【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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ー任務表ー
【マジノライン再稼働計画】

マジノラインを再稼働するため、いくつかのダンジョンの転移装置を使ってマジノラインを目指そう
次の目的地はフルーツ遺跡だ
前に何度か侵入したことがあるけど、まさか国家機密だとは思わなかった。 …大丈夫だよね?


76.エールちゃんは変身魔人に遭う

 地下水道の転移装置に飛び込んだ先はどこかの地下遺跡だった。

「ここが次のダンジョンか……全員いるか?」

「はい、皆さん無事到着されていますわ。転送事故などはなかったようです」

 石造りの正統派なダンジョンで、壁には色とりどりの果物のレリーフがしてあって……あれ? どっかで見たような……

「もしかして、ここってフルーツ遺跡?」

「なんだ、知っとるのかエール」

「うん、前にちょっと入ったことがあってさ」

「ここはゼス国が管理しているダンジョンで、一般人の立ち入りは禁止されていたはずですが……」

「あー……えーっと、その、迷い込んだっていうかちょっと事情があったっていうか……」

「あら、どういった事情が?」

 異世界から戻ってきたらここだっただけなんだけど、しゃべるとミラクルさんに迷惑がかかるかもしれないし……

 カオルさんに見つめられ、しどろもどろになるあたしにお兄ちゃんが助け船を出してくれた。

「そのゼスが今にもなくなりそうなんだ、どうだっていいだろ。それよりエール、中を知っとるなら案内しろ」

「あ、はーい。確かこっちだよ」

 あたしは皆を先導して歩き出した。

 

「この奥の動く歩道ゾーンの奥に先に進むためのマンゴーの鍵があるんだよ」

「そうか。行けロッキー。鍵を見つけるまで戻ってくるな」

「は、はいだす……そーっと……ぎゃああああああああああああ」しゃこここここ

「ロッキーが凄い勢いで奥に行っちゃった」

「でも、もう前に拾っておいたマンゴーの鍵があるから今日はこれを使うね」がちゃ

「持っているなら早く言わんか。さっさと行くぞ」

「ロッキーさんはどうするの?」

「ほっとけば追いついてくるだろ、行くぞ」

「チョークで目印かいとくねー」かきかき

 

「んで、つぎはこっち」

「なんだ、ずいぶんぼろい橋だな。下は沼か」

「毒があるみたいね……」

「ほら、あっちで魔物達が溺れてる」

「うぎゃ~っ毒!」「ぐえーっ毒!」「く、くそ……動けん……」

「で、ここにも仕掛けがあるのか?」

「うん、橋の真ん中あたりに……」

「ひぃひぃ……あっ! ランス様! おらバナナの鍵を見つけてきただす。褒めて欲しいだすよ」

「良いところに来たなロッキー。さあこの橋を渡るがいい」どんっ

「わっ……え? えっ?」かちっ「あっ……ああああああ~~~~……」ひゅ──ーぼちゃーん

「ああ……ロッキーさんが毒沼に……」

「ぐええええーっ毒!」

「大丈夫ー? ヒーリングするからそっちの通路からこっちに戻ってきてー。あと途中に罠のスイッチがあるから切り替えといてー」

「ひぃひぃ……は、はいだす……」

 

