地上灯台は、誰がなんのために建てたのかよくわからない建物だ。それっぽい形だから灯台と呼ばれているが別に明かりがつくわけでもない。
そんな地上灯台の外側、螺旋を描くように上に続いていく道をえっちらおっちら登っていくが、そんな最中にもモンスターは当然襲ってくる。
「んがー!」びゅっ!
なんに怒ってるのか知らないけれどいつも怒っているモンスター、ミートボールが突っ込んできて、とにかく怒りに任せて槍を付き出してきた。
けど、勢いをつけすぎて盾を明後日の方向に向けてる。そういうのは……っと。
「よっ、ほいさ」きぃん、ずばっ! 「ぎゃー!」どばー「わっ」
神官ソードで槍を弾いて間合いに入り、盾を引き戻す前にマルガリータで逆風に斬り上げる。股下から真っ二つになり、倒れるミートボールを返り血……じゃなくて返り肉汁ごと避けた。
なんというか、敵としては柔らかいけど食べ物としては固そうな切りごたえだなぁ。食用モンスターとして作られたはいいが、まずくて捨てられたのが野生化したらしいと聞いたことがあるけど本当なのかもね。
地面に転がるいくつかの死体を邪魔にならないように蹴り落としながら回りを見ると、
「八つ当たる!」ズバーン「「あいやー!」」
向こうではブルーハニーの群れをフェリスがストレスのこもった鎌で真っ二つにしている。
一方、かなみさんは女の子モンスターのラーメンと渡り合っていた。
「ハイ、ハイ、ハイハイハイハイ!」
「わっ……とっ! ちょっ……早っ……!」
「がはははは! 中華娘いただきー!」
「あいやー!?」
後ろからランスお兄ちゃんが襲いかかり、押し倒していろいろとおっぱじめた。物好きだなあ……
流石にその辺よりも敵は強いけど、あたしたちも強いし平気だね。
「……ん?」なんか紙が落ちてる。
ひとしきりラーメンをいじくってスッキリしたお兄ちゃんが戻ってきた。
「がははー、たまには中華もいいもんだ」
「お疲れさまです、ランス様」
「でも結構昇ってきたけどまだ上は遠いわね……」
「お兄ちゃん、こんなん拾ったけど」拾った紙をお兄ちゃんに手渡す。
「おっ、求人票じゃないか。キースギルドで俺様の下僕をゲットできる紙だ」
そういえばキースさんのところで会った時に机の上にあったな……あたしもこれでゲットされたのか……
「さて、とっとと先に進むぞ……のわっ!」
先に進みかけたお兄ちゃんが急に足を止めた。
「どうしたの……わっ!」
なんか顔に透明でぶよぶよしたなにかが触れた。ばかでかいそれが道を塞いでいる?
「なんかいるぞ……なんだあこりゃ」
「ぶよぶよする~!」
『我は番人……サファイア様の所に不審なものは行かせぬのである……ある……ある……ある……』
なんだか変なエコーのかかった声が響く。
「ランス様、これ寒天ですよ」つんつんつついていたシィルさんが説明した。
「なにぃ、寒天? ええい、シィル! 全部食え」
「さ、流石に調味料なしだと辛いです……」
「そっちなの!?」
あたしたちは剣で斬ったり魔法で燃やしたりしてみたが、寒天はぷるぷるするばかりでまるで通じなかった。
『無駄である……ある……ある……ある……』
「俺様達はサファイアに用があるのだ、通せ」
『ならば合言葉を言うのである……ある……ある……』
「はぁ? 合言葉だと?」
まずいなあ、そんなの知らない……
『【うっきーまるまる】』……
「えっ? 【朝御飯食べたいな】?」
「エールちゃん?」
「何を言っとるんだお前は」
『……通るがよい……よい……よい……よい……』
ばしゃっと音を立てて寒天は消え去った。
「えっ?」「わっ」「ん?」「マジかー……」
手を前に出すが、ほんとにもう寒天はいないようだ。
「エールちゃん、合言葉なんてどこで知ったの?」
「あー……えーと……ラジールでいろいろあって……」
「がはははは! 流石は俺様の妹、グッドだ」
「ひゃー!」
がしがしと頭を撫でられて髪の毛がぐしゃぐしゃになってしまった。勘弁してよねもー!
そこからは特に邪魔も入らず、モンスターを蹴散らしながら進んでいった。
宝箱をお兄ちゃんがフェリスに命じて取りに行かせようとして、擬態していたミミックに襲われて尻尾をかじられたくらいかな。外は何事もなく無事に最上階まで到着した。
「うわー、高い……ほら、カスタムが見えるよ」
カスタム防衛隊とヘルマン軍の激闘の様子が見て取れる。チューリップや魔法の爆炎に混じって、なんか時々戦場で赤い光がちかちかしてるなあ……なんだろ?
「今まさに攻められてる……急ぎましょう、ランス様」
「うむ、それっぽい奴を探すのだ」
「あっ、ランス、あそこ……」
かなみさんが指差す先を見ると、塔の中心にある魔方陣の中で、何やら目を閉じてぶつぶつ言っている……なにとは言わないが丸出しの女の子がいた。
「えっ……痴女?」「うわー……」「寒そうです……」
「がはははは! エロい格好のかわいこちゃんではないか!」
ドン引きするあたしたちと対照的に、お兄ちゃんは当然のように大喜びだった。