【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【決戦前の準備】

色々なことにひと段落着いたし、偉い人達は忙しいみたい
少しヒマができたので、今のうちに少し羽を伸ばそうか



72.エールちゃんは準備する

 脱出集団のアダムの砦への到達とリーザスの参戦で、ゼスを取り巻く状況は大きく変化した。変わった点についていったんまとめてみようか。

 

 まず、リーザス軍という後詰を得たおかげでアダムの砦を守っていた炎軍が自由に動けるようになった。

 炎軍は話がまとまるや否やすぐに出撃。魔軍を掃討しつつ西に進軍し、陥落していなかったナガールモールの氷軍と合流して周辺の魔軍を追い払った。 

 助けに来たサイアス将軍はウスピラ将軍に塩対応されてしまったらしいけど、ともかくこれでアダムの砦からナガールモールまでの北部一帯をゼス軍が確保。狭いながらもゼス国内に安全地帯が産まれた。

 それを聞いて首都周辺以外の地域から逃げ延びた人たちも続々合流しているらしい。面倒を見るのは大変だけど、リーザスの支援でどうにかなるそうだ。

 

 一方の魔軍は復讐に燃えて攻勢を仕掛けてくるかと思いきや、なんか妙に慎重になっていて動きが鈍いらしい。なんか責任を押し付けられて魔物将軍が1匹処刑されたらしく、その影響だろうか。

 あとはあんな目に遭った以上Mボムを警戒するはず、という千鶴子さんの発案で前線の部隊に爆弾っぽいハリボテをいくつか配置して意味深に守らせたりしているらしいけど、それも効いているのかもね。

 この機に脱出集団の護衛の主力になり大きな被害を受けた雷軍は後方に下がって、開戦当初の魔軍の攻勢をまともにうけて壊滅状態の光軍の生き残りや義勇兵も吸収して再編を急いでいる。

 

 んで、そういうことは別として司令部で魔軍を撃退するための作戦立案が始まったらしい。

 そんなことできるのかなぁ?と思ったけど、ウルザさんたちの表情を見る限りなんかアイデアはあるみたい。

 ウルザさんは毎日千鶴子さんやガンジー王、マジック王女なんかと指令室に籠ってああでもないこうでもないと毎日忙しそうにしている。

 と、まぁこんな感じで戦局は小康状態になり、えらい人たちも別の用事で手が離せなくなり…

 あたしたちはさしあたりヒマになったのだった。

 

 まぁヒマになったとは言っても戦時中、ヒーリングとかこまごましたやることはあったんだけど、それでも自由時間はちょくちょくあったのでいろんなことをした。

 

 リーザス軍と一緒に商人たちのキャラバンもやってきていろんなものを足元価格で売りつけに来ているんだけど、その中に服屋も混じっていたのであたし、シィルさん、マリアさん、かなみさん、志津香さん、リズナさんの女の子メンバー(カロリアは留守で、お兄ちゃんは「興味ない、勝手にやっとれ」だった)で早速出かけたり…

 

