【脱出集団の護衛任務】
ようやくお兄ちゃんが働く気になってくれた
あたし達はグリーン隊のまま活動するらしい
なんか特殊部隊みたいでかっこいいね
「戻ったぞー」「ただいまー」
「お疲れ様でした。どうでしたか?」
見回り任務を終えて司令部テントに戻ってきたあたし達を、全身ギラギラゴテゴテピカピカスパンコールな四天王山田千鶴子さんが迎えてくれた。
間違いなく美人ではあるんだけどお兄ちゃんの表情はうかない。普通の服を着てくれればなぁ…ってところかな。
「イカマンが近くをうろついてたからボコったくらいで特になんもなかったな。今晩はイカカレーだ」
「そうですか。無事で何よりです。西第八地区は問題なしと…では、次の任務があるまで休んでいただいて結構ですよ」
山田さ…千鶴子さんは見た目通り…いや見た目通りでは全くないが、服装を見ずに顔だけ見れば見た目通りの、所謂出来る女ってやつだ。あたし達と話しながら情報魔法でものすごい量の事務作業をこなしている。
しかも一日中こうして魔法を使っているためレベルも結構高く、山田さんと呼ぶとものすごい顔で睨んでくる。噂だと黒色破壊光線を使ったりするとか。怖い。
「うむ、しかし地味な任務ばっかで退屈だぞ。もっと派手でぶわーッとしたカッコいい仕事はないのか」
「今は魔軍の追撃も止んでいて、戦える人たちを休ませる絶好の機会なんです。貴方達にはガンジー王も期待されているようですから、いずれ重大な任務が任されるかもしれません。その時まで待っていてください」
「ふーむ…まぁよかろう」
あたし達は司令部から立ち去った。
というような感じで、あたし達もしばらくのんびりと適当な任務をこなし、合間に休んだり適当に冒険に出かけたりして過ごすことになった。
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「ハニー造幣局で桜の通り抜けをやるらしい。早速行くぞ」
「え?お花見するの?」
「ランス様、こんな時だからこそ楽しみを忘れないんだすな…流石だす。おら、頑張ってお弁当を作るだ」
「馬鹿を言うな、この機会にハニー造幣局に侵入して金を根こそぎ頂くのだ」
「えーっ!?」
という感じで出かけた秋の森は、いつもと違ってハニー造幣局周りの柵が取り払われていて、笛や太鼓が鳴り響いてにぎやかな雰囲気だ。まぁこんなご時世だから人は居ないけどね。きゃんきゃんやハニーが楽しそうにしているくらいだ。
「造幣局の敷地内には入れたけど…」
「お兄ちゃんが脅かしたせいで正門を閉められちゃったね」
「ええいうるさい。ほかの出入り口を探すぞ」
「秋なのに桜ってなんだか変ですよね」
「こっちの方には…出入り口らしきものはありませんね。」
「建物の裏側に裏口とかないかしら?」
「フェンスがあって向こうに行けないね」
「桜並木を突っ切れば行けそうだな」
「おや、君たち。あの桜並木を通るのかい?」
話し込むあたし達の前に、説明ハニーがひょこッと現れた。
「お目が高いねぇ。あの向こうの造幣局の裏庭には伝説の桜があるんだ。その桜の下でキスをした恋人たちには、永遠に別れることのない契約が掛けられるんだよ」
「げっ、なんてウザい契約…」
お兄ちゃんは顔をしかめたが、かなみさんをはじめ女性陣には結構好評だ。やっぱ永遠の愛ってのはいいもんだよね。
「そこに行くためには、二人の力で道を切り開かねばならないんだ。具体的には、この桜並木に二人組で突入して試練を乗り越える必要があるのさ」
「ふーむ、そうなのか。まぁ契約はする気はないが、向こうにはいきたい…」
「ほーん。ランスは行くやろ?誰と行くん?うちとかおすすめやでー」
「うむ、誰と行くかな」「うわ、つれないなー」
「…」そわそわ
「…」どきどき
コパンドンさんをスルーしてお兄ちゃんは悩み始め、シィルさんとマリアさんはなんとなくそわそわし始めた。
わかりやすいなぁ…とはいえあたしって線もあるかなー?いや、別に契約をするわけじゃないからどうってことない選択なんだけどね!うん!でもお兄ちゃんがどうしてもっていうならー…
「ねーパットン。これが桜なのー?」
「いやぁ、ヘルマンにはあんまり咲いていないからなぁ。実物を見るのは初めてなんだが…なかなか見事なもんだ」
そんな挙動不審なあたし達の後ろで、パットンさんとカロリアが並んで桜を眺めている。
「むっ、こら!パットン!俺様の女にコナをかけるんじゃない!」
それを見たお兄ちゃんがそちらに走っていく!
