「とまあ、勇んでラジールに向かったはいいんだけど……」
「追い返されちゃいましたね……」
「まあ、当然といえば当然よね……」
さあ次なる冒険の舞台へゴー! という感じで向かったラジールの街だが、街の門がへルマン軍により封鎖されていて入れなかったのだ。
「いかに俺様が最強無敵戦士とはいえあの人数の兵士は少し面倒だ。どっかにルートはないのか?」
バサッとマップを広げ、皆で覗き込む。
目的地のラジールの街は交通の要所であるので、道は四方に伸びているけど……カンラの北にはティティ湖が、南にはちょっとした山脈があって通れないんだよね。
ラジールを通れないとなると、ティティ湖の北はまた山で通れないから、カンラの南の山脈西側を迂回するルートだけど……あ、コーも今はゾンビで通れないんだった。
「うーん……いっそのこと一度アイスに戻って、ジフテリアまで回ってカスタムを通って行く……とか?」
「めんどい。却下だ」
ランスお兄ちゃんはあっさり却下した。
それはそう。二週間はかかるし。あたしも嫌だ。
「うーん……あ、ランス様。この線はなんでしょう?」
シィルさんが指差した地図上の薄い線。それはカンラから出て、南の山脈を貫いてカスタムに続いている。山脈のところには小さい文字で何か書いてある。
「なんだろこれ? 悪魔……回廊?」
「知らんな。誰か知ってるか?」
みんなは首を横に振る。悪魔回廊……なんかイヤな名前だなあ。
「ああ、悪魔回廊は町の南にある抜け道ですよ」
突然声をかけられて、そちらに顔を向けてみれば、
「えっ、知ってるんです……か……」
端的にいうと痴女がいた。
下着同然みたいな服の上に思いきり着崩した神官服を羽織っている。顔立ちは清楚な美人と言ってもいいが、なんかもう……表情から自分の欲のことしか考えてないことがもりもり伝わってくる。なんだこの人? まるで信仰心を感じない……
「うげ、ロゼじゃないか」
お兄ちゃんが珍しく美人を見て渋い顔をしている。
「知ってる人?」
あたしの疑問にはシィルさんが答えてくれた。
「ロゼさんです。カスタムの街で神官をやってらした方……のはずなんですが……」
「うわ、本当に神官なんだ……そういうお店の人じゃなくて……」
「そういうお仕事もしますよー?
あたしの中の最低番付の前頭のあたりをすごい勢いで駆け上がっていく。……なんだこの人……
「ええい、それよりお前はその悪魔回廊とやらを通ってカスタムからここに来たのか」
「ええ。カスタムがへルマンに攻められたので、逃げてきたんですよ」
「なにっ!? カスタムが!?」
街を捨てて一人で逃げてきたのかこの人……最低番付でもう幕内入りした。
「お兄ちゃん知らなかったんだ、あたしがジフテリアにいた時にカスタムにへルマン軍が向かってるって聞いたよ」
「むむむ、そうか……俺様の女達が危ない!」
どうやらカスタムにもお兄ちゃんのガールフレンドは居るらしい。
「ところでランスさん。その女の子は……?」
ロゼとかいう神官……痴女があたしに目を向けている。
「俺様の妹だ、手を出すなよ」
「へぇー。ランスさんに妹が? ……ねぇ、お嬢ちゃん。気持ちよくなれてお金ももらえるお仕事に興味なーい? 貴女みたいなのも結構需要あるわよー」あたしの顔を覗き込んで、ロゼはニヤニヤと笑った。
「結構です!」「変なことも言うんじゃない!」
あたしが断ると同時にお兄ちゃんが割り込んでくれたが、もうこれは最低番付の大関昇進は確実だ。何一つめでたくはないが。
ロゼはクスクス笑って離れ、
「私はしばらくあの宿屋に居ますから、興味があったら訪ねてくださいねー」と去っていった。
なんとなく沈黙が流れたが、かなみさんが咳払いして切り出した。
「こほん。で、どうする? 悪魔回廊に行くの?」
「うむ、やつが通ってきた以上通れるはずだ。カスタムで俺様の女達が救いを待っている!」
「ラジールのローラさんを見つけるはずじゃあ……」
「前に行ったことありますが、ラジールはこっそり入るにしても南からの方が入りやすいですよ。門がぼろいですし」
「ほう、そうなのか。まあいい、ともかく悪魔回廊とやらに行くぞ!」
こうしてあたしたちはカンラから南に向かい、悪魔回廊に突入したのだった。