「ここよここ、チューリップの部品探してたら見つけたの」

「へー、看板は…なにこれ?」

「なんだかえらくカラフルな文字で何か書いてあるけど…」

「達筆すぎて読めないです…」

「たしかけっこう有名な店よ。デザイナーのタランピさんがやってて、本店はプリティリアの専門店街にあるの」

「プリティリア?リーザスにそんな街あったかな…」

「あの町は王様が変わると町の名前を変えるのよ。まえはダンディウェンズディングって名前だったわ」

「はえー…まぁそれならプリティリアの方がマシかなぁ…でも今はいいけど何十年もあとにリア様がおばあちゃんになってもプリティリアなの?」

「その…前王陛下もあんまりダンディという感じではなかったし…」

「そんなこと言っていいの?」

「私はリア様の忍者だから」

「それより早く入りましょ。服屋なんて久しぶりだわ」

「ええ…本当に…何十年ぶりでしょうか…」

「リ、リズナさん…」

 遠い目をしているリズナさんの背中を押してキャラバンのテント内に入り、早速商品を物色してみたのだが…

「あっ、このリボンいいかも…でも…」

「うーん…いいものは揃っているんだけどね…」

「あ、レディチャレンジャー…それも限定モデル…」

「品ぞろえはすごくいいんですけど…」

「「「「「「高い…………」」」」」」

「足元みまくってるわね…」

「状況が状況だから仕方がないけど…」

「みんな、どれくらいお金持ってる?」

「えーと…」

「こんなところで買うことないんじゃない?」

「でも久しぶりだし…」

「あの、失礼ですがお客様…」

 皆で集まってこそこそ話していると、店員さんが声をかけてきた。

「はい?なんですか?」

「エール様でいらっしゃいますね?さる方から伝言を預かっております」

「え?伝言?あたしに?」

「はい。『お姉ちゃんが持ってあげるから、いくらでも好きに買って行っていいわよ。オトモダチの分もね。久々の買い物、楽しんでね!』だそうです」

「「「「…」」」」

「かなみさん?」「し、仕事だから…」(めそらし―

「…まぁ、いいわ。そういう事なら好きにさせてもらいましょ。リーザスには貸しもあるしね」

「そだねー。あ、そのレディチャレくださーい。そっちの限定モデルのやつで」

「わ、わたしはあんまり高いのはいいかな…」

「私もご相伴にあずかってよろしいんでしょうか…?」

「いいんじゃない?女王様からしたら大した出費でもないでしょ」

「あっ、この服カロリアちゃんに似合うんじゃない?」

「いいねー。カロリアの綺麗な肌に映えそう…」

「…私は自分のお小遣いで買いますね」

「え?シィルさん?せっかくなのに…」

「いえ、自分で買いますから(にっこり」

「アッハイ」

 そのままみんな好きに服やらアクセサリーを買い込んで、近くにあった出張カフェでお茶をしたり、ものすごい剣幕で商談をするコパンドンさんを目撃したりと久々のお出かけを楽しんだ。

 

 お兄ちゃんが珍しくきれいな女の人から逃げていて、そんなことあるのか、一体だれだと思ったら魔物将軍の腹から助け出したイーディスさんだった。

 話を聞いてみると、なんとお兄ちゃんを気に入ったらしい。

「表面的にはともかく、根本的な部分が強靭で言葉に左右されない。自分の女なら絶対に自分から見捨てたりはしない人。彼のそばなら安心できそう」だからだそうだ。

 それで、支援と見返りについてのリーザスとゼスの交渉にゼス側として参加して、マリスさんやリア様と丁々発止と舌戦を繰り広げ、ゼスに有利な条件を勝ち取ったことを伝えて自分の有用性をアピールしようとしたのだが逃げられたらしい。

 たぶんあれだな。リア様とかと関係が深いのを知って、将来的にはお兄ちゃんはどっかの要人になると見込んで自分を売り込んだんだろうけど、お兄ちゃんはいきなり小難しいことをべらべらとしゃべりだしたのでまた洗脳でもされるかとおもったんだろうね。

 普通に迫ればいいと思いますよ、と言ったら、「普通ですか…普通とは…なにか参考文献を探してみましょうか…」

 とどっかに行ってしまい、あたしはけっこう美人でいい乳してるんだからちょっと押し付けるだけでいいだろうに…とか思いつつ背中を見送ったのだった。

 

 ぷちハニーの景勝がリズナさんを訪ねてきて、プレゼントの『名刀景勝』なるナギナタを隠したので取りにこい、というのでわざわざハニワ平原まで出掛けたこともあった。

「名刀景勝は地下のハニー秘密基地にあるそうです」

「むむ、ハニーのくせに地下秘密基地とは生意気な…で、どうやって行くんだ」

「ハニワ平原にある四つの小屋にいるハニーさんが知ってるそうですよ。聞きに行きましょう」

「おっ、これがその小屋だな。たのも―っ」

「あいやあいやあいやあいやーっ!」「はにほーはにほーはにほーっ」「めがねっこーっ!めがねっこーっ!めがねめがねーっ!」「あっ、いらっしゃーい。今お茶を…」

「うるせーーーーーーーーーっ!」どがっしゃー!「「「「あいやーーーーーーっ!?」」」」パパパパリーン

「ああっ、ハニーさん達…」

「うーむ、うるさくてつい割ってしまった」

「これじゃあ話を聞けないよ。どうしよう」

「所詮瀬戸物だろう。テープとかで直せば生き返るんじゃないか?」

「そんなわけないけど…まぁやってみようか」

「私も手伝います」

 ぺたぺたぺったんぎーこぎーことんてんかん

「よし、完成!」

「ん?1匹しかおらんじゃないか。4匹いなかったか?」

「4人分の破片から1人しか組めませんでしたね。4色が混じってます」

「うまく組み合わせるのが難しくて…たくさんパーツが余っちゃったよ」

「そのハニーのことをよほどよく覚えてる人じゃないと元通りにはできないんじゃないでしょうか」

『治ったよー。ありがとー』

「生き返った?!」

「ちょっと声が変だけどね」

「こんなのでいいんでしょうか…」

「適当な生き物だなぁ」

 感謝する4色ハニーに基地の場所を教えてもらい名刀景勝を回収、ハニワ平原から帰ってみたらコパンドンさんが刺されて入院していたので、お見舞いに行ったりした。刺されたのは足で大したことないけど、ちょっとしばらく動けないそうだ。まぁ命に別状はなくてよかった。

