【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

188 / 198
ー任務表ー
【魔軍突破作戦】

じりじり移動してきた脱出集団だが、とうとう魔人率いる大規模な軍団に回り込まれてしまった
後方からも敵が追撃してきている
お兄ちゃんの魔剣カオスと、秘密兵器Mボムで魔軍を殲滅して突破するのだ



68.エールちゃんは氷の魔人に遭う

 人間は魔人に勝てない。これはこの世界における常識である。

 魔人はどいつもこいつもめちゃめちゃ強い上に、カオスや日光がないと破れない無敵結界という文字通りのチートを身にまとっているからだ。

 レッドに襲来した魔人サテラ一人に人類最強クラスのリックさんやリーザス軍のみなさん、ついでにあたし達全員まとめて捻られてしまったのは記憶に新しいし、古い話でいうなら昔々の大昔、JAPANから大陸に進出し人類圏を席巻したJAPANの藤原石丸は鬼のように強かったらしいが、差し向けられた魔人一人に敵わず殺されてしまい、彼のカリスマに頼り切りだった藤原軍はあっという間に散り散りになってしまったという。

 その時に大陸各地にJAPAN出身の日本人が散らばったので、どこの国にも志津香さんみたいなJAPAN系の名前を持つ人がいたり、JAPAN系の文化が残っていたりするんだそうな。

 

 とまぁ、当たり前の常識の話をしたわけなのだが…これはあくまで個人戦の話であって、軍団戦となると少し話が変わってきたりするんだよね。

 なにせ魔人も生き物である。疲れるしお腹もすくし眠くもなるしトイレにも行く。多分。

 なんかこう…疲れたりしない機械の身体を持っていて、『24アワーアーン365デイ!オールタイムでいわゆる一つのキル、あなた!メイクドラーマー!』みたいなことをぬかすやばい魔人ももしかしたらいるのかもしんないけど、少なくともあたしは見たことないし、今ゼスには来ていない。

 そうなると、軍を率いてやってきた魔人が前線で暴れて兵士たちをぶち殺してぶち殺してぶち殺してぶち殺したとしても、流石に万を超える軍を殺しつくすことは難しい。

 人間側も魔人以外を攻撃して兵士に被害を与え撃退することはできるし、もし仮に全滅さえしなければ…なんか変な作戦で勝利(とんちで大逆転)することも、理論上は出来る…んじゃないかなぁ。

 そして魔人も暴れ疲れて動けなくなったところを拘束されれば、そのまま魔封印結界だの儀式魔法だので封印されたりもする。

 そういったダサい末路をたどった魔人の記録もなくはないのだ。例えば昔あった東部オピロス帝国とかいう国は、なんやかんや物語として語り継がれるよう(ロマンシングサガ)な戦いの末、暴れてた魔人をどうにか捕らえて、有名な仲の悪い格闘家親子の息子がVハゲ親父にしたみたいに大陸の端からポイして倒したそうな。

 それでオピロス帝国は、「魔人相手でもワンチャンある?」「行けるか?」「イケるんちゃう?」「なら…やったるか!」という感じで魔軍に戦争を仕掛けた。仕掛けてしまった。

 オピロス帝国は結構強く、もしも魔人が一人づつ時間を空けて襲撃してくるなら7人くらいはどうにか出来たのかもしれなかったが、舐められてキレた魔人10人以上が一気に来たので…まぁダメだった。

 最終的に死滅戦争と呼ばれるようになったその戦争は例のエスクードソードが魔王を殺せるレベルで起動するくらいの大惨事になったらしいのだが…今は関係ないから置いておこう。

 なんでそんなこと知ってるかって?アリオスさんと一緒に行動してた頃、彼が留守の時に魔人対策について調べてたら、スリアさんがどっかから持ってきてくれたぼろっちぃ本に書いてあった…らしい。知らん文字で書かれてたのをスリアさんが読んでくれたのを聞いただけだし、ほんとかはわかんないけどね。

 

 というわけで、魔人相手であってもこちらが大軍ならどうにかなる…場合もあるんだけど。それは防衛戦でなら撃退できる可能性があるってだけで勝てるってわけではないんだよね。

