【マジノライン再稼働計画】
マジノラインを再稼働するため、いくつかのダンジョンの転移装置を使ってマジノラインを目指そう
途中で魔人サイゼルの使徒ユキに遭遇、お兄ちゃんのハイパー兵器が凍らされてしまった
温泉で溶かしたいが、カオスを使えるお兄ちゃんは戦闘不能、どうしたものだろうか
いろいろあって大事なところが凍ってしまったお兄ちゃんの代わりにあたしが魔剣カオスを扱うことになった!
カオスが使えるならば、ダンジョンの中という狭い空間で飛行を封じられたサイゼルなんて敵ではない!
「どりゃー!ハイパーウルトラスーパーカオスエールちゃん斬り!」ずばばーっ!
「グワーッ!サヨナラ!」魔人サイゼルは爆発四……魔血塊になった!
煙のする地下水道突破!75話完!スーパー美少女主人公エールちゃん最強や!鬼畜戦士なんて最初から要らんかったんや!
と、いうわけにはいかなかった。
「くっ…………でりゃああああ!」ぶんっ!
「遅い!」すかっ
あたしが気合いをいれて振り下ろしたカオスは、またしてもサイゼルにあっさり見切られてかわされてしまう。
「ふふん、カオスの使い手があの下品な男以外に居たのは驚いたけど…その程度の剣技じゃ、私の相手になんないわよ!」じゃきっ!
こちらをあざけるような声と共に、サイゼルは魔銃クールゴーテスの引き金を引く!
「くっ……魔法バリア!」「合わせるわ!」びーっ!ばきばきばきーん!
「くうっ!」「きゃっ!?」
志津香さんとマジック王女が張った魔法バリアに冷凍光線が直撃し、バリアはあっという間に凍り付いてひび割れ砕け散る!
「下がってエールちゃん!」ぱきん!「ううっ……」
冷凍光線はあたしをかばったリズナさんに直撃!
「リズナさん!?」
「……へ、平気です!これくらいなら……」
リズナさんは肩のあたりが凍り付いてしまっている。魔法バリアを二枚ぶち抜いてなお魔抵オバケのリズナさんにダメージを入れるか!
「いい加減しつこいわね…とっとと氷漬けに…」
「みんなー!下がって!」どんどんどーん!
追撃しようとするサイゼルに向けて物陰から飛び出したマリアさんがチューリップを乱射した!
「うわっ、またこの間の変な武器!?もー!」びーっ!
しかしサイゼルは冷凍ビームでチューリップの弾を迎撃、凍らせて叩き落す!
「かなみさん!」「はい!煙玉!」きごーん!
「今です!いったん引いてください!」
その間にあたし達は煙に紛れて物陰に逃げ込むことが出来た。このへんはさすがに温泉があるあたりよりもだいぶ狭いので、流石にサイゼルも突っ込んでは来ないようだ。
「はぁはぁ……みんな無事?」
「な、なんとか……」
……目的地である温泉にたどりつけず、押し戻されたとも言う。
「リズナーだいじょうぶ?あっためるね。火の子―」
「おう、ちょっと火ぃ吹くぜ。ぼぅぼぅ」
「あ、ありがとうございます……」
「うむむ、魔人サイゼル……正直襲来した魔人たちの中では、比較的ではあるが与しやすい相手と思っていたのだが……これほど強いとはな」
「サイゼルは魔王ガイが即位した時点で既に存在していたと記録にあります。となれば一千歳以上……戦いの経験も相当のものなのでしょう」
ガンジー王がうなった通り、サイゼルは騒々しくてどっか抜け気味な言動に反して、いざ戦いとなると普通にすごく強かった。
狭いダンジョン内部、自由に飛べない環境ならどうにかなると思って襲い掛かったのだが……
「全く、嬢ちゃんもっと気張らんかい!なんじゃそのへっぴり腰は!」
「う……っていうかなんで当てないといけないの?同じ戦場にあるだけで結界を中和するくらいできない?」
「儂はあくまで剣!結界を斬って破壊できてもあるだけで中和するような便利アイテムじゃないわい!一発も当てられない嬢ちゃんがへぼいんじゃろが!」
「ぐぬぬ……」
そう、カオスの言う通り。何度か斬りかかってはみたのだが、あたしが振り回すカオスは一発もサイゼルに命中していない。
命中していない以上無敵結界は健在で、あたし達はサイゼルにダメージを与えることが出来ていないのだ。
カオスの存在を知っているサイゼルが、あたしの攻撃だけは食らわないように立ち回っているというのもあるが……
「というかカオス、あんた重いのよ!短く細くなって2本になってよ!」
「無茶言うな!重さの方はサービスで心の友と同じくらいにしとるんだからどうにかせんかい!」
