませた皆と合流し、あたし達はヤンキーの魂が入ったサーナキアさんを抱えたサーナキアさんの魂が入ったヤンキー…ほんとにややこしい…とにかく略してヤンキアサーナキーを連れて跳躍の塔に戻った。
「でも二回目の侵入よ。警備も増強されているかも…」
「がははは、関係ないわ。全員ぶちのめしてくれる」
「相変わらず根拠はないけどすごい自信だね」
実際に警備も以前のままみたいだ。すいすいと進んでいくと、目の前に闘技場があった。
「あっ、闘技場だ。ここでボクたちは卑怯な罠に…」
「どーせフローズン当たりに真正面から突っ込んで氷漬けにされたんだろ。どこが卑怯だ…ほれ、とっとと行くぞ」
「くっ…え?戦っていかないのか?」
「ふん、なんにでも突っ込むイノシシじゃないんだ。誰がそんな面倒なことするか。」
「ぐぬっ…」
「「「…」」」
お兄ちゃんはみんなの白い視線も気にせず突き進み、地下のパパイア研究室に足を踏み入れる。
訳のわからん装置で埋め尽くされた、そこはかとなくおぞましい部屋の片隅にそれはあった…じゃない、いた。
「わあ、本当に生首だ」
「エールちゃん、失礼よ」
「うん、そだね…ごめんね生首さん」
「お名前はキャロットさんだそうです」
あたしは謝りつつも眼鏡をかけた女の子の首をしげしげと眺めた。
うーん…この魂の感じはなぁ…もう…
「あー…ひもじい…にんじん…」
「どうせ今は何言われてもわからんだろ。ほれ、とれたてだぞ。食え食え」
「ぽりぽり…うまうま…」
お兄ちゃんが差し出したにんじんをぽりぽりかじる生首…キャロットさんの目に理性の光が戻ってくる。
「でりしゃす………はっ!?…私はまたボーッとしていたんですか…」
「おお、目を覚ましたか。…パパイアにあったぞ。ありゃおかしい女だな」
「っ…それは…今のパパイア様は…昔は…ああではなかったのですが…」
「…それで、聞きたいことがあるのだ」
「なんでしょう」
「魂交換装置はどこだ!」ずいっ
「わっ、ヤンキー…じゃない、あの装置で魂を入れ換えられたんですね」
「そういうことだ…場所を教えてくれ」
「…ええ。二階の研究室…あそこは魔法で位相を重ね合わせていくつかの部屋をひとつの研究室として使っています。」
「…………」
志津香さんが『え……理屈はわかるけど…正気?』みたいな顔をしているな…まあいいや。
「机の引き出しに772と書かれた鏡があるので、部屋の奥の鏡を取り外して入れ換えてください。以前のままなら、それで魂交換装置の部屋が現れるはずです…あ、他の鏡を見ないほうがいいですよ。頭がおかしくなりますから」
「わ、わかった…772だな」
「あの、ほかに私が役に立てることってありますか?」
「いや、十分だ」「…」
お兄ちゃんの返事を聞いたキャロットさんは少し置いてから話し始める。
「…そうですか、じゃあ、お願いがひとつあるんです」
「なんだ?今度はダイコンでも持ってくるか?女の子を助けるのは英雄たる俺様の役目だ、なんでも言うがいい」
「あはは…では、私の後ろにあるこの水槽を…壊してもらえませんか?それで、私死ぬことができます」
キャロットさんは、心の底から嬉しそうに言ったのだった。
もう生きているのがつらい。パパイアも部下も殺してくれない。
パパイアの敵である貴方たちが来て、すごく嬉しかった。これで楽になれる…
キャロットさんが明るい表情のまま漏らす絶望的な台詞に、あたし達は言葉も出なかった。
「…」
お兄ちゃんがゆっくりと振り向いた。
「これは志津香じゃなくて…マリアの領分か。なんとかならんか?」
「ごめん………私じゃどうにもできない……体もないし…」
マリアさんが震えながら言葉を漏らす。
「それにこれ…すごく高度な魔法技術で生かされてる…たぶんこうした本人も元に戻すのは無理だと思う…」
「…おい、エール。お前はどうだ?」
「えっ、あたし?」
「この間死にかけたおっさんを助けとっただろう」
「あーねぇ…」
…まぁ聞かれたからには仕方ない。あたしはこめかみを掻いて口を開いた。
「生命力をまるで感じないし…生かされてる、というより、もう死んでる体に魂を縛り付けられてるね…」
「…」
「魂もだいぶ汚れてて、こうしてまともに話せているのは奇跡に近いよ。…その、早く解放してあげた方が…」
「ちっ…」
お兄ちゃんは舌打ちをして、キャロットさんの正面に立った。
「ひどいお願いをして、ごめんなさいね」
「気にするな、言っただろう。女の子を助けるのは英雄たる俺様の役目だ」
腰から剣を抜き、目の高さに構える。
「行くぞ」「はい」
剣がまっすぐに突き出され、ばきっと音を立てて水槽は壊れた。
「ありが…とう…」
そのまま、キャロットさんは目を閉じて動かなくなった。
「ランス様…ご立派です…」
「分かっとる…パパイアめ…していい事と悪い事がわからん女は俺様が徹底的にお仕置きしてやる」
「そだね…でもその前に…」
あたしはもう目を開けることはないキャロットさんの前で手を組んで膝をつく。
「えーと…『この弄ばれた憐れな魂に慈悲を与えたまえ…』」
聖句を唱えて、彼女の魂がしかるべきところに還れるように祈りを捧げたのだった。
キーワード…なんでアベルトさんの名前なのかは知らんけど、とにかくキーワードを唱えてエレベーターを動かし、キャロットさんの言っていた部屋に入る。一見普通の研究室だ。
お兄ちゃんは入る前にかなみさんに中を確かめさせてたけど前になんか変なもんでも見たのかな?