 そんな感じであたし達はフルーツ遺跡をすいすい進んでいった。

 スーパーハニーだのちょっぴーだのパタパタだの結構強い魔物も出るが何の障害にもならない。橋の向こうの通路から長い階段を下りれば転送装置は目の前だ。

「それで、この先に進めば転送装置があるはずだよ」

「待て、誰かいるぞ」

 奥の扉の前には、黄色くて大きい人影が立っていた。紳士的なスーツに身を包んで気取ったステッキを持っている。

 隣に控えている使徒は、たしかペンタゴンのポンパドールに化けていた女の子モンスターだ。

「なんだあの黄色い物体は」

「ランス様……あれ、ひょっとして……」

 シィルさんが唾を飲み込んだ。あたし達もゼスに侵入した魔人の情報については目を通している。黄色い紳士然とした人型魔物と言えば……

「初めまして、私の名は……魔人ジーク。人間界制圧軍の副司令官を務めさせていただいています」

 結論を声に出す前に黄色い人型生物は片手を胸に当ててうやうやしく頭を下げた。

「魔剣カオスを持つ者よ……あなたを待っていました」

「あん? 俺様を?」

「ええ、人間でありながら、我が同胞のサイゼルを撃退したことは実に見事。ですが、同胞を傷つけられて黙っている訳には参りません」

 ジークはふわりとステッキを構えた。……その姿に隙は見えない。流石は魔人、かなり強そうだ。

「ここで勝負していただきますよ。さ、全員でかかって来なさい」

「え──っと、ばいばい」

 そんな魔人にお兄ちゃんはあっさり背を向け階段を登り始めた。

「え……? どうして逃げるのですか? 貴方はこの先の転送装置を目指しているはずでしょう。私を倒さねば先へは進めませんよ」

 戸惑うジークにお兄ちゃんは肩越しに言い放つ。

「いきなり現れて勝負ができるか。こっちは女が多いんだ。準備というものがある、少し待て」

「ああ、なるほど。これは失礼を。それでは準備をどうぞ」

 ジークはステッキを収め、あたし達はジークから距離を取った。

「で、どうするの? 3方向から囲んで一気にやっちゃう?」

「世色癌で皆さんの体力を全開にしてからの方が……」

「無敵結界がある限り魔法も通じん。まずはランス殿に口火を切ってもらわねば……」

「阿呆、そんな面倒なことするか」

 お兄ちゃんは偉そうに鼻を鳴らした。

「え? 魔人戦の準備をするんじゃないのか?」

「嘘に決まってるだろ。正々堂々と勝負を挑んでくる奴とは絶対に正々堂々と勝負をしてやらん」

「きっさま────────!」

「ふむ、ランス。何か策があるのか?」

 いきり立つサーナキアさんを抑えてガンジー王が問い、お兄ちゃんは少し考えて答える。

「あの部屋の上の方の壁に穴が開いてたろ。あそこから奇襲できそうだが……エール。あそこはどこにつながってるのだ」

「えーと、あれは迷路の非常口部分だから階段を登って右に行けば……」

「よし、行くぞ。正々堂々後ろから奇襲攻撃だ」

「正々堂々かなぁ……」

 そういうことになった。

 

 そして、そういうことになった結果、

「投下!」ぱっ

「儂、今回はよく落ちるの──────」ひゅ──ー

 お兄ちゃんの手を離れたカオスはぼやきながら落ちていき、

「むっ? ぐっ……ぐあああああああああ!」「きゃっ……きゃ────! ジーク様ー!?」

 直前で気が付いてとっさに身を捻った魔人ジークの片腕を斬り飛ばした。

「あっ、避けた」「ちっ、腕だけか。脳天直撃を狙ったのに」

「こっ……この卑怯者共がぁ!」

 ジークは片腕を抑えながら、紳士面をかなぐり捨てて憤怒の表情でこちらを見上げる。

「がはははは! いい気味だ! 今からとどめを刺してやる、そこを動くな!」「ちっ!」

 飛び降りる気配を見せたお兄ちゃんから逃れるように、ジークは後ろの扉に飛び込む。

「ちっ、逃げやがった。おい、かなみ」「うん」

 かなみさんが用意してくれたかぎ縄で、あたし達は下の部屋に降りた。

「しくしく……また落とされた……儂すごい魔剣なのに……落とされたり投げられたり……」

「そんなつまらんこと言ってるとまたエールに持たせるぞ」

「え~……やだ……」「なんでよ!」

「だって嬢ちゃん剣の扱いがヘタクソ……」「ふんがー!」げしっ! 

「痛った! こら! 踏むな! 蹴るな!」

 床に突き刺さっていたカオスを回収して先に進むと、部屋の真ん中に金髪の少年が倒れていた。

「ううっ……誰か……助けてください……僕は魔物に攫われたお母さんを助けるためにここまで来ました……、けど、やられてしまって……お願いです……僕の代わりに、この先にいる魔物を……」

 少年は、傷を負った左腕を抑えながら必死にこちらに訴えかける。訴えかけるのだが……

「いや、どう考えても怪しいでしょ」

「そうだな、こんなところに子供一人で来れるはずがない」

「いや、何かのはずみでここまで来てしまったということも……」「何かのはずみって何よ」

 怪しむあたしとパットンさんにアレックスさんが反論するが、それを無視してお兄ちゃんが前に出た。

「無視だ、無視。もし本物でも男のガキなんぞ助けてもなんの得にもならん。母親が美人だというなら別だがな。がははは」

「き、貴様────────ー!」

 そのまま無視して転送装置の方に行こうとするお兄ちゃんの前を遮るように、魔人が正体を現した。

「あ、やっぱり魔人だったんだ」

「ええい! お前のような鬼畜外道は神が許しても私が許さん! 決闘だ!」

 ジークは手袋をいつの間にか再生していた腕でこちらに投げつけ、襲い掛かってきた! 