それよりも問題は、カオスが持ち主を狂気に陥らせる特性を別にしても、普通に使いにくい剣だということなんだよね。
カオスは結構大型で柄が長い、分類的にはバスターソードにあたる剣……なんだけど。
バスターソードはただでさえ使いこなすには結構な修練がいる上級者向けの武器な上、カオスは途中で刃が膨らんだり変にギザギザしているせいでバランスがめちゃめちゃ悪いのだ。
お兄ちゃんはこんなメチャクチャな剣をぶっつけ本番でぶん回していたのか……というか拾った剣でも二刀流でもなんでもすぐに使いこなすあたり、やっぱりあたしとは戦士としての技量が段違いなんだろう。
普段あたしが使ってる双剣とは勝手が違いすぎるというのもあるけどね。
あたしだって素人じゃないし、せめて1~2時間くらい時間を貰って振り回し、手になじませればもうちょっとましになると思うんだけど……。
「ランス様、しっかりしてください!」
「あ……なんかちょっと楽になって来たぞ……痛みが引いてきた……」
「感覚がなくなってきているのか?」
「そろそろまずそうだな……」
「もう諦めたら?」
「やかましいわ!」
そんな時間は今はなさそう。どうしたものだろうか……
「ランス様!?今は安静に…」
「何をぐずぐずしているんだ。とっととあの魔人のねーちゃんをどうにかせんか!」
皆で首をひねっていると、多少顔色が良くなったお兄ちゃんがギャーギャー騒ぎだした。
「言われなくてもやってるよ、でも、どうにかカオスを命中させないことには……」
「やはり私が…」「いや、リックさんは危ないって」
「……ちっ、仕方がない……俺様がやってやる」「えっ?」
「危ないですよランス様!その状態では……」
「そうだすよ!凍りついた通天閣がぽっきりいってしまうだす!」
下半身丸出しで無茶なことを言い出したお兄ちゃんをシィルさんとロッキーさんがが止めた。
「たしかに剣を振るのは無理だが、なんとかしてやる。要は隙を作ればいいんだ……おい、パットン。耳を貸せ」
「なんだい?」
お兄ちゃんはパットンさんと何やら内緒話をし始めた
「いいか?俺様が……ごにょごにょ……したら、……ごにょごにょ……だ。わかったな?」
「……ふむふむ……えっ?いいのかい?」
「いいのだ。俺様が許す」
「まぁ非常事態だしなぁ……」
「というわけだ。行くぞ!」
どうやらそういうことになったらしい。
「何か考えがあるのかなぁ?」
「またどうせろくでもないこと考えてるんでしょ」
「とはいえ他に手もないしな……」
あたし達はお兄ちゃんに続いて再び温泉へと向かった。
=======================サイゼル視点=======================
「ったく、あいつらどこに……」
魔人サイゼルはあたりを見回して人間たちを探していた。
サイゼルがなぜこんな迷宮に居るのかというと、カミーラに先の敗北の責任をとらされ謹慎を命じられたからだ。
こんなところでは手柄を立てる機会もなく、暇を持て余したサイゼルがぶーたれていたところに、使徒のユキが首だけになって戻ってきた。
訳を聞いてみると、なんでも魔剣カオスを使う男に遭遇してハメて凍らせて戦闘不能にした。男を救うために仲間の人間たちが温泉に来るはず、という。
カオスを持ち帰ればお手柄だ。謹慎も解除されるかもしれない、というわけで温泉の近くで待機していたところ、本当に人間たちがやってきた。
報告通りにカオスを使っていた男の姿はなく、人間は愚かだととっとと凍らせようとしたのだが、なんと帽子を被った女がカオスを振り回してきた。
カオスを扱える人間がそうはいないことはガイに聞いていたので少しだけ驚いたが、慣れていないのか帽子女の太刀筋は鈍く、余裕をもってかわしつつ戦うことが出来た。
適当にあしらいつつ凍らせてやろうとしたが、人間たちは敵わないとみると小賢しくもとっとと逃げてしまった。
(でも、どの道連中はここに来るしかないしね。今度こそ逃がさず凍らせてやる……)
サイゼルが、魔銃を構え直したところに。
「こらーっ!」
横合いから、急に怒鳴りつけられた。
「なに……?って人間じゃないの」
サイゼルが振り向いてみると、そこには下半身を布で覆った人間が立っている。確かカオスを使っていた男だ。ユキが凍らせた、と言っていたが一見すると元気そうに見える。
「あのクソガキめ!よくもこのランス様にとんでもないことをしてくれたな!使徒の罪は主人の罪!お前に償ってもらおうか!」びしいっ!