「確か机の中にある772の鏡だったよね」
「この引き出しでしょうか…わ、鏡がいっぱい。」
「えーとこれは801、294…」
「こっちは…334か」
「なんでや阪神関係ないやろ」
「何を言っとるんだお前は…」
「ポルトガルの作法なんや、堪忍してーな」
「あ、ありました!772の鏡!」
「えーともとの鏡を外して、これに付け替えて…わっ」
がちゃっ こここきーんと音を軽快な音を立ててあたし達の回りの景色がぐるぐると切り替わり…なにやらベッドのようなものが二つついた怪しげな装置が姿を表したのだった。
=============『音声のみでお送りします』=============
「こ、これだ…これが魂交換装置だ…やっと戻れる…」
「えーと、これがスイッチでしょうか?」
「動力は…と…これかな? うん、動きそう」
「じゃあ、こっちにヤンキアを置いてと」どさっ
「うがががーっ」どたばた
「そっちにサーナキーさん…」
「ではなく、俺様が乗る!」ひょい
「「「「「えっ」」」」」
「スイッチを押せーっ」「あ、はい」かちっ
バリバリバリバリーッ!
「がはははは、成功だ!」
「何をやっているんだ貴様は~!」
「がははは、サーナキアちゃんの体は俺様の玩具だからな」
「うわっ本当に魂が入れ替わってる…」
「わかるの?」
「入れ替わってる所を見ればね。なんとなくだけど」
「よーしせっかくだ、この体で色々と…ってあれ?」がちゃがちゃ
「どうして俺様は縛られとるのだ」
「そりゃヤンキアが暴れるからでしょ」
「このお兄ちゃんは何て呼べばいいのかな?」
「ランス様の魂が入ったサーナキアさんだからランキア…でしょうか?」
「ええいつまらん。早くほどけ…」
「うがががーっ」がばっ
「どわーっ!なんだ貴様は…って俺様の体!?」じたばた
「きゃー!えーとランス様…じゃなくてえーと…」
「ヤンキーの魂の入ったランスだからヤンスね」
「下っ端みたいな名前ねー…」
「うわーっやめろ!服を脱がすな!」「うががーっ」どたばた
「いかん!手慣れてるぞ!」
「肉体に女を襲う動きが染み付いているんだわ!」
「これは☆6のセクハラ技、ウルトラ襲う!」
「知っているのエールちゃん!」
「ええ…かつて異空間の魔王の耐性すら打ち破った伝説の…」
「解説しとる場合か!」「うががーっ」ボロン
「うわーっハイパー兵器を出すなー!」
「くそっ隊長の体だけあって手強い!」
「えーい!おとなしくするだすよ、ザンス…じゃない、ヤンス!」
どたんばたーん
「な、なんとか取り押さえたな…」
「うう…ちょっと手に触れただす…」
「ロッキーさん、ほらウェットティッシュ」
「こらロッキー、何を汚いものに触れたみたいなツラしとるんだ」
「えっ?ランス様はおらが喜んでた方がいいんだすか?」ごしごし
「それはいやだが…ええい!もういい!さっさと戻るぞ!」
「じゃあこっちにヤンスを置いて…」どさっ
「うががーっ」じたばた
「お兄ちゃん…ランキアはこっちね」
「誰がランキアだ全く…」ひょい
「んじゃスイッチオーン」かちっ
バリバリバリバリ…ぷすん
「ん?なんか変な音が…あれ?」
「ふぅ、えらい目に遭った…」ほどきほどき
「自業自得でしょうが…」
「うん、ランスとヤンキアに戻ったね」
「やっとボクの番か…マリア、スイッチを…マリア?」
「あの…その…なんか、壊れちゃったかも…」
「なにーーーーーーっ!」
「詳しいことはわかんないけど、どう見ても魔力回路が焼き切れかけてて…使ったらどうなるかは…」
「うーむ、仕方ないな。諦めろサーナキアちゃん。これも運命だ」
「お前がいらんことしたからだろがー!」
「えーっと、どうするの?」
「もちろんやる!このままヤンキーとして生きていくのも死ぬのも大差ない!」ひょい
「えーっ…危ないよ…」
「いいからボタンを押せーっ!」「はっはい…」かちっ
バリッ…バリバリバリバリバリバリバリーッ…ドカーン!