 特に今やってる難民集団を護衛しながら進むなんて状況だと、魔人の軍に追いつかれれてしまえば終わりだ。

 食い止めることすらできない魔人に護衛を突破され、傷口から魔物兵が侵入し、あっという間に地獄絵図になるだろう。

 そして、今ゼスに居る3人の魔人、カミーラ、ジーク、サイゼルのうち、カミーラは首都ラグナロックアークで捕虜をいじめる程度でダラダラしていて、ジークはなんかこそこそ暗躍しており、比較的おとなしくしているのだが、氷雪魔人サイゼルはまじめに4万くらいの軍を率いて脱出集団を追撃してきている。

 サイゼル軍に追いつかれるわけにはいかない脱出集団は、決死隊だの籠城戦だの罠だの火計だの水計だの橋破壊だの毒だの流言だのいくらこぼれ丼食べ放題だの誤情報だの偽看板だの偽妹作戦だの…とにかくありとあらゆる妨害を仕掛けてサイゼル軍との接敵だけは避けてきたのだが、目的地のアダムの砦を目前にしてとうとう追いつかれて前方に回り込まれてしまった。

 さて、どうしたものか…ってところに、魔人への対策手段となる魔剣カオスを抱えてうちのお兄ちゃんが戻ってきたのだ。ガンジー王たちは大喜びしてお兄ちゃんをおだてておだてておだてまくり、いい気になったお兄ちゃんはがはははは、俺様に任せておけとバカ笑いして…

 

「で、こうなってんのね」

 あたし達はだだっ広い平原に立っていた。正面には数えるのもイヤになるくらいの魔物軍。サイゼル軍の本隊だ。

「ったく、なんで俺様が囮などしなきゃならんのだ」

「お兄ちゃんが安請け合いしたからでしょ…」

「そうよ。それにカオスを持ってるのはあんたなんだから、たまには人の役に立ちなさい」

「そうですよ、ランスさん。私もですが、ガンジー王も他の皆さんも期待していますよ」

 お兄ちゃんはぶつくさ言い、かなみさんとウルザさんにたしなめられた。

 ウルザさんは今日は司令部待機ではなく、今は兵力が必要だとあたし達に同行しているのだ。相変わらず工作員スーツの角度の覚悟がすごい。

「ちっ…おい、シィル、例の爆弾はちゃんと持ってるな?」

「は、はいランス様…でもこれ…危ないんじゃ…怖いです…」

「俺様はそんなもん持ちたくない。お前が持っとれ」

「ひぃん…」

 シィルさんが青い顔をして抱えている、丸い物体の名前はMボム。あのパパイアが作った、スイッチをぽちっと押すと半径2㎞以内のモンスターをすべて跡形もなく消し去るくせに人間には一切の効果がないというヤバい爆弾である。

 Mボム量産の暁には魔軍など物の数ではないわ!と言いたいところだけど、偶然の産物で量産は出来ないらしい。

 しかも逆の人間だけ殺してモンスターは殺さないmボムも出来てしまったとかで、よりにもよってそのmボムで例のアニスが遊んでいて…うう。

 思い出したくないからこれ以上はよそう。とにかく、こちらの作戦はあたし達が暴れて暴れて暴れまくって、出てきた魔人サイゼルと魔剣カオスで戦って、モンスターが集まってきたところでこのMボムを起爆。敵集団をポンと消し去って全滅させようというものなのだ。

「まぁまぁお兄ちゃん、こうして出てきちゃった以上やるしかないよ」

「ちょうどいい感じに敵先鋒がこっちに来てるわ。まずはあれから始めましょうか」

「そうですね。本部に合図を出します」

「あー…めんどくせー…」

「はよ魔人を斬りたいのう」

 おにいちゃんはぶつくさ言いながらも物騒なことを言うカオスを担ぎ、あたし達も武器を構え…襲い掛かってきた魔物達との戦闘に突入した!

 

===================================================

「「「「「うおおおおおおお!死ね人間ども!」」」」」

「来るよ!」

「けっ!俺様の剣の錆になりやがれー!」

「いや、儂、さびませんよ?」

 

 がきんがきんどかんどかーん!わーっわーっ!

 名誉ある突撃ヒーリングヒーリング火爆破三式弾精密射撃振動パンチロッキートマホークブーメラン連続斬り火丼の術ニードルシャワー乱舞おみくじ連続射撃氷雪吹雪ボウガン連射無形柔術渾身の一撃電磁結界ニンニク突き武舞乱舞手裏剣しゅっしゅAL魔法剣ALスラッシュ白色破壊光線ランスアタックランスアタックランスあたたたーっく!

