【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【魔軍突破作戦】

じりじり移動してきた脱出集団だが、とうとう魔人率いる大規模な軍団に回り込まれてしまった
氷の魔人サイゼルもどうにかやり過ごしたし、とうとう秘密兵器Mボムの出番だ


70.エールちゃんは目撃者になる

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「ところで…ここは一体…私は確か、脱しゅ…移動中に魔軍に捕まって…」

「君は魔物将軍に捕まっていたのだ、奴らは頭のいい女の子を腹に入れる習性があるからな」

「ああ…そうなんですか。ありがとうございます。このお礼は…」

「いや、気にせんでいいぞ。なぜなら…」

「今からいただくからな!がははははははー!」

「えっ、急にこんな…いやーっ!」

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 と、いう感じで無駄に勇壮なBGMが流れてタグが面倒になりそうな光景が後ろで繰り広げられている一方で、ウルザさんはいつの間にかやってきていた伝令兵さんと何やら話していた。

「本部からの伝令ですよー。そろそろ爆弾を作動させるように、とのことですー」

「わかりました」

「ところで、私も聞いていないんですが…爆弾っていったいどんなやつなんです?」

「それはですね………その前に、失礼ですがどこかでお会いしたことがありませんでしたか?なんだか顔に見覚えが…」

「え!?いえいえー!そんなことはありませんよー。では私はこれで!」ぴょーん「あっ」

 なんかどっかで見たような元気な伝令兵さんはぴょいんぴょいーんと跳ねてどっかに行ってしまった。すごい脚力だなあ。

「すごい伝令兵さんだねぇ」

「そりゃあこんなところまで来るくらいだからなぁ」

 あたしのぼやきに、カロリアちゃんを肩車したパットンさんがあたりを見回しながら相槌を打つ。

「どうだ、カロリア」

「んーーーーーーー…うん。周りぜーんぶモンスター。数えてたら日がくれちゃう」

 周囲をぐるっと囲んでいる魔物たちは、魔物将軍をボコったあたし達にビビっているのか遠巻きに囲んでいるだけだが…それでも完全に包囲されていることには変わりはない。今はじっとしているからいいが、動き出せばひとたまりもないだろうし、さすがにあたし達だけで突破なんて無理だ。

 …あの伝令兵さんはどうやってここまで来たのかな…まぁいいか。

「では、やはりそろそろ爆弾を使うときのようですね…」

 カロリアちゃんのあげは情報で、あたし達はいよいよ覚悟を固めた。

「ふ~い。なかなかえがった…どうしたお前ら」

「あ、お帰り。そろそろ爆弾を起動するころだってさ」

 そんなところにお兄ちゃんがカチャカチャとズボンを直しながら戻ってきた。後ろの方ではすっかりダウンしたイーディスさんをシィルさんが介抱している。相変わらず大変だなぁ…