「うわーっ爆発した!」
「サーナキアさーん!?」
「げほっ…ごほっ…ボ、ボクの体だ…戻れた…良かったあ…」
「…うーん?」
「どうかした?エールちゃん」
「いや、なんでもない。気のせいだねきっと」
「うむ、がはははは!グッドだ!」
「よかな…くはないか…、けど釈然としない…」
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というわけでサーナキアさんは見事復活した。
「で、サーナキアちゃんは今後どうするんだ」
「無論、お前たちに同行するさ。あのパパイアとか言う女には仕返ししないと気が済まない!一発ぶん殴ってやる!」
サーナキアさんの鼻息は荒い。
うーん…やっぱなんか前と魂の感じがちょっと違うような…?
まぁいっか。元気そうだし。
「ふぅむ。まぁいいか。しかし…」
お兄ちゃんはぐるりとパーティーを見回した。
「ひのふの…えーっと19人か。少し多すぎるな…おい、お前ら。少し外れていろ。先にアジトに帰っとれ」
「…なんだい、手伝えって言ったり、外れろって言ったり…」
プリマさんはぶちぶち言いながらパーティーから外れた。
「…………ちっ………」
メガデスさんは舌打ちしてパーティーから外れた。
「……………うい」
セスナちゃんは眠そうにパーティーから外れた。
「少し、よその部隊の手伝いをして参ります」
バーナードさんは冷静にパーティーから外れた。
「うがーっ…」
ヤンキーは悲しげにパーティーから外れた。
そして5人はすごすごと帰路についたのだった。
「なんか変なのいなかった?」
「そうか?気のせいだろ」
読んでいただきありがとうございます。
評価、お気に入り、感想、ここすき等いただけたら嬉しいです。
以下、妄想です。
キャロット・シャーリー
Lv6/6
生命科学LV1
ランスシリーズ気の毒な人選手権正史部門でかなり上位を狙える生首ちゃん。
当然のように眼鏡っこだがここまでされるいわれはないと思う。
パパイアの所業に加え、ネクロマンサー系の技術により魂を強引に縛り付けられていたため魂の汚染がだいぶ進んでおり、生首では自殺すらできないため汚染率は90%近くにまで達していた。
それでも冷静でいられたのは生命科学の知識と、彼女のパパイアへの思いによるもの。
ここまで魂の汚染が進むと死後もなかなか天界にたどり着けない上に、ひどい汚染魂だから、という理由でアンデッドモンスターのこんにちわに生まれ変わるはずだった…が、
今回はなぜか天使が速攻で回収しに来た上に、生まれ変わり先は幸福きゃんきゃんに修正された。
眼鏡をかけた幸福きゃんきゃんを見かけたら、それは彼女の生まれ変わりかもしれない。
サヤンキー
Lv23/39
斧1
サーナキアと魂を交換させられていたヤンキー。
普通のヤンキーだったが、魂交換装置の誤作動で3%くらいサーナキアの魂が残ってしまっている。
割合としては低いが、何も考えていないヤンキーに対しては影響は大きく、かなり正義感のあるヤンキーになってしまった。
この後なんとなくみんなとアジトに帰った後、紆余曲折を経て騎士として仕える主人を探す旅に出た。
鎧を着て剣を持った正義のヤンキーを見かけたら、それは彼かもしれない。
なお、サーナキアの方にもヤンキーの魂が少し残っており、
その影響で少しアホで蛮勇気味になっているが、もともとイノシシ気味だったので大した影響はないらしい。