「はぁ?そんなつもりは…」
「ふん、知ったことか!いいから離れ…(ぐきっ)おわっ」「ぬおっとと…」がしっ
そして足を桜の根っこにひっかけて躓き、桜並木の中に一歩踏み出したパットンさんにキャッチされた。
「大丈夫かい隊長?」
「こらっ、男が俺様に触るな…ん?」「あん?」
そして二人は仲よく並んで桜並木を歩き始めた。
「うお、うおおおおおおお!?」
「お?おおおおお?なんだこりゃあ!?足が勝手に動くぞ!?」
「えっ?えー?」
「言い忘れてましたが、並木道に二人で入ると自動的に進むようになっているよー。がんばってねー」
「先に言えー!」「勘弁してくれー!」
「あ、あー…どんどん行っちゃいます…」「うー…」
説明ハニーに文句を言いながらも二人はどんどん先に行ってしまい、あたし達はそれを見送るしかなかった。
並木道の奥から二人の声が聞こえてきた。
『第一の試練、二人で並んで歩け…合格』
「勝手に歩かせてるだけだろがー!」
「なんなんだこれは!」
『第二の試練、二人で手を繋げ』
「………………ファイトぉーーーーーーーーー!」
「むっ…いっぱーつ!」がしっっっっ!
「「タウリン1000mg配合、リポ〇タンD!鷲のマークの大〇製薬!」」きりっ
『第二の試練…合格』
「いいのかこれで…」
「いいみたいだな…くそっ、思わず手を取ってしまった…」
『第三の試練、熱い抱擁をせよ』
「……………………はっけよい!」
「の、のこった!」がしっ!
「「のこったのこった!のこったのこった!」」
『第三の試練…合格!』
「取り組んでおいてなんだが、本当にこれでいいのか…?」
「ハニーのやることはわからん…」
『おめでとう!君たちは素晴らしいカップルだ!さああの桜の下で永遠を近いたまえ』
「「するかーーー!」」
桜の下で、お兄ちゃんとパットンさんの叫びが響いたのだった。
正直お兄ちゃんとなかなかイイ男のパットンさんが二人きりで桜並木という美少女汁がちょっと漏れそうな展開ではあったが、なんだか面白い方に転んでしまったな。まぁ二人が仲良さそうで何よりだけど…
仕方ないのであたし達もお兄ちゃんとパットンさんの声を頼りにフェンスを乗り越えて合流し、裏口をこじ開けて侵入したハニー造幣局の中は、出来立てのGOLD貨幣でいっぱいだった。
早速袋に詰めて持ち帰ったのだが、帰ってから調べてみるとなんだかぶにぶにと変に柔らかかい。お金だけどなんかヤダ…
調べてみると、ゴールデンハニーの死体から切り出したばかりのGOLD貨幣は最初はこんなもので、これから1年くらいかけて干して固めないと通貨としては使えないらしい。
そんなに長い事持ってられないので、コパンドンさんに引き取ってもらった。コパンドンさんは寝かせておくだけで金になるなんてええ商材やとホクホクしていたが、骨折り損のくたびれ儲けだ。
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朝起きてぶらついていると、お兄ちゃんとシィルさんが連れ立ってるのを見かけて何の気なしに声をかけた。
「あれ、二人とも。どこ行くの」
「なんだ、エールか。黄色いトリからお告げがあったのだ。シィルの最強武器を取りに電卓キューブに行ってくる」
黄色いトリ…?なんだそりゃ。なんか聞いたことがあるようなないような。それよりも…
「電卓キューブ…聞いたことないけどダンジョンか何か?あたしも行っていい?」
「それが、運命の人とでないと最強武器は手に入れられないそうで…」
「え?運命の人と?」
「そうなんです…運命の…えへへ…」
シィルさんは嬉しそうにくねくねしている。まぁそれはわんわんに食わせておくとして、いいなぁ最強武器。あたしのアリスの双剣は置いてきちゃったしなぁ…取りに行く暇もなさそうだし…うーん。あ、そうだ。
「なにをしとるんだ、さっさと行くぞ!」