「おっ、そうか。では早速…」

 お兄ちゃんが青くて丸くていろんな変な計器がついた爆弾…Mボムを取り出し、しげしげと眺める。

「これ、どうすれば爆発するんだ?」

「このボタンが起爆装置ですよ。押せば爆発します」

「そうか………………………」

 お兄ちゃんは喉にサカナの骨が引っかかったような表情になり黙ってしまった。

「どしたの?早く押しなよ」

「これ、ほんとに押していいもんなのか?」

「どういうことですか?」

「だってこれ、不自然だろ。モンスターだけ殺すって…俺様たちが無事だって保証…あるのか?」

「「「「「……………………」」」」」

 た、確かに…みょうちくりんなアイテムが多いこのご時世だ、そんなこともあるかなぁ、って思ってたけど、確かに都合が良すぎる…で、でも…

「あ、あの。さすがに動作確認とか検証実験とか、やってんですよね?ね?」

「「……………………」」

 あたしの問いに、ゼス軍関係者の二人はおし黙ってしまった。おい…

「な、なんで黙ってる…?」

「それは…あの…その…」

「その、パパイアさんが、作った物なので…そして一品ものなので、検証なども…その…」

「もしかして、あの、パパイアさんが『モンスターだけ殺す爆弾ができたわ~ん』とか言っただけ、とか?」

「…その通り…ですね…」

 ひゅ~…と、あたし達の間を木枯らしが吹き抜けた。

「お兄ちゃーん!やめようよ!お帰り盆栽で帰ろう!ね!?ね!?絶対ろくでもないことになるよ!」

「ううむ…おい、マリア。なんかわからんのか?」

「分かるわけないでしょー!?分解してみないと何とも…」

「も、もし普通の爆弾だったら…?」

「うちらはひとたまりもあらへんな」

「ていうか、こっちが人だけを殺す方のmボムとかいう爆弾かも…」

「ひぃー!ポマードポマードポマード!」

「いや、あのイカレ具合だ…ぽーんと紙吹雪とか万国旗が飛び出して終わりとかもありそうじゃないか…?」

「あ、ありそう…」

「皆さん!落ち着いてください!」

 やいのやいのと大騒ぎするあたし達をウルザさんとカオルさんがなだめる。

「お気持ちはわかりますが、ここで敵軍を殲滅しなければ脱出集団の民に大きな被害が出ます。やるしかありません!」

「はい。パパイア様も流石にこの状況でそんな真似はしないかと…あの方は、自分の身の安全に関してはそれなりに気にしていたと思いますし」

「う、ううむ…」

「ふぅー。ランス様、イーディスさんはあちらに寝かせて…あれ?どうされたんですか?」

 悩んでいるところにシィルさんが戻ってきた。

「…じーーーーーーーーー」

「ランス様…?」

「よし、お前に名誉ある仕事をやろう」ぽむ

「へっ?」

 お兄ちゃんは戸惑うシィルさんに爆弾を手渡した。

「よし!全員逃げろー!」

 号令と同時にばばばばばばばっ!とあたし達はシィルさんを置いて物陰に伏せた!

「え…へ?」

「よーし!スイッチを押せ!シィル!」

「そ、そんなぁ!ランス様ぁ!い、いやですっ!怖いですー!」

 鬼畜な命令に涙目になるシィルさん。

「うるせぇーーー!押せ――――!お前が躊躇している間に人類が滅亡するかもしれんのだぞー!」

「そーだよ!早く押しちゃってよー!たぶん平気だからー!」

「多分って何ですかー!ならエールちゃん代わってください!」

「あたしは爆弾のスイッチを入れると死んじゃう病にかかってるから―!」

「そ、そんな病気あるわけ…他の皆さんは…うう…」

 シィルさんはあたりを必死で見まわすが、カロリアちゃんはカチカチに硬質化し、かなみさんは木の葉隠れでガチで隠れているし、セルさんはひたすらに聖句を唱えて祈っていて、志津香さんとコパンドンさんはマリアさんがせっせと積む土嚢(どこから出したんだ)の後ろで座って耳を塞いでいる。

 ほかの皆も似たようなものだ。近くで伏せてるあたしとお兄ちゃんが一番近い。

「押さないと折檻だぞ!ひどいぞ!」

「そうだよ!人類の為だよ!」

「も、もう折檻じゃないですか!この状態!わーーーん!」 

「ええい!うるさい、うるさい!押せ――――!」

「押せ――――!」

「う、ううう、ううーーー!」

「いくぞ!秒読み開始!」「OK!」

「「ごーーーーーー!よーーーーーーん!」」

 あたし達は声を合わせてカウントダウン!

「「いちーーーーーーーー!」」

「えーーーー!2と3は…?」

「「ぜろーーーーーーーーーーーーーー!」」「ひーーーーーーーーーーー!」

 かちっ。 シィルさんはボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 LP4年、某月某日。

 ゼス王、ラグナロックアーク・スーパー・ガンジーの主導により首都を出発した『ゼス脱出集団』550万人は、数多の困難を乗り越え、目的地である国境要塞アダムの砦に到着した。

 約2週間弱の行程で、出た死者は4万人ほど。この難行に比して、奇跡と言っていいほどの犠牲者数であった。

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「おい…あれ…」「えっ…」「あれは…アダムの砦!」「それに、炎軍だ!」

「じゃあ、着いた…」「着いたのか…?」

「あっ…ああっ…」「じゃ、じゃあ、俺達…」「私たち…」

 

「「「「「「「「助かったぁぁ!!!!!!」」」」」」」

 

「わぷっ」

 人々の放つ歓喜の声の塊が、引き上げてきたあたし達に圧力を持って直撃した。

「みんな大喜びだねぇ」

「うう…よかった…成功してよかっただす…」

 抱き合う夫婦、喜ぶ子供たち、涙を流してへたり込む老人。喜びを爆発させる老若男女の間を縫って、あたし達は凱旋する。

 パパイア謹製のMボムは言われた通りの効果を発揮し、魔軍はものの見事にすっきり消滅。ゼス脱出集団は散乱する武器や空になった魔物兵スーツの上を乗り越え、ついにアダムの砦にたどり着いたのだ。

「ふん、俺様がやったのだ。当然だ」 

「ひんひん……ひどいですよぅ…」

「ごめんねー。ほら、皆助かったんだし…シィルさんのおかげだよ。ほら、鼻ちーんして」

「うう…ちーん!」

 シィルさんは威張るお兄ちゃんの横で相変わらずぐずついている。まぁさすがにちょっとひどいことをしてしまった気もするので、あやしながら歩いていく。

「こら、俺様の奴隷ならあれくらいで泣くんじゃない…ん?」

「おにいちゃん!おかえりー!」「おかえりなさーい!」

 先頭をのしのしとドヤ顔で歩くお兄ちゃんに、顔見知りらしき子供たちが押し寄せる。

「もう僕たち、歩かなくていいんだよね!?」「モンスター居ないんだよね?」

「おう、そうだ。もう大丈夫だぞ。このランス様がずばーっとやってやったわ!がははははははは!」

「かっこいいー!」「すごーい!」「ありがとうー!」

 お兄ちゃんは胸をそらしてがはがは笑った。

「おいおい、ジャリは苦手なんじゃよ。どうせならぴちぴちのおねーちゃんたちに歓迎して欲しいのう」

「わ、剣がしゃべった!」「かっこいー!おにーちゃん、これちょーだい!」

「がははは、今度な、今度」

「儂の意志は!?」

 子供たちに囲まれてやいのやいのと騒ぐお兄ちゃんはまんざらでもなさそうだ。意外と子供好きなところがあるんだよね、この人。

「つか、聞いてる?儂はガキが苦手って…人の話を…」

「お前は人ではないだろうが」「いやん…」

「剣の分際で生意気なことを言うな!がはははは!」

 お兄ちゃんがそんな勝手なことを言い放った瞬間。

 

