【モンスターに襲撃されたアジトを守れ】
出かけている間にアジトがモンスターに襲撃された
キムチさん、ウルザさんに孤児院の子供たち、ほかのみんなを助けないと
あたしは子供たちをマリアさん、サーナキアさんと守るように言われたけど
モンスターたちに囲まれてしまった
「ギャアアアア!!」
矢が突き刺さった顔を抑えて、サーナキアさんを両断しようとしていた魔物兵が崩れ落ちる。
刺さった矢は、矢羽がなくてちょっと短い。ボウガン用の太矢だろう。けど、アイスフレームにボウガン使う人なんていたかな…?
「皆、無事ですね?」
その矢を放ったと思われる女性が進み出てきた。ショートソードと三連ボウガンを手にした、凛とした表情の金髪の美人…誰だろう?なんか見たことはあるような…
「ああ…やっぱり…やっぱり立ってくれた!…ウルザ!」
呆然とするあたしのの耳に、キムチさんの感極まった声が届く。
「えっ…ウルザさん!?」
「ええーっ!?」
「ウルザ様?あれが…」
「あっ、アルフラも…!」
ウルザさんの後ろに、アルフラとアイスフレームの隊員が何人か控えていた。
「ほら、お行きなさい」「…」
「アルフラ…アルフラ…!良かった…よかった…」
アルフラはウルザさんに背中を押されると、キムチさんに向けて駆けていく。アルフラを抱きとめたキムチさんは、笑いながら涙を流した。
「ありがとう…ウルザ。」
「ええ、みんな…少しの間我慢してね。こいつら、やっつけちゃうから」
ウルザさんは魔物たちの方を見て、次にあたし達の方に目を向けた。
「皆さん、まだ余力はありますね?」
「あ、はい!大丈夫です!」
有無を言わせぬ迫力に、なんとなく背筋を正して返事してしまう。
「ウルザ様、ボクも行けます!」
「分かりました、お願いします」
元気よく返事したサーナキアさんとあたしに向けて軽く頷いて、ウルザさんは一歩前に出た。
「最優先事項は、ここにいるモンスターの排除。および非武装者の保護。…では、作戦開始!」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
ウルザさんの号令で、アイスフレームの隊員たちは一斉に動き出した。あたし達もなんとなくこの辺かな、というところに混じって敵に向かっていく。
「ぐおおおおおおお!」
当然のことながらモンスターも黙っていない!咆哮をあげて襲い掛かってきた!
「があああ!」「なにくそー!」がきぃん!「ぐあっ!」
疲れてるけどそうもいっていられない!気合を入れて魔物兵の斧を受け流し、装甲の隙間に斬り付ける!
サーナキアさんや兵士達も魔物と武器を交え始めるが、魔物の数は多い!指揮を執っているウルザさんに向けてすり抜けた魔物達が突っ込んでいく!
「ウルザ様!危な…」
「はっ!」どすどすどすっ!
警告よりも早く3本の矢が放たれ、それぞれ目、額、心臓を射抜かれたモンスターがもんどりうって倒れた!
「オノレ女ぁ!」「…」
しかし矢を掻い潜った魔物兵がウルザさんに向けて斧を振りかぶる!しかしウルザさんは顔色一つ変えずにボウガンを腰のホルスターに収め、ショートソードを抜いた!
「死ねぇ!」「しっ!!」「がああああっ!?」
ウルザさんは振り回された斧を紙一重の見切りで掻い潜り、ショートソードで魔物兵の脇腹を深く裂く!
