【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【志津香の仇討ちを手伝え】

志津香さんの両親の仇であるラガールという男なのだが
そいつが四天王ナギの父親である可能性が高いらしい
それを知ったとたん志津香さんは飛び出して行ってしまった
一人で行かせるわけにはいかないし、追いかけよう


62.エールちゃんは仇討ちに付き合う

「はーい。確かにお預かりしましたー」

「よろしくお願いしますねー…ふぁぁ…」

 カイズ宛の手紙を渡した郵便屋さんがたったかたーと去っていくのを見送って、あたしはあくびをひとつ漏らした。

 ナガールモールから帰ってきてからしばし。護衛任務だー見回りだーヒーリングだーと忙しかったがようやく時間が出来たので、エリザベートへの手紙を書いたんだけど…ちょっち寝不足だ。

「ふぁー眠い…。お兄ちゃんの魔法ハウスで一眠りしよっと」

 あたしは踵を返して歩き出す。テントもいいけどやっぱちゃんとした建物でベッドで眠りたいしね。それにシャワーもあるしシィルさんのご飯も出てくる。部屋は余っているんだけれども…

「いつでも来ていいぞ。だが男とブスは禁止、かわいい女の子だけだ。がはははは」

 などとお兄ちゃんが言ったものだから基本的にみんな利用しないのだ。

 仕方ないのでかわいい女の子であるところのあたしが遠慮なく使ってあげているのに、お兄ちゃんは渋い顔をしている。失礼だと思う。

 ちなみに郵便屋さんはいつもの等々力さんではない。最近姿を見ないんだよね。まあいつも元気モリモリな人だし、大丈夫だとは思うけど…

 等と考えつつ歩いていくと、前方から男女が言い争っているのが聞こえてくる。

「おいこら、どこへ行くつもりだ」

「どこでもいいでしょ!」

 見れば、志津香さんとお兄ちゃんがなにやら押し問答していた。

「ナギのところに行くのか?あそこの塔は今…」

「そんなことはわかってる!」

「わかっとらんだろうが。あんなところに一人で行っても…」

「これは私の問題なの!放っておいてって言ってるでしょう!」

 志津香さんはお兄ちゃんの伸ばした手をバシッと払うと、そのままつかつかとどこかに行ってしまった。

 いつものことと言えばいつものことだけど…なんかちょっと様子が違うなぁ。

「お兄ちゃん、どうかしたの?…そんなに痛かった?」

 あたしは手をさすって顔をしかめているお兄ちゃんに歩み寄って声をかける。

「ああ、エールか…おい、急いでグリーン隊の部下共を集めろ。すぐに出るぞ」

「え?どういうこと?」

「良いからさっさと行け。説明は道中でしてやる」

「…?わかった」

 よくわかんないけど急ぎであるらしい。あたしは皆を集めるために走り出したのだった。

 

 魔想志津香さん。あたしとはリーザス解放戦争の時にカスタムで出会った、クラシックな魔女スタイルで決めた魔法使いさんだ。

 一見冷静でクールな印象を受けるのだが、実は激情家で情にも脆いところがある。

 お兄ちゃんが『俺様の女』と呼ぶ女性の中では、かなみさんと同様に明らかにお兄ちゃんを嫌っているんだけど…いつもなんだかんだ冒険に付き合ってしまっているのは、親友のマリアさんのことを想ってなんだろうな。

 魔法の実力に関しては一流と言ってよくて、あたしの魔法修行にも時々付き合ってくれるんだよね。おかげであたしも魔法使いとしては0.75人前くらいにはなれたように思う。

 そんな志津香さんとマリアさん、ミルちゃんに、今はカスタムの都市長をしてるエレノアさん…いわゆるカスタム四魔女と言われる彼女たちが、カスタム陥没事件(あたしも孤児院で噂を耳にしたけど、まさか解決したのが自分の兄だとは思わなかった)を引き起こした張本人だ、ということは聞いていたんだけど…

 みんなあんまり話したがらないし、カスタムの人たちも志津香さん達のことを悪く思ってはいなさそうだったしで、まぁなんか事情があったんだろうと深く聞いたりはしなかったんだよね。

 というわけでうし車の中でお兄ちゃんとマリアさんに事情を聴いたのだが…

 