「リ、リーザス軍だ―――――――――――!」

 

 アダムの砦の方向から、兵士が絶叫する声が響いた。

 

「あーん?なんでリーザス軍がくるんだ?」

「援軍かなぁ?」

「…残念だが、そんな様子じゃなさそうだな…」

 歓喜から一転、大混乱に陥り右往左往する人々の中で、あたし達は首を傾げた。

「いいえ、攻めてくるのよ」

 かなみさんが暗い表情でつぶやいた。

「あー…なるほどな。今ならゼスを簡単に取れるもんな。しかし、動きが速い…ああ、かなみのせいか」

「それが仕事だもの…」

 かなみさんはうつむいてしまった。なるほど、逐一報告していたと。忍者ってのは大変だね。

 ゼス軍を撃破したとしてもその後魔軍と戦う羽目になるけどそこはそれ、最悪ゼスの土地を戦場にすればリーザスの懐は痛まない…っていうのがリア様の算段だろう。

 相変わらず怖い人だ…あたしには優しいんだけどね。だからこそ怖いんだけど。

「ふむ、やっと人心地着けると思ったら今度は人間対人間か…で、誰が来ているんだ?」

「え?」

 お兄ちゃんは顎を軽く撫でてかなみさんに尋ねた。

「侵略の先頭を切ってるのは誰だ?ボケジジイのバレスか?それともヘタレのリックか?」

「たぶんリア様かな…喜び勇んで宣戦布告すると思うから…」

「なるほどな」

 お兄ちゃんはすたすたと歩きだした。

「ちょっと…どこに行くの?」

「決まっているだろ、アダムの砦だ…ウルザちゃん」

「はい、なんでしょう」

「君が来てくれた方が話が早い。一緒にこい」

「わかりました。リーザス軍と対峙されるのですね?すべての個所に話をつけましょう」

「がははは、頼りになるな」

「あ、あたしも行く!」「あん?…まぁよかろう。ついてこい!」

 お兄ちゃんがざかざか歩いて行ってしまうのにくっついて、あたしもアダムの砦の門に向かったのだった。

 

 

 

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 奇跡ともいえる大移動を成功させたゼス脱出集団。

 しかし、そこにさらなる困難が降りかかった。

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「すとーっぷ!ここで、宣誓するわ!マリス!マイクの用意―!」

「はい、リア様」

 

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 女王リア率いるリーザス王国軍の侵攻である。

 彼女は、長年の敵国であるゼス王国の混乱を見逃さなかったのだ。

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「行くぞ、スケさん、カクさん」

「はい、ガンジー様」「行きましょう!」

 

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 人類の危機に際しても、人同士はぶつかり合い、相争う。

 まるで創造神がそのように造ったかのように。

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「あー、こほん。あんぱん、じゃむぱん、かれーぱん。ただいまマイクのテストちゅうー」

「よし、いい感じ!」

 

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 例えば、藤原家やオピロス帝国の崩壊、そして蛮人たちの聖魔教団への裏切り。

 これまでの歴史上で何度も起き、繰り返されようとしたその愚行、悲劇は…

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「じゃあ、いっきまーす!せんせーい!」

「リアたち、リーザスはー!正々堂々とこのチャンスにゼスを乗っ取ることを誓ーーーーー」

 

「わんでいい!!!!」

 

「へ?」

 

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 一人の男の一喝によって、滅茶苦茶になったのだった。

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読んでいただきありがとうございます。

またゆっくりですが、更新していきたいと思います。

よろしければお気に入り、評価など頂けたら嬉しいです。

以下、妄想です。

小鳥遊 寧々子
Lv26/88
諜報Lv2 変身Lv2 工作Lv2

ゼス軍に所属する伝令兵。
どんな場所にも行けて無事戻ってくるので大変重宝されている。
ペンタゴン幹部や郵便局員やエロゲー研究家や王宮の寝室掃除係や魔人評論家や魔物使い兼生物学者やUFO研究科に似た顔の人がいたような…
とかいう人もいるが気のせいである。

全く関係ない話だが、魔人ジークの配下使徒オーロラは、
このままサイゼルが脱出集団を撃滅してゼス王を討ったりしたら主人が手柄争いに負けてしまうから、人間がなんか企んでるようだけど邪魔しないでおこうと考え、放置した結果
大変なことになってしまった。
あんなアホみたいな爆弾があるとは思わなかった。
ジークには黙っておいてほしいらしい。
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