 

 そして五分後。

「はぁはぁ……くっ……これがカオスを持つ者の力ですか……危険ですね……」

 全身傷だらけになった魔人ジークはあたし達の前に膝をついていた。

 紳士然としたステッキ裁きは確かに堂に入っていて、おそらくお兄ちゃんでも一対一で試合形式なら苦戦したんじゃないかなぁ、とは思うんだけど。所詮はステッキで、しかもこっちは多数。負ける要素なんてないよね。

 こっちの被害はロッキーさんとパットンさんが数発しばかれて、サーナキアさんがダウンしたくらいだ。

「なんだ? もうおしまいか?」

「いいや、魔人ジークの真の恐怖はこれからだ……」

 ジークは膝に力を籠め、こちらをにらみ返す。

「そうよそうよ、ジーク様の本気はこれからよ! やっちゃってください、ジーク様!」

「ふむ……よし」「ん?」

 ジークは使徒にはやし立てられながらあたし達をぐるりと見回し、パットンさんに指を突き付けた。

「そう、貴方。貴方の恐れるものは……これだ!」

 叫んだジークの姿が掻き消え、次の瞬間。そこに立っていたのは、全身を鋼鉄で覆った武人。

 深いしわに覆われたいかつい顔、モヒカン気味の頭髪、手には巨大な二連鉄球。

 間違いない。忘れられるはずがない。ヘルマンの三軍将軍、トーマ・リプトン! 

「……っ!?」「ト、トーマ?!」

「ほう、かつての人類最強ですか……どぅれ!」

 トーマの姿に変身したジークはハンマーを振り上げ、お兄ちゃんに叩きつける! 

「ぬおっ……!」がきぃん! 「がああっ!」 

 いきなりいかつい顔で殴られたお兄ちゃんはとっさにカオスで受けたが、大きく弾き飛ばされる! 

「ふはははは! なるほど人類最強! かなりのパワーですね! 人間にしては、ですが!」

 呵呵と笑ったトーマジークはこちらに突っ込んでくる! 

 ぶんぶんがっしぼかっ! 「ぐえ────っ!」どがっ「きゃっ…」「くうっ……」

 振り回されるハンマーにロッキーさんが吹き飛ばされてリズナさんを巻き込んですっ転び、リックさんは受け流し切れずに弾かれる! 

「な、なんでトーマが……トーマが……」

 パットンさんはまだ呆けているし……え?じゃあもう前衛で立ってるのはあたしだけ!? 

「さて、お嬢さん……恨むなら、あの卑怯者を恨むことですね!」「くっ……」

 トーマジークが前衛に一人残ったあたしに向けハンマーを振りかぶった! あれを受けるのは無理! 死ぬ! かといって逃げても後衛に突っ込まれるだけ……仕方ない! 

 あたしは剣を放り捨てて、指で印を結びながら手を前に突き出し……指を弾いて、聖句を唱える! 

『神よ天使よ以下省略!順番シャッフル!』 

 周りの時間の流れと空間がバグって歪み……あたしとパットンさんの位置が入れ替わった! 

「むっ?!」

「えっ……トーm……」ごがげしっ! 「がっはあああああ!?」

 当然パットンさんはハンマーをまともに食らってよろめく! 

「なるほど、うまく避けましたね。しかし次はそうはいきませ……」

「ぬおおおおおおおおおおお!」どがっ! 「むうっ!」

 こちらに振り向いたトーマジークに、パットンさんがタックルをかけた! 

「むぅっ! あの痺れる一撃を受けてすぐに動きますか!」

「あの一撃!? あんな程度、何度もくらったトーマの鉄の拳骨に比べりゃあ屁でもねぇさ!」

 パットンさんは血を流しながら不敵に笑い、トーマジークの腕を掴んだ! 

「それではっきり分かった! やっぱりお前は本物じゃあないってな!」

「何を言う、私の変身は……ぐっ……ぬっ……おおおおおおおおおおお!!!!」

「がああああああああああああ!!!!!」

 組み合う二人の腕に縄のような筋肉が浮かび、力比べの態勢になる! 