「はああっ!」「「ぐあああああっ!!」」
敵中に飛び込んだウルザさんがショートソードを振るえば、モンスターたちが次から次へと血を吹き出して倒れていく。
動きそのものはそこまで早くはない…けど、回避にも攻撃にも一切無駄がない。自らの危険を顧みず、常に最善の結果を求める…そんな決意を感じる戦い方だ。
「すごい…これが…ウルザ様…?」
「そう、これが、これこそがウルザよ!」
はしゃぐキムチさんを一瞥し、ウルザさんは残りの敵に向けショートソードを掲げた。
「さぁ!あともう一息です!一気呵成に行きますよ!」
「「「おおおおーっ!」」」
あたし達は鬨の声を上げてモンスターたちに襲い掛かったのだった。
「おっ、居た!お前ら無事かーーー!」
「あっ、お兄ちゃん達だ」
モンスターたちがすっかり片付いたころ。ようやくランスお兄ちゃんたちが合流してきた。
「あーきたきた。遅いよー」
「何を手間取っていたんだ?」
「へ?お前ら、大丈夫だったのか?」
「ああ、この方のおかげでな…」
「………」
サーナキアさんが指先の直線上に…ちょうどロッキーさんに向けて歩いていていたアルフラちゃんがいた。
「はぁ?このがきんちょが?」「………?」
視線が集中したアルフラちゃんは足を止めて不思議そうに首を傾げる。
「この方のおかげって…まさかアルフラが伝説のスーパー戦士だった…とか?」
「なわけないでしょ、あっちよあっち。ほらアルフラちゃんは行って」「…」
アルフラちゃんはなんやねん、という顔をしてロッキーさんの方に行き、向こうからウルザさんが歩いてきた。
「おお、ウルザちゃん、無事だったの…ん? なんだかビジュアル的に違和感が…」
「ランス様、ウルザさんの足、足…」
「お…おお!ウルザが…ウルザが立った!」
お兄ちゃんは驚きのあまりなんだか後ろでやぎさんが踊りだしそうなリアクションをとった。
「ええ、あれからこっそり、一人で訓練していたの」
「そうだったのか…うむ、俺様のおかげだな」
「はい、ありがとうございます。…もう…大丈夫です」
ウルザさんはお兄ちゃんに向けて笑い、お兄ちゃんもうむうむと偉そうに胸を張った。
お兄ちゃんがウルザさんに陰で何をしてたかわかんないけど、なんかひどいことをしていただけじゃなかったんだな。まぁそれはいつものことか。
「ところで、お前らなんでこんなところでうろうろしてたんだ。脱出しろと言っただろう」
「それが、なんか脱出しようとするたびにモンスターに邪魔されて、挙句には囲まれちゃってさ」
「ああ、まるでこちらの動きを読んでいるようだった…」
「パットンもそんなこと言っていたな」
「その読みは正しいですよ」「ん?」
ウルザさんが口を挟んできた。
「今はどこに逃げても無駄です。ここを攻めたのは、れっきとした魔軍の一団。組織だった行動をとる者たちです。おそらく、逃げようとすれば斥候がそれを知らせ、戦闘専門の部隊が派遣される。そういう仕組みになっているかと」
「そんな連中がおるのか」
「なるほどなー…」
魔軍は普通のモンスターとは比べ物にならないほど厄介、というのはこういうところか。
山賊と軍人は実は一人一人の腕前でなら大差ないけど、集団戦では軍人の方がはるかに強い、みたいなもんだね。
「魔軍の部隊はモンスターを組織立って行動させる能力がある、魔物隊長や魔物将軍という指揮系モンスターが率いています。この規模でしたら、魔物隊長1~2体といったところでしょうか…それを倒せば、統制は取れなくなり脱出も可能となります」
「そいつはどこにいるんだ?」
「ええ、すでに斥候を出して場所は特定済みです。行きましょう」
「じゃあとっととそいつらを倒してトンズラするぞ」
お兄ちゃんはそういうと歩き出した。子供たちや兵士たちも後に続く…が、ウルザさんはいない。どうかしたかな?と振り向いた瞬間。
少し離れたところで、ごっ…とウルザさんがアベルトさんの顔を殴っていた。そのままアベルトさんは転倒する。
「…ダニエル………」
「…知って………」
ウルザさんは尻もちをついたままのアベルトさんにいくつか言葉を吐き捨てて、こちらを向いてまっすぐ歩いてきた。
「あ、あの…ウルザさん?」
「何でもありません、もう用は済みました。行きますよ」
「あ、はい…」
有無を言わせぬ様子でさっさと行ってしまうウルザさん。
「あん?ウルザちゃんとアベルトの奴、なんかあったのか?」
「さぁ、なんか知らんが…いいパンチだったぞ」
「感心するところそこ?」
「いや、前までのあの人は壊れ物みたいでおっかなかったろう?でも今は凛々しくて、背中を預けられる…いい女じゃないか」
「む、ウルザちゃんは俺様のだぞ やらんぞ」
「いや、そういう意味じゃ無くてなぁ…」
パットンさんとお兄ちゃんがアホなことを言っている向こうで、アベルトさんも立ち上がってこっちに着いてきたようだ。
何があったのかは…後で聞けばいいかな。あたし達はとりあえず足を前に進めたのだった。
何度か魔物部隊を撃退して進んだ先で、ウルザさんが前方を指さした。
「見えてきました。あの中央にいるのが魔物隊長です」
前方にいるモンスターの一団。その真ん中に大きな剣を持ったひときわ大きい青い人型モンスターがいた。
「よし、アレを倒せばいいんだな」
「はい、かなりの強敵です。周囲の雑魚を倒してから一斉攻撃を…」
「うむ、よし!行くぞ!」
あたし達は武器を抜いて魔物隊長に襲い掛かった!