 まず、志津香さんのご両親、惣蔵さんとアスマーゼさん‥も魔法使いだったのだが、志津香さんが生まれてすぐにお父さんは殺され、お母さんは攫われてしまったらしい。

 ご両親の弟弟子だったラギシスという人に保護された志津香さんは、ラギシスが開いた魔導塾で魔法使いとしての修行をしていたが…ある日、志津香さんの両親とラギシスの師匠であるミステリアという魔女と出会った。

 出来の悪い弟子だったラギシスが塾を開いたと聞いて様子を見に来たミステリアは、自分の弟子のアスマーゼそっくりの志津香さんをいたく気に入ったらしく、弟子に誘ったがラギシスにそれなりになついていた志津香さんはそれを断ったそうだ。

 ミステリアはそうかい残念だねぇイーッヒッヒッヒ、と笑うだけだったが、去り際に父親を殺して母親をさらったのは、自分の弟子であったラガールという男であると教えた。

 それから志津香さんは、復讐のためにより一層修行に精を出すようになったらしい。

 そして、志津香さん達が成長した後…ラギシスが野心をあらわにした。実は魔法の指輪で弟子たちの魔力を奪って最強の存在になろうとしていたのだ。

 そのことを知った志津香さん達カスタム四魔女は反逆の少女たちしてラギシスを倒したのだが、その時の余波でカスタムの街は陥没してしまう。

 そして魔法の指輪の影響で暴走した四魔女はそのまま街に結界を張って支配し、地下の迷宮に閉じこもってしまった。

 そこにやってきたのがお兄ちゃんとシィルさんだ。二人は妹のミルちゃんを連れ戻しに来たミリさんと力を合わせて四魔女を倒して、そして指輪の力で復活したラギシスもなんだかんだボコボコにして、指輪の力を手に入れて…タグが面倒になることに全部使ってしまったそうだ。

 魔法使い40人分の魔力を吸収した指輪の力はものすごいもので、ラギシスもでたらめな強さだったらしいのだが…そんなことに全部使ってしまうなんて…

 まぁお兄ちゃんらしいよね。強さや権力なんてやりたいことをやるための道具だ、って前に言ってたし。

 と、いうのがカスタム陥没事件の顛末になる。

 

 んで、一件が落着したあと、マリアさんは魔力を失ってチューリップとかの研究に精を出すようになり、ミルちゃんはミリさんのところに帰ってなかよし薬屋姉妹に戻り、エレノアさんはカスタムの都市長に就任してカスタムの復興にまい進し、志津香さんは復讐のためにラガールを探しはじめた。

 んで、先ほどゼス四天王、ナギ・ス・ラガールの父親の名前がチェネザリ・ド・ラガールであり、強力な魔法使いであることを知った志津香さんは…こいつに違いない、きっとそうだ、とお兄ちゃんが止めるのも聞かずに飛び出していったしまったのだそうだ。

 

「え?じゃあ志津香さんは…」

「ああ、ナギのいる日曜の塔に行ったんだろう」

 お兄ちゃんは苦い顔をしている。

 首都周辺にある四天王の塔はもう防衛する意味はないからということで、ガンジー王は塔から引き上げて脱出集団に合流するようにナギに連絡したのだが、ナギはなんでかこれを無視。塔から離れずにいるらしい。

 ついでにパパイアも無視して塔に残ってるそうだが…まああの人はいいや。怖いし。

「四天王の塔って軍事要塞だし、地上部分も十分危険だよねぇ…」

「そんなところに一人で向かったのか…」

「うう…志津香…」

 マリアさんはすごく心配そうだ。

「そういう事だ。あのイノシシ頭が塔に突っ込む前にどうにか追いつくぞ」

 お兄ちゃんの言葉に、あたし達は頷いたのだった。

 

==================================================

 志津香は日曜の塔を臨む丘の上に一人で立っていた。

 塔はすっかり魔物たちに包囲されている。まだ陥落していないということは、誰かが残って戦っているのだろう。それが探し求めた人物である保証はないが…可能性は高い。

 行かない、という選択肢はない。あの日から、ずっとそのことだけを考えて生きてきたのだ。なんとしても突破して、探し求めたあの男に…

 志津香は決意を込めて呪文を唱え…

 がばっ!「もがっ!?」

後ろから、急に口をふさがれた。

==================================================

 