ランスとかいう男はこちらを指さしながら勝手なことをのたまったが、その手にカオスはない。
「人間風情が生意気なことを言うじゃないの。償ってもらう、っていったいどうするつもりな訳?」
どうせ囮だろうが、この状況ならあの女が斬りかかって来ても余裕をもって躱せる。
そう判断したサイゼルは念のため少し高度を取って、男に向かってあざけるような笑みを浮かべた。
「それはな、無論……」
男は、言葉と共に下半身の布を取り除き、叫ぶ!
「このスーパー氷結地獄ハイパー兵器マークⅡカスタムをぶち込んでお前をあへあへ言わせてやるのだ――――――!」
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「このスーパー氷結地獄ハイパー兵器マークⅡカスタムをぶち込んでお前をあへあへ言わせてやるのだ――――――!」
「「「「「「「「「……は?」」」」」」」」」
あっけにとられるあたし達の視線の先で、お兄ちゃんは叫びながら腰をカクカクさせ、凍り付いたアレをぶるんぶるん振り回した!
それを真正面から見せつけられたサイゼルは……
「…………………………ぷっ……くくっ……あははははははははははは!何それ!?あーははははははは!」
お兄ちゃんを指さして笑い始めた!
「なーにを笑っているのだ!俺様はー!本気だー!」ぶるーんぶるーん!
「あははははははははははは!」
追撃を食らって腹を抱えるサイゼルは隙だらけだが、少し高いところに浮かんでいる。ジャンプすればギリギリ行けるか……?
「何をボーっとしとる!チャンスじゃろ」
「そうだね!なんにせよ、隙が出来たよ!今のうちに……」
「おう」むんずっ「えっ?」
サイゼルに向かって突っ込もうとしたあたしの襟が、パットンさんのデカい手でつかまれた。
「よーし!覚悟はいいな嬢ちゃん!」ひょい「えっ?」「え?」
あたしはそのままパットンさんに高く持ち上げられ……
「必殺!弾丸エールドラダン!」ぶおんっ!「ぎゃーーーーーー!何その技名ーーーー!?」
そのままぶん投げられた!
「わーーーーーーーーきゃーーーーーーーーーーー!」
パットンさんのバカ力で投げ飛ばされたあたしは、サイゼルに向けて一直線に飛んでいく!
「え…?はぁ?」「……っ……ど、どりゃーーーーー!」
あっけにとられるサイゼルに向け、あたしはとっさにカオスを突き出した!
どがしゃああっ!
「わー!」どしゃあっ!「痛ったあ!ぐええええええええええええ!」ずさささーっ!
空中で衝突し、衝撃で落っこちるあたし!そのまま氷の上に叩きつけられて滑る!
「痛ったぁ……うう……」
あちこちぶつけてすりむいてるが、それより今は状況確認だ。衝撃でカオスはどっかに行ってしまった。いったいどこに……
「………………………………え…………?」
「ぐははははは!お邪魔してまーす!」
あわててあたりを見回すあたしの視界に飛び込んできたのは、お腹からカオスを生やして呆然とするサイゼルの姿だった。
「…………っ…………………あ……」
「おぉー!また落ちるのか―?!」
サイゼルは逃げようとして、力が入らなかったのかそのまま墜落し……カオスごと温泉の脇の斜面を転がり落ちて行く。
「カオスが!」
「追いかけないと……」
「いや、それよりランス殿の治療が優先だ。早く温泉に漬からせよう」
「うむ、まったく使えん連中め。俺様にあんなことさせおって……へ、へ…へーっくしょい!」
温泉のそばまでどうにか戻ってきたお兄ちゃんが、思いっきりくしゃみをして。
ぶち、ごとん。
「「「「「「「「「あっ」」」」」」」」」
その拍子に、凍り付いたアレがもげて落ちてしまい。
「……………………………………………………はうっ」
お兄ちゃんは気絶してしまった。
「ランス様―――――!しっかり!」
「うわーっ!ランス様のシンボルが!」
「これはこれで良いんじゃない?」
「ああ。これでこの世界も多少平和になるってものだ」
「どうしよう……モロッコに連れていくとか……?」
「代わりに入れるムシ、何がいいと思う?」
「わ、私……ランスさんがいなかったらこの体、どうすればいいんでしょう……」
「うーむ、アレが無くなってもランス殿は我が国のために戦ってくれるだろうか」
「気の荒い競争うしは去勢すると成績が向上することがあると言いますが……」
「…………」ひょい
皆が混乱して騒ぐ中で、シィルさんが落ちたアレを拾い上げて確かめた。
「……うん、断面は綺麗ですね。エールちゃん。」
「あーこんなところもすりむいてる……いたいのいたいのとんでけーっと……?え?何?」
シィルさんは据わった目でこちらを見つめ、
「これ、ヒーリング5でくっつけてください」
こともなげに滅茶苦茶なことを言い出した!
「えーーーーーーーーーーー!?」
「出来ますよね?」
「で、出来るできないで言えば出来るけど!」
「じゃあお願いします」
「なんか……なんかやだ!乙女心的に!」
首を振るあたしに、シィルさんはものすごい形相で迫る!