「あ、はい…すみません」
「そうだ、お兄ちゃん。敵に魔人がいるみたいだし、カオスを持ってきてくれるようにセルさんに手紙を出しておこうか?」
「む…そうだな。あの駄剣に頼るのはシャクだが、背に腹は代えられん。エール、お前から出しておけ」
「はーい、やっとくね。二人とも気を付けてねー。」
「うむ、行ってくる」
そう言って二人はどこかに行ってしまった。そういえば電卓キューブがどこにあるのか聞いていなかったなぁ。
まさか魔物界の上空に浮かんでいるとかじゃあるまいし、日帰りできる程度の場所なんだろな。
あたしは二人を見送ると、早速セルさんに手紙を書いた。
『お久しぶりです。あたしはお兄ちゃん達と元気にやってます。
もう聞いているかと思いますが、ゼスに魔軍が攻めてきて大騒ぎになっています。おまけに魔人がいるので、カオスが必要です。
出来ればゼスまで持ってきてくれませんか?ついでにあたしのアリスの双剣も持ってきてくれたらうれしいです。よろしくお願いします。エールより』
書き終えた手紙をその辺にいた郵便屋さんに渡してお願いした。いつもの等々力さんじゃなかったからちょっと心配だけど、まぁたぶん大丈夫だよね。
実際お兄ちゃんとシィルさんはその日の夕方には帰ってきた。シィルさんは最強武器だという魔法のかかった手袋を嬉しそうに撫でていた。シィルフィードというらしい。
確かに強い魔力を感じるし、シィルさんによく似合っている。いい物をもらったなぁ…
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コパンドンさんは資産を運用しつつプルーペットやゼスの人たちと丁々発止と交渉していろいろやっているらしい。
一度70万Gもの大金をぽいとゼスに寄付してしまったことがあり、大丈夫なのか聞いてみると、
「かまへんかまへん。これくらいゼス上層部に食い込むには必要な投資やねん。それにな、これゼスの株暴落を見越して仕込んだ空売りで儲けた金が元手やし…こういう金はいい事に使わんとビリケンさんに嫌われてまうからなー」
だそうだ。商売のことはよくわかんないけど、そういうものらしい。
「あ、そういえばな。うちこの間Mランドを買ったんや」
「へー。Mランドをですか…えっ?Mランドを!?」
コパンドンさんは何でもないように言ったが、Mランドと言えばレッドの傍の遊園地都市だ。規模はそんなに大きくないとはいえ、れっきとした都市国家である。
「それって買えるものなんですか…?」
「まぁ、近くにあるちっこいティラギって国を買収するついでに、ちょちょいとな。元々大赤字抱えとったし、遊園地の維持とか、いろいろ細かい条件を付けたら案外あっさり買えたんや」
「はえー…」
「まぁ、今色々ランス好みに改装中やけど、落ち着いたら遊びに来るとええ。エールちゃんなら優待パスいつでもあげるさかい。ほななー」
そう言ってコパンドンさんは去っていってしまった。正直八百屋のダイコンか何かみたいに国だの都市だのを売ったり買ったりするのは…金持ちの間では普通なんだろうか?
それにしてもコパンドンさん、なんかやたら上機嫌だったなぁ。何かあったのかな?
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「あれ?何か上流から流れてくるわ」
近くにあった川沿いで、薪を拾うついでに志津香さん達と魔法の訓練をしていると、水面の岩に向けて射撃訓練をしていたマリアさんが怪訝な声を出した。
「なんだろ、桃とかかな?」
川から流れてくるものと言えば桃だ。中には魔物が入っていて、倒すと桃シリーズというアイテムを落とす。冒険者にとってはボーナスステージだが、一般人にとっては危険な代物なのだ。
もし桃だったらキャンプまでたどり着いたら危ないし、ここで拾っておかないと…いや、茶色いし桃じゃなさそうかな…?