「何をやっとるんだバカが…!」

「ん--!んん---!」

 魔軍の後ろから白色破壊光線をぶち込もうとした志津香さんを間一髪捕まえて、皆の待つ茂みまで引きずってきたお兄ちゃんが小声で怒鳴った。

「うるさい…私は…」

「そうだよ、志津香…危ないよ!魔軍があんなに居るのに…」「…っ…」

 それでもにらみ返してきた志津香さんだが、涙目のマリアさんに迫られて流石に目をそらした。

「とりあえずさー、志津香さん。冷静になろうよ。一人じゃ塔の踏破もあの包囲の突破も難しいよ…」

「…エール、これは私の問題なの。悪いけど口を出さないで」

 うーん。めっちゃ頑なになってるな…どうしたものか。放っておくとまた一人で突っ込みそうだし…

 首をひねると、お兄ちゃんがこっちを見ているのと目が合った。お兄ちゃんは何か思い出したような顔をした後、志津香さんの前に回り込む。

「おい、志津香。どうしてもお前はあの塔に登ってラガールとか言う男を探すというのだな」

「…ええ。そうよ。止めるなら容赦はしないわ」

「うむ、そうか…ならば勝手にするがいい」

「ちょっとランス!?」

「わかってくれたならそこを退いて…」

「だが!」

 押しのけて塔に向かおうとした志津香さんに、お兄ちゃんはびしっと指を突き付けた。

「俺様もナギに用がある!だから俺たちも勝手にあの塔に登るし…お前に死なれても困るから、勝手にお前と一緒に行く!いいな!」

「ランス…!」「ランス様…」

 なんだか聞いたことがあるようなセリフで、お兄ちゃんは勝手に同行することを宣言した。

「………………はぁ…………好きにすれば?」

 志津香さんは帽子のつばを軽く引き下げて、ため息をついたのだった。

 

 というわけであたし達も塔に向かうことになったのだが…まずは魔軍の包囲網を破らないといけないよね。

「で、どうするのお兄ちゃん?」

「まぁ適当に突っ込めば行けるだろ…うん、あの辺だな。よーし!ものども、続けー!突撃だ!がはははははは!!!」

 お兄ちゃんはまたしてもしゃきんと抜いた剣を振りかざし、こちらに背を向けている魔軍の部隊に突っ込んでいった。

「しかし、いつもながらすげぇ勢いだなあ…」

気力(SP)スタミナ(AP)も消費しない雰囲気の突撃だよねー。突撃-零-って感じ。」

「何言ってるの。さっさと私たちも行くわよ」

 あたし達はお兄ちゃんの後について突っ込んでいった。

「あんな適当に場所を決めて大丈夫だろうか…」

「うーん、いつものことだし何とかなるんじゃない?」

 

 実際何とかなった。

 なんか覚えがある流れでお兄ちゃんを先頭に魔軍の陣営に突っ込んで大暴れし、

 なんか覚えがある流れで勘に任せてお兄ちゃんが方向を変えて突っ込んでいったら、

 なんか覚えがある流れでその先には魔軍の司令部があって、

 なんか覚えがある感じの軍服女の子モンスターが指揮を執っていたので、

 なんか覚えがある流れでまわりの護衛をボッコボコにぶちのめして、

 なんか覚えがある流れでお兄ちゃんが女の子モンスターに襲い掛かり、

 なんか覚えがある流れでタグが面倒になる感じにしたところ、

 なんか覚えがある流れで魔物兵たちはとっとと逃げてしまったのだ。

 