 

 他には、マリアさんがチューリップ2号・マレスケなる馬鹿でかい新兵器をカスタムからここまで輸送するとかで、大量の通関手続きやら書類やらに追われてるのを手伝ったりとか、パットンさんのところにまたヘルマンからの刺客が来て、返り討ちになった挙句お兄ちゃんに頂かれたりしたくらいかな…

 そうそう、ブラックロータスとかいう変な研究者に声を掛けられて、あたし達が戦った魔人サイゼルについて根掘り葉掘り聞かれたこともあったっけ。

 ぶっちゃけ1回戦っただけだからよく知らないんだけど、仕方ないから適当に脚色して話してあげたところ大喜びだった。魔人に直接会った人はたいてい殺されてしまうから証言は貴重だそうだけど、前にあった魔人や魔王についての話はやめといた。めんどくさい事になりそうだしね。

 そのうちテンションが上がったのか、なんか神と悪魔は実は似てるところがあるだのゼロからイチの創造がどうの、この世界の魔法はおかしいだのとよくわからん話をべらべらとまくしたてられた。

 聞いてるうちになんだか眠くなってきて、おかしいのはお前のレベルだろ。まったくもう、ぷちぷち風情がそんな重箱の隅をつつくようなことすんじゃないよ、バグチェックも楽じゃないんだとかよくわからんことを考えつつ聞き流していたら、ブラックロータスはソルトアンさんとかいう色黒の役人さんに引っ張られてどっかに去っていった。

 パパイヤやマリアさんもそうだし、イラーピュでの志津香さんとかもそうだけど、研究者ってのはみんなどこかちょっとおかしいものらしい。ヘルマンにもなんか変なのが居たらしいし…

 

 あんまりダラダラばっかりするのもどうかと思うので、冒険にも行った。

 セルさんのところにAL教からのゾンビ退治指令が来たので、一人で行こうとするセルさんを引き留めて暇そうだったお兄ちゃん達も巻き込んで、あたしたちは安眠街道村に向かった。

 どうも辛気臭いこのあたりは魔軍も近寄らないらしく、無事だった顔色の悪い村長さんが言うには、ネクロマンサーというゾンビを作る魔法使い二人が地下墓地に侵入してゾンビを作りまくっているそう。

 話を聞いたお兄ちゃんは帰ろうとしたが、セルさんがそれを許さなかった。 

 まぁネクロマンサーはAL教としては絶対滅殺対象だから仕方がないよね。あたしも神官の端くれだし、ゾンビを見逃すわけにもいかない。

 ゾンビだらけの地下墓地を片っ端から浄化しつつしらみつぶしに歩き回り、ゾンビを作る能力を持つマスターゾンビを3体も浄化したけど肝心のネクロマンサーは見当たらない。

 逃げちゃったのかなぁ、といったん外に出てみれば、管理人室から『ネズミうまー』だの『のうみそーマヨネーズ―』だの怪しい声がする。扉をぶち破って侵入してみると、そこにはなんでかネクロマンサーになってすっかり変わり果てたズルキとハッサムのクラウン親子が生肉を貪り食っていた。

 一応は知ってる顔とはいえ、生きてるときでも同情の余地はなかった連中だ。死んでゾンビになったところで変わりはない。気色悪いこと言って襲い掛かってきたのをぐちゃぐちゃのボコボコのげちょげちょにぶちのめしたうえで、あたしとセルさんできっちり浄化して一件落着した。

 しかし女の子刑務所で死んだはずのクラウン親子がなんであんなところであんなことになってたんだろうね?まぁ死んだしどうでもいいか。

 

 パットンさんが廃坑洞窟Fにものすごいモンスターがいると聞いたから倒しに行こうぜ、というので早速行ってみることにした。

 なんでも『究極超弩級最終ボスモンスター』であるらしい。なんじゃそら。

 辞書を引いてみれば、

 『究極』とてもすごいこと

 『超弩級』ドレッドノート級を上回る事

 『最終』最後であること

 と書いてあった。ドレッドノート級がなんなのかは載ってなかったがとても強そうではある。

 パットンさんはやる気満々だけど、お兄ちゃんもどうでもよさそうに見えて案外ノリノリみたいだ。男の人ってこういうの好きだよね。まぁサーナキアさんも張り切っていたけど…