「ねえ…あれ人じゃない?」
「「「ええっ!?」」」
カロリアちゃんが指さす先を見てみれば、確かに顔は見えないけど、鎧を着ている人間のような…
「大変だわ!助けないと!」「し、死体じゃないよね…」「たぶん…」
「ひー、なまんだぶなまんだぶ…」「あれ?この人良く見たら…」
「「「ロッキーさん!?」」」「げーっほげほげほ…」
みんなで騒ぎながら引き上げてみると、なんとそれはロッキーさんだった。
「大丈夫?いたいのいたいのとんでけー…」
「げほっ…ありがとうございますだ、エール様…」
「それはいいんだけど、どうして川なんかに…?」
「うう…それが…それが…ランス様が…」
ロッキーさんは濃い顔から涙と鼻水をだばだば流しながら語ったことによると、なんとお兄ちゃんは『16名編成だから男は要らん』とロッキーさんを崖から突き落としてしまったのだそうだ。
「ひ…ひどい!」
「やっていい事と悪い事があると思います…」
「あいつ、人のことをなんだと思ってるのよ!」
「い、いくら何でもお兄ちゃんでもそこまでは…しないかなぁ?いや、するかも…」
「確かめに行こ。もし本当にランスがやってたら、ダメだよって言わないと」
あたし達は魔法ハウスのお兄ちゃんの部屋に押しかけて問い詰めると、お兄ちゃんは犯行を認めてしまった。
「うう~…おら、ついていくだすよー…」
こんな目に遭ってもロッキーさんはお兄ちゃんについていく気のようだ。健気にもほどがあるけど、本人がまだそう言うなら仕方がない。
いくら何でもひどいよ、と一同で囲んでとっちめて、もう二度とやらないことだけは約束させた。
本当に予想外…というかいくら何でもそりゃーないだろって行動を平然とする人だ、良くも悪くも。
何度かそれで事態が打開できた面もあるけれど、誰かが見てないといつかとんでもないことをしてしまうかもしれない。今後も目を離さない様にしようとあたしは思ったのだった。
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あとはまぁ、日々適当な護衛任務をこなしつつ、
ウルザさんがバリバリ仕事をしているのを見かけたり、
カロリアちゃんがご飯をもりもり食べた挙句にぴかぴか光ったのをみんなで囲んでやんややんやしたり、
キャンプ内をのしのし歩いているカバッハーン将軍に精霊がじゃれついているのを目撃したり、
サーナキアさんがランスアタックを習得しようとして結局無駄骨になったり、
志津香さんが人探しを千鶴子さんに頼んでいるのを見かけたり…
そんな感じで過ごしていたある日。あたし達はいつものように司令部テントに呼びだされた。
「今度はどこの護衛任務だ?そろそろもっと派手な…」
「今回のは護衛任務ではありませんよ。こちらをどうぞ」
「ほう?どれどれ…『ナガールモールの部隊との接触』…?」
「はい、詳しく説明しますね。魔軍の大部隊に包囲されているナガールモールですが、どうやらまだ陥落していないようで…」
お兄ちゃんが手渡された資料を読み上げると、山田さんは手をちょちょいと動かしてあたし達の前に資料の画像を浮かべ、説明を始めたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
原作では、とっくに陥落して住民皆殺しになっているナガールモールですが、いろいろあってまだ持ちこたえています。
状況については次回をお楽しみに。
私事ですが、自分は親の代からの横浜ファンで、ベイスターズが日本シリーズに出たぞー!と盛り上がっていたのですが…
ソフトバンク強いですね。思えば巨人も阪神も広島も調子が悪かったから横浜が勝てたのであって、横浜も十分打線は冷えてたんですよねぇ…
せめてもう一回横浜スタジアムで試合して欲しいものです。
以下、妄想です。
山田千鶴子
Lv45/50
魔法1 情報魔法2 経営1
ゼス四天王筆頭。ゼスでも貴重な情報魔法のエキスパートで、いわば人間コンピュータ。
サボり気味のガンジーと長官達に代わっていろいろな仕事を高速でこなし続ける。
貴族出身だが、名門校在籍中に情報魔法の適性を見出されて、情報長官ノエマセの部下として招聘されそうになる。
生理的に嫌だったが断れるはずもなく、泣く泣く従おうとしたところにガンジーが横槍を入れ、四天王選抜試験を受けさせて世襲制ではない初の四天王として抜擢した。
千鶴子は感謝したが、別に粗略に扱うつもりはなかったノエマセとしては顔に泥を塗られた形であり、抗議として仕事をサボれば千鶴子がそれをこなしてしまう…という形でガンジー一派とはさらに対立を深めていくことになった。
仕事をしない腐敗長官達にはあのアホ共!とキレているが、
向こうからしたら喧嘩を売ってきたのはガンジーの方ではある。
(だからといって仕事をサボるのは言い訳にはならないが)
このあたりの政治的な対立と原因については主君ともども全く無自覚。
後にチョチョマンにわかりやすく諭されるまで気づくことはなかった。
レベルこそ高いものの、指揮はともかく自分で戦闘をしたことは数えるほど。
しかし地道に訓練を積んだ結果、身に着けている強力な魔具の効果と、生体コンピュータとの並列接続を合わせることで疑似的な黒色破壊光線を放つことが可能になった。
いざという時のとっておき、まさに切り札だが、アニスが漫画読みながら小指一本で放つ黒色破壊光線に威力で劣っていることを知って凹んだ。
なお、ファッションセンスは生まれつきである。幼稚園の頃からキラキラの折り紙で服を自作していて、年を経るごとにどんどん服装が派手になっている。
RA15年ごろには巨大クリスマスツリーが歩いているような有様になる見込み。