 ちゅどーん!うぎゃーーーーーーー!

===================================================

 

「はぁ……はぁ……倒したぞ……これで何回目だ…?」

「ひぃ……ひぃ……わかんない…」

「26波目を撃退しましたね…」

「これくらいでへばってどうする。儂が若かったころはもっと…」べしっ「ぐえっ!」

「うるさい黙れ、クソ剣…はぁ」

 お兄ちゃんが大儀そうに地面に叩きつけたカオスを担ぎ直す。そろそろ戦闘が始まってから二時間くらい、目立つところに陣取るあたし達はずっと戦いっぱなしだ。

「大丈夫ですか?いたいのいたいのとんでけー…」

「ほれ、口に入れときな」

 戦闘が収まったのを見計らって、シィルさんが負傷者にヒーリングして、プリマさんがちょっとの水と小さな飴玉を配って回る。

「これだけか?もうちょっと寄こさんか」

「あんまりガブガブ飲むと出したくなるよ。戦場の真ん中で漏らしてもいいなら」

「ちっ」

 お兄ちゃんは飴をバキバキと噛み潰して水で流し込みながらあたりを見回した。

「しかし、周りの連中はだいぶ減っとるな」

 あたし達と同じように周辺の部隊も魔軍を撃退し続けていたのだが、結構な被害を受けて撤退した部隊もいて、もうすでにこのへんでぴんぴんしている部隊はあたし達くらいだ。

「ええ、しかしこの損害は計算のうちです。犠牲になった人たちのためにも、ここで引くわけにはいきません」

「そうだ、550万人の難民の命は我々にかかっているんだ。」

「ちっ、面倒だが…こうなったらやってやる!ものどもかかれー!」

 サーナキアさんウルザさんの真面目組にどやされて、お兄ちゃんは再び剣を担いで敵に突っ込んだ!

 

===================================================

「「「「「うおおおおおおお!死ね人間ども!」」」」」

「鼻息荒いなぁ」

「なにを!返り討ちにしてやる!うおおおおお!!!」

「こっちも大差ないか…」

 

 がきんがきんどかんどかーん!わーっわーっ!

 名誉ある突撃ヒーリングヒーリング火爆破三式弾精密射撃振動パンチロッキートマホークブーメラン連続斬り火丼の術ニードルシャワー乱舞おみくじ連続射撃氷雪吹雪ボウガン連射無形柔術渾身の一撃電磁結界ニンニク突き武舞乱舞手裏剣しゅっしゅAL魔法剣ALスラッシュ白色破壊光線ランスアタックランスアタックランスあたたたーっく!

 ちゅどーん!うぎゃーーーーーーー!

===================================================

 

「ふん、俺様に歯向かうとは馬鹿な奴らだ、これで敵は総崩れだな」

「そんなわけあるか。今のはただの一小隊だ。戦闘はまだまだこれからだ!」

「この戦争好きが…」

「やっぱ鼻息荒いねぇサーナキアさん」

「何度も突っ込んで見事にダウンしてたのにねー」

「憧れのシチュエーションなんでしょうか…」

「元気だけは見習いたいわ」

「なんだと!?ボクは騎士として任務を…」

「わかったわかった。じゃあ少し戻って休憩を…」

「馬鹿を言うな、あっちで友軍が崩れかけている。今横槍を入れられれば助けられる、すぐに行こう」

「うーむ、モンスターがいっぱいいそうだしやだなぁ…」

「お兄ちゃん、あの隊の隊長さん女の人だよ」

「む?…ほんとうだ、健気に戦っているぞ。うむ、なかなか可愛いし助けてエッチだ。側面から突入して一気に切り崩すぞ!突撃!」

 

===================================================

「「「「「うおおおおおおお!死ね人間ども!」」」」」

「どいつもこいつも言ってることが変わりばえせんな」

「なんかもう慣れてきちゃったね」

「このバカ兄妹!そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

「はいはい…」「わかっとるわ」

 

 がきんがきんどかんどかーん!わーっわーっ!