「知らないおじさんの命は助けられても肉親のち〇こはダメだっていうんですか?!」
「誰のち〇こでも嫌だよ!取れても死にはしないんだし……」
「いいえ!これにはランス様の命がかかってるんです!」
「命が!?なんで!?」
「アレが出来なくなったらランス様はたぶん……いえ、間違いなく自ら命を絶ちます!」
「えっ!?死ぬの!?マジで?」
「マジです!それに、ランス様の子供たち……甥っ子や姪っ子に会えなくなってもいいんですか!?」
「うっ……うーっ……」
なんでだがわからないが……それはすっごくすっごくダメな気がする!
あたしの脳裏に俺様系マザコン剣士とか覚悟決まりすぎ完璧超人とかギザ歯気弱眼鏡っ娘とか金髪鉄腕娘とかジト目ゴス医者とか不思議巫女とかガチ野生児とかどっか抜けてる忍者とかいつだったかリーザスであった子とかの面影がよぎった!
「いいんですか!?」
シィルさんの言葉と共に、最後にカラーの女の子が悲しそうにこっちを見た気がした。
「ううっ……うわーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
あたしはもげたアレを手に取り、お兄ちゃんのそばに屈みこんだ!
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「……んぁ?」
ランスが目を覚ますと、自分が裸で温泉に漬かっていることに気が付いた。
「……えーと確か、サイゼルを追っ払って……そのあと何かすごく怖いことがあったような」
手を伸ばして股間を触ると、元気いっぱいのハイパー兵器が普段通りにそこにはあった。感触もちゃんとある。氷は無事溶けたようだ。
「ほっ。よかった…」
「ランス様。大丈夫ですか?」
「うむ、俺様復活!ハイパー兵器も危機を乗り越えたせいかパワーアップした気がするぞ。……試すぞシィル。こっちこい」
「え、そんな、ランス様……きゃーー……」
〈タグが面倒になるシーンにつき割愛〉
「ふぅ、すっきり。うーむ、俺様絶好調。ハイパー兵器もやたら生命力にあふれている気がする」
ランスは服を着て軽く伸びをした。
「さて、サイゼルを追うぞ。ひぃひぃ言わせてやるのだ。ついでに馬鹿剣も回収して……ん?」
ランスが目を止めた先では、エールが背中を曲げて体育座りして、地面に『の』の字を書いていた。
「なんだアイツは。俺様が復活したというのに辛気臭い……」
「いろいろ辛いことがあったみたいです。そっとしておいてあげましょう」
「ははーん。さてはさっきの戦いでカオスをうまく扱えなくて、スーパーな俺様との実力の差を感じて凹んでいるのだな?」
「あーはい……たぶんそんな感じかと……」
「うーむ、俺様という超天才戦士が肉親であるがために才能の差を感じ取ってしまうとは不憫な奴。回復呪文はちゃんと使えるのだからそっちの方で頑張ればいいのだ。がはははは」
「ええ……本当に頑張ってくれました……」
何も知らずにがはがは笑うランスの隣で、シィルはそっと目をそらしたのだった。
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と、いうわけでその後みんなで谷底に降りたら腹に刺さったままのカオスにいびられてるサイゼルがいたんで、なんか股間からやたら生命力を溢れさせるお兄ちゃんがタグが面倒になる感じでいたぶってしばらく再起不能にして追っ払った。
これでしばらく出てこないだろう。その後は特に障害もなく転移装置の元までたどり着き、あたしたちは煙のする地下水道を突破したのだった。
……命を救うってのは大変なことなんだね。今日は早く寝よ。
この日、天界役所では嫌がるけっこう偉い天使に無理やりヒーリング5を執行させる某女神が見られたとか見られなかったとか。
読んでいただきありがとうございます。
生活環境が変わって休みが取れなくなったこともありますが、だいぶ難産でした。
続きはまた少し時間がかかるかもしれません。
ランスは数多くの魔人を撃破しています。
無論彼の強さやカオス適正、才能限界がない事も大きいですが、戦闘力でランスを上回る人間はちょくちょくいますし、そもそも人間として強い程度では魔人にはとてもかないません。
カオス適正を持つものもカーマなどの例もありますし、他にもおそらくいるでしょう。
やはり『敵の隙を作ること、そして隙を最大限に利用することに長けている』という「火事場泥棒の才能」(女ケッセルリンク談)がランスの強さの本質であろうと私は考えています。
LP期においてランスの最後の敵が圧倒的な戦闘能力を持っているが、病的に慎重で臆病で隙を作ろうとしない性格が強さの本質であるケイブリスであったのは好対照ですね。
この二人が最後に少しわかり合った感じがあったのも大変うれしかったです。