「あーすっとした。ナギの前に軽くウォーミングアップと言ったところだな。がはははは!」

「ううううううう…またか…またお前か…なんなんだよぉ…人間のくせにぃ…ううぅ…部隊を貸してくれたジーク様になんて言えば…」

 がはがは笑うお兄ちゃんの後ろで軍服姿の女の子モンスターはしくしく泣きながら服を直して、よろよろと逃げて行った。

「なんかナガールモールでも指揮を取っていたよね、あの子」

「ちょっと気の毒ではあるわね…」

「でも、女の子モンスターで魔軍の一員だしなぁ。…殺しとかなくていいのか?」

「それもそうではあるんだけど…」

「俺様が可愛い女の子を殺すなどするわけなかろう。また戦場であったらいてこましてくれるわ」

「お兄ちゃんがこうだからね」

「まぁランスだからね…」「ランス様ですから…」「隊長だからなぁ…」

「…」「あっ、志津香!待ってよ!」

 あたし達がうむうむと頷いていると、用は済んだとばかりに志津香さんは歩き出した。

「別に着いてきてほしいなんて言っていない」

「あーもう志津香ったら…」

「仇討ち…か…」

 志津香さんはさっさと塔に向かってしまい、パットンさんはそんな志津香さんの背中を見て顎を軽く撫でた。

「パットンさん?」

「何でもない。仇討ちってのは…やっても殺された奴らが生き返るわけでもないし、恨みの連鎖にしかならん事だが…それでも、やらなくちゃ先に進めない奴もいるのさ。」

「パットンさん…」

 お兄ちゃんのことじゃないだろうし、ヘルマンにそういう相手がいるんだろうか?

「志津香の嬢ちゃんがそういう状態なら、俺達にできることをしないとな」

「うん…そだね」

「こら、勝手に仕切るんじゃない」

 パットンさんはお兄ちゃんにどやされ、あたし達は志津香さんを追いかけて塔に侵入したのだった。

 

 塔の中はもうすでに入りこんでいたモンスターだらけで、あたし達はそいつらを適当に蹴散らしながら登っていく。

 当然要塞でもあるので、いろいろなトラップやら仕掛けやらが侵入者を阻むようになっていたんだろうけど…

 

「うわ、魔物兵がまる焦げ」

「この通路は電撃罠があるみたいね、迂回しましょ」

 

かちっ「うわっ、なんか踏んだぞ」

びーっ!びーっ!びーっ!

「警報よ!警備兵が来るわ!」

「「「…………………………」」」

「来ないね警備兵」「兵士も引き上げてるのかしら?」「人騒がせな!」

 

「なんだこりゃあ、血まみれだぞ」

「落とし穴に落ちて串刺しになったデカントが暴れたんだね…なむなむ」

 

「なんだこりゃ、ハニーの破片と…矢が刺さったモンスターの死体?」

「ハニーを盾に突破しようとしたのかな…」

「よし、俺様たちはパットンとロッキーを盾に突破するぞ」

「やめときなさいよ…ほら、迂回ルートはこっちよ」

 

 もうすでにモンスターたちがそれらに引っかかって死骸を晒していたので、あたし達はそれらをひょいひょい乗り越えながらどんどん先に進むことができた。

「重要機密だらけだわ…あ、このトラップは最新式の…報告しがいがあるわね」

 かなみさんはホクホクしながら取り出した巻物にいろいろと書きつけている。仕事熱心でいい事だ。

「我は第七軍、第6中隊長アンブレラ。この塔は既にわれらが制圧中である。人間よ、おとなしく降伏するがいい。命だけは助けてやろう。我が中隊の奴隷としてだがな」

「ふん、魔物はやはりあほだな。どちらが強いかもわからんというなら俺様が…」

「白色破壊光線!」

「「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」」」

「…ちっ」

 道中で魔物隊長あたりが立ちふさがったが、お兄ちゃんとぐだぐだ言っているうちに魔法をぶち込まれて壁のシミになった。

 その後も志津香さんは魔物相手にバンバン魔法をぶっ放すわ、ようやく出てきた起動していないトラップドアを志津香さんが魔力づくで解除するわで…正直飛ばし過ぎだと思う。

「あの、志津香さん。ヒーリングは…」

「いらない」

 ヒーリングを申し出てもこの調子だ。仕方ないな…

「…んじゃ勝手にかけますね。いたいのいたいのとんでけー」

「……」

 志津香さんはこちらをちらりと見て、何を言おうか迷った末に何も言わずに先に行ってしまう。

「ご、ごめんねエールちゃん…」

「いや、いいですよ。それより早く追いかけましょう」

「そうね…ありがとう」

 あたし達は、志津香さんの後を追いかけて…とうとう最上階にたどりついたのだった。




読んでいただきありがとうございます。

よろしければ、お気に入りここすき評価感想等いただけると作者はめっちゃ喜びます。

エガちゃん「うわーんナガールモール攻略失敗で微妙に肩身が狭いよー」
ジーク様「気の毒に…それなら残る四天王の塔攻略を代わっていただけませんか?」
エガちゃん「えっ…?はい!ありがとうございます!やります!」

エガちゃん「マジノラインの解体は進んでないし、今再起動したら退路を断たれる!今のうちに最後のマナバッテリーを破壊しておけば再起動を防げるわ!攻撃開始!」

みたいなことがありました。
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