【二章完】ちょっと早めのエールちゃんの冒険   作:砂嵐36

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サファイアの口調難しすぎる…



21.エールちゃんは使徒と戦う

 おそらくリーザス兵を洗脳している術士と思われるまるだしの女の子、推定サファイアは、何やら集中しながらぶつぶつと呪文を唱え続けている。

 こちらには目もくれていない。隙だらけだ。

「で、お兄ちゃん。どうする? 後ろからずばーっと……」

「バカめ、そんなもったいないことするわけなかろうが」

「だよねー……」「ですよね……」「そうよね……」「するわけないわね……」

 あたしたち三人と一匹の諦め気味のリアクションを尻目に、ランスお兄ちゃんはこっそりと忍びより、後ろからがばちょと抱きついて、まるだしの二つのあれを好き勝手し始めた。

「ワアッツ……!?」「がはははは! いい感触だぞ丸出しちゃん!」女の子は悲鳴を上げつつもけなげに術式を維持しようとするが、お兄ちゃんはぐふぐふ笑いながらおおいに楽しんでいる。

「スタップ……! コンセントレーションが……カットされたら……術式が……アイゼル様に……」

「がはははは! なら我慢してみるがいい! ほれほれほーれ!」

 まあ、あんなまるだしなので仕方ない部分はあるよね、術式の妨害にはなるだろうし。敵に容赦する理由もない。

 出来るだけ視界に納めないようにしつつ、あたしたちは勝手にしゃべる。

「アイゼル様がどうとか言ってるけど、その人の指示でああいう格好してるのかなあ? だとしたらアイゼルって人相当の変態だよね」

「あの子ももしかして洗脳されてあんな格好をしているのかもね。ヘルマン人ってそういうのが趣味なのかも」

「ふ、二人ともちょっと言いすぎでは……」「えー? そう?」

 あたしたちがやいのやいの言っていると、お兄ちゃんの責めはクライマックスを迎えたようで、なにとは言わないが強く引っ張られた女の子は大きな悲鳴を上げてへたりこんだ。

「あっ、ほら見て。カスタムの方」

「なんか混乱してますね……」

「リーザス兵がヘルマンと戦ってるわ! 洗脳が解けたみたい!」かなみさんが言う通り、遠くに見える戦場の様相は一変していた。今まで味方だったリーザス軍に襲われ、ヘルマン軍は大混乱に陥っている。

「がーはははははは! 作戦大成功だ!」「やりましたね! ランス様!」「なんとかなるもんねー」「アナタたち……」

 いえーいと盛り上がるあたしたちの後ろで、サファイアがごごごごごと音がしそうな感じで立ち上がっていた。

「許しまセン……そこのセクハラガイはオフコースとして……そちらのウィメンズ……よくもアイゼル様のバッドマウスを……」

 な、なんかすごい魔力が渦巻いてる……? 

 そんでなんでかこっちにも矛先が……

「ワタシはアイゼル様の使徒サファイア……みなさん全員、アイゼル様へのギフトになってもらいマス! ヘッドオンリーでですが! 『藍色破壊光線』!」ビィーッ! 

 怒りの声と共に藍色の光線がぶっ放された! 

「回避ぃー!」

「ひゃー!」どかーん! 

 あたしたちは飛び退いて光線を躱したが、光線が当たった床は青い水晶に変化した!? 

「なにこれ!? 石化!?」

「おたおたするんじゃない! 唱えてる間に攻撃だ!」

「わ、わかったわ! はあっ!」しゅっしゅっ

「炎の矢!」

 次の光線の準備を始めたサファイアに手裏剣と炎の矢が放たれるが、サファイアに当たる前に光の壁に阻まれた。

「くっ! なにあれ!?」「魔法バリアです!」

「フタロシアニン……インジゴイド……『藍色破壊光線』!」ビィーッ! 

「わぁー!」どかーん! 

「さっきやっちゃえばよかったのにー!」

 再び光線が放たれ、あたしたちは柱の影に逃げ込んだ。光線は防げたが、柱は水晶になって砕け散る。

 柱の影にはあたしとかなみさんとシィルさん。お兄ちゃんの姿は見えない。やられてはいないと思うけど……! 

 いつまでもこんなの相手してられない! あたしはサファイアに向けて突っ込んだ! 

「やぁぁぁー!」

 魔法使いの防御手段である魔法バリアは、何度か攻撃すれば破ることが出来る。あたしは両手の剣を振るってバリアに斬りつけ、ついにバリアはパリンと音を立てて破れた。

「やった……っ!?」

 思わず口許が緩んだ瞬間、背筋が凍った。割れたバリアの向こうで、呪文の準備を終えたサファイアの口が笑みの形につり上がる。

「まずはファーストパーソン……『藍色……」

「ラーンスライディングキーック!」ずさーっ! 

 その瞬間、お兄ちゃんが横合いから滑り込んできた! 

「きゃっ……くっ……『破壊光線』!」 サファイアは体勢を崩しながらもお兄ちゃんに向けて光線を放つ! 

「かーらーの!」だっ! 

 しかしお兄ちゃんはスライディングから身を起こす動作そのままに跳躍、それを躱した。同時に剣を振りかぶり……

「ラーンスアタタタタターック!!!!」どっがしゃああああああ! 

「キャアアアアアア!!!」

 もろにくらったサファイアは吹き飛び、床に叩きつけられた。使徒だけあって頑丈らしく、生きてはいるようだが、立ち上がる様子はない。

「がーはははは! 使徒だかなんだか知らんが俺様の敵ではないな!」

 高笑いするお兄ちゃん。

「ありがとね、お兄ちゃん。……ところでどうやってあの光線を防いだの?」

「光線? ああ、盾を使ったのだ」

 お兄ちゃんが指差す先を見ると、フェリスが変な体勢のまま固まっていた。

「うぅ──ー……」ぷるぷるぷる

 さすがは悪魔、抵抗したのか水晶になってはいないが動けないようだ。

「うわぁ……」「だ、大丈夫ですか……」

 かなみさんとシィルさんが近寄って様子を見る。

「がはははは、そのうち治るだろ。さーて俺様はまるだしちゃんをもうすこし……(びゅっ!)のわっ!」

 倒れたサファイアに近づこうとしたお兄ちゃんは突然横から突き出された剣を危うく躱した。

 見ると、金色の鎧をつけた女性がサファイアをかばうように立っている。

「おっ! 青の次は金のねーちゃんか?」

「レイラさん!?」「……」ぽきっ

 かなみさんが知っている人のようだったが、レイラと呼ばれた金色の女性は反応せず、サファイアを抱えて帰り木を使い消えてしまった。

「かなみさん、知ってる人?」

「リーザス親衛隊の隊長、レイラさんよ。私が城から脱出するときに助けてくれたの……でもあの様子は……」

「洗脳されてるっぽいですね……あの変な鎧も……アイゼル様とやらの趣味なんでしょうか。気の毒に……」

「いや、親衛隊はもともとあの鎧よ」

「マジですか」

 世の中は広い。

「ちっ、まあいい。これで作戦は成功だ。カスタムの女ども抱き放題だ! がーははは!」

 お兄ちゃんそんな約束してたのか……

「なら、早くマリアさんを助けないと」

「おっ、そうだったな! 早くしないとあのオカマに美味しくいただかれてしまう! 急ぐぞ!」

 

 あたしたちはそのへんにあったロープで地上灯台を脱出し、ラジールに戻ったのだった。




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