「なに?!人間どもがここまで来ただと!? ええい!我らはサイゼル閣下直属の特別遊撃隊!人間どもなどに遅れは取らぬわ!刀の錆にしてくれる!」
「錆になるのは貴様だ!死ねーーーーーーーー!」「ぬうっ!」がきぃん!
ウルザさんの言葉も無視してまっすぐ斬りかかったお兄ちゃんの一撃は、魔物隊長のでかい剣にがっきりと受け止められた!
「惰弱な人間めが!」「がはははははは!どっちが惰弱か教えてくれるわ!」
そのままお兄ちゃんと魔物隊長はがきんがきんと剣を交え始める!
「敵の統制が乱れました!今のうちに取り巻きを各個撃破してください!」
ウルザさんの指示が飛び、あたし達も魔物と戦い始めた。
「どりゃー!AL魔法剣!」「ぎゃー!」
目の前の魔物をやっつけて視線を巡らせた。
「たあああっ!」「はああっ!」きぃんきん!
魔物と戦うサーナキアさんの背後から別の魔物が襲い掛かろうとしている。…助けに入るか…と思った瞬間。
「しっ!」どすどすっ「ぎゃあああああああああああ!」
ウルザさんが放った三連ボウガンの精密射撃が背後のモンスターの手に突き刺さる!
「「たあーーー!」」「ぐあああっ!」
すかさず走り寄ったレジスタンス兵士の攻撃を受け、モンスターは崩れ落ちた。
「エールさん!手が空いたのでしたらこちらで負傷者の治療を!」
「あ、はい!」
こんな感じでウルザさんが全体を見据え、危険なところは援護し、配下の兵士を手足のように操って指揮を執ってくれるので、あたし達は圧倒的に有利に戦うことができていた。
「ぐっ…おい!あの指揮官を…」「どこ見てる!」ずばっ!「ぐああああっ!」
魔物隊長もウルザさんを仕留めようと指示を出そうとするが、間近で渡り合うお兄ちゃんがそれを許さない。
そうこうしているうちにあっという間に取り巻きは片付いて、満身創痍の魔物隊長だけになっていた。
「がははははは!残りはもうお前だけだ!刀の錆になるのはお前のようだな!」
「ぐっ…くそっ!人間が…舐めるなああああああああ!」「しっ!」どすっ「がっ…!」
力を込めて剣を振り回そうとした魔物隊長の目に、ボウガンの矢が突き刺さる!
「もらった!ランスあたたーーっく!」「ぎゃああああああああああああ!」
その隙を見逃すお兄ちゃんではなく、魔物隊長は木っ端みじんに吹き飛んだのだった。
「これで大丈夫です。モンスターは統制が取れなくなりました。今のうちに脱出しましょう」
「うむ、そうだな…って、どこに向かうんだ?」「ええ、それは…」
「ウルザ様、戻りました!」「報告を」
ちょうどお兄ちゃんが首を傾げた時、偵察に出していたらしいレジスタンス兵士が戻ってきた。
「はい、この近辺には今のと同じ規模の魔軍部隊が数部隊活動していて危険です。琥珀の城、ナガールモールなどの大都市も大軍に包囲されているようです…しかし、首都ラグナロックアークは現在のところ正規軍が魔軍を押しとどめているそうで、現状安全な場所は首都のゼス城しかないと思われます」
「え?ゼス城?あたし達レジスタンスには危険じゃない?」
「それに魔法使いじゃない人は入れてもらえないんじゃないだすか?」
口々に疑問を漏らすあたし達に、女兵士は報告を続ける。
「それなんですが、現在は城門は解放され、身分を問わずに避難民の受け入れをしているようです」
「ガンジー王の命令でしょう…通常時では通らなくても、非常時ということで押し切ったのでしょうね」
ウルザさんは軽く目を閉じ、そしてお兄ちゃんに向き直った。
「わたしたちもゼス城に向かいます。よろしいですね?」
「う、うむ…」
なんだか有無を言わせぬ迫力があるウルザさんの言葉に、お兄ちゃんは頷いた。
「では、出発します」
ウルザさんを先頭に、あたし達は森の中を進み始める。
「………………」
なんだかお兄ちゃん、なんかつまらなそうな顔をしてるなぁ…。
「シィルさん、お兄ちゃん、なんか…」
「はい、多分ウルザさんが元気になったのはいいんですが、印象が変わってしまったのと…あと、仕切られているのが気に入らないのかと…」
「あー…そっかぁ…」
「おへそを曲げられないといいのですが…」
あたしとシィルさんは内心戦々恐々としながら、みんなの後に続いたのだった。