「す、すごいロックアップ!」

「うむ! しかしチャンスだ! 今のうちに魔法攻撃を!」

「はい! 行きますよ……ライト!」「超・炎の矢!」「雷の矢!」「雷撃!」「ファイヤーレーザー!」「エンジェルカッター!」どかんどかんどかんちゅどーん! 

「ぐああああああああああっ!」

 魔法の集中砲火を背中に食らったトーマジークは吹き飛ばされ、元の姿に戻った。

「はぁはぁ……ぐっ……まだまだ……まだ……これからだ!」

「きゃー! ジーク様素敵! かっこいいー!」

 ジークはどうにか身を起こして立ち上がり、隣で使徒が囃し立てる。

「次は……あなただ!」「えっ?」

 魔人の伸ばされた指は、まっすぐあたしの顔を差していた。

 ……な、なんか嫌な予感がする……

「あ、あの、やめた方が……」

「あなたの恐れるもの……恐れるものは……これだ!」

 魔人ジークは変身した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  AV 59年 5月 第1週 

『ドラゴン王マギーホアにより、大陸統一国家トロンの建国が宣言されました』

『すべての国民が、新たな国の誕生を喜んでいます』

 そして時が流れた……

 

  AV 60年 8月 第4週 

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

  AV 60年 9月 第1週

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

  AV 60年 9月 第2週

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

  AV 60年 9月 第4週

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

  AV 61年 3月 第3週

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

  AV 63年 1月 第2週

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

  AV 73年 4月 第4週

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

  AV 118年 6月 第2週

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

  AV 518年 1月 第1週

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

  AV 3956年 12月 第3週

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

  AV 縺? ■縺翫¥年 縺? ■月 第縺輔s週

『特に何もありませんでした。世界は平和です』

 そして時が流れた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 プログラムの応答がありません。システムを再起動しますか? 

 ニァ はい / いいえ

 

 ────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────

 

 ぺち。

 何かが潰れる音がした。

 人間の男が、手に持った魔剣で何かを潰している。

「うわ、今度は毛虫潰させられたよ!」

「何を言う、魔人退治だ。はー毛虫怖い怖い。念入りに潰そう」ぺちぺちぺっちん、ぺっちぺち

 男と剣が言い争いながら毛虫をぺちぺち叩き潰す隣で、モンスターが一人呆けている。

「…………え?」

「もっともっとー。ぺちぺちぱんぱんぱん」

「いや──────────ー! やめて──────!」

「ん?」

 叩き潰された毛虫が消え、赤い魔血魂が転がった。どうやら毛虫は魔人であったらしい。

「これは魔血魂といって、魔人の魂です。これは封印して廃棄迷宮に捨てておきます」

「ああ……そんな……ジーク様ぁ……うわ──────────ん!」

 魔血魂を人間の女が拾い上げて瓶に詰め、女の子モンスターは泣きながら逃げて行った。

「手段はどうあれ、魔人をこれほどたやすく倒してしまうとは……」

「ううむ、見事だ」

「いつもながらこういう悪知恵だけは働くのよね……」

「ふん、貴様らとは頭の出来が違うのだ」

 毛虫の魔人を潰した人間と周りの人間が喋っている。

「で、おい、エール。転送装置はあっちでいいのか?」

 そして、人間がこちらに顔を向けて話しかけてきた。

「…………………………………………」

「何を呆けとるんだ。おい」

 人間は私の顔の前で手をぶんぶんと振る。目障りだな……と、思った瞬間。

「お~~~~~~~~~~~~~~~~~い」ぎゅううううううううううう! 

「いひゃあああああああああああああああああああ!」

()()()のほっぺたが思い切り引っ張られた! 

「もう! 何すんのよ!」

「がはははははは、俺様の前でボーっとしているからだ!」

 手を振り払って頬を抑えるあたしの前で、()()()()()はがはがは笑った。全くもう……

 確かにだいぶボーっとはしていた……よね? なんだか文字通り死ぬほど退屈で死にそうだった気が……するようなしないような。まぁいっか。それよりほっぺが痛い。

「兄妹げんかはそれくらいに。転送装置はあちらです。行きましょう」

「うむ」「はーい……いたいのいたいのとんでけー」

 あたしはヒーリングをかけながら、お兄ちゃんと並んでカオルさんの後に続いたのだった。

 