 んで、名前の通りに廃坑である廃坑洞窟Fに潜ってはみたが、イカマンだのハニーだのフリーダムだのきゃんきゃんだのといったどうでもいいモンスターの他にはシトモネとかいう女冒険者しかいない。

 お兄ちゃんがシトモネとタグが面倒な感じに美味しくいただくのを横目に見つつ、情報がガセだったんじゃないか、もう帰ろう、いやもうちょっと…などと相談していると、ロッキーさんが寄りかかった壁がぱっくり開いて隠し通路が現れ、その向こうには広い空間があった。

 きっとここがボス部屋だ、と意気込むパットンさんを先頭に部屋に乗り込んでみると、そこにいたのは

「がおーがおー」ぼうぼう

「「…」」

 ただの落書きザウルスだった。

「これが…なんだったっけ」

「超絶悶絶マッハベリベリゴエモンスターとかそんな感じだったろ」

「究極超弩級最終ボスモンスターですよ、ランス様」

「そうそれだ。そんなすごいのには見えんぞ」

「「……」」

「がおーがおーがおー」ぼうぼう

「とにかく倒そう、こう見えて強い…かもしれんし、もしかしたら経験値も多いかも…」

「…そうか……?まぁ…倒すか…」

 というわけで集まってきた落書きザウルスをあっさり蹴散らしたのだが…

『ぎゃおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!』

「な、なんだぁ!?」

 なんと後ろから巨大な落書きドラゴンが出てきたのだ!

 …………とはいっても、ドラゴンらしく不思議な炎を吐いてきたりはしたが、本物ならともかく所詮は落書き系。そりゃあちょっとはびっくりしたけどあたし達の敵ではない。ボコボコにぶちのめして、ドロップ品の色鉛筆はアルフラにあげた。

 パットンさんは不満そうだったけど、まぁ腕試しとしてはちょうどよかったんじゃないかな。

 

 そんな感じのちょっとピリピリしつつもある意味のんびりとした日々は、

「皆さん。指令室まで来てください。ゼスを奪還する作戦の説明をしますので」

 そんなウルザさんの一言で終わりを告げたのだった。




読んでいただきありがとうございます。
よろしければお気に入り評価感想推薦ここすき等頂けると大変うれしいです。

以下、妄想です。

ブラックロータス
Lv00/00
魔法Lv1 科学Lv2
レベルが変なことになっているのは世界のバグの影響であり、ある意味ランスと同類。
自分のレペルが変なことになっている理由を探るうちに変なところにまでたどり着いてしまった。
しばらく後、唐突に姿を消す。消息は全くつかめていない。


ソルトアン
Lv38/53
魔法Lv1
アノキア国と王家の末路をみてゼスに降伏することを選んだとある小国の王家の末裔。
この後は国の体制が変わるな、と判断して出世しそうな非魔法使いのウルザの配下に自分から収まって仕事をしている。
それなりに有力な貴族である彼女が部下になってくれたことでウルザの仕事は大分やりやすくなった。
仕事の片手間にランス一行を遠巻きに監視しているが、優秀なのでかなみ以外にはバレなかった。


ハッサムゾンビ
ズルキゾンビ

女の子刑務所で死んだ二人の死体をパパイヤが回収し、脳が無事だったのをいいことにネクロマンサーにしてみたもの。
禁断の魔法が成功させたパパイヤは、ゾンビは再生するけど二つに分けて引き離したらどうなるのか、魂のあるほうが再生するなら魂を分けてみたらどうなるのか、なとと色々実験を繰り返し、
最終的にハッサムとズルキをそれぞれ2体に分裂させることに成功した。

成功したパパイヤはひとしきり喜んだあと、よく考えるとゾンビが増えても臭いし汚いしでいいことないことに気が付いて片方は捨て、片方は四天王の塔のガーディアンにすることにした。
今回倒されたのは捨てられた方。肉体は揃っているが魂が半分しかないため普通のネクロマンサーの半分の知能しかない。
浄化されて魂が解放された向かった天界で天使に「魂の残り半分どこに置いてきたのよ!」と怒られ、めんどくさくなった天使に魂を混ぜられて一人分にされて転生に回された。
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