どうにかたどり着いたゼス城の城門は確かに開かれていた。
城門の前に陣取った兵士が、入ろうとする人々に大声で呼びかけている。
「この城に避難することを許可します。ルールは一つだけです。魔法使いもそうでないものも共に手を取り合って協力すること。それができないものは入れられません。ガンジー王の命令です…繰り返します…」
特に文句はなかったので、あたし達は子供たちも一緒に城門を潜った。
アホみたいに広い城内だがものすごい数の人がいて、それぞれ集団で固まって座りこんでいるが…
「魔法使いとそうじゃない人たちも普通に話してるね」
「うん、ほんとだ」
「ここに入る条件を守っているのでしょう。ですが、これは表面的なものです」
ウルザさんは冷静な顔でそれを見つめている。
「今は魔軍の侵攻というパニック、非日常の中ですから、魔法使いとそうでない者たちが協力する、という非日常も受け入れられているんです。問題は…これからです」
「へぇー…」
なんだか難しいことを考えているなぁ。
そうこうしているうちに見つけた適当な場所に腰を下ろし、ようやくあたし達は一息ついた。
「ふぃー…どっこいしょっと」
「はぁー…非戦闘員を連れてここまで来れたのは運が良かったな」
サーナキアさんがため息をついてぼやいた。
「ふん、俺様がいるんだ。当然だ」
「でも、驚いたよね。道中で魔軍と戦ってる人たちがいたけど…」
「ああ、ゼス軍や守備隊に混じって、民間人やペンタゴンの連中が戦っていた」
なーんか見たことあるような人たちがちらほらいたんだよね。たぶんフットさんのところの兵士かな?
「ま、非常事態だからな。あのテロリストどもも目が覚めたんだろ」
「ああ、非常事態だ。ここもいつまでもつか…」
「それくらいどうとでもなるだろ。あー疲れた疲れた…」
厳しい顔のサーナキアさんの目の前で、お兄ちゃんはごろんと寝転んだ。
そこに、どうやら貴族らしい男が声をかけてくる。
「ウルザ様、ガンジー王がお呼びです。至急、おいで願えますか?」
「分かりました、すぐに行きます」
「え?ウルザさん王のところに行くんですか?」
「はい」
なんでもない事のように答えるウルザさん。それを見てお兄ちゃんも立ち上がった。
「あのおっさん、俺たちがマナバッテリーを壊したことを知っているだろう。ひょっとしてウルザちゃんを…」
「行ってみないと分かりませんが…大丈夫です。私が何をしているのか知った上で呼んでいるなら…目的は、見当がついています」
「リーダーのウルザちゃんに責任を取らせる気か?だとしたら行かせられんぞ」
ずい、と前に出るお兄ちゃんに大して、ウルザさんは笑って見せた。
「ふふ…ある意味そうかもしれませんが。ここから先は、私にしかできない…私がしたい、そして私がしなくてはいけないことです。仮に、私の身に何があったとしても」
「お、おう…」
「では、行ってきます。」
静かな決意を込めたウルザさんの言葉に、あたし達は何も言えなくなった。
「ああ、それと…全員に通達します。もうレジスタンスとして動く必要はありません。一人一人が、それぞれやらなくてはならないことを見つけて、積極的な行動をお願いします」
ウルザさんは姿勢を正し、アイスフレームの隊員全員に向けて命令した。
「では、無事でまた会いましょう」
それだけ言って、ウルザさんは呼びに来た男と一緒に城の方へと歩いていった。
「すっかり変わったねぇ、ウルザさん」
「道すがら、どんどん調子を取り戻したって感じだなあ」
「…ちっ、つまらん。エッチやりにくい雰囲気になっちまった」
そして、お兄ちゃんは舌打ちを一つして寝転んでしまった。
しばらくそのまま待機していると、守備隊の制服に身を包んだ女性が広場の真ん中にやってきた。
「あれ、あの人…」
「治安本部で殺されかけてた隊長さんですね。」
「たしか春川さんって言ったっけ。無事だったんだ」
ツインテールの女性隊長は拡声器のスイッチを入れ、呼びかけを始める。
「ガンジー王からの連絡です!我々はこの城を放棄し、安全なアダムの砦へと向かいます!」
「困難な作戦となるでしょうが、力を合わせて脱出しましょう!出発は明朝!準備をお願いします!」