ちなみに威力はちゃんと再現されていて、単純にパットンが前より頑丈になってただけです。

読んでいただきありがとうございます。
お気に入り評価ここすき感想など頂けると大変うれしいです。

以下は没にした展開です。せっかくですので乗せてみます。

「あなたの恐れるもの…これだ!」 
ジークは、シルバレルに変身した。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!あばばばばばばば…」
ランスは悲鳴を上げてひっくり返り、泡を吹いた。
「お兄ちゃん!?」「ランス様!しっかりしてください!」
「ブ、ブスが…ブスが居るよー…ブスが俺を見て笑うんだ…」
ぶつぶつうわごとを言うランス。
「ははははは!効果てきめんなようですね!」
「キャージーク様すごーい!かっこ……かっこ……うう……す、すみません……」
「良いのですよオーロラ。女性の外見にとやかく言うのは紳士的ではありませんが、これは流石にひどいですからね…我ながら気分が悪くなってくる…」
「速くカッコいい姿に戻ってください、ジーク様」
「そうしましょう」
「ランス様、ジークが元に戻るそうですよ」
「うう~~~~ブス……ブスがまだ居る~~~~」がくがくぶるぶる
「…あれ?むんっ…はっ…!」
「どうしたんですかジーク様?」
「も、戻れません…なぜ…これは私の能力のはず…」
「えーーーーーーーーーっっ!?」
「いったいなぜ戻れないのですか!?」
「ブ、ブスが…ブスが消えない…消えないどころか増えた…一人が二人に…二人から四人に…うーん…」ぶくぶくぶくぶく…
「ランス様ー!?」「お兄ちゃーん?!」
 騒然とした場に、クルックーが進み出た。
「ご説明しましょう」
「えっ?あなたはここに出てきちゃダメでしょ」
「もうゲームオーバールートに入ったのでなんでもありなんです。ほら、アレを見てください」
「ブ、ブス…こわい…」がくっ
ランスは死んだ。生命活動を停止……死んだのだ。
「なるほどね。で、どうしてジークは戻れなくなったの?」
「はい、彼はまねしたの魔人で、魔人化により『変身Lv2』の技能を得ました。これにより、彼は変身した先の能力や技術を一部使うことが出来るのですが、今回は『ブスLv3』をコピーしてしまったのです。こうなると変身技能の解除で元に戻ろうとする力より、ブス技能のブスで居続けさせる力の方が強いので、戻れなくなります」
「え、じゃあジークは…」
「はい、ずっとあのままです。これからは変身魔人ではなくブス魔人ですね。」
「な、なんだってー!」がびーん! ジークはショックを受けた。
「うう…なんという事だ…オーロラ、すまないね…あれ?」
そこには誰もおらず、『本当にごめんなさい。ブス魔人の使徒はさすがにきついです。さようなら』とだけ書かれた手紙が落ちていた。
「お、オーロラ―――――――――!?」
「と、いうわけで、変身技能は本編でもあった通りとんでもない事態を起こしがちなのです。技能をお持ちの方は、使用は慎重にしてくださいね」
「はーい」                            ≪完≫

以下、妄想です

魔人ジーク
LV60/156
変身Lv2 剣戦闘Lv1 紳士Lv0

まねしたの魔人。
気に入った男奴隷をいたぶっていたらうっかり殺してしまったジルが、どうにか代わりをさせられないかとそのあたりのまねしたを使って作った。
しかし外見も能力もコピーできるのに言動はコピーできなかったためにそのまま放置される。
ケイブリスに変身能力を警戒されることになったジークは身を守るためケッセルリンクに接近した。
礼儀作法の手ほどきを受けてすっかり紳士となったジークは、魔人紳士と呼ばれるようになる。
昔から決闘を繰り返してきたので剣の腕前自体はかなりのものだが、ステッキで殴るだけなので脅威度は低い。
仕込み杖にしようかと思ったこともあるが卑怯なのでやめていた。

ケイブリス曰く「変身魔人が汚い手も使うような野郎だったら厄介じゃねぇか。奴がああいう性格でよかったぜ。じゃなかったら殺してた」とのこと。

順番シャッフル
神魔法のひとつ。仲間一人と自分の位置を入れ換える。
正確な名前はあるらしいが誰も知らないため、詠唱を踏み倒せる一部の高レベルな神魔法使いしか使うことはできない。
そのわりに前線で戦いでもしない限り使う機会はないため、使うものの少ないレア魔法。
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