 名誉ある突撃ヒーリングヒーリング火爆破三式弾精密射撃振動パンチロッキートマホークブーメラン連続斬り火丼の術ニードルシャワー乱舞おみくじ連続射撃氷雪吹雪ボウガン連射無形柔術渾身の一撃電磁結界ニンニク突き武舞乱舞手裏剣しゅっしゅAL魔法剣ALスラッシュ白色破壊光線ランスアタックランスアタックランスあたたたーっく!

 ちゅどーん!うぎゃーーーーーーー!

===================================================

 

「はぁ…倒したぞ。しかしなんだかさっきから戦闘の内容がずっと同じなような…」

「これまでさんざん魔物兵相手の集団戦を書いてきて、流石に描写も種切れだから勘弁してほしいらしいよ」

「何を言っとるんだお前は…まぁいいか。それより…くそっ、あのミリリッカとかいう隊長を助けたのはいいが、エッチする前に退却されてしまったな」

「でも、あの隊長さんが助かってよかったじゃない。けっこう可愛かったし」

「せやせや、幸薄そうな顔やったし、あのままだったらろくな目に遭ってなかったで」

「はい、皆さん。おにぎりだす。食って力つけてくだせぇ」

「ありがと、ロッキーさん」

「俺様にもよこせ…もぐもぐ。しかしいつまで戦えばいいんだ。周りの連中はほとんど退却しちまったぞ。いったん俺様達も…」

「戻るわけにはいきませんわ。わたしたちは囮になり、できるだけ魔物を引き付けるのが任務です」

「くそ、誰だこの作戦を立案した奴は!俺様を嵌めやがったなー!」

「……」

「どうしたのウルザさん、明後日の方向に目をそらしちゃって」

「いえいえ、なんでもありませんよ」

「もぐもぐ…ごくん。ごっそさん。ん?前方に羽の生えた美しいねーちゃんたちの部隊がいるではないか!」

「えっ!?ランスさん、あの部隊は…」

「どうせなら戦うならあいつらがいい!捕まえてエッチするのだ!がははははははは!」

「あっ、突っ込んで行っちゃった」

「兵士は偽エンジェルナイト、そしてあの旗印…間違いありません!あれは魔人サイゼルの直衛軍です!」

「えーっ!」「あの馬鹿…!」

「あはははは!でも放っておくわけにはいかないよねぇ!いつものことだし何とかなるって!いっくぞー!」

「エール!?」

「カカカカカッ!いつか戦わなきゃいけない相手だしな!パットン・ミスナルジ、行くぜぇ!」

「うちはランスの大吉君パワーを信じるで!突撃やー!」

「あ、わ、私も…」「おらも行くだす!」

「あの疫病神ー!!!」「あーもー!」

 という感じで突っ込んだあたし達と、

「がははははは!おっ!いい感じのねーちゃん!」

 相変わらず緊張感のないお兄ちゃんの前に、

「へー、人間の癖にイキのいいのがいるのねえ、このサイゼルに真正面から突っ込んでくるなんて」

 頭にはベレー帽と悪魔の角、背中に翼。片手に冷凍銃を持った堕天使…氷雪魔人サイゼルが姿を現したのだった。




読んでいただきありがとうございます。

評価お気に入り感想ここすき等、頂けると大変うれしいです。

以下、妄想です。

東部オピロス帝国

はるか昔、魔王ナイチサの時代、今の自由都市のあたりにあった人間の国。
当時JAPANを支配していた藤原家とも協力関係であったため、藤原石丸が暴れ出した時も攻め込まれたりしなかった。
藤原石丸の敗北後、どこかからやってきた謎の魔法使いに教えられた死人の経験や記憶を受け継ぐ方法を使い勢力を拡大していき、とうとう力に溺れて暴れ回っていた下級魔人を捕えて殺す(死因は落下中の餓死)までに至ったが、調子に乗って魔王に戦争を仕掛けた挙句にぶっ潰されてしまった。
帝都は完膚なきまでに破壊されてしまったが、術法研究所の地下深くに作られていた禁呪の封印書庫だけは残った。
数百年が経って魔王ジルの治世となり、オピロス帝国の名前もすっかり忘れ去られたころ、ガイという名の人間の魔法戦士が禁呪を求めて封印書庫を訪れることになる。

ちなみに死人の経験や記憶を受け継ぐ方法を教えた魔法使いは悪魔であり、記憶の伝承に使用した魂は悪魔のものになってしまうという代物で、歴代皇帝の魂は全て悪魔の玩具にされてしまっている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。