「そして、戦闘員が不足しています!ゼス軍や治安隊だけではとても足りません!」
「条件は、15歳以上の方!戦闘経験の有無は問いません!戦う勇気のある者は、義勇兵として参加してください!」
「希望者は、巨大噴水前にお集まりください!無論、魔法使いもそうでないものも問いません!」
「一人でも多くの参加を待っています!」
隊長さんは頭を下げ、別の広場に歩いて行った。いろんな場所で呼びかけをするんだろうな。
「ボクは行こうと思う。騎士として当然の行為だ。皆はどうする?」
「そうだな、タダメシを食うってのも落ち着かないしな」
「仕方ないわね…こうなったら乗り掛かった船だわ」
「うん…じっとしてるわけにはいかないよね」
「わたしも行きます!みんなを守るの!」
みんなけっこうやる気みたいだ。勢いでカーマも立ち上がったが…
「お嬢ちゃん、さっきの隊長さんが言ってたろ?15歳以上が条件だ。ここで弟妹たちを守ってくれや」
「パットンさんの言う通り。君はここでキムチさんと一緒にいるんだ」
「うう…」
パットンさんとアベルトさんにたしなめられて、キムチさんの元に戻っていく。
「カーマは、あたしの手伝いをしてちょうだい。これからいろいろ大変なんだから」
「はーい…」
どうにか収まった、ということで、あたし達も行かないとかな。
どっこらしょ、と立ち上がって、シィルさんと一緒に寝転んでいるお兄ちゃんの顔を覗き込んだ。
「んじゃ行こうか、お兄ちゃん」
「ランス様、私たちも行きましょう」
あたし達をじろりと見返したお兄ちゃんは、寝返りを打ってあたし達に背を向け…
「いやだ」
それだけ答えたのだった。
読んでいただき、ありがとうございます。
状況が錯綜しているので、以下に状況をまとめときます。
・ゼス各軍の現状
光軍
マジノラインを超えてきた魔軍と戦闘し、かなりの被害を出している
首都に撤退中
雷軍
本拠地琥珀の城を放棄し、首都防衛中
氷軍
ナガールモールに籠り魔軍と戦闘中
炎軍
サバサバを中心に活動中、魔軍先鋒を撃退してゼス北東部を保持
・各都市の状況
首都ラグナロックアーク
雷軍と光軍の残存戦力に護衛され、もともとの堅牢さもあり未だに健在。
しかし住民、避難民併せて500万超を抱えていて物資が不足している。
四天王の塔は破壊された王者の塔以外包囲され、各塔で防衛を続けている。
ナギ、パパイアの両四天王は出頭命令を無視している。
北西部パリティオラン
マジノライン麓の都市。抵抗できず魔軍に制圧されている。壊滅状態。
北部ナガールモール
ゼス北部、かつてヘルマンへの備えとして建造された古い城塞都市。
キナニ砂漠によって隔てられているのでとっくに意義を失っているが防壁は健在。
魔軍の大部隊に包囲されているが、
周辺の避難民を受け入れ、その中から選出した義勇兵部隊と氷軍が協力して防衛を続けている。
西部マーク
マジノライン麓の都市。抵抗できず魔軍に制圧されている。
守備隊が一部の住民を護衛して首都まで脱出に成功したが、それ以外はほぼ壊滅状態。
南部琥珀の城
ゼス南部の都市で雷軍の本拠地…だが、雷軍は暴動対応で出払っていたため守備兵力はほぼ0。
あっという間に魔軍に占領され、住民はオールドゼスに向けて脱出した。
城主ラドンとその家族は暴動に巻き込まれた時点で行方不明。
南東部バス
ゼス南端部、シナ海沿いにある灯台都市。
暴動が治まらず、小規模な魔軍部隊にあっさり占領された。
脱出した住民はオールドゼスに逃げている模様。
東部オールドゼス
シナ海沿いにある港町。
もともと暴動が治まらなかったところに大量の避難民が押し寄せてきて大混乱。
魔軍はまだ攻めてきていないが、抵抗どころではない状況。
炎軍とカイズに救援を求めている。
北東部イタリア、テープ、サバサバ
炎軍が保持している。
イタリア、テープでは魔軍の侵攻の報により暴動は鎮静化したが、まだ一部で暴動が続いている。
サバサバは現状平和だが、街を収める外務長官宇垣が行方不明になった。
この状況で、首都から北東の日曜の塔、魔軍が近寄らないハニワ平原、まだ占拠されていないイタリア、α要塞を通過してアダムの砦への脱出計画が立案され、実